先日二月二十一日をもってこの小説は連載から一年を迎えました。本当なら昨日に更新したかったのですが仕事で・・・・・・
私の小説を見続けている方々に感謝を
「ーーーーーーあぁ、凄まじいな」
時雨から独立し、実体化しているワラキアは都市部にある一番高いビルの屋上でそう呟いた。眼下に写るのはシグナムが、ザフィーラが、リニスが、シャマルが呼び出した孫悟空が、シュテルが、レヴィが、御門が敵を圧倒している様。上を見上げれば二対一という状況でありながら対等以上の戦いをしているディアーチェの様が見てとれる。その中でワラキアはただ一人、ビルの屋上に立って戦況を見下ろしていた。
「お前たちをたぎらせるためにあのような口を叩いたが時雨はお前たちを戦わせたくは無かったのだろう。それは当然のことだ。家族が傷付く様を見て何が楽しいというのだ?それに悦を感じ入るというのならそれはもはや狂人の類いだ。確かに、時雨は狂っている言動や鬼畜外道と呼ばれるような行いをしているのだろう。しかしそれはそれだけお前たちを思っているからだ。故に、この戦いはお前たちに捧げよう。彼と袂を同じにして別った存在として、お前たちの望むようにしてやろう」
ワラキアが時雨から事前に手渡されていたカードを取り出す。そこに書かれているのは狂気を表す鉈を持った獣人の絵。それをワラキアは躊躇うことなく握り潰した。
「ーーーーーーあぁ、これが我らの祖たる者の力か」
ワラキアの体に吸血鬼の祖と呼ばれる存在の力が宿る。吸血鬼の祖ーーーーーーそれはこの世界では真祖と呼ばれる一般的な吸血鬼である死徒を産み出した上位の存在である。日の光、流水、十字架等の伝承に残るような吸血鬼の弱点を一切持たない正しく究極の生命体とも言える存在。特に、ワラキアの宿した真祖はその真祖の中でも群を抜いていた。
名をアルクエイド・ブリュンスタット。死徒狩りの真祖や白き真祖の月姫と呼ばれた地球という星の分身とも言える存在。しかしワラキアが宿しているのはそのアルクエイド・ブリュンスタットと同じでありながら異なる存在であった。吸血鬼の性とも言える人間の生き血を啜りたいと欲する吸血衝動、真祖とはいえどもそれには抗うことは出来ず、その吸血衝動に狂った真祖を魔王と呼んでいた。ワラキアが宿したのはアルクエイド・ブリュンスタットが吸血衝動に狂った魔王となっていたら?というifのアルクエイド・ブリュンスタットーーーーーー【狂戦士・堕ちた真祖の月姫】それがワラキアの使い、宿したカードの正体。
「さてーーーーーー戯れと興じようか」
月が染まる。青白く辺りを照らしていた満月。ワラキアがそう囁くと同時に月がまるでワラキアに呼応したかのように赤く朱く紅くーーーーーー不気味でおぞましい真紅の月に変貌した。
「貴様らが全力を出そうが壊れぬ箱庭を作ってやろう、それで許せ」
結界で閉ざされていた景色が変わる。如何にも人類の進歩の象徴であるともいえる石造りの建造物は姿を消し、代わりに深い鬱蒼とした森へとなる。そしてその森の最深部と思わしき場所には城が建っていた。
これが真祖の吸血鬼が持つ力の一片【空想具現化】。星の分身とも言える存在である真祖に許された世界を自身の思い描いた通りに書き換える能力。魔術師が大禁呪とする固有結界とあり方は似ているのかもしれない。しかし固有結界は術者の心象風景を具現化し、尚且つ世界からの補正を受けて僅かな時間しか展開できないのに対し、空想具現化は補正するはずの世界からのバックアップを受けて展開される。多少なりともの制約は受けるのだが空想具現化はほぼ半永久的に展開が可能なのである。
そうして空想具現化によって現れた森ーーーーーー正確にはその中で戦う者たちを最深部に建つ城【千年城】の屋上から見下す。
「さぁ戦え。彼が愛しいと思い、彼を愛しいと想った者たちよ。世界からの補正等という野暮な形では邪魔はさせぬよ」
眼から血の涙を流しながらワラキアは閉じられている赤眼を見開いてそう言った。
ワラキアverアルクエイド・ブリュンスタット
「ーーーーーーなんだよあれは!!」
