調律者は八神家の父   作:鎌鼬

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風邪引いて辛いお!!でも何が辛いかって風邪引いても仕事を休ませてもらえないことが一番辛いお!!




第弐拾漆幕 簒奪された王の財宝

 

 

「ーーーーーーハァッ!!」

「ーーーーーーキィッ!!」

 

 

海鳴の都市部にあるとあるビルの屋上、そこでは原始的な戦いが行われていた。挑発的な格好の女性と貴族のような格好の男性が殴りあっている。互いの拳がぶつかり合う度に響くのは低くくぐもった破裂音。

 

 

「よく持つな、狼よ」

「あんたも、ね!!」

 

 

貴族のような格好の男性ーーーーーーワラキアの力任せの振り下ろしの一撃を挑発的な格好の女性ーーーーーーアルフはギリギリで避ける。するとワラキアの拳は下のアスファルトに当たり、アスファルトが爆発するように砕けた。

 

 

ワラキアーーーーーー時雨から始めて独立した分割思考である彼の力は吸血鬼そのものである。本来なら吸血鬼に吸血されたことで時雨が吸血鬼の下僕たる死徒になるはずだったが、魂が完全に汚染される前にその魂を切り離すという離れ業で時雨は吸血鬼になることを防いだ。そうして切り離された魂が分割思考として定着し、再度独立したのがワラキアである。故にワラキアはステータスだけで見るなら死徒の中でも上位に入るほどの力を持っていた。振るう拳、蹴りに技術などは無くただ力任せ。しかしそれはどれもが下手をすれば死に至るほどの威力を誇る。

 

 

そうなればアルフは絶対的に不利ーーーーーーと思われるがそう言う訳ではない。現にアルフはこの戦いが始まってから約30分、吸血鬼であるワラキアとほぼ互角に渡り合っていた。

 

 

その秘密はワラキアが使わずにアルフが使っているものーーーーーー詰まる所、技術である。人はより効率的にダメージを与えるためにどう殴ればいいのか、どう蹴ればいいのかを遥か昔から考え続け、研鑽し、昇華させてきた。こう殴れば相手は昏倒する、こう蹴れば相手の骨を折れると言った具合に。アルフは元は狼を素体とした使い魔であるが人の姿にもなれる、つまりは人と同じ戦い方をすることができる。だからアルフは貪欲に格闘技が撮影されている映像を見て、学んだ。そうしてアルフが磨き続けてきた技術は、ワラキアと互角に戦えるほどに研磨されていた。

 

 

ワラキアの拳を飛び退くことで受け流し、ワラキアの関節を蹴り抜き、ワラキアの蹴りを蹴りで迎え撃ち、ワラキアの顎に拳をぶつける。

 

 

ワラキアの力任せの戦い方はまさしく獣のよう、それに対してアルフの戦い方はまさしく人の積み上げてきた技術そのもの。人が、獣と互角に戦えることを表すかのようだった。

 

 

「・・・・・・ワラキアが遊びすぎか?いいや、アルフが強いな」

 

 

ぼそりと、新しいタバコに火を着けた時雨が呟いた。確かに時雨はワラキアに殺すなとは言ったがそれ以外の制限はかけていない。だから殺意こそないがワラキアの戦い方はいつもと変わらない物だった。しかしそれでもアルフはそのワラキアに着いていっている。だから時雨はワラキアの不足ではなく、アルフの実力を素直に称賛した。

 

 

「スティンガーレイ!!エクセキューションシフト!!」

 

 

そこにクロノが時雨に向けて剣を模した誘導弾を雨のように放つ。一人に向けられた誘導弾の弾幕は密度が高く、足場の制限されている屋上では回避できないように思われる。

 

 

「クハッ、ぬりぃよ」

 

 

その弾幕に対して時雨のしたことは短刀を一本だけ投影し、弾幕に投げただけだった。投げられた短刀は弾幕の内の一つの誘導弾に当たり、弾かれて軌道をそらし、別の誘導弾に当たる。そこでもまた同じことが繰り返される。

 

 

当たり、弾かれ、反らす。当たり、弾かれ、反らす。当たり、弾かれ、反らす。当たり、弾かれ、反らす。当たり、弾かれ、反らす。当たり、弾かれ、反らす。当たり、弾かれ、反らす。当たり、弾かれ、反らす。当たり、弾かれ、反らす。当たり、弾かれ、反らす。当たり、弾かれ、反らす。当たり、弾かれ、反らす・・・・・・・・・・・・

