ポケットモンスター鳴   作:史縞慧深

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その点トッポってすげぇよな、最後までチョコたっぷりだもん。
今回はトッポを食べながら考えてました。
それではどうぞ。


12話 プレゼントと初めての夜

 ポケモンセンターに着いてそこにある休憩コーナーに行く。

 

「ええっと、Mは何か旅でやりたいこととかある?」

「ん~特にない。バッジはもう全部集めたし」

「え? マジ?」

「マジマジ。ほら」

 

 そう言ってMはバッジケースを取り出し私に見せてくる。そこにあったのは燦然と輝く八つのバッジだった。

 

「ほへ~、すごいねM」

「ふふん、どやあ」

 

 口に出して自慢するM。なぜか憎めないから不思議だ。これも美少女のなせる業か。

 

「じゃあMにとって旅は……」

「まあ主にメイの観察が目的かな」

 

 え? 私の観察? 見ててもあんまりおもしろくないと思うけどな。

 

「私の観察って……まあいいけど。私は一応ジムをめぐりながら皆と修業かな」

「修業って……メイってバトルマニア?」

 

 失敬なそんなつもりはないぞ……多分だけど。

 

「そんなことはないと思うけど、どうなんだろうね。まあ旅するうえでの主体性は私が持つということでいいかな?」

「異議な~し」

 

 間延びした口調でMが言う。

 

「ふう、あと何か話し合うことあるかな」

「う~む、ないんじゃない?」

 

 Mは可愛く小首を傾げる。

 

「じゃあ、あとは何かあってからということで」

「異議な~し」

「さて、今日はこの後どうしようかな。」

 

 私は体を伸ばしてこの後どうするかを考える。

 

「ねえ、どうしてさっき会ったばかりの私にそこまでしてくれるの? 普通なら断ったりするのに。メイ、ちょっと不用心すぎない?」

「う~ん、まあ何かあったらその時はその時、気付かなかった私が悪いってこと。それに誰かと一緒に旅をするのも面白そうだし。旅先での新たな出会いってのも旅の醍醐味ってね。個人的にMのことも気になるし」

 

 そう、Mのことが気になるのだ。雰囲気がNに似ているというのもあるし、もしかしたらプラズマ団と何か関係があるかもしれない。Mとかかわると決めたからには腹をくくる必要があるかもな。おっかしいな、私プラズマ団とかかわらないつもりだったんだけどな。おのれ美少女、私をその道に引きずり込むとは! なんてな。

 

「いやん、私のことがそんなに気になる?」

「おう、気になるぜ」

「……メイになら何されてもいいかも」

「おいおい、冗談だって……半分くらいは」

 

 最後の部分をぼそぼそとMに聞こえないように言う。

 

「まあメイがとんでもなくお人好しなのはわかった」

「そうかなー、普通だと思うけど」

「あ、そうだ、お近づきのしるしにこれどうぞ」

 

 そう言ってMが出してきたのはビー玉大の、中に青白い稲妻の走る玉だった。うお! これでんきだまじゃね!?

 

「ど、どうしてでんきだまを!?」

「ふーん、これでんきだまって言うんだ。あとこれはこの街に落ちていたのを拾った」

 

 Mはふむふむと頷きながら理由を説明する。

 

「拾ったって、ホントにぃ~? なんか怪しいんだけど」

「細かいことはいいじゃない。それでどう? 気に入ってくれた?」

 

 Mはまるで褒めてもらうことを待っている子供のように目をキラキラさせている。

 

「うん。まさかこんなに早く手に入るとは思わなかったよ。ありがとう。うれしいよ」

 

 そう言って私は微笑む。するとMも微笑み返す。いい笑顔だ!

