~前話の裏話~
リニス「ところで時雨、ザフィーラの裸はどうでしたか?」
時雨「・・・ノーコメントで」
シャマル「これは・・・!?間違いなく時雨さんはザフィーラのことを意識している!!ザフィーラ!!今度はお風呂場に乱入するわよ!!もちろん全裸で!!」
シグナム「シャマル、死にたいのか?」
シャマル「あらシグナム、烈火の将ともあろう御方が嫉妬かしら?安心しなさい、もちろんシグナム用の時雨さん攻略ルートも考えてあるから!!」
シグナム「なっ!?」←赤面
時雨「ヴィータ」
ヴィータ「うん、轟天!!爆砕!!」
シャマル「あちょ!!ヴィータちゃん!!流石に!流石にギガントは不味いと思うの!!いくらご褒美でもそれはやりs」プチッ
風邪を引いてから約一週間、体力的にも体調的にも完全完治した俺は海鳴市にある豪邸、月村邸を訪れていた。今日はこの月村邸の主、月村忍に呼ばれたから訪れたのである。
「しーのーぶーん!!あっそびましょー!!」
「はぁーい!!」
俺の玄関からの呼び掛けに返事をした女性が二階から窓を開けてジャンプ、そして何事も無かったかのように着地して俺に近づいてくる。
「恭也弄りは?」
「蜜の味」
彼女からの躊躇いのない返事を聞き、拳をぶつけ合わせてからがっしりと握手をする。彼女こそが月村邸の主、月村忍である。忍は恭也の恋人兼婚約者、そして恭也弄りに対して気の会うやつは忍をおいて他にはいない。ジャイアン風に言うなら心の友、まさしく心友だ。
「恭也は?」
「先に来ていつもの部屋にいるわよ。時雨の声がしたらビクッて反応してたけど」
「その声に反応して二階から飛び出した忍さんマジ忍さん」
そこまでやり取りをすると忍が敷地内入り口の方へと向かった。その意図を察知して忍が飛び出した窓の真下に手を組んで中腰の姿勢でセットする。それを見た忍は全力のダッシュで俺の方に向かい直前で小さくジャンプ、組んだ手に足が乗せられるのを確認し、それを思いっきり振り上げると軽やかに忍は跳躍、二階の窓から部屋に戻った。そして俺はその場で膝を曲げてジャンプ、窓の縁を手で掴み筋力だけで強引に体を持ち上げで部屋の中に入った。
「お邪魔ー。よう恭也、おひさー」
「・・・もう少しまともに来ることは出来ないのか?」
「出来なくもないけど面白味にかけるから却下で」
「ヲィ・・・・・・」
部屋の中には俺の登場シーンに頭を抱える常識人こと高町恭也の姿があった。テーブルの上に乗せられているカップから二人でお茶をしていたことがうかがえる。椅子が二脚しかなかったので身近にあった椅子を引きずりながらセット、そこに座る。
「で、今日はどの恭也写真が欲しいわけ?」
「鍛練中のでお願いするわ」
「ちょっと待て!!その恭也写真ってなんだ!!」
「名前の通りに恭也の写真ですが?因みに値段のアベレージは一枚1000円辺り」
「時雨ぇぇぇぇぇえ!!!」
「ヤベッ!!恭也がキレた!!」
さっきまで無手だった筈なのに何処からか日本刀を持ち出した恭也に椅子を投げつけてその隙に部屋から脱出する。
「待てぇぇぇぇぇえ!!!」
そして俺を追いかけて部屋から出ていく恭也を俺は部屋の中から見ていた。俺のしたことは簡単なことで恭也に俺が部屋から出ていくという幻術にかけたのだ。平常心ならば恭也にはかからないのだがその前に写真で心を乱していたのであっさりとかかってくれた。
「相変わらず鮮やかな手付きね」
「はぁ、面倒だからあいつを呼ぶなよ。で、本当の用件は?」
紅茶を啜りながら忍の方を見る。今日は忍が魔術師としての俺に用があると言われたからここに来たのだ。そうでなければ今ごろ家ではやて、ヴィータ、ザフィーラの面子で友情崩壊ゲームに勤しんでいたのに。
「ごめんなさいね、ところで時雨は氷室叔父様を覚えているかしら?」
「あぁ、あのホスト風なイケメンさんだっけ?覚えてるよ」
氷室叔父様というのは忍の父親の兄だか弟だかに当たる人で俺が会ったのは二三度だがイイ人だったことは覚えている。たしか旅行が好きで世界中を巡っているとかなんとか。
「その氷室叔父様がね北欧で変わったものを見つけたといってそれを送ってきたのよ。それを魔術師の貴方に見てもらいたくて」
「あーはいはい、曰く付きの物ならヤバイからな~。それはどんな物よ?」
「見たところは綺麗な鞘なんだけど」
「鞘?ぶふぉ!?」
忍が布から取り出した物を見て紅茶を吹き出した俺は悪くない。それは汚れが一切見られない青と金の装飾が施された納めるべき剣のない鞘。俺の記憶にある物と同じならばそれはーーーーー
「おまっ!!それエクスカリバーの鞘じゃねえか!!」
そう、その鞘はエクスカリバーの鞘であるはずの
「エクスカリバーって、あのアーサー王の持っていた剣の?」
「そうそのエクスカリバー。名前は
にしてもなんでこれがこの世界にあるんだよ。これってたしか型月の世界の衛宮士郎が持ってる筈じゃないか?魔術師って存在があるからこれがあるのか?もしかしてこの世界って型月の世界とごっちゃになった世界なのか?