ワラキアが展開した森の中で悪態をつきながらも走るのはこの世界に生まれた転生者の内の一人、藤峰アリス。ビル群が消えて森が現れたなど突っ込みたいところが今の状況ではそれは些末な問題でしかない。その原因はアリスや一緒に走っている神悟とその取り巻きたちーーーーーーその後ろから迫ってくる死の存在。アリスは鳳凰院御門が転生者であると言うことには薄々察しがついていた。誰だって転生者という存在を書いた二次創作の小説を読んでいるのなら御門の言動がまるでオリジナルの主人公に容易く倒される踏み台と呼ばれる転生者そっくりだと気づくだろう。なのはのことを俺の嫁といい、困っているなのはを助けるために仲介に入ったアリスのことをモブキャラ扱いで罵ってくるーーーーーーそのことはアリスは対して気にも止めていなかった。
そしてある日、神悟が御門のことを半殺しにして転生特典である
そこから先の御門の行動は知らない。元より違うクラスだったし、人伝に聞いた話では休みがちになっている程度のことしか耳に入らなかった。神悟によって特典が奪われ、デバイスを壊されたことで戦闘能力を無くしたであろう御門に対する関心は無印の始まりと共に徐々に薄れ、やがて消えていった。そうしてこの場に御門がやって来た時も「そう言えばいたっけな」くらいの者だったーーーーーーそれなのに、そいつが自分を殺す存在として現れているとなれば誰であろうと混乱するしかないだろう。
何故地面を走っているのかと聞かれれば飛行魔法の制御が困難になったから。発動することには問題ないがいつも通りに上手く飛ぶことが出来ない。なら地上で行動した方が良いと判断しての行動。それが余計にアリスの恐怖を煽る。
アリスたちが木々を避けながら懸命に走るのに対して御門は木々を薙ぎ倒しながらーーーーーー正確には朽ちた木々を薙ぎ倒しながら真っ直ぐに追ってきていた。
『マスター!!数15!!』
アリスの持つ刀型のデバイス【ヤクモ】が迫る脅威を察知して警告してくれる。走るスピードを緩めずに首だけを回して背後を確認、木々を縫うようにしながら放たれている黒い剣を確認する。始めに放たれた時とは違い、剣の速度は視認出来る程度の物、アリスは即座にヤクモに魔力のコーティングを施して向かってくる剣を弾いた。弾かれた剣は地面へと刺さり、地面をチリに変えて、液体となって主人の元へと還っていく。どういう理屈かは分からないがあの黒い剣に触れれば無機物だろうが有機物だろうが吸収されてチリになるらしい。一度素の状態のヤクモで弾いて機体が一気に劣化したことから気づいたことだ。それ以降は魔力でコーティングすることでヤクモを守るようにしている。もしそれを怠ればーーーーーー
「あ、あたしのデバイスが!?」
「腕!!わ、私の腕!?」
あそこで騒いでいる取り巻きたちのようにデバイスがボロボロと崩れたり、剣が掠った腕がミイラのように干からびることになる。これがあの剣の恐ろしさ。まるで樹が張った根っこから養分を吸収するかのようにすべてが朽ちていく。恐らくは非殺傷の魔法、それか魔術による効果なのだろ。それに場所が悪すぎる。普通なら飛び道具を使ってくる相手にとって森という遮蔽物だらけの場所はやりにくいはずだがあの剣には関係無い、例えものがあっても朽ちさせてしまえば良いのだから。むしろ木があって視界が塞がれるためにこちらが不利になる。開けた空間に出れればーーーーーー
「あ」
「あ」
そんなことを考えていたら正面から遠坂凜、ルヴィアゼッタ・エーデルフェルト、衛宮士郎の魔術師たちが現れた。何故こんなところにいるのかなんて考えなかった。これで状況を打破できるかもしれない。そんなことを考えていたらーーーーーーーーーーーー彼らの後ろから、大量の猿が現れた。
「はぁぁぁぁぁぁ!?ふざけんなよマジで!!」
このままではあの猿の群れに突っ込むことになる。そう思ったアリスはスピードを緩めることなくほぼ直角に曲がる。無理な方向転換で足を痛めるが猿の群れに突っ込むよりかは遥かにマシだろう。アリスを追いかけるように魔術師たちも、そして神悟とその取り巻きたちも着いてくる。
「こっち来んな!!つかなんだよあれは!!」
「知らないわよ!!いきなり出てきて追いかけられてるのよ!!」
「おい!!遠坂!!見てみろ!!」
口論になりかけたアリスと凜だったが士郎の声で後ろを振り向く。するとそこにはーーーーーー黒い剣群に刺し貫かれて朽ち果てていく猿の群れの姿があった。
「嘘っ!?どうなってるのよ!!」
