エーテルライトから得た情報はシグナムが、ザフィーラが、シャマルが、リニスが、シュテルが、レヴィが、ディアーチェが、御門君が英霊のカードを使い俺の為に戦っていること・・・・・・あぁ、泣きそうだ。起きたら絶対に泣いてしまうだろう。俺なんかのために傷つくことを厭わないみんなの行為が嬉しくない訳がないのだから。
『・・・・・・!!
待て、待て待て待て。今なんと言った?
殺す
ー筋肉、血管、神経に重大な破損あり
殺す
ーエーテルライト使用
殺す
ー筋肉、血管、神経の縫合開始
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すーーーーーー
ー処置完了
遮断していた感覚すべてを取り戻す。突然飛び込んできた外界からの情報の量に反射的に体が拒絶を示すがそれらを意思の力で捩じ伏せる。
あの偽善者共の集まりがここにいるのだ
あの屑共の寄せ集めがここにいるのだ
俺が母を殺す原因となった害虫共がここにいるのだ
治療をしていたであろうコトミネや、周囲の警戒をしていたであろうギル、恭也、信喜、バゼット、ランサー、見知らぬ少女がいるがそんなことに構ってなどいられない。
「ーーーーーー殺す」
込める意思は殺意だけ。
いつの間にか都市部から城の上にへと変わっているがそんなことは気にもならない。夜の森の中で一際強い光を放っている場所、そこに目掛けて俺は駆け出した。
「ーーーーーーこれはどうしたものか」
ワラキアが展開した【空想具現化】内にある広場でシグナムは呟いた。突然訳の分からないことをいって青年と呼べるような肉体に成長した相井神悟ーーーーーーまぁこれは御門が同じようなことができるから大した同様にはならない。問題は神悟が光速での移動をしていることだ。光速、それは地上で確認出来るなかで最も速い速度、僅か一秒で地球を何度も周回できるほどの速さ。その速さは視認することを許さず、下手をすれば知覚することすら出来ない圧倒的な物。英霊たちの誰かか、シグナムたち、もしくは時雨がその速さを手にしていたらその事態は起きていただろう。しかしその速さを持った神悟は何を考えているのか馬鹿正直にこちらの前からやって来て、そして光速の速さを一々緩めて攻撃してくる。事前の動作の大きさやこうしたなめているようにしか思えない行動が多いためにシグナムたちには被害は一切出ていない。しかしそれでも光速は厄介だ。なにせやって来るのが光速なら去っていくのも光速。攻撃は受けていないが攻撃することも出来ていないという奇妙な現状だった。
シグナムは神悟の攻撃を避けながら打開策を練る。一見冷静になっているように見えるが心を燃やしている怒りの炎はまだ燃えている。一先ずはこの速さをどうにかすること、その一点に絞られた。
「フラッシュ!!」
「チィッ!!」
神悟の体から強い光が放たれる。それは夜の暗さに慣れていたシグナムの目を眩ませるのには十分すぎる光量だった。瞼を閉じ、腕を盾にしても防ぎきれない程の強い光。そして前方からやって来る強い死の気配。
「止めだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
開くことを拒もうとする瞼を強引に開けて見れば神悟が手に光の剣のような物を持ってこちらにやって来ている。管理局が推奨しているような非殺傷の魔法ではなく、こちらを殺す目的で作り出されたそれはまっすぐにシグナムに向かっていった。
しかしシグナムに死の恐れはない。神悟の攻撃は間違いなくシグナムを殺せる一撃であることは狙われているシグナム自身が一番理解している。ならば、何故恐れがないのか?
自暴自棄になった?否
復讐途中で倒れることを良しとした?否
シグナムに宿った【騎士・堕ちた騎士王】の持つ直感のスキルがーーーーーーシグナム自身の直感が告げているのだ。
彼が、自分達の愛おしい主が、やって来ると。
シグナムと神悟の間に何かが割って入ってきた。高速を越える亜音速で飛翔してきたそれは人ではないーーーーーー刀だ。鞘に納められた状態で飛翔してきた刀がシグナムと神悟の間の地面に突き刺さっている。
「だ、誰だ!!」
突如割って入ってきた刀を確認した神悟が叫びながら辺りを見渡す。完全には見えていないが光にやられて滲んだ視界の中でそんな行動をしている神悟をシグナムは心の中で嘲笑った。
「(そんなことをしなくても良いぞ?何故ならーーーーーー)」
「ーーーーーーおいテメェ、人の家族を何殺ろうとしてやがる」
「(ーーーーーーもう来ているのだからな)」
視覚が失われている今だからこそシグナムは気づけた、もう彼は来ているのだと。神悟の顔面が弾け飛ぶ。意識していないところから受けた一撃に神悟は反応できずにもろに受けて吹き飛ばされた。
「ーーーーーー一々何やられただとかは文句は言わねぇ、それだけのことをした自覚はあるからな」
彼は飛翔してきた刀を足場に立っていた。
「だがこれだけは言わせろや」
いつも着ている黒いコート、それは彼の血で汚れ、穴だらけになりながら風に靡いていた。
「正義の法《ジャスティス・ロウ》、これを名乗ったのは誰だ」
目が見えずとも感じられるのは憤怒、それは家族に危害を加えられたことに対して、そしてーーーーーー