 

 

それを繰り返した結果、すべての誘導弾は軌道をそらされて時雨には一本も当たること無く通りすぎていった。

 

 

「デタラメだな・・・・・・」

「このくらいできないと俺のいた所じゃ生き残れないからね」

「なんだその人外魔境は」

「異常しかその場になければそれが正常として認められる。つまりは外から見れば異常な世界で内から見れば正常な世界だって訳だな」

「嫌な世界だな」

「そう言ってくれるな、一応は俺の生まれ育った世界なんだからさ。まぁ彼処には何らの未練は残ってないがね」

 

 

その場の空気にそぐわない会話をしているとワラキアが吹き飛ばされてフェンスに叩きつけられた。幸いなことにフェンスがあったお陰でワラキアは屋上から落ちること無く止まることができた。

 

 

「負けてるな」

「あぁ、負けているさ。あそこまで一途な思いを見せつけられては日陰に生きる私からすれば眩しすぎて目が眩む。それに彼女はなかなかいいパンチをしてくる、きっと世界を狙えるぞ」

「魔力で強化しているからな、ただの人間よりは動けるだろうさ。それよりも俺は投げるタオルは持ってないぞ」

「フッ、タオルなんぞ要らんさ。私の歌劇の幕は私で降ろす。その時が来るまで哀れに無様に愉快に躍り狂っているさ」

「詩的だな」

「詩人ゆえにな」

 

 

ワラキアが立ち直る頃にはすでに殴られた傷は消えていた。これが吸血鬼、限られた手段(ロジック)以外では死ぬことのない怪物。無論、伝承にあるような方法以外でも死ぬのだが殴られた程度ならば即座に治り、立ち上がることができる。

 

 

四人が対峙する中で誰も動かない。先に動いた方が有利だと分かっているからこそ、相手が先に動かないように互いに牽制しあっている結果誰も動けないのだ。戦いの素人であるならつまらないと言って蔑み、戦いの玄人であるなら沈黙して目を見張るような空気の中で先に動いたのはーーーーーー時雨だった。

 

 

「なっ!?」

「何っ!?」

 

 

しかしそれはクロノとアルフに向かってではなく、彼らに背を向けての動きーーーーーーーーーーーー逃げだった。

 

 

「なんでーーーーーー」

 

 

時雨の行動が理解できなかったアルフだったが時雨の向かった方向を見て納得してしまった。

 

 

時雨の向かっている先にはーーーーーー目も眩むほどの金色の光、そして鎖によって縛られて身動きの出来ないリニス、シグナム、ザフィーラ、シャマルの姿があったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーーハァッ!!」

「クッ・・・・・・!!」

 

 

シグナムのレヴァンティンの一撃がセイバーを弾き飛ばす。それをセイバーは宙に浮きながら体制を立て直して着地し、距離を取ったままその場に立ち止まる。

 

 

「ゼァッ!!」

「チッ!!」

 

 

と、そこに乱入者が現れた。アーチャーの投影する剣を手刀足刀で叩き折りながら現れたのはザフィーラ、ライダーの剣で弾き飛ばされて現れたのはリニスだった。どちらも顔には僅かながらの疲労の色が見えるのだが目立った外傷は見えずに圧されているようにも見えない。

 

 

「戦況はどうだ?ザフィーラ、リニス」

「ほぼ互角と言ったところか。相手の武器は尽きぬがこちらも折れていない。イタチゴッコの様だがいずれ追い付いてみせる」

「こちらも似たような物ですね。でもまぁだいたいの実力は分かったのであと十分もあれば叩き潰してやりますよ」

「そうか、ならば私はあと五分でこいつを倒して加勢に向かうとしよう」

「はっ!!どの口がほざきますか」

「この口がだが?」

「シグナムも時雨殿に似てきたな」

「そうだな・・・・・・あの人風で言うのなら染められたと言うのだろうな」

「それを聞いたらきっと彼は苦笑いしながらいい傾向だなと言うと思いますよ」

「違いないな」

 

 

戦っている最中だというのにシグナムたちは笑いながら会話をする余裕を見せていた。これこそが彼女たちの戦い方。自然体でありながら臨戦態勢。普通に見れば隙だらけに見えるがサーヴァントであるセイバーとアーチャーはその隙が誘いの隙であることを看破して警戒していた。

