「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
闇の書の全ページの蒐集完了と、はやての絶望が揃った時にそれは現れた。はやての足元から黒い泥水のような液体が懇々と沸き上がる。
「はやーーーーーーーー」
それははやてだけでなく、バインドで縛られていたスノウも飲み込んだ。スノウは泥水に飲まれる寸前にはやてを助けようとしたがバインドのせいでそれは叶わない。はやてとスノウを飲み込んだ泥水はどんどんと自らを圧縮させていきーーーーーーーー遂には人の形になった。雪のような銀髪に紅い瞳、法衣のような服を着た男がはやてとスノウの代わりにその場に立っていた。
「ーーーーーーーーくっ‥‥‥‥ハハハハハハハハ!!!!アッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!」
男は何度か手のひらを握ったり開いたりを繰り返して自分の体を確認すると狂ったように笑い出した。まるで必死に練ったイタズラが成功した時の子供のように。
「成功だ!!成功したぞ!!遥か彼方の未来の地!!私はここにいる!!私は存在している!!私は!!今を生きている!!」
男は端正な顔を歪ませながら狂ったように笑い、今ここにいることを喜んでいた。
「‥‥‥‥なんだあれは」
男の出現に疑問の声をあげたのは闇の書を完成させた仮面の男。彼の持つ情報が確かならば闇の書の完成と闇の書の主の絶望によって出現するのは管理人格のはずだった。それなのに此の場には管理人格であるスノウではなく、男が立っている。仮面の男が困惑するのも無理はなかった。
そして現れた男が仮面の男に気がつく。
「あぁ‥‥‥‥貴様が私を呼び出してくれたのか。よくやってくれた。感謝しよう」
「ーーーーーーーー!!」
突然男に語りかけられたことにより、仮面の男は警戒して身構える。そして男は聖人のような笑みを浮かべ、
「故に去ね」
「■■■■■■■■ッ!!」
「■■■■■■■■ッ!!」
「■■■■■■■■ッ!!」
「■■■■■■■■ッ!!」
「■■■■■■■■ッ!!」
「■■■■■■■■ッ!!」
「■■■■■■■■ッ!!」
「■■■■■■■■ッ!!」
「なぁーーーーーーーー!?」
獣と人が混じった影のような存在に仮面の男を襲わせた。それは過去に現れた化け物と同じ存在であった。突然四方八方から現れた化け物に仮面の男は対処することが出来ずに地面に叩き落とされる。そして新たに現れた化け物に群がられーーーーーーーー化け物が引いた跡には仮面しか残っていなかった。
「さて、これで邪魔者は消えたな」
仮面の男を食らった化け物の頭を撫でながら男はこれからの行動を思い描きーーーーーーーー
「ーーーーーーーーさせると思う?」
幼児の声と共に狙撃された。飛翔してきたのは一本の剣。しかしそれは王を選ぶとされた剣の原典。その剣は男の手を撫でていた化け物ごと蒸発させた。
「ぬ?‥‥‥‥ふむ」
男は蒸発した手を興味深そうに眺めた後、剣が飛翔してきた方角を見る。そこにあったのは空を行く黄金の飛行船。その飛行船には年端も行かぬ少年が敵意を持った目で男のことを見下していた。
「答えろ、お前は誰だ」
有無を言わさぬ視線を少年ーーーーーーーーギルは男に向ける。幼いながらにもその眼光は気の弱い者ならば失禁しながら気絶してもおかしく無いもので、気の強い者であっても身を強張らせるほどの鋭い物だった。しかしその眼光を前にしても男は興味深そうに眺めるだけ、態度を変える素振りを見せない。
「サーヴァント‥‥‥‥いや、受肉している?興味深い。いかにしてお前のような存在が出来たのか興味が尽きんな」
「答えろ、お前は誰だ」
男はギルの疑問に答えず、ギルも疑問の声を下げることはしない。そのまま睨み合いが続くかと思われたが、
「ーーーーーーーーッ!!」
その場にセイバーが現れたことによってそれは終わりを告げた。突然ヴィマーナを出してどこかに飛び去っていったギルの後をつけたセイバーが追い付いたのだった。この睨み合いの場に現れたセイバーはーーーーーーーー迷うことなく男に向かって突貫して行った。敵がギルであることなどはセイバー自身が理解している。しかしセイバーのスキルの【直感】が、ギルよりもあの男の方が危険であると警鐘を鳴らしていたのだ。そしてセイバーはその【直感】に従い男に斬りかかる。
「セイバーのサーヴァント、アーサー王だな?」
「ーーーーーーーー何!?」
セイバーの剣は男に当たることなく、直前に張られていた障壁によって防がれた。最も有名である聖剣の一撃を受けても男は片目をセイバーに向けるだけで大して疲労している様子を見せない。男にとってはセイバーの聖剣などはその程度の物なのだ。
「あぁ、丁度良い。セイバー、あれを殺せ」
障壁を押し斬ろうとしているセイバーに男は腕の袖を捲り、その腕に刻まれている
「な、なんでーーーーーーーー」
「面倒なことをしてくれる‥‥ッ!!」
