それではどうぞ。
次の日の朝、部屋でいつもの体操と波導の訓練をしているとMが眠そうに眼をこすりながら起きてくる。
「んう~ん、メイ? ふわ~あ、おはよう~」
「おはようM」
Mはまだ寝起きでぽ~っとしている。朝は弱いのかな。しかしこうも無防備な姿を晒されるといたずらしたくなってくるな。今は体操中なのでしないが。
「メイは何してるの?」
Mが私の体操について聞いてくる。
「これはいつもやってる朝の体操と波導の訓練。Mもやる?」
「私はいい。とりあえず顔洗ってくる」
そう言ってMは洗面所に行く。私が体操と訓練を終えたところで、ちょうどMが洗面所から戻ってくる。私たちは準備を終えて、朝食を食べに行く。Mは未だに眠そうにしているな。私は体操のおかげでもうバッチリ目が覚めている。お腹もすいてきたことだしさっさと朝食を食べるとしよう。朝食はトーストにベーコンエッグというオーソドックスなものだ。朝食もそうそうに終わらせ、ジム戦への準備を進める。
「みんな、出てきて」
そうして私はリオ、カティ、ユウヒ、イヴをモンスターボールから出す。
「さてこれから簡単な作戦タイムで~す。今回戦うのはむしタイプ使いのアーティさんだ。タイプ相性を考えてこのジム戦でメインに戦うのはカティとユウヒになる。イヴとリオはもしものとき限定で基本はユウヒとカティで戦ってもらう。初めてのジム戦ということで気合を入れていこう」
リオたちポケモン勢は頷く。
「それでジム戦経験者のMからなにかアドバイスはある?」
「う~ん、メイ、ジム戦は初めて?」
「うん、今回が初めてだけど?」
「なら、何も心配する必要はない。メイもポケモンたちもすでにかなりの実力を持ってると思うし。何より初めからメイがキツイと思うジム戦になっていたら初心者トレーナーたちは皆ジム戦を突破できないから」
Mからのお墨付きももらえたのでジム戦は多分大丈夫だろう。よし、ではさっそく行くとしよう!
「よし、じゃあみんな戻って」
リオたちをモンスターボールに戻し、ポケモンセンターを後にする。
「う~ん、ちょっと緊張してきたかも」
私はこれから始まるジム戦に対し武者震いをする。
「大丈夫。言ったでしょ? メイならイケるって。むしろ拍子抜けしちゃうかも」
「そこまでなの? ……まあいいか、勝てるならそれで」
Mの言葉に若干安堵しつつもジムのある通りに出てジムに向かって真っすぐ歩いていく。そうしてジムの前まで来た。
「へえ、ここがヒウンシティのポケモンジムねえ。特に変わったところはないけれど」
私はポケモンジムに対してそう感想を述べる。
「あなたはポケモンジムに何を求めているの?」
Mがツッコミを入れてくる。確かにそうだ、奇抜な様相を呈していても反応に困る。
そうしてジムの前に二人して突っ立っていると、ある男女の二人組がやってきた。男の子の方は黒の長ズボンに襟周りが濃い青の青いジャケットの茶髪に同じ色の瞳のイケメン、少女の方は白のアンダーシャツに黒のベスト、デニムのショートパンツに濃い茶色の髪のふわふわポニーテールに蒼色の瞳の美少女だ。
おおう、ここで登場ですか、BWの主人公、デフォルトネームは男の子の方はトウヤ、少女の方はトウコ。実際の名前は何なのかわからないが。それにしても、どうして主人公格が二人もいるんだろう。こんなところで原作と差異が発生するとはね。そうして考えていると向こうから話しかけてきた。
「あれ? あなたたちもジム戦?」
少女が私たちに問いかける。
「はい、そのつもりですけど。あなたたちは?」
私は少女の問いに答え、逆に二人組に問いかける。
「私はトウコ、で、こっちはトウヤ」
「ども」
トウコが二人分の自己紹介をする。どうやら名前はデフォルトネームの通りのようだ。
「これはご丁寧にどうも。私はメイ、こちらはM」
「M? ねえあなたNとなにか関係があったりする? あ、知り合いにNっていう不思議なトレーナーがいるんだけど」
トウコがMに問いかける。
「N? 誰それ。知らない」
Mはとぼけているのか、本当に知らないのか、どちらなのかはわからないが知らないと答える。
「あ、知らないならいいんだ。似ている人って世界に3人はいるっていうの本当なのかな」
トウコがMをまじまじと見てしみじみと言う。ちょっとそれは失礼にあたるのではないか。まあMは気にしてない様子だし、別にいいか。
するとポケモンジムから一人の男の子が出てきた。その男の子は襟の大きめの青のジャケットに赤いラインの入ったシャツ、黒い長ズボンでメガネをかけていた。おおっと主人公勢に加えて今度はトウヤ、トウコの幼馴染のチェレン君ではないか。
「やあ、トウコにトウヤ。おや、そちらの女の子二人は誰だい?」
やはりというかなんというか、トウヤ、トウコに対しては親しみが感じられる。
「こんにちは、私はメイ、こちらはM」
「どうも」
私は自分とMをチェレンに紹介する。
「よろしく。僕はチェレン。君、メイと言ったね。もしかして君がアララギ博士に手伝いを頼まれたもう一人の優秀なトレーナーなのかな?」
どうやら名前はチェレンであっているようだ。チェレンは私に問いかける。