「味方じゃないのか?・・・・・・なんか知らんが好機だ!!逃げるぞ!!」
アリスの提案に誰も反対せずに着いていく。色々と話したいことはあるのだろうが今は何よりあの剣と猿から逃げるのが最優先だ。
夜の森の中を走る、走る、走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走るーーーーーーーーーーーーそうして彼らは開けた空間に飛び出した。
「ーーーーーー追っては!?」
「いないわ!!ここで迎え撃つわよ!!」
アリスと神悟がデバイスを構え、士郎が木刀を握り、凜とルヴィアは宝石を取り出す。その後ろに取り巻きたち。反撃のために構えているとーーーーーーようやく、森の中からそれらは現れた。
現れたのは二つの影。一つは赤い胴着を纏った猿人、どこからどう見ても人ではないそれは手にした棒をこちらに向けている。そしてもう一つの影、それこそがまさに異形であった。全身から黒い突起物ーーーーーー森の中でアリスたちを襲っていた黒い剣を生やした銀髪の青年。それらがまるで幽鬼のような出で立ちで森の中から現れる。
そう、それらの正体はシャマルが呼び出した孫悟空と吸血鬼へと新生を果たした御門だった。
一度対面したアリスは兎も角、魔術師たちは息を飲み込む。なんだあれは、あれは人なのか、人の形をしているだけの獣ではないか。体中から剣を生やしているだけではなく赤く染まった双眼の視線は冷たく、視界に入っているだけで心臓が早鐘のように鼓動する。
「ーーーーーーフッ!!」
そんな状況で先手を打ったのはアリスだった。孫悟空ではなく御門に向かっていき、鞘に納めたヤクモを抜刀する。それを御門は手のひらから生やした剣で受け止める。次に動いたのは神悟、自分のデバイスであるブレイブハートを孫悟空に向けて砲撃、孫悟空はそれを軽く跳躍してかわした。そこでようやく動く魔術師、凜とルヴィアが持っていた宝石を宙にいる孫悟空に向かって投げる。宝石に込められた魔力は多大でそれこそ
「やったか!?」
その爆弾を見て士郎が叫ぶ。いつもなら馬鹿の一言でも言っているのだが状況が状況なためにアリスはその言葉を飲み込んだ。爆弾によって生じた煙で御門の姿は見えない。そして煙がようやく晴れたときに現れたのはーーーーーー無傷の御門。大魔術相当の宝石の爆発であっても御門を傷つけることは出来なかったのだ。
「ーーーーーーグッ!!」
「ーーーーーーチィッ!!」
そこに青い影と赤い影が乱入する。その正体はセイバーとアーチャー。その姿は裂傷打撲傷にまみれて傷だらけ。どこからどう見ても圧されているようにしか見えなかった。そんな二人を追いかけてさらに乱入者が現れる。黒く染まった騎士に朱い胴着の獣ーーーーーーシグナムとザフィーラだった。我を忘れていたように暴れていた二人だったが孫悟空と御門ーーーーーー正確には御門の方を見て怒りに染まった顔を哀しみに染まった顔に変える。
「御門・・・・・・お前もそうなったか」
「馬鹿なことを・・・我らに任せていれば良かったものを・・・」
「シグナムさん、ザフィーラさん・・・・・・そんな悲しいことを言わないでください。あの人には恩しか感じられないんだ。それこそもう一人の父親だと言っても過言じゃない。それなら息子として、父を助けることも、幸福を願うことも間違いじゃないでしょうに」
「・・・・・・時雨が目覚めたら言ってやると良い。きっと泣いて喜ぶだろう」
「恐らくその後でヴィータはやらんと怒鳴られそうだがな」
「ははっ・・・・・・そうだといいですね」
さっきまで復讐に燃えていたはずの三人だったがこの一時だけは
その正体はライダーと彼が乗っている
「やったな、リニス」
「こんなものはまだ前座です・・・・・・あのクソガキを石にして砕かないとこの腹の虫は治まりませんよ」
「それは同意する」
シグナムが剣を構え、ザフィーラが拳を握り、リニスが体制を低くし、御門が体から生やしている剣を増やす。敵はこちらよりも強く、またこちらには打破する余力が見られない。そう見抜いたライダーは即座に決断を下した。
「セイバー、アーチャー、それにマスターよ。これよりあやつらを余の固有結界へと招き入れる」
「ーーーーーー正気か、ライダー」
