ポケットモンスター鳴   作:史縞慧深

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最近ゲームが面白い。
それではどうぞ。


17話 伝説のポケモンと昼夜のヒウン

 次の日、いつもの体操と訓練を終え、Mと一緒に朝ご飯を食べ終わり、

 

「今日はどうするの?」

 

 Mが訊いてくる。

 

「今日はもうこのヒウンシティとはお別れでシッポウシティに向かおうと思います」

「おおー、で、その理由は?」

「もうジム戦したしほかに見たいところもないからです」

「そーなのかー」

 

 そーなのだー、じゃない! なんでこのネタ、知ってるんだ? 偶然か? まあいいや。

 

「と、いうわけで準備を整えて出発するよ!」

「おー」

 

 さっそく準備を始める。旅に必要な食料などを確認する。よしおっけ。これでいいか。

 

「M~そっちは準備できた?」

「うん、おっけ~」

 

 よし準備完了。じゃあ出発するとするか。

 

「ああ、そういえばトウヤ? だっけ? とかに言っておかなくていいの?」

「ん~、別にいいんじゃない? 特別に仲がいいってわけじゃないしね」

 

 Mに訊かれ私は特に気にすることはないと答える。

 

「え? 有意義な時間だったって言ってたのに……もしかして意外と悪女?」

「なにを勘違いしてるかよくわかった。でもトウヤの用事はナンパじゃないからね」

「え? そうなの? てっきり私はトウヤの目的はナンパだと思ってた。じゃあ何の用事だったの?」

「ああ~うん、まあ、なんだ? 私とトウヤの過去とこれから起こりうる未来について?」

 

 うん、嘘はついてないな、うん。

 

「なにそれ。初対面で話す内容じゃない……はあ、まあいいや。私も隠してることがあるし、これでおあいこってとこかな。いつか話してくれる?」

「そうだね。いつか話すよ。今は勘弁してね」

「わかった。私も待ってる」

 

 まあ、いつか話そう。決心がついたら、な。

 

「さて、それじゃあ出発しようか。行こうM」

「そうね」

 

 そうしてポケモンセンターを出て、かの有名なスカイアローブリッジのゲートに向かう。スカイアローブリッジというのはヒウンシティとヤグルマの森をつなぐ巨大な橋だ。そこから見える景色は一見の価値ありと言われていて、壮大な景色が見られるだろうことは想像に難くない。昼間のもいいが特に夜のヒウンシティが綺麗らしい。

 ゲートに着き、スカイアローブリッジに足を踏み入れる。初めの方は上りになっているのだが、鍛えた運動能力でさくさくと上っていく。Mもこれについてきているところをみると旅慣れしていて体力もあるんだろうな。しばらくして上りが終わり後には平坦な道が続いている。ここでヒウンシティのある方向に振り返ってみる。

 

「ほわあ……」

「ふう……」

 

 そこには大きなビルが立ち並び、まさに大都会といった印象を与える、ある種の美の姿があった。

 

「へえ、こうしてみるとまた印象が変わるもんだね」

「そうね、まあ私はこの景色は二回目だけど」

 

 Mはこの景色を一度見ているようだ。

 

「ふうん、そうなんだ。あ、じゃあ、ここからの夜景も見たことある?」

「いや、夜景はみたことないかな」

 

 Mも夜景は見たことがないらしい。

 

「じゃあさ、ここからの夜景見てみようよ」

「いいかもね。でもどうする? 夜までここで待つの?」

「いくらなんでもそれはちょっとあれだし一度橋を渡りきってまた夜になったら戻ってこよう」

 

 さすがに夜までここで待つのはな……まだ昼にもなってないし。

 

「そう、わかった。じゃあまた歩きだね」

 

 そうしてスカイアローブリッジを歩いて渡っていく。道中では特筆すべきことはなく昼前にはヤグルマの森側のゲートについた。

 

「ふう、ついたついた。ここがヤグルマの森側のゲートだね」

 

 やっと着いたか。それにしても長い橋だった。

 

「もうそろそろお昼」

「そうだね、っと。すいません。ここで泊まることってできますか?」

 

 ゲートにはどこかの受付のようなところがありそこにいる女性に訊いてみる。

 

「はい。ここの二階より上は宿泊施設となっており泊まることが可能です。ご利用の方ですか?」

「はい、私達二人、今夜一泊お願いします」

「わかりました。二人部屋でよろしいですか?」

「はい、それでお願いします」

「わかりました。では宿泊料金のお支払、もしくはトレーナーカードの提示をお願いします」

 

