「
「悪趣味も良いところね、貴方の精神年齢を疑うわ」
「お前は今すぐ作者の墓前に行って謝ってこいや。これ考えたのはお前の言う精神年齢を疑うような年齢の大人なんだからよ」
開口一番に行われたのは遠坂凜との軽い罵り合い、てかお前ホントに土下座してこい。お前のいう悪趣味な者が世界中で愛されている名作なんだからな。
「ーーーーーー聞きたいことがある」
続いて口を開いたのはアーチャー。これは予想できた。何故なら目の前に広がる剣の墓標は他の誰でもないアーチャーだけの世界のはず。それなのに自分でも過去の人間だったころの本人でもなく、なんの関わりのない他人に作られるとなると不愉快きわまりないものだろう。
「聞きたいんだろうけど少し待て、疲れた」
そう言って剣の世界を閉じる。するとライダーとそのマスターによってボロボロにされた廃工場に戻ってきた。身近にあった瓦礫の上を軽く払ってその上に座る。
「固有結界破った褒美だ、お前たちの疑問に答えてやる。ライダーとエーデルフェルトは・・・・・・アンデルセン倒したから二人で一つってところだな。計五つの尋問権だ、せいぜい考えて口にするといい」
「なら私からよ。貴方は本当にただの魔術師かしら?固有結界を展開できる魔術師がノーマークだなんて有り得ないわよ」
「定義からすれば俺は魔術師じゃなくて魔術使いの方が正しいさ。俺は根源なんて物は目指していないし、一々長ったらしい詠唱をしている暇があるなら持ってる獲物で首を跳ねた方が早い。そう言う点じゃ俺は執行者よりも代行者向けなのかもな」
「次は
「サーヴァントなんて厄介なもん連れている連中に落ち着いて話ができると思ってるのか?阿呆臭い、そんなこと出来るわけ無いだろうに。だから俺は危害を加えられる前に危害を持って対峙した、それだけだ」
最初に質問したのは遠坂凜、続いてエーデルフェルト。あぁ、阿呆の集まりか。なんでこんな目先の質問しか出てこないのか。今はどうでもいい知的好奇心を満たすのが先か?違うだろ、もっと核心を突くような質問してこいよ。でないと俺がわざわざ分かりやすいところにいた意味が無くなってしまうじゃないか。
「・・・・・・貴様は何故その剣製が使える」
次はアーチャー・・・・・・アーチャーならこの質問は妥当だろう。己の物だけのはずの心象風景が他人に使われたのだ。気にならなければおかしい。まぁこの質問は見逃してやろう。
「送られたから、としか言いようがない。どこかの誰かに唐突に渡されたものだ。役に立つならば使わずに埃を被らせるなんて勿体無い。というわけでありがたく使わせてもらってるよ。ちなみにそいつとコンタクトが取れるかと聞かれたら答えは否だ、どうやって取っていいのかわかった物じゃない。まぁもっとも取ろうとも考えてないけどな」
「ーーーーーーそんなことはどうだっていい!!八神時雨!!あんたは闇の書とどんな関わりがあるんだ!!」
アーチャーの根幹に関わる問題をどうでもいいですか。その事自体が俺からすればどうでもいいんだが・・・・・・まぁようやく出た俺の待っていた質問だ。それなりの礼節を持って答えよう。
「闇の書ーーーーーー四騎の騎士たちの主となり、魔術師からは魔術回路を、魔導師からはリンカーコアを蒐集し、すべてのページを揃えたものには力が手に入る・・・・・・それと俺がどんな関わりがあるんだかって?あぁやっとだよ、やっと辿り着けたのかよ。遅いってもんじゃねえぞ、何のために顔隠したり魔術使ったと思ってるんだお前ら」
「ーーーーーーそれじゃ、まさかあんたが」
「待ちくたびれたが一応の形式で称賛を送ってやろう。おめでとう、俺が君らが探し求めていた闇の書の主だよ」
内心の落胆を表面上に張り付けた喜色で誤魔化しながら、俺はまるでRPGでレベル1の頃から勇者の側にいた仲間が実はラスボスだったかのように称賛をくれてやった。
「貴方が・・・・・・闇の書の主・・・・・・!?」
「Exactly 、その通りでございます」
おどけた口調も、馬鹿にしたような態度もそのままで遠坂凜の質問に答えてやる。まぁ奴等からしたら隠していたのにどうしてこのタイミングで?とか考えたりしていそうだがそんなことはどうしていい、俺のシナリオ通りだからな。
「お前が闇の書の主・・・・・・テメェ、自分が何をしたのか分かってるのか!!」
「あぁ、“嫌がる騎士たち”を従えさえて蒐集を“強制させた”。それの何が悪い?闇の書の主の役目とは本を完成させること、ならばどう立ち回ろうが俺の勝手だろうが」
「ふざけるな!!それでどれだけの人が危険な目に遭ったのか分かっているのか!?」
「
「てんめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
「衛宮君!?」
「シェロ!?」
衛宮士郎が持っていた木刀を握りしめて突進してきた。おぉ、青いこと青いこと。俺の目から捉える情報から木刀の強度の上昇を確認、強化の魔術が行使されていると推定する。激昂しているのだろうが強化の魔術を使ったことは評価しよう。だが温い、お前は木刀で何がしたいんだ?刀を模しているとはいえそれの材質は木、鉄鋼で作られている物とは違いそれでは斬ることはできない、せいぜい打撃を与える程度が関の山・・・・・・いや、恭也や士郎さんが持ってるならそれだけで凶器認定されるから撤回しておこう。まぁ俺が言いたいことはと言うとだ、
「お前何がしたいんだか」
軽く足首