「応正気だとも。だがそれしか手があるまい。あれほどの実力者となるとどのくらい閉じ込められるか予想も着かぬが今は時間が必要だ。それに適していたのが余であった。それだけの話だ」
「ーーーーーーライダー、いいえ、征服王イスカンダル!!令呪をもって命じますわ!!必ず勝ちなさい!!」
ライダーの言葉を受けたルヴィアは何も言わずに手の甲に刻まれた聖痕ーーーーーーサーヴァントに対する絶対命令権である令呪を使用した。使い方によっては不可能すら可能にする魔法の一端であるそれはライダーに芳醇な魔力と石化の解除という奇跡をもたらした。
「感謝するぞマスター。ーーーーーーーーーーーー集え我が同胞!!我と共にありし、歴戦の勇士たちよ!!」
ライダーは腰に下げていた剣を引き抜き、叫ぶ。それに呼応するように世界が二度目の改変を見せた。一度目はビル群から森へ、そして二度目は森から太陽が容赦なく照らし出す灼熱の砂漠へ。砂漠の彼方から砂煙が上がり、それと共に万を越える軍隊が現れる。征服王イスカンダルと共に戦場を駆け抜けた臣下たちをサーヴァントとして召喚する規格外宝具、臣下たちとの絆が可能とした魔術師でもないのに展開を許された固有結界。
この固有結界に招かれたのはシグナム、ザフィーラ、リニス、御門の四人だけ。孫悟空がこの場にいないのはイスカンダルが弾いたからか、それともこの場に立つに選ばれていないからか。
「敵を少数と侮るなかれ!!相手は古今東西に名を馳せた豪傑と知れ!!」
どこからともなく現れた黒馬に股がり、イスカンダルは臣下たちに向けて激を飛ばす。それでも彼の元に集いし臣下たちの顔からは笑みが離れない。それは再び戦場に立てたことに対する喜びか、それともイスカンダル共に戦えることに対する歓喜か。
「ーーーーーー行くぞ!!AAAAAAAAlalalalalalalalala lalalalalalalala!!!!!」
走る。イスカンダルを先頭とした軍隊がまるで津波のように砂漠を走る。その姿は軍隊などという生やさしい物ではなく、イスカンダルを頭部に持った一個の生物のようであった。
その軍隊を眼前にして前に出たのはーーーーーー御門一人。それはシグナムたちが臆したからではない。御門が適材だったから、それだけなのだ。対人戦に特化していて集団戦が苦手なザフィーラは兎も角、シグナムやリニスならば宿した英霊の宝具を使えば蹴散らすのは容易いだろう。しかしそれをしての消耗は大きすぎる。だから消耗が少なく、それでいて
「アーカード。詠うぞ」
『良いのか?この場には日が出ているが?』
「お前がそれを俺に言わせるか・・・・・・太陽など、ただ苦手なだけに過ぎない」
御門の影から棺桶が現れる。黒塗りの棺桶の中央には英語で一文、何かが書き込まれていた。
『
「ーーーーーー私は、ヘルメスの鳥」
詠う、手を大きく広げ、御門は詠う。
「ーーーーーー私は、自らの羽根を喰らい」
御門の影から現れた棺桶が開かれる。
「ーーーーーー飼い、慣らされる」
そして棺桶が完全に開きーーーーーー地獄の扉が開かれた。
イスカンダルの固有結界
死を恐れないのかと、イスカンダルはそれらを切り裂きながら思った。それらが死を恐れるはずがない。何故ならそれらはすでに死しているから。御門が新生する際に集めた人間の死。内部に留めたそれらを自らの軍勢として解き放つ。それこそが御門が
「ーーーーーーヌゥン!!」
スーツ姿の男性を切り払い、全裸の赤子を黒馬で引く。視界の端には亡者共に集られて死んでいく臣下たちの姿が見える。それでも、イスカンダルは猛進を止めない。嘆き、悲しみはしよう。しかし後悔だけはしない。それがイスカンダルが決めた事だから。
亡者の運河を掻き分け、臣下たちを犠牲にしながら、ようやくイスカンダルはこの亡者たちの王の姿を捉えることができた。その王の名は御門。自分に近づくイスカンダルをまるで道端に転がる石ころのように見ている。
黒馬が亡者に足を取られて、殺される。
自分が捕まる前に黒馬から転がるように降りる。
御門との距離は目と鼻の先、20m程。これまで掻き分けてきたことを考えれば短く、それでいて永い距離だ。
前に立つ亡者を斬り殺す
横から来る亡者を殴り飛ばす
後ろからしがみ付いてくる亡者を無視する
自身に降り注いでくる幾多もの死をはね除けながらイスカンダルは御門の前に立ち、剣を掲げる。