 

「さっそく使ってみてもいい?」

「うん、いいよ」

 

 Mからの許可も下りたのでさっそくユウヒを出す。

 

「出てきて、ユウヒ」

『ん、何か用か?』

「はい、これ」

 

 そういってユウヒにでんきだまを渡す。

 

『こ、これはでんきだま!? メイ、どうしてこんなもの持ってるんだ?』

 

 するとユウヒに渡したでんきだまがユウヒの体の中に溶けていき完全にユウヒと融合した。

 

「Mに貰ったんだ。それよりどう? 何か感じない?」

『すげえ、体の奥底から力が溢れ出てくる……! メイが言ってたボルテッカーってやつ、今ならできそうな気がする』

 

 さすがのでんきだまだな。ユウヒもこう言っているしもしかするとボルテッカーを覚えることができるかもしれない。

 

「ボルテッカーってなに?」

 

 Mが質問してくるので私は説明する。

 

「ボルテッカーはピカチュウ一族だけが使える必殺技みたいなもので、本来はでんきだまを持ったピカチュウまたはピカチュウの進化系のライチュウが親の子供が覚えている技なんだけど、もしかしたらユウヒの親もでんきだまを持っていたのかもしれない」

 

 簡潔に説明するとMは納得したのか、へえと声を漏らす。

 

「ねえ、今からヒウン下水道に行ってユウヒのボルテッカーを試すけど来る? ユウヒは当然今すぐやってみたいよね?」

『もちろん』

 

 ユウヒは早く試したくてしょうがないみたいだ。後はMだが。

 

「私も行く。ボルテッカーに興味あるし」

 

 Mも来るみたいだ。

 

「よし決まりね。じゃあさっそく行こう!」

 

 そうして私たちはポケモンセンターを出てヒウン下水道を抜けて例の広場に着く。

 

「へえ、ヒウンシティにもこんな場所があったなんてね」

 

 Mは少し驚いて感心したように息を吐く。

 

「じゃあ、さっそく、出てきてユウヒ!」

『っし。行くぜ』

 

 Mはワクワクとしている。ていうかワクワクを口に出してるし。ではいくとするか。

 

「ユウヒ、ボルテッカー!」

『おおおおお!』

 

 ユウヒは気合を入れる声とともにバチバチと電気を纏わせる。電気のチャージが終わり、走り出し、そして後ろに電気の軌跡を残しながら走り抜ける。やった、できた……!

 

「やったぜ! 成功だユウヒ! イエーイ!」

『おう! できたぜ!』

 

 ユウヒはジャンプして私とハイタッチをする。Mもおおーという声を出し拍手をしている。

 

「じゃあ、次しんそくもいってみようか!」

『わかった』

 

 すると、ヒュン、ヒュン、ヒュンとユウヒが高速で動きまわる。よししんそくも成功!

 

『おお、できたぜ。でんきだまってすげー』

 

 ユウヒがでんきだまの凄さに感心している。

 

「ほんとにすごいのはでんきだまがあるだけで簡単にできるようになるユウヒだよ」

『そ、そうか、なんか照れるな。そういう風に言われると』

 

 私が褒めるとユウヒは満更ではない様子を見せる。ふふふ、愛い奴め。

 

「じゃあ最後にしんそくとボルテッカーの同時使用にいってみようか」

『ああ、そういやメイはしんそくと他の技の同時使用にこだわっているな。なんでだ?』

「単純なことだよ。速さは様々な点において重要だから。敵の攻撃の回避から自分の攻撃の命中率から技の威力まで。速さは強さと言い換えてもいいかもね」

 

 私の持論にMはふ~んと興味なさげにしている。

 

『なるほど、そういう考え方もあるのか、わかった、やってみよう』

 

 ユウヒは納得した様子を見せてボルテッカーの準備に入る。今度はコツをつかんだのかすぐにボルテッカーを発動させる。そしてバヒュン、バヒュンとしんそくの速さで動きまわる。よっしゃ、上出来だ。

 

「ナイスだユウヒ! イエス! これは実戦でもいける!」

『やってみるものだな。まさかこれまでできるとは』

 

