ここから新章へ。A's編はまだ終わっていませんがここから先はオリジナルの展開で別の物語になるので章を変えます。
・・・・・・タグに【オリジナル展開】【Diesirea】【HELLSING】を入れた方が良いですかねぇ?
Ⅰ 変わってしまった日常
めがさめた。
くーくー、おなかがすいた。
なにかをたべなきゃ。
くーくー、くーくー、おなかがすいた。
いた。もりのなかに
にげられないようにしなきゃ。
にげられた。
おいかけよう。
みつけた。
でもひとつだけ。
あぁ、もうそれでいい。
くーくー、おなかがすいて、げんかいなんだ。
ようやく
いただきます。
ぱっくん、もぐもぐ。
あぁおいしい。
おなかがふくれた。
でも、どうしてだろう?
おなかがふくれたのに、むねのあたりがしくしくする。
しくしくしくしく、きもちわるい、ふかかいだ。
すっきりした。
「ーーーーーーハッ!?」
目を覚ます。さっきまでの光景が夢だと理解するが理解してもあの夢が現実であったことのようにしか思えない。もしそうならーーーーーー私はーーーーーー彼をーーーーーー
「ウグッ!!」
夢の光景を思い出してしまい、込み上げてくるのは猛烈な吐き気。思わず吐いてしまいそうになるがここにははやてとヴィータが寝ていることを思い出して口を押さえながら部屋から飛び出し、洗面台にへと向かう。そして吐いた。出てくる物は液体ばかりで固形の物は見られない、それでも吐き続けた。胃の中が空っぽになっても胃液を吐き続けて、出す物が無くなるまで吐き続けた。
「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・クソッ」
思わず言葉が荒くなるが構わない。どうせこの家には私と寝ているはやてとヴィータ以外には誰もいないのだから。昨夜はシグナムたちが暴走し、それを静めるために時雨は出ていった。二人に説明するのは少し骨が折れたが二人のためならどうってことはない。
あぁ、早く時雨に会いたい。彼の顔を見てさっきの夢が嘘だと証明してほしい。そうして安心したところで見た夢のことを話せばきっと彼は『何を馬鹿な夢を見てるんだ』と言って笑ってくれるに違いない。それで私はようやくあれはただの夢であったと安心できる。
まだ日が昇りきっておらずに薄暗い部屋の中でソファーに腰を掛ける。まだ起きるには早い時間帯だがこの気分では二度寝をする気にもなれない。それならば起きていた方がまだましだ。
そんなとき、部屋に置かれている固定電話に着信があった。はやてとヴィータは今だ眠っており、出ることが出来るのは自分だけだ。
「はい」
『その声は・・・・・・リインフォース・スノウか』
スピーカーの向こうから聞こえてきたのは低く、貫禄のある声。コトミネ・キレイソン。時雨の友人で、はやてがおじさんと呼んで慕っている人物だ。
「コトミネか?どうしたんだ?」
『はやてたちは起きているか?』
「いいや、まだ眠っている。用があるなら起こすが」
『起こすな、その方が都合が良い・・・・・・落ち着いて聞け、時雨がーーーーーーーーーーーー』
コトミネの後に続く言葉を聞いた瞬間、見た夢のことなど頭の中から吹き飛び、寝間着姿のままで外へと飛び出した。
「ーーーーーーあっ」
意識が覚醒する。どうやら私は眠ってしまっていたようだ。開いた視界に入ってくるのは石造りの見知らぬ天井、装飾品などが見られない飾りっ気の無い部屋だった。
「ここ、は、」
「ーーーーーー起きましたね、シグナム」
私の疑問に答えてくれたのは桶とタオルを持って部屋に入ってきたリニスだった。あの戦いの時には伸びていた髪はいつもの長さに戻っている。
「ここはコトミネの管理している家です。ここならすぐに見つかるということはないはずです」
「リニス・・・・・・何があったんだ・・・・・・それに、この腕は・・・・・・」
そう言いながら自分の体を確認する。服は治療の為か脱がされていて、包帯で胸だけを隠されている。そしてなくなったはずの右腕は健在で肩口から手の甲にかけてまで赤い布で覆われていた。あの突然現れた【影】の攻撃によってとっさに切り落としたはずの右腕、しかしそれは私の腕ではない。左腕とは長さが違うし、骨格や肉付きは女の物ではなく男の物だった。
「その腕は・・・・・・時雨の腕です。出血と魔力の放出を止めるために時雨は自分の腕を切り落として貴女に移植しました。その赤い布はーーーーーー」
