ポケットモンスター鳴   作:史縞慧深

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気付けば既に11話になっているんですね。
いつまで今のペースで投稿できるか……。
それではどうぞ。


11話 敵討ちと謎の美少女

「ふん、次はこうはいかないぞ。なにせこいつは私の持つポケモンの中で最強だからな。いけ、カイリュー!」

『カーイリュー!』

 

 カルチャはそう言ってオレンジ色の体をもつドラゴンポケモン、カイリューを繰り出す。

 

「戻って、イヴ。そして、ユウヒ! Start the Struggle!」

『よし、いこうか』

 

 私はイヴを戻しユウヒをバトルフィールドに出す。

 

「んん? なんだピカチュウか。ははっ、こいつは傑作だ。ピカチュウなんかでこのカイリューに勝とうというのか」

 

 周りも予想外の選出なのかざわつく。

 

「また珍しいポケモンを……」「またもやかわいい!」「でも大丈夫なの?」

「先制はこちらがもらうぞ! カイリュー! げきりんだ!」

『ぐおおお!』

 

 カイリューが赤いオーラを纏い、ユウヒに向かって突進してくる。

 

「ユウヒ、かげぶんしんで避けろ!」

『ふっ!』

 

 ユウヒは何十体にも分身してカイリューの突進をやり過ごす。何体かの分身が消えたがまだまだ分身は健在だ。

 

「ユウヒ! 分身で周りを囲んででんじは!」

『よっ、と』

 

 ユウヒはかげぶんしんで生み出した分身でカイリューの周りを囲みでんじはを放つ。

 

『ぐおおお!』

 

 カイリューはでんじはを喰らい、動きが鈍くなるが構わず赤いオーラを纏い突進を繰り出してくる。

 

「ユウヒ、こうそくいどうで躱せ!」

 

 ユウヒは迫りくるカイリューの突進を分身を用いて余裕をもって回避する。そしてこうそくいどうですばやさを上げていく。

 

「なにをしているんだカイリュー! そんな分身なんてぼうふうで吹き飛ばせ!」

 

 カルチャはカイリューに命令するが、カイリューはげきりんの最中なので命令を聞くことはなく赤いオーラを纏ったまま暴れ続ける。

 

「チャ~ンス、ユウヒ、さらにこうそくいどう!」

『ん、わかった』

 

 暴れるカイリューをしり目にさらにこうそくいどうを積む。するとげきりんの効果時間が切れてカイリューの赤いオーラが収まる。

 

「馬鹿野郎! 何をしている! とっととぼうふうをすればいいんだよ!」

『え、あう、おお!』

 

 げきりんの後は混乱してしまうのだが今回は運よくカイリューは自分を攻撃せずに激しい風が起こる。巻き起こる暴風によってユウヒのかげぶんしんは消えてしまうがユウヒ自身はカイリューの懐に潜り込みぼうふうをやり過ごす。

 

「ユウヒ、もういちどかげぶんしん!」

『おう、はっ!』

 

 ユウヒはまたかげぶんしんで多数の分身を生み出しカイリューの周りを囲む。

 

「またそれか! だがその作戦はもう通用しない! カイリュー! ぼうふうだ!」

『うう、あああ!』

 

 しかしカイリューは激しい風を起こすことなく自分で自分を痛めつける。

 

「! なぜだ! なにをしているカイリュー!」

「よし、ユウヒ! かみなり!」

『はあっ!』

 

 カイリューの周りを囲むユウヒたちから荒ぶる雷が放たれ、それがカイリューに向かう。

 

「! 避けろカイリュー!」

『ぐああ!』

 

 しかしカイリューはでんじはの影響でうまく動けずかみなりをくらってしまう。一応今のユウヒの最大火力のはずだがカイリューは耐えた。さすがに一撃とはいかないか。

 

「くそくそくそぉ! このグズカイリュー! なにをやっているんだ! ぼうふうだ!」

『うう……』

 

 しかしカイリューはさっきのでんじはの影響で体がしびれたのか動かない。

 

「これで終わり! ユウヒ! かみなり!」

『せいやっ!』

 