 私とMがトレーナーカードを見せる。こういったところでもトレーナーカードの提示だけで泊まれる。トレーナーって本当に恵まれている。こういったことからトレーナーになろうとする人は多い。だがずっとトレーナーを続けることはなかなかに難しい。一定期間内にポケモンリーグに出場する、もしくはジムリーダー、四天王に選ばれる、等のことがないとトレーナーとしての資格をはく奪される。どの条件もトレーナーとしての資質をそれなりに求められるからトレーナーを続けられる人はそう多くはない。なんて言うと厳しく感じるが実はそれらの条件を満たさなくても続けようと思えば続けられる。しかしその場合、ポケモンセンターなどのサービスが無料でなくなり、フレンドリィショップの商品の値段も高くなる、といった具合に状況は厳しくなる。すべては自己責任というわけだ。

 

「こちらが部屋のカギになります。御用がありましたら部屋に備え付けの電話よりお願いします。直接係員にお申し付けくださってもかまいません」

「ありがとうございます。さ、M、部屋に行って昼ごはんでも食べよ?」

「おー」

 

 そうしてゲートの宿泊施設で時間を過ごし、そして夜になる。

 

「さてと。そろそろ辺りも暗くなったし、行こうか」

「今から? 今からだと少し遅くならない?」

 

 普通ならね。

 

「その点は大丈夫。カティに乗せてもらうから」

「カティって、ウインディの? ふうん……」

「ウインディは一昼夜で1万キロ距離を駆け抜けられるんだからこれくらい余裕だよ」

 

 ポケモン図鑑の説明ではそうなっている。すごいよな、ウインディに限らずポケモンっていうのは。

 

「そうなんだ。じゃあ行く?」

「そうだね。行こう!」

 

 部屋を出てゲートである一階に下りる。すると受付にいた女性が話しかけてくる。

 

「あら? お出かけですか?」

「はい、ちょっと夜景を見に」

「今からだと少し遅い気がしますけど大丈夫ですか?」

「はい。ポケモンに乗っていくので大丈夫です」

「そうですか。では鍵をお預かりします。帰ってきたらまた声をかけてください。では、いってらっしゃいませ!」

 

 そうして鍵を渡し、カティを出す。

 

「出てきて、カティ!」

『ウオオオオン!』

 

 カティが咆哮をあげて出てくる。もちろん近所迷惑を考えて声のボリュームは抑えている。受付の女性が珍しいものを見たように興味津津でこちらを見ている。ウインディがそんなに珍しいかな。まあカッコイイのはよくわかる。私でもそう思う。でも、カティの性格を考えるとカッコイイよりかわいいが合ってる気がするけどな。まあそんなことはいい。さっさと行くとしよう。

 

「カティ、ちょっと私とMを背に乗せて走ってくれない?」

『うん! いいよ! はい!』

 

 カティはかがんで私達が乗るための準備をする。

 

「さ、M、乗って」

「うん」

 

 私は前に、Mは私の後ろに乗る。私はカティにつかまり、Mは私の腰に手をまわして掴まる。こ、これは、Mの胸が私の背中にいいいい! ふおおお! やわらけー。いやいやまてまて、落ち着け私。心頭滅却すれば火もまた涼し。深呼吸だ、スゥー、ハァー。よし落ち着いた。うん、出発しよう。背中の柔らかい物体は気にしない、うん、気にしない。

 

「出発するよ。M、いい?」

「うん、いいよ」

 

 よっしゃ、いざ出発! ゲートの扉を抜けてスカイアローブリッジに出る。

 

「カティ! Go!」

 

 そうしてカティが走り出す。するとスカイアローブリッジの装飾が目まぐるしく移り変わる。周りの景色は眼前が海であることからあまり変わることはない。

 

「夜のヒウンシティか、楽しみだね、メイ」

「そうだね。きっとすごいんだろうなあ」

「それにしても、カティ、すごいんだね。こんなに速いとは思わなかった」

「だから言ったじゃん。一昼夜で1万キロ駆け抜けられるって。まあ私もこうしてカティの背中に乗るのは初めてなんだけどね」

「それ大げさにいってるのかと思ってたけど、これなら可能かもね」

「ふふふ、そうでしょ、そうでしょ! 私のカティはすごいんだから!」

 

 いやー、自慢になっちゃうなあ! けどカティがすごいのは事実なのだから仕方ないよね。

 