「死にたくなければ外さないことだ」
「コトミネ」
リニスの言葉を遮りながら部屋にやって来たのはカソック衣装に身を包んだ神父、時雨の友人のコトミネ・キレイソンだった。
「それは・・・・・・」
「その布は、いわば封印だ。その腕は英霊とも互角に渡り合える時雨の物。一度その布を外せば時雨のすべてを使うことができるだろう。しかしそれをするとその腕の魔術回路がお前に侵食する。それは肉体だけではととまらず、精神や記憶まで侵食するだろう。だからこその封印だ。その布を巻いていれば侵食されることはない。だが一度でもその布を外してしまえば時限爆弾と同じだ。止まることなく、いつか爆発する」
「そんな・・・・・・そうだ!!時雨は!?」
「落ち着け。今から現状を確認する。支度が出来たら客間に来い」
それだけを言ってコトミネは部屋から出ていった。表面上はあまり変わりの無いように見えるが、どこか焦っているようにも見える。
「動けますか?動けないならこの部屋に通信を送りますが」
「イヤいい、下手に魔法を使えば管理局にこの場所がバレてしまう。それに動けない程でもない」
若干の痺れの残っている体をベットから下ろして、リニスから渡された上着を羽織る。上着の袖を通す際に気付いたが、移植された腕は動かすのには問題はない、戦えるかどうかを聞かれれば不安だが日常生活を送るには問題ないだろう。
そのままリニスに案内されて辿り着いた先は広い部屋だった。姿見や柱時計、ソファー机その他の家具が置かれているが物寂しさは無くなっていない。その部屋の中にはザフィーラ、シャマル、スノウ、大人になっているギルガメッシュ、コトミネ、御門、ワラキア、それと知らない人間がいた。
「来たな。それではまず簡潔に紹介と行こう。彼らは時雨の友人たちだ」
「はじめまして、七夜信喜だ」
「高町恭也だ」
「荒耶宗蓮」
「バゼット・マクミランです」
「キャスターよ」
「ランサーだ」
「警戒せずとも彼らはこちら側だ。それでは現状の確認といこう。各々楽にしてくれ」
「シグナムは座ってください。まだ辛いでしょう」
「あぁ・・・・・・すまない」
リニスに促されて座り、コトミネが進行役を努めて現状の確認が始まる。私自身現状を知りたかったし、あの夜は色んなことが有りすぎた。だからこの場はありがたい。
「あの夜、シグナム、ザフィーラ、シャマル、リニス、御門、そしてこの場にいないシュテル、レヴィ、ディアーチェの計八名が時空管理局という組織と魔術師たちに勝負を挑んだな」
「あぁ、それは我々の独断だったが後に時雨殿から好きに戦えと許可を貰った」
「そして戦闘が始まり・・・・・・シグナム、ザフィーラ、シャマル、リニスがギルガメッシュの宝具らしき物に襲われた」
「あれは間違いなく
「あれは俺が盗られた物で間違いありません」
「それを庇うように時雨が間に入り、瀕死になり、そこへ我々が乱入した。その後シグナムたちと復帰した時雨により盤面は優位になったが・・・・・・」
「そこに、あの化け物たちと【影】が現れた」
「あれは何だったんだ?どうしてあの場で現れたんだ?」
そう、結局のところそれに行き着く。あの化け物と【影】の正体、そしてあのタイミングで乱入した目的がわからないのだ。我々の手助けに来た?いや、それだったらこちらまで攻撃してくるのはおかしい。同様の理由で管理局の手助けも無い。ただ散歩に出掛けるような気軽さであそこに現れて居たからという理由で攻撃してきたようにしか思えない。
「あれに似たようなヤツなら見たことあるぜ?」
「奇遇だなランサー、俺もだ」
「ランサー、恭也、知っているのか?」
「昔戦場でな。人が沢山死ぬような場所じゃあああいうのが出てきやすいんだよ。もっとも俺も興味無かったし、手を出さなきゃなにもしないから無視してたけどな」
「俺の知り合いに退魔師っていう幽霊とか妖怪とかを相手にするやつがいてな、暇潰しにそいつの仕事に着いていったらあれみたいなのがいた気がする。だけど昨日のあれは俺の知ってるやつよりも何倍もヤバかったがな」
「結局分からないというわけか・・・・・・一先ず対処法はあれに会ったら逃げる、もし対峙したとしても二人以上で対処といったところだな」
コトミネの提案に誰も否を唱えない。