「ところでこれはどうするよ?」
「貴方がよければだけど時雨に譲るつもりよ」
「・・・・・・マジで?」
「大マジよ。私が持っていても使えないみたいだし、それならこれを使える人が持っていた方が良いと思うのよ」
「それなら貰うけど」
鞘を手に持ってみる。金属特有のひんやりとした感触はあるが風化した痕跡は一切見られない。貴家はエクスカリバーの鞘、これ自体が一種の概念武装と言われるだけのことはある。そう言えばzeroではアインツベルンが探していたっけな・・・・・・それを一個人で見つけるなんて・・・・・・(泣笑)
「用がすんだなら恭也に見つかる前に帰るわ・・・・・・っと?」
「どうしたの?」
「・・・魔力反応、異常にでかいのが一つと小さいのが六つ。場所からしてここの庭だな」
以前忍に頼まれて仕掛けておいたこの家の探査魔術に引っ掛かる七つの反応。でかいのはたぶんジュエルシードの反応として他のはそれを取りに来た奴等か?でも感覚からして戦闘をしていると思える。これから仲間通しではなく敵対している関係・・・・・・一枚岩じゃないのか?
「戦闘しているのかしら?庭が荒れるからやめてほしいのだけど」
「あーたぶん結界張ってるから大丈夫だろうよ。んじゃ、仲裁にいって帰るわ」
そう言って懐からリニスから返してもらっていた
「あら不忍さん、いえ右門左衛門といった方が良いかしら?」
「好きに呼んでくれや」
「どうせならキャラ作りもしときなさいよ」
「・・・
「ナイス右門左衛門」
俺の反応に満足したのかサムズアップしてくる忍に同じくサムズアップで返して窓から飛び出して魔力の反応があった場所へと向かう。この間砲撃かましてくれたやつがいるのなら・・・・・・発剄のワンパンで勘弁してやろう。
場所は変わり、月村邸庭園の結界内。そこでは六人の魔導師達による戦闘が行われていて、魔導師達が求めるジュエルシードを持った巨大なぬこ・・・・・・訂正、ネコが不安げな様子でそれを見ていた。
「シュート!!」
「レイジングハート!!」
『プロテクション』
一組目は茶髪のツインテールの少女高町なのはと金髪スク水少女による戦闘。金髪スク水少女は執拗なまでにネコを狙っているがそれをなのはは障壁で防いでいる。
「大人しくジュエルシードを渡せ!!」
「嫌だ!!」
二組目は大型の狼と愛玩動物と化しているユーノ・スクライアによる戦闘。体格からすれば狼の方が圧倒的に有利なのに対してユーノは緑色の拘束魔法を駆使することでほぼ互角に戦っている。特殊な性癖な人からすれば縛るのが好きな危ない人にしか見えないだろう。
『縛るのが好きですって!?なら私を縛りn(作者権限によりこの発言は
「フェイトにジュエルシードを持っていかせるんだ!!」
「原作厨が!!ふざけたことを言ってるんじゃねぇよ!!」
三組目はアリスと神吾による転生者通しの戦闘。元々なのはにジュエルシードの封印をさせるつもりだったアリスだったがそこへ神吾が原作通りにフェイトに回収させるために乱入。アリスは剣を模した、神吾は杖を模したデバイスをぶつけ合っての戦闘になっている。
お互いがお互いの戦闘に集中していた。だから、と言うべきなのだろうか。そこに静かに現れた侵入者に誰も気が付かなかった。唯一気が付いたのはジュエルシードを取り込んで巨大化したネコだけ。
静かだがはっきりと透き通った詠唱に戦闘を中断し魔導師達は声の発生源に目を向ける。そこはそこはなんのへんてつもない木々の生い茂る場所、その木々の影から六羽の鳥が現れた。鳥かと思い警戒を解こうとするがその鳥たちが近づくにつれて魔導師達は硬直した。
それは鳥ではなく、一瞥した程度では鳥かと見間違えるほどに鳥を模した精巧な針金細工だった。その針金細工たちはまるで本物の鳥であるかのごとく空を舞い、それぞれが魔導師達の元へと向かった。
「なにこれ!?」
「敵っ!?」
「これは!?」
「邪魔だよ!!」
「はぁっ!!」
「マジかよ!?」
混乱してその場を動けなかったのが一名、防ごうと障壁を張ったのが一名、鳥を迎撃しようと攻撃を仕掛けたのが二名、己の直感と知識を信じてその場を飛び退いたのが二名、ここでの軍配はその場を飛び退いたフェイトとアリスに上がった。残り四名の元に向かった鳥は目標としていた人物の目の前まで来ると形を崩して体に巻き付き拘束した。
突然拘束されたことに慌てる四人だったが逃れたフェイトとアリスはそれに反応できる余裕はなかった。さっきの声が術者の物だとすれば間違いなくこの近くにその人物はいる。だから二人は反応せずに警戒を続けた。やがて目的を果たせなかった二羽の鳥は現れたときと同じように木々の影へと帰っていく。そしてその木の影から一人の人間が姿を現した。
「ーーーーーっ」
「ーーーーーっ」
その人間の姿を見た瞬間二人は警戒のレベルを最上級にまで引き上げた。一瞥した限りでは不忍と書かれた仮面で顔半分を隠して黒のコートで身を包んだ性別も不明な人間。それだけでも警戒するには十分なのだがその人間の存在があまりにも希薄すぎた。目の前に立っているというのにまるで風景の一部であるのではないかと見間違えてしまうほどの気配の薄さ。本能的に敵だと認識した二人は思わず体を強ばらせる。
「・・・あんた、何者だ」
「
「・・・ジュエルシードが目的ですか」
「
「ならもう一つ、あんたは俺たちの敵か」
「
最低限の言葉だけで答えたーーーーー声から判断するに男性ーーーーー彼は堂々とフェイトとアリスを横切ってネコの元に向かう。
「封印術式展開」
短く呟き陣を展開、弱い光が消えた後に残っていたのは気絶した子猫と蒼い宝石だった。その内の宝石だけを懐にしまい男は二人の方向に振り替える。アリスは見たところ警戒はしているが敵意はなかった。それもそのはず彼の目的はあくまで危険物であるジュエルシードの封印だけで誰がどんな手段で封印しようがそれが取り除かれるのであればどうでもよかったからだ。
しかしフェイトは違う。彼女の目的はジュエルシードその物。例え誰が封印しようがジュエルシードを持ち帰らなければ意味がないのだ。だからフェイトは愛用デバイスであるバルディッシュを男に向ける。
「ジュエルシードを渡してください」
「
「私の母が管理をします」
「それでもだ」
「そうですか・・・なら!!」
残像を残しながら加速して一気に男の背後をとる。男からしてみれば突然消えたように見えるだろう、実際男は背後にいるフェイトに反応していない。
「(とった!!)」
己の勝利を確信してバルディッシュを降り下ろす。狙う場所は後頭部、ここを強打して意識を奪い取るーーーーー
「えっ?」
振り抜いたバルディッシュから伝わるのは空を切る感触のみ。避けられたと認識すると同時に頭を手で鷲掴みにされる。逃げようとバルディッシュを振るおうとしたが空いていた手でバルディッシュを掴んでいる手ごと握られてそれも叶わない。
「・・・眠れ」
「あっ・・・」
囁くような男の一言でフェイトは睡魔に襲われて意識をなくす。それと同時にスク水だった格好が普通の私服姿に変わった。
「フェイト!!」
縛られている狼が主の名を叫びながら牙を男に向ける。狼にとっての最優先事項はジュエルシードの確保ではなく主であるフェイトを守ること。そのためなら自分の身など省みずどんな不利な状況であってもーーーーー
「ほら」
「へっ?」
狼が呆気にとられたような声を出したもの無理はない。男は意識を無くしたフェイトを狼の前に優しく寝かせ、拘束していた針金を取り除いたのだから。
「・・・・・・なんのつもりだい?」
「何を勘違いしているかは知らないが私の目的はあくまで危険物の回収のみだ。この娘に危害を加えるつもりはない」
「でも現にフェイトを気絶させたじゃないか!!」
「これはただ眠らせただけにすぎない。そしてお前、主のことを思うのなら体調管理をさせろ。目に隈が出来ていることから寝不足であることが推定される。このままではいつか体を壊すやもしれぬぞ」
「・・・あたしたちを残しておくとジュエルシード回収の障害になるとは考えないのかい?」
「それこそがそもそもの間違いだ。私は偶然そこにあった危険物を回収しているに過ぎない。これその物を集めることが目的では無いのだ。故に私のいない場所でこれが何をしても私は手を出すつもりはない」
「・・・・・・ありがとうよ」
「
狼は器用にフェイトを背中に乗せるとその場から走り去っていった。そしてそれを見届けた男も音もなくその場から姿を消した。残されたのは拘束された二人と一匹、そして現れた男について思考を巡らせるアリスだけだった。
「これを集めているのは四人と二匹、あとはフェイトって名前くらいか」
不忍の面を外しながら月村邸の塀にもたれ掛かるのは八神時雨。彼は自身の回収した宝石を巡る敵対関係について頭の中で整理していた。
「(恐らく三人とフェレット対フェイトと狼ってところか・・・・・・数のうちでは不利な状況でフェイト陣営がどう立ち回るのか気になるところだが)」
「■■■■■■■■■■■■■!!!」
「今はバーサーカー化した恭也から逃げることが先決だな」
月村邸の中で雄叫びを上げながらいない自分を探しているであろう恭也を想像してクスクスと笑いながら時雨は軽い足取りで月村邸を後にした。
・・・・・・気がついたらアヴァロンが出ていたり時雨が右衛門左衛門化したりしていたが後悔はない。