「メイってホントに自分のポケモンを誇りに思ってるんだね」

「そうなのかなー。まあ自分のポケモンは大事に思ってるのは確かだね。でもMだってそうでしょ?」

「ふふふ、そうね。そこのところを忘れるとトレーナーとしては失格だもんね」

 

 ふう、それにしても風が気持ちいいな。お、そろそろ着くか、あっという間だったな。さすがカティ。

 

「そろそろだな。もういいよ、カティ。止まって」

 

 私とMはカティの背から降り、ヒウンシティの方に目を移す。そこに広がっていたのは……。ビル群を照らす様々な光、それがまるでイルミネーションのように輝いている。百万ドルの夜景とはまさにこのことだな。

 

「ほお……!」

「うわあ……!」

『おお!』

 

 私とMは二人して感嘆の息を漏らす。カティもこの景色には感動している。こんな景色を見せられたら誰だってこうなる。

 

「はあ、こういうのは恋人とかと見に来たいよね」

「メイに恋人はいないの?」

「私に? いないいない。私はちょっと特別だからね。だから恋人を探すのは難しいかな。そういうMはどうなの?」

 

 私は実は女の子が好きなんです。なんて言えるわけがない。Mはどうなんだろ?

 

「私も全然。今はポケモンたちと一緒にいるだけで満足だもの。私の体目的で近づいてきた人もいたけど、もちろん丁重にお断りさせていただいた」

 

 Mはふう、とため息を吐きながら言う。

 

「わかる。M、スタイルいいもんね」

 

 うん、しかし私としてもMの体は非常に魅力的だ。まあ、かといって体が目的っていうわけじゃない……と思う……多分。なんか自信なくなってきた。でもこれだけは言える。Mのことを大切に思っているということ。会ってから3日ほどしか経ってないが早くも情が移っている。でもいいよね、冷たくするよりは。

 

「あ、そうだ。ほかのポケモンたちにも見せてあげよう。出てきて、みんな!」

 

 そうして、私は残りのポケモンたちを出す。するとみんなもこの夜景を見て感動していた。

 

「なら、私も出そうかな」

 

 Mはモンスターボールからポケモンを出す。ちょうど六体いるようだ。そしてボールから出てきたのは……。え? えええええ!? うそだろ? まさか……まさかこんなところで会えるとは。ラティアスとラティオス、対をなす特徴的な赤と青、すっきりとしたフォルムに直線的な翼を持つ両ポケモン。その希少さから伝説に名を連ねる両雄。

 

「ほえ~、まさか伝説のラティアスとラティオスに会えるなんて」

 

 思わず間の抜けた声が出てしまった。

 

「メイになら見せてもいいかなってね」

 

 この3日間で随分と信頼されているな。いいのか? こんな簡単に心を許しても? まあそれはそれで嬉しいけどね。

 

「でもどうしてラティアスとラティオスを持ってるの?」

「傷ついていたこの子たちを治してあげたの。そしたらついてきてくれた」

「へえそうなんだ。他のポケモンもきれいなのばっかりだな」

 

 ラティアスとラティオス以外のポケモンは、スラリとした体躯で両手の体毛が特徴的なぶじゅつポケモン、コジョンド、黄金の毛並みと9本のしっぽを持つきつねポケモン、キュウコン、4本足で立つ白い体毛と三日月状の角が特徴的なわざわいポケモン、アブソル、頭の花飾りが特徴の人型のはなかざりポケモン、ドレディア、の4体だ。

 

「まあ、とりあえず。みんな! 私はメイ! よろしく!」

 

 Mのポケモンたちは私の挨拶に頷く。なんだ、みんな寡黙だな。恥ずかしがってるのか? ま、いいか。

 

「それにしても本当にきれい、このヒウンシティの夜景」

「本当にね……」

 

 しばらくみんなで静かに夜景を見つめる。……みんな見入ってるな。この雰囲気を壊してくれるのはだれかなー? ま、今はしばらくそのままで。………………、そろそろいいかな?

 

「う~ん、ふう」

 

 伸びをして息を吐く。

 

「そろそろ、帰らない? もう十分堪能できたしさ」

「そうね。じゃあそろそろ帰ろうか」

 

 そう言ってMはポケモンたちをモンスターボールに戻す。私もカティ以外をボールに戻す。

 

「じゃあカティ、帰りもお願い」

『おっけー! 任せて!』

 

 そうして私とMはカティに乗りスカイアローブリッジをあとにし、ヤグルマの森側のゲートに戻ってこの日は休んだ。

 

 




ありがとうございました。

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