 再びのかみなりがカイリューにヒットしこの攻撃によってカイリューはズウンと倒れる。

 

「あああ! カイリュー! そんな、この僕が……僕のポケモンが!」

 

 カルチャはショックのあまりに膝をついて嘆いている。

 

「これでわかったでしょう。あんた自身は全く強くない。むしろ弱いことが。いままでポケモンたちの強さに頼りきっていたことが」

 

 私はカルチャにダメ押しの口撃を加える。

 

「だいたいあんたは無責任すぎるんだよ。ポケモンを捨てるにしてもちゃんと場所を選べ。ポケモンがきちんと野生に帰ることができるようにしろっての。あんたが捨てたポケモンは相当苦労していたぞ」

 

 論点がずれてきているが気にせずに続ける。

 

「は? なぜ君がそんなことを知っている?」

「ああ、そういや言ってなかったな。あんたがさっき戦ったイヴとユウヒ……エーフィとピカチュウはな元々あんたが持っていたポケモンだ。言っていたぞ。強いポケモンに興味が移って捨てられたってな。まったくひどい話だ」

 

 おっと今の発言じゃまるでポケモンに聞いたみたいだな。まあ気づいてないようだしいいか。

 

「なんだと!? じゃあそれは僕のポケモンじゃないか、早く返せ、今なら可愛がってやるぞ」

「だってさ、イヴ、出てこい」

 

 そうして私はイヴを出す。

 

「どうする? 今からでも元のご主人サマの下へ帰るか?」

 

 出てきたイヴとユウヒはそろって首を横に振る。

 

「だってさ。今からあんたの下に帰るのはいやだそうだ」

「くっ! なぜだ!? 可愛がってやるって言っているのに!」

 

 周りも冷めた目でカルチャを見つめている。

 

「それがわからないようじゃあんたはポケモントレーナー失格だよ」

「くそっ! なんなんだよ、お前も、周りの奴らも! そんな目で僕を見るな! 不愉快だ! 帰らせてもらう! そこにいるカイリューは好きにしろ!」

 

 そういってカルチャはカイリューの入っていたモンスターボールを地面にたたきつけて去っていく。カルチャが去っていくとドッと周りが歓声に沸く。

 

「すごーい!」「やるな!」「スカっとしたぜ!」「ね、ね、その子、ちょっと触らせてくれない?」

 

 イヴとユウヒはたくさんの人に囲まれ触られている。自慢ではないが幼いころからリオの毛づくろいをしてきたから腕にはちょっと自信がある。その甲斐あってか毛並みがうつくしいという称賛を受けた。

 このバトルカンパニーの人たちはカルチャの態度に辟易していたらしく、カルチャに一泡吹かせた私を皆が喜んで褒め称えた。

 

「いやあ、すごいな君は。今まで私たちでは手も足も出なかったのをこうもあっさりと倒してしまうとは」

 

 周りで私たちのバトルを見ていた人の一人が話しかけてくる。

 

「そうでもないですよ。綱渡り的な危うさもありましたから。運が良かったところもあります」

「それでもだ。それにしてもバトルがうまいな君は。ピカチュウと言えばかわいさが売りのポケモンであまり強いとは言えないのに奴のカイリューに勝っちまうんだからな」

 

 今回の戦法は相手が油断していたからこそ成り立っているから対策されるとあまり有効とは言えなくなる。

 

「褒めていただきありがとうございます。このバトルはイヴとユウヒの敵討ちのようなものでしたから、勝ててよかったです」

「ああ、そういや君のポケモンは元々あいつのポケモンだったんだね。あいつのところにいるよりよっぽどいいよ。カイリューもうちらの誰かに預けるとしよう」

「それがいいですね」

 

 会話もそこそこにして切り上げ、もみくちゃにされているイヴとユウヒを救出しボールに戻す。

 すると観客たちが辺りに散っていく中一人だけ未だに動きを見せない人がいた。よく見てみるとその人はライトグリーンのロングヘアに同じ色の瞳、整った顔立ち、ボンッキュッボンッを体現するスタイルのいい体躯、白いシャツにミニスカート、ニーハイソックスという格好のとびきりの美少女だった。