 

 

「手伝いに来たわよ」

「シャマルか」

 

 

その中でシャマルがやって来た。服に目立った汚れすら見えずにさらには疲弊しているようにも見えない。

 

 

「管理局員たちはどうしましたか?」

「気絶させて結界の外に送り出してあるわ。それで手が空いたからこっちに来たの。ディアーチェはシュテルとレヴィの所に行ってるわ」

 

 

空を見ればシュテルの炎とレヴィの電撃、それに加えてディアーチェが放っただろう剣軍が見える。あちらは心配要らないようだ。

 

 

「ーーーーーーアーチャー」

「あぁ、分かっている」

 

 

セイバーは剣を構え、己が最強と信ずる聖剣を抜く準備をする。アーチャーは胸に握った拳を当てて、自分の生涯を形にした世界を開こうとする。長期戦は不利だと判断しての短期決戦への切り替え。その判断の早さは流石は英雄だと言ったところか。

 

 

しかし、それを邪魔する者がいた。

 

 

「ッ!?散開ッ!!」

 

 

それに始めに気づいたのはリニスだった。その叫びを放った本人とそれを聞いた三人は迷わずにその場から逃げ出す。そしてさっきまで四人がいた場所に現れたのは鎖だった。それも魔導師たちが使うような鎖状の拘束魔法等ではなく金属で出来た本物の鎖。その鎖はその場から逃げ出した四人を追いかける。

 

 

「クッ!!」

 

 

最初に捕まったのはシャマルだった。疲弊していないとは言えども彼女の役割は後衛なのだ。始めに捕まってしまったとしても機動力の低さ故に無理はない。

 

 

「クソッ!!」

「チィッ!!」

 

 

続けてシグナム、ザフィーラと捕まる。流石にセイバー、アーチャーとの戦闘で疲弊していたのか動きに繊細さが無かった。

 

 

「何ですかこれは!?」

 

 

そして最後に捕まったのはリニスだった。(ネロ)の遺したカード【騎兵・ゴーゴンの三女】を使ってメデューサの力を宿していたとは言えライダーとの戦闘後では流石に逃げ切れなかった。否、カードを使ってメデューサになっていたからこそ捕まったのかもしれない。

 

 

鎖に縛られた四人は一纏まりにされて更に拘束される。何とかして鎖から逃げ出そうとするがそうすればするほど鎖は拘束を強くしていく。

 

 

「ーーーーーー開け!!原初の王の宝物庫よ!!」

 

 

突如、夜だというのに辺り一帯がまるで昼間と見間違う程に明るくなる。光源は一人の少年ーーーーーー正確にはその背後からだった。何もない虚空に黄金の渦が発生してそこから剣、槍、丈、鎚などの数え切れないほどの武器が現れる。

 

 

「あれはーーーーーー」

「ーーーーーーそんな馬鹿な、何故彼があれを使える!?」

 

 

それを見て口を開いたのはシグナムとセイバー、違う口から語られているが込められた感情は同じ驚愕だった。

 

 

シグナムは知っている、自分の家族の一人が使っている物と同じだと言うことを

 

 

セイバーは知っている、あれは自分がここではない別の世界で倒した英霊の宝具だと

 

 

「ーーーーーー王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)!!!!!」

 

 

そうしてかの英雄王の宝具である宝物庫は少年ーーーーーー相井神悟の手によって開かれ、その中に眠る宝具の原典がシグナムたちに向かって降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

迫り来る宝具の原典を前にしてシグナムたちの心中にあったのは無念だった。宝具王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)、英雄王と呼ばれた始めて人の世で王になった英雄が集めた古今東西の財宝を納めた宝物庫。その真価は納められている財宝にこそあり、宝具を射出することなど英雄王本人からすればただの余興でしかない。しかし、単純であるが故にそれは強力、半端な英霊であるならば逆らう間も無く蒸発するだろう。シグナムたちが万全の体制であったのならば、そうでなくともこの鎖による拘束さえ無かったのならこの宝具の射出から逃れられたのだろう。だがそれは所詮もしもの話でしか無い。現実はシグナムたちに対抗手段は残されておらず、ただ迫る宝具を見つめることしか出来ない。

 

 

そうして四人全員が自分の死を悟り、死んでいくことを時雨に謝罪しているとーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

I am the bone of my sword.(熾天に咲け、七つの円盾)

 

 

いつもの黒いコートをはためかせながら、時雨本人が現れて宝具の射出とシグナムたちとの間に立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

速く、速く!!