「ォォォォォォォォォォォオ!!!」
これまで犠牲になってきた臣下たちの思いを乗せたかのような叫びと共に剣は降り下ろされーーーーーー御門の眼前、鼻に触れるか触れないかのところで止められた。無論それはイスカンダルの意思で止めたのではない、止められたのだ。後ろから伸びる一本の腕によって。
「殺らせんよ征服王。あぁ殺らせるものか。彼らの、何より彼の意思を邪魔することなど私が赦しはしないさ」
イスカンダルの腕を止めていたのは赤いコートを着て長い黒髪を靡かせた一人の女性ーーーーーーアーカードだった。長身ではあるが痩躯であるその体で偉丈夫であるイスカンダルの渾身の一撃を片腕で止めていた。
殺しあいの最中で動きを止めることは愚かである。アーカードによって剣を止められていたイスカンダル、その無防備な心臓にーーーーーー御門は躊躇うことなく、手のひらから生やした剣を突き刺した。
「ーーーーーー」
「征服王、許せよ。お前の征服が王道であるように、俺たちにとっては彼の助けになることが絶対なのだ」
サーヴァントは神秘を用いた攻撃でなければ傷つかない。そしてサーヴァントを殺すには手段が限られている。その最たる方法は首を跳ねるか、もしくは心臓を潰すこと。だから御門はイスカンダルを殺すために心臓を刺した。そしてこれが皮肉なことにも御門が経験する初めての殺しであった。
「ーーーーーーハハッ、そうか、お主らは、お主らの王道を行くか」
御門の剣は吸血鬼でいうところの牙に等しい。その剣で刺した物を容赦なく吸い取り、すべてを御門の養分に変換する。自身のすべてを吸われながらもイスカンダルは心底満ちたような表情でシグナムを、ザフィーラを、リニスを、そして自分を殺した御門を見つめた。
「ーーーーーーあぁ・・・この遠征も・・・まっこと・・・・・・見事で・・・・・・あっ・・・た・・・・・・」
最後までその表情を崩すことはなく、イスカンダルは御門にすべてを吸われ現世から消えた。
「ーーーーーーはぁ・・・はぁ・・・!!」
「ようやく、か」
イスカンダルがシグナムたちを固有結界に引き込んでいた頃、外では一つの戦いが終わっていた。それは孫悟空対セイバー、アーチャー、魔術師魔導師たちの戦い。数で勝る後者が優位に思うものは多いのだろうが孫悟空は毛をむしることで眷族を呼び出してきたのでその優位はあってないような物、開けた空間にある地面を抉った後と折れた剣たちが戦いの熾烈さを教えてくれる。
そうしてようやく一息つけるか、そう思われたがそうは問屋が許さない。戦いを終えて疲弊していたセイバー、アーチャー、魔術師魔導師たちの元にシグナムたちが帰ってくる。もちろん、その場にはライダーの姿はない。
「次はお前らだ」
「ライダーさんをどうしだんだ!!」
次の狙いを決めた御門に神悟が噛みつく。サーヴァントと魔術師たちらライダーがいないことから察したのだろうが神悟は分からないようだ。いや、ただ現実を信じたくないだけなのかもしれない。
「死んだよ、俺が殺した」
「ーーーーーー」
御門から告げられた簡潔にして分かりやすい言葉に神悟は言葉を失う。それはライダーが死んだことが信じられないからか、それとも御門が殺しをしたことが信じられないからか。
「テメェラがあの人のことを殺そうとした。だから殺されても文句はねぇよな」
「・・・る・・・い」
「あぁん?」
「ゆる・・・さない・・・!!」
神悟が吠える。それと共に生じるのは信じられない程の魔力の放出。それはセイバーが消滅覚悟で全力で魔力放出をしたときの出力と同等であった。
「身勝手なお前たちを・・・・・・自分達の都合で人を傷つけるお前たちを・・・・・・許さない!!!」
猛る魔力の中で神悟の姿が変わっていく。
背丈が少年から青年に代わり
バリアジャケットはそれまでの物とは異なりどこかの団体の制服のようで
全身から粒子を散らばせながら御門を、シグナムを、ザフィーラを、リニスを睨んでいた
「
御門大暴走☆アーカードかベイかどっちかにしろとか来そうですね。
そして御門に負けてライダー脱落です。その魂は座に帰ることなく御門に吸収されています。
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