セイバーの突貫をとっさにヴィマーナから飛び降りることでかわす。もし一瞬でも遅ければギルの首は胴から離れて宙を舞っていただろう。着地し、その場から飛び退くと同時にヴィマーナからセイバーがギルの着地した場所に降ってくる。ギルは宝物庫を開いて宝具を射出することでセイバーを制圧しようとするがセイバーの剣技によって宝具を弾かれる。
「殺せと命じたのだがな‥‥‥‥まぁいい、これであれの足止めは出来た。今の内に蓄えるとするか」
見限ったような目でセイバーを見るが少なくともこの場で男の邪魔をするような存在は居なくなった。それを良しとして、男は行動に移す。仮面の男が持っていた闇の書が男の手に現れ、とある術式が発動する。それは守護者たちの強制召集。闇の書の守護者たちか例え死にかけの状態であっても問答無用に呼び出す術式を使い、男は闇の書の騎士たちをこの場に呼び寄せた。
現れたのは息絶え絶えになりながらも意識を保っているシグナム、魔力を抜かれた際に意識を失ったのか気絶しているザフィーラ、シャマル、ヴィータの四人。指一本動かせないような虚脱感を味わいながらもシグナムは自分達を呼び出した男を睨み付けた。
「なに‥‥もの‥‥だ‥‥」
「烈火の将、守護獣、湖の騎士、鉄槌の騎士だな。返事はいらん。お前たちの役目は終わりだ。大人しく私の糧となれ」
男の言葉と共に化け物がシグナムたちに飛びかかった。
自分達に遅いかかろうとしている化け物の動きが今のシグナムにとって酷くスローに見えた。過去にもこんなことがあった。それはまだ時雨が存命していたときの話だ。時雨が死んでしまい、シグナムたちを助けられる者が居ない現在ではシグナムたちの死は避けられないだろう。
それでも
例え避けようのない死だとしても
シグナムは死ぬつもりはなかった
ザフィーラをシャマルをヴィータを死なせるつもりはなかった
だって時雨と約束したのだから
生きてほしいと願われたのだから
だから死にたいのに生きている
死んでしまいたいのに生きている
矛盾した二つの願い
故に、シグナムからこの言葉が出てきたのは必然であった
「ーーーーーーーー助けて、時雨‥‥‥‥ッ!!」
「ーーーーーーーー何?」
男から疑問の声があがった。それはそうだろう、男にとって目の前の光景が信じられない物だったから。男の指示によって化け物にシグナムたちは成す術なく殺されて、男の糧となる。それが男の思い描いておたシグナムたちの結末だった。しかし、どうだ?
「■■■■■■■■ッ!!」
「■■■■■■■■ッ!!」
「■■■■■■■■ッ!!」
「■■■■■■■■ッ!!」
「■■■■■■■■ッ!!」
「■■■■■■■■ッ!!」
「■■■■■■■■ッ!!」
地面から発生した
「魔術師か?魔導師か?それとも他のサーヴァントか?」
男は知覚できる範囲を広げる。しかし捉えられたのはこちらに近づいてくるいくつかの反応のみ。男、ギル、セイバー、シグナム、ザフィーラ、シャマル、ヴィータを除いてこの場に干渉できそうな存在は見られなかった。
そ《・》う、《・》こ《・》の《・》世《・》に《・》お《・》い《・》て《・》は《・》
蒼炎が走る。
地面を焼き、印を着ける。
その印はーーーーーーーーサーヴァントを呼び出すための魔法陣と同じだった。
『いざ進め!!我が
『甘粕、そうではないだろう?全てを愛し、全てを壊せ。破壊こそが愛なのだ』
『ふっ、耄碌したのか獣殿。この世全ては彼の為の演出装置に過ぎぬ。さぁ、
『‥‥‥‥』
『‥‥‥‥』
『‥‥‥‥』
『ツァーリボンバァァァァァァァ!!!!!!!』
『Dies iraeーーーーーーーー!!!!!!!』
『Acta est Fabulaーーーーーーーー!!!!!!!』
どこからともなく声が響き、そして争いあっているような気配を見せる。何となくだが地球規模、下手をすれば宇宙規模レベルでの争いになりそうな‥‥‥‥
『辞めんか!!阿呆んだら共がぁ!!!!!!!』
『『『グハッ!!!!!!!』』』
新たな乱入者の声と共に争いが止んだ気配がする。どうやら乱入者の活躍で争いは止められた様だ。ありがとう。
『ったく‥‥‥‥自分が詠唱したいからってガチバトルやるとかふざけ過ぎだろうが‥‥‥‥下手したらこの宇宙消えるぞ』
『なら折衷案で私がしよう』
『どこをどう折衷したのかは知らんが任せた』
『『『ピースマン!!貴様ぁ!!!!!!!』』』
そこで聞こえていた会話は止まった。そしてしばらく間をおいてから魔法陣が輝く。
『さぁ行きたまえ、君が守りたいと願った者らのところへ』
『我が息子よ!!貴様の内なる魂の輝きを見せてくれ!!』
『卿の愛、余さず見届けさせて貰うぞ。私を楽しませてくれ』
『この二流止まりの舞台での君の演技、参考にさせてもらうよ』
四者四様の
肩にかけられたマントと帽子には
マントの下から覗いているのは旧日本軍の軍服
腰に下げられたのは一本の日本刀
そしてどこまでも人を馬鹿にするような笑みを浮かべながら告げた
「
さぁ諸君、この俺の凱旋である
諸手を挙げて歓迎しろ
」
【死神】八神時雨の再臨である。