 

 

速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く!!!!!!!!!!!!

 

 

どうしてシグナムたちが天の鎖(エルキドゥ)に捕らえられているのかなど、どうしてあのガキがギルの宝物庫を使えるのかなど、気にかける暇すら惜しい。

 

 

ただ速く、シグナムたちに迫る絶対の死を遮るために速く!!

 

 

ーUnlimited blade workより検索

 

ー投擲武器に対し、有効な武具の該当一件

 

ー投影開始

 

 

I am the bone of my sword.(熾天に咲け、七つの円盾)

 

 

ー割り込み、並びに宝具【熾天覆う七つの円環】|(ロー・アイアス)の投影に成功

 

ー宝具射出第一波接触・・・防衛成功

 

ー宝具射出第二派接触・・・防衛成功、盾に損害、並びに右腕の負傷を確認

 

 

まるで花びらのようなアイアスの盾の花弁が一片砕けると同時に右腕に裂傷が現れる。それはそうだ、アイアスの盾は俺そのもの、盾が砕けたならば俺も砕けるのが通り。

 

 

ー宝具射出第三派接触・・・防衛成功、盾に損害、並びに胴体と頭部に負傷を確認

 

 

二片、三片と宝具の射出に耐えられずにアイアスの盾が砕けていき、続けて俺の体も傷ついていく。だが、それでもシグナムたちには通っていない。

 

 

ー宝具射出第四派接触・・・防衛成功、盾の消滅、並びに全身に負傷を確認

 

 

遂に宝具の射出に耐えられずにアイアスの盾はすべて砕け散った。シグナムたちは無傷、俺は全身裂傷だらけ、更に眼前には未だに続く宝具の雨が。

 

 

ーアイアスの盾の再度投影

 

ー否、間に合わない

 

ーシグナムたちを連れての空間転移

 

ー否、間に合わない

 

ー宝具使用者であるあのガキの抹殺

 

ー否、間に合わない

 

ー結論、我が身を盾に

 

 

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」

 

 

「時雨!?」

「時雨!!」

「時雨殿!!」

「時雨さん!!」

 

 

降り注ぐ宝具の射出を身体で受け止める。一つ足りとも後ろに通すまいと身体を大の字に広げて。

 

 

ーーーーーー嗚呼、神様・・・神様よぉ・・・

 

 

剣が突き刺さる、槍が突き立てられる、丈が身を抉る、鎚が骨を砕く。

 

 

ーーーーーー人殺しは・・・所詮人殺しか

 

 

ーーーーーー綺麗事を抜かして・・・・・・笑わせるなって言いたいのか・・・・・・

 

 

突き刺さる、突き立てられる、抉られる、砕かれる。

 

 

ーーーーーー救いたいのは本当なんだよ・・・・・・

 

 

ーーーーーー本当の肉親を亡くしたあの少女を

 

 

ーーーーーー望まぬ宿命を背負わされている彼女たちを

 

 

ーーーーーー覚めることの無い悪夢に泣いている彼女を

 

 

ーーーーーー救いたいって気持ちは本当なんだよ・・・・・・

 

 

宝具の雨が止んだ。全身は傷だらけな上に無数の剣槍が刺さっていて体制を維持するのだけでも手一杯、周りの声など聞く余裕すら有りはしない。

 

 

「とどめだ!!」

 

 

ガキが宝物庫から紅い槍を取り出して迫ってくるが回避など出来ない。

 

 

ーーーーーーそれなのにこんな仕打ちをするなんて・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おれは・・・・・・まちがっていたのか・・・・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その様な訳があるか、戯けが」

「なっ!?」

 

 

時雨の胸に紅い槍が届くか否かのところで上空から別の紅い槍が放たれて槍にぶつかる。紅い槍という視覚情報からそれらは同一の物に見えるかもしれないがそこに宿している神秘は全くの別物である。

 

 

神悟の持っていた紅い槍はアイルランドに伝わるケルト神話において光の神子と呼ばれた英雄クーフーリンが持っていたどの様な過程があったとしても心臓を貫く結果にたどり着くという因果逆転の呪詛を孕んだ魔槍刺し穿つ死棘の槍(ゲイボルク)

 

 

それに対して上空からやって来たのは同じケルト神話において輝く貌と称された英霊ディルムッド・オディナが持っていた接している間魔力を無力化する魔槍破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)