 私がその少女のことを見つめていると向こうも気付いたのかこちらに向かってくる。わわっ、やば、なんか美少女過ぎて緊張してきた。私が固まっているとあちらから話しかけてきた。

 

「あなた、強いね。それにポケモンたちからの信頼も厚い。いいトレーナー」

「ふぇ!? あ、うん、ありがとう、ございます?」

 

 いきなり褒められたからびっくりして敬語になってしまった。

 

「敬語じゃなくていい。見たところ年も近そうだし。私はM。ぴちぴちの15歳でーす」

 

 感情がこもっておらず抑揚のない口調で言われる。

 

「むう、今の笑うとこ」

 

 私が何も言えずに黙っていると、Mが拗ねた様子で言う。

 

「ぷ、あははは、ごめんごめん。私はメイ。ちなみに私は12歳。で、何か用?」

 

 私はMと名乗る謎の美少女に尋ねる。

 

「あなたからは不思議な力を感じる。それが何なのか知りたい」

 

 ふぁっ!? まさかの電波系!? いきなりそんなこと言われてもな……。もしかして波導の力のことかな。でもここは話をそらそう。

 

「え? 私に不思議な力? そんなのあるわけないじゃない」

 

 するとMは無表情のまま私に言う。

 

「隠しても無駄。私にはわかる。あなたは普通の人と少し違う。まあかくいう私も普通の人とは違うけれど」

「へえ、どう違うの?」

「私はポケモンと話ができる。ポケモンの言うことを理解できるの」

 

 ! そうかわかったぞ。この雰囲気にこの容姿、誰かに似ていると思ったらNだ。Nに似ているんだ。実際にNに会ったことはないけどきっとそうだ。この子、Nの関係者か何かか? そうして思考を巡らせているとMが話を進める。

 

「驚かないのね。ということはあなたは日常的にポケモンのいうことが理解できていると」

 

 ! しまった……まあ別にいいか、隠しているわけじゃないし。

 

「はあ、降参。確かに私はポケモンの言うことが理解できるよ」

 

 おとなしく降参し真実を話す。

 

「ということは私と同じなのね。ふふっ、仲間」

 

 Mは嬉しそうに笑う。その笑顔がなによりも可愛くて思わず抱きしめたくなるが今会ったばかりの人にそんなことをするとセクハラ以外の何物でもないので我慢する。ふわあ、それにしてもかわいいな。

 

「かわいい? どうもありがと」

「え? 声に出てた?」

「うん」

「ええっと、コホン。それで私に何の用だったの?」

 

 私は咳払いし、お茶を濁す。

 

「それはね、あなた、旅の途中だったりする?」

「確かに私は旅の途中だけど。もしかして旅についてきたいとか?」

 

 そう尋ねるとコクンと頷くM。私に対して上目遣いでうるうるした眼という黄金コンボを使ってくる。くっ、そんな純粋な目で見つめられると断れないじゃないか。

 

「はあ、わかったよ。一緒に旅でも何でもやろうじゃない」

「やった。ありがとう、メイ」

 

 満面の笑みを浮かべて抱きついてくるM。うおおい胸が当たってる胸が。くそ、私に対する当てつけか! そういう私も現在成長中で同年代の中では大きいほうだったんだが。ははっ、自慢だなこれは。

 

「はいはい、嬉しいのはわかったから離れて離れて」

 

 私はMを引き剥がす。

 

「それにしてもなんで私と旅をしたいと思ったの?」

「う~ん、なんとなくだけどメイといると楽しそうだから」

「ふーん、そう。まあ私も旅の道連れがほしかったとこだしちょうどよかったのかな」

「これからよろしく」

「こちらこそよろしく」

 

 そう言って私とMは握手をする。

 

「じゃあとりあえずポケモンセンターに行かない? いろいろ話したいこともあるし」

「わかった」

 

 そうして私達はポケモンセンターに移動した。

 

 




ありがとうございました。

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