「優秀かどうかは分かりませんがアララギ博士に手伝いを頼まれたのは私です」
アララギ博士が何か言っていたのかどうやら向こうは私のことを知っていたようだ。
「そうか。できれば君とポケモンバトルをしてみたいが、状況を察するに今からジム戦なんだろう? なら仕方ない、バトルはまた今度にしよう」
チェレンは少し残念そうに言う。
「あはは、すいません。ありがとうございます」
「いいさ。ジム戦には万全の状態で挑みたいだろうしね」
どうやらチェレンに気を使われたようだ。
「それはそうと、僕はたったいまジムリーダーのアーティさんに挑んだところさ。バッジをゲットするのにちょっとてこずったけれど、まあ僕にかかれば虫タイプも問題なしだね」
チェレンはトウヤとトウコの方を見て挑発するように言う。
「このまま僕はイッシュ地方のジムリーダー全員に勝つ。そしてポケモンリーグを勝ち抜きチャンピオンを超える! でも、その前に君達との決着が先だよね。早く追いついておいでよ。そうでないとつまらないからね。それじゃあ、僕は一足先に行かせてもらうよ」
そう言ってチェレンは去っていく。すると今度は茶色のくせっ毛に緑色の瞳、首に巻いた赤いスカーフ、蝶の形をしたバックル、緑と赤の縞ズボンが特徴の青年がジムから出てきた。こんどはジムリーダーのお出ましか。この人はアーティさん、このヒウンシティでジムリーダーを務めている人だ。
「ん? 君たち……ヤグルマの森でプラズマ団と戦ってくれた……確か名前は……トウヤさんにトウコさん! それに初めての人に、以前ジムに来たことのある……確かMさんだっけ。ひょっとして初めてのキミとトウヤさんとトウコさんはジムにチャレンジ? ……申し訳ないけれどちょいと待ってくれるかな? 連絡があってさ、プラズマ団が出たらしいんだ。ボクは今からプライムピアって波止場に行ってくる。そんでボクはアーティ。ここ、ヒウンシティのジムリーダーをしているんだ。よろしく、初めてのキミ」
アーティさんが自己紹介をしてくれる。
「初めまして。私はメイです。よろしくお願いします、アーティさん」
それに私も答える。
「君たちも来るかい?」
アーティさんが訊いてくる。これはチャンスかもしれない。Mの正体を探るうえで。だが乗ってくるか?
「Mはどうする? 私は行くけど」
「私も行く」
! 乗ってきた! ということはプラズマ団とは何の関係もないのか? くっ無表情で何もわからない。……やっぱりこういうの苦手だ。
「よし、じゃあいこうか」
アーティさんに言われて私たちはプライムピアに向かう。するとそこにいたのは小柄で、健康的な褐色の肌をした少女と金髪の頭に緑色のベレー帽を被り、オレンジ色のベストとカラータイツを身につけ、白いロングスカートを履いている少女だった。褐色のほうの少女の名前はアイリス、金髪のほうはベルと言う。
ああそういえばこんなイベントがあったな。確かベルのムンナがプラズマ団に盗られたんだっけ。
「トウコ、トウヤ、どうしよう、あたしのムンナ……プラズマ団に盗られちゃったあ」
ベルが泣きそうな顔で言う。やはりか。
「あたしね、おねーちゃんの悲鳴を聞いて必死においかけたんだよ! でもこの町大きいし人ばかりで見失っちゃったの」
「アイリス……君はできることをしたんだから」
アーティさんが言う。うむ、やっぱり褐色少女はアイリスだったか。
「でもダメだもん! 人のポケモン盗っちゃダメなんだよ! ポケモンと人は一緒にいるのが素敵なんだもん! お互いないものを出し合って支えあうのが一番だもん!」
アイリスが自分の主張を展開する。ふむう、なんというか、心にくるよね。この言葉は。ていうかこの娘何歳ですか? 私よりしっかりしてそうな気がするんだけど。
「アイリスちゃん……」
ベルも今のアイリスの格言に思うところがある様子。
「うん! だからボクたちがポケモンを取り返す。ね、君たち。……とはいえこのヒウンシティで人探し、ポケモン探しだなんてまさに雲をつかむ話……都合よくプラズマ団が居てくれればいいんだけど」
すると北のほうからプラズマ団と思われる女が来る。グッドタイミング!
「なんでジムリーダーがいるの!? これは予定変更ね……!」
そう言って女は逃げていく。
「君たち、いくよ! アイリス! キミはその子のそばにいて」
アーティさんはプラズマ団の女を追っていく。それにトウヤとトウコ、Mはついていく。
「あたしベルおねーちゃんのボディーガードをしてる! だからおねーちゃんは悪い奴を追いかけて!」
アイリスが言う。どうやら金髪の娘はベルで間違いないようだ。
「そう、わかった」
そう言って私はMたちのあとについていこうとするとベルの呟きが聞こえてくる。
「ごめんねムンナ、トレーナーなのに自分のポケモンを守ってあげられなくて……あたし……」
ベルはムンナを守れなかったことを思い悩んでいるようだ。そりゃそうだ。誰だってそうなる。だが今は悩んでいる場合ではないと思うが。まあ、取り返しにいってくれる仲間がいるだけベルは幸運だろう。あ、私もいまはその仲間のひとりか。まあいい。さっさとアーティさんを追いかけよう。
ありがとうございました。