 

 

二本の紅い槍はぶつかり合い、互いに砕け散った。

 

 

「手に届く者たちを命に代えても守りたい、その身の丈にあったようで誰よりも傲慢な願いはこの有象無象が闊歩する現世において我が蔵に納めることを認めるほどに美しい願いだ。誇れよ、我が主。その誰よりも傲慢で、美しく、それでいて儚い願いは間違ってなどいない。この(オレ)が認めよう」

「ーーーーーー粛!!」

 

 

ぐしゃりと、まるで空き缶を握り潰した時のような音をたてながら神悟のいる空間が圧縮された。突然の乱入者に硬直していた神悟にこれを回避する手段は無く受けることになるがバリアジャケットのお陰で大事に至るほどの負傷は受けなかった。

 

 

「ーーーーーー斬刑に処す」

「ーーーーーー粉ッ!!」

 

 

空間が圧縮されて身動きの出来ない神悟に迫る二つの影。一つの影は手にした短刀ーーーーーーいや、サイズからしてナイフに分類されるのであろうそれを一息の間に十度振るった。もう一つの影は気合いの掛け声と共に神悟の肩に目掛けての肘の打ち下ろし。防ぐ手立ての無い神悟はその両方をその身に受けて地面に向けて高速で落下する。

 

 

「ーーーーーー双牙(そうが)

 

 

あわや地面に突撃する寸前でやって来たのは救いの手ーーーーーー等ではなく更なる追撃。両手に握られている小太刀と思われる刀二本を神悟へと突き刺す。バリアジャケットのお陰で貫通こそはしなかったがダメージは通った。突き技により神悟は近くにあったビルの壁面を崩して埋まることになる。

 

 

「・・・・・・」

 

 

そして時雨がもう限界なのかぐらりと揺れて落下した。元より飛行魔法の適性のない時雨は自分の周りの空間を魔術によって固定することで無理矢理空中に立っていたのだ。そして魔術の継続が出来なくなり、落ちた。

 

 

「よくやった、後は休め」

 

 

落ちた時雨を助けたのは黄金の船に乗った一人の青年だった。全身に宝具が突き刺さり、血塗れだというのに青年は纏っている高級な服に血が着くことを省みずに時雨を受け止めた。

 

 

「(あぁ・・・・・・馬鹿だ、お前たちは本当に馬鹿だ)」

「クッ・・・・・・!!お前たちは何者だ!!」

 

 

崩れたビルの壁面から自分のデバイスであるブレイブハートを杖のようにして這い出してきた神悟は突然現れてきた乱入者たちに吠える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「英雄王、ギルガメッシュ」

「殺人喜、七夜信喜」

「魔術師、荒耶宗蓮」

「代行者、コトミネ・キレイソン」

「剣士、高町恭也」

 

 

「「「「「そこで死にかけている奴の友人だ!!」」」」」

 

 

「(あぁ・・・・・・本当に呆れるわ・・・・・・呆れるほどに・・・・・・感謝してる・・・・・・)」

 

 

自分の窮地に駆け付けてくれた自分のことを友と呼ぶ人物たちの声を聞きながら、時雨の意志は無くなった。

 

 

 

 





~アルフVSワラキア
無制約のアルフと相手を殺さないという制約ありのワラキアだった為に戦闘は互角。制約が無かったら容赦無く必殺の攻撃ばかりしてきたのでアルフは死んでいた。

王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)
ギルガメッシュ=所有者
鳳凰院御門=特典として希望
相井神悟=御門から略奪した
だから相井神悟は宝物庫を使える。

~嗚呼、神様・・・神様よぉ・・・
時雨の告白。この小説を始めた頃から考えていたシーンとセリフ。誰かの為を責任転嫁と断言する時雨だが、これは自分の為に誰かの為を成そうとしていることに間違いない。

~英雄王、ギルガメッシュ
~殺人喜、七夜信喜
~魔術師、荒耶宗蓮
~代行者、コトミネ・キレイソン
~剣士、高町恭也
~「「「「「そこで死にかけている奴の友人だ!!!!!」」」」」
ボスキャラ三人、殺人喜一人、戦闘狂一人の参戦である・・・・・・あれ?ジョージvoiceの持ち主がコトミネ、荒耶、ロリカードで三人に?・・・・・・やべぇよ・・・やべぇよ・・・!!


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