「名乗った奴はその空っぽな正義を自信満々に掲げながら前に出ろ。情け容赦なく、惨殺してやるから」
ーーーーーー母を殺す原因となった屑共に対する怒りを燃やしながら、シグナムたちの主八神時雨は再び現れた。
「ーーーーーーって、シグナム大丈夫か?」
「はい、目が眩んでいますが負傷はありません」
強い光の中に糞ガキとシグナムがいたので咄嗟に投影した
「じっとしてろ」
「し、時雨!?」
「下がって目を閉じていろ。そうしてれば時期に視力は戻るはずだ」
「は・・・・・・はい」
「時雨殿!!」
「時雨!!」
「時雨さん!!」
「時雨!!」
「お兄さん!!」
「ちちっ・・・し、時雨!!」
ザフィーラが、リニスが、シャマルが、シュテルが、レヴィが、ディアーチェが、俺のことを見つけて嬉しそうな顔をしながら近寄ってくる。目立った傷は見られないが誰も疲弊しているようだった。
「よう、無事か?」
「そういう時雨こそ大丈夫ですか!?」
「傷の縫合はエーテルライトで済ませてある。強いて言うなら血が足らなくてフラフラするくらいだがこの程度なら問題ない」
「良かった・・・!!本当に良かった・・・・・・!!」
「あ~あ泣くな泣くな。そうしてると俺が泣かせてる見たいじゃないか」
心配そうな顔をしながら寄ってくるリニスに返事を返しながら泣きじゃくっているザフィーラの頭を撫でてやる。
「時雨さん・・・・・・」
「よう御門君・・・・・・いいや、御門だな、お前は・・・・・・堕ちるところまで堕ちたみたいだな」
アーカードとユニゾンしている御門は青年の体型になれる。だが今の御門はいつものユニゾンしている物とはまったくの別物だった。ワラキアと同じ吸血鬼の気配。どういう覚悟を持ったのかは知らないが彼は日の光を捨てて夜の住人に成り果てたようだった。
「後悔はしてませんよ・・・・・・例え蔑まれようがこれが俺の選んだ道なんですから」
「蔑まねぇよ、馬鹿野郎」
顔をうつ伏せる御門の額に軽くデコピンをして顔を上げさせる。
「どんな選択であれ俺のことを思ってしたのなら俺はそれを嬉しく思う。蔑む罵倒だなんて持っての他だ。誉めて讃えて崇めてやるよ。お前の素晴らしい選択は間違っていないとな」
「時雨さん・・・・・・」
「だからお疲れさんだ。ここから先は俺に任せろ」
ほとんど身長の変わらない御門の頭に手を乗せて、これまでの労を労い下がらせる。今の今まではこいつらの戦いだったのかもしれない。しかし今では違う、
「ーーーーーーさて、質問を繰り返すようだがもう一度言わせてもらおう。
誰も動かない。サーヴァントも、魔術師も、魔導師も。聞き間違いだなんて間抜けな落ちはない。確かに俺の耳にはあの偽善者共の集まりの名前が届いたのだ。であるのならば必ずここにいる。
「ーーーーーー僕だ!!」
名乗り出たのはさっきシグナムに危害を加えようとして俺が蹴り飛ばした糞ガキ。少し前よりは成長しているが御門のような前例もあるわけだからさほど珍しいことばてない・・・の・・・・・・待て、待て待て、待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て。何故だ、何故こいつがここにいる?何故こいつがこの場で、その姿で立っているのだ?
「ーーーーーー名前は」
脳内で暴れまわる混乱を押さえながら糞ガキの名前を尋ねる。
「
ーーーーーーあぁ、あぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁ!!!!やっぱりか!!やっぱりお前がそうなのか!!あの糞共の集まりの頂点!!偽善者共の筆頭!!そしてーーーーーー魔女狩りを提案した元凶!!!
「クハッーーーーーーアッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!」
笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑うーーーーーー俺の中に蠢いているのは怒りの感情、そこに糞ガキがカイン・J・アダムスだと分かったことで歓喜が差し込まれた。
「嗚呼!!殺せる!!お前をまた殺せる!!何度殺しても飽きたらない!!何度切り裂こうが満たされない!!何度砕こうが収まらない!!何度でも何十度でも何百度でも何千度でも何万度でも!!」
俺は相当酷い顔をしているのだろう、その自覚はある。それでもこいつを前にいつもの表情を保てる訳がない。口角はつり上がって歯をむき出しにし、目は見開いて奴の姿を捉える。
「お前!!僕を・・・・・・
「知っているのか?知っている知っているあぁ知っているさ。誰か掲げたのかも分からない虚ろな正義を後生大事にしている糞のような
「お前!!何者だ!!」
「何者だぁ?・・・・・・あぁ、お前はそういう奴だったな。遥か彼方の理想だけしか見えていなくて現実には見向きもしない筋金入りの理想主義者・・・・・・誰々は間違っていなぁい、誰々がそんなことはしなぁい、そんな甘言ばかりしか信じない妄想野郎。組織が自分一人になってもその事態を飲み込むことをせずに引きこもる事しかしなかった非現実主義者。だから俺の名を忘れるな。お前のしたことを思い出して逝け。自分の業の深さを思い出せ」
地面に突き刺さっていた
「