「さて、次に時雨のことだが・・・・・・シャマル」
「・・・・・・残念ながら私の探査には反応は無いわ。正直言って行方どころか生死まで不明なんだけどーーーーーー」
「時雨は生きています、絶対に」
シャマルの意見はもっともだった。あれほどの傷を受けてさらに私に腕を移植している。それで行方不明とくれば死亡扱いされてもおかしくはない。しかしリニスは時雨はまだ生きていると断言した。その顔は生きていてほしいという希望的な物ではなく、間違いなく生きていると確信している物だった。
「何故そう言いきれる?普通なら死んでいてもおかしくはないと思うのだが」
「私が証拠です。私は時雨の使い魔、時雨が死んでいるなら魔力の供給が無くなり、私は消えてしまいます。でも、まだ私は生きている。それに時雨からの魔力の供給も感じられます。つまりーーーーーー」
「まだ時雨は生きている、ということだな」
「その通りです・・・・・・それに、コトミネも時雨が死んでいるだなんて思ってませんよね?」
「よくわかったな。まぁそれは私だけではなく、時雨と親しい者ならば誰もが思っている事だとは思うがな」
「確かに」
「まったくだ」
「えぇそうね」
「違いない」
「言えてる」
「そうだな」
コトミネの言葉に私だけではなくザフィーラもシャマルもギルガメッシュも、そして七夜と高町も頷いた。
「何故そう言いきれるのですか?遠目でしたがあれほどの傷ならば死んでいてもおかしくはないと思いますが」
断定できる私たちを不思議に思ったのかバゼットがそう聞いてきた。時雨のことを知らない人間からしてみればその疑問は妥当だろう。しかし彼のことを知っている人間からしてみればその疑問は間違った物にしかならない。何故ならーーーーーー
「「「「「「「「時雨(彼)(あいつ)(ヤツ)が死んでいるなんて(など)想像出来ない(出来ないですから)(出来ぬ)」」」」」」」」
そう、時雨のことをよく知る人間からしてみれば彼が死んでいるなど想像出来ないのだ。どんな地獄のような状況下であろうともそこから帰ってきて何事も無かったかのようにこちらを向いて笑ってくる。それを私たちは知っているから。それだけのことでと切り捨てられるかもしれないが私たちからしてみればそれだけのことで十分なのだ。
「ーーーーーー信頼されてますね、彼は」
「でなければ己の立場を擲ってまでも協力しようとは考えんよ。そしてこれからなのだが・・・・・・二手に別れたいと思う。はやての護衛と時雨の捜索にだ。時雨の捜索は別世界だと思われることから魔導師であるリニスたちに任せたいと思う」
「もちろんです。草の根掻き分けてでも探して見せますよ」
「待てリニス、私も行くぞ」
そもそも時雨が行方不明になった原因は私にもあるのだ。だから私も彼を探す。探さなくてどうするのだ。
「シグナム、貴女は腕を無くしたんですよ?時雨から腕を移植されたとは言っても以前のように戦えるとはーーーーーー」
「三日だ、三日でこの腕を以前と同じように使えるようにしてみせる。それでどうだ」
リニスがこちらを心配そうに見ている。彼女の気持ちは理解できる。時雨を探すために無茶をして、時雨が帰ってきた時に悲しむことを考えているのだろう。だけどこれだけは譲れないのだ。彼の騎士になると決めた。だから彼を悲しませることになったとしても彼を救う。その後に叱られるかもしれないがそれならば甘んじて受けようではないか。
「・・・・・・はぁ、わかりました三日待って判断します。使えないと思ったらここにいる全員で押さえ付けてでも止めますからね」
「感謝する」
リニスが折れてくれた。これで私も時雨の捜索に向かうことができる。その為にまずこの腕を以前と同じように使えるようにならなくては。
そうして決意を固めた時に、猛烈な睡魔が襲ってきた。それはそうだ、戦闘して腕を切り落とし、魘されるように起きたところにこの会議、体力が回復しきっていない為に体が休憩を求めているのだ。
時雨の腕に慣れる為には体を動かさなくてはならない。しかしそうするには体力が必要となる。だから私はやって来たの睡魔に抗うことなく眠りに着くことを決めた。
時雨いくえふめいの案件によりこの章からはシグナム視点をメインで送りたいと思います。
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