 ユウヒは自分で自分に驚いている。Mもほお~と息を吐く。少し興味が出てきたらしい。

 

「いや~でんきだまさまさまだね。ホントありがとうM」

「どういたしまして。それにしても技を組み合わせるとは。その発想はなかった」

 

 Mは私の思いつきに対してそう評価する。

 

「ふふん、幼いころからずっと温めていたことだからね。初めて成功したときは思わずガッツポーズしちゃったよ」

「ふうん、幼いころからね……頭、いいんだね。いや、頭がいいというよりは発想力があるといったところかな」

「そんなことないって。思い浮かんだのはこれくらいだし」

 

 ホントにそうなんだよな。ちなみに元の発想は前世から考えていたしんそくの優先度での技の発動である。だから今のところしんそくと他の技の組み合わせしかない。まあそのうちほかの技同士の組み合わせもためしてみようと思っている。どうなるかはわからないがな。

 

「さてもう夕暮れになっていることだしそろそろポケモンセンターに戻ろっか。戻ってユウヒ」

 

 そう言ってユウヒをモンスターボールに戻す。辺りはすでに夕日が照らしている状態だ。

 

「そうね、今日はもう休みましょう」

 

 そうして私たちはもう一度ヒウン下水道を抜けてポケモンセンターに戻ってくる。すると辺りはもう暗くなり月明かりや星が私たちを照らしていた。

 

「そういえば今日のバトルのあとユウヒとイヴを休ませてなかったな」

 

 そこで受付にいるジョーイさんにユウヒとイヴを預けて回復させた後、私とMは晩御飯を食べる。

 

「ねえ明日はどうするの? 何をする?」

 

 Mが訊いてくる。

 

「う~ん、明日はジムに挑戦しようかな。そういうMは何か見に行きたいとことかはあるの?」

 

 もうそろそろさすがにジムに挑戦しようと思う。たぶんいけるだろっと楽観視してみたり。

 

「特にないかな。ていうかバッジを集めてる時にめぼしいところは全部回ったつもりだし。基本的にメイの好きなところに行っていいよ」

 

 そういえばMはもうバッジ全部持ってるんだっけ。

 

「そう? ありがと。じゃあ私の好きなようにするね」

 

 素直にMの言葉に甘えることにする。

 

「そういえば、泊まる部屋だけど一緒にしてもいい?」

「いいけど、どうして?」

「私、誰かと一緒の部屋で寝たことないの。だからそういうのに憧れていて……」

 

 Mは頬を赤らめて言ってくる。くおお、かわいいなおい。こいつはやばいぜ。Mのかわいさは世界一ィィィィ! っと、ちょっと取り乱した。落ち着け私。

 

「オーケーオーケーよくわかった。一緒に寝よう」

「うん!」

 

 笑みを浮かべるM。うん、やはりかわいいな。だがしかし今日会ったばかりなのにここまで心を許してもいいものか? Mが私のことを不用心といったがMも十分不用心だと私は思う。襲っちゃうぞこれは……なんてことはできないが。

 そうして晩御飯を食べ終わり、私たちは泊まる部屋に来て、寝る準備をし、互いにお休みと言葉を交わしベッドに入る。ベッドは流石に別々だ。一緒のベッドで寝るとか普通に無理。

 

「ねえ、メイ。もう寝た?」

 

 Mは眠れないのか私に話しかけてくる。

 

「まだだよ。ふふっ、眠れないの?」

 

 Mの方を向いて返事をする。

 

「うん、なんだか興奮しちゃって」

 

 えへへと笑いながらMが言う。電気を消していて暗いからよく見えないがそう幻視した。

 

「じゃあなにかお話でもする?」

「うん」

「それじゃあね……」

 

 そうして初めての私たちの夜は更けていく。いよいよ明日はジム戦だ。心してかかろう。

 

 




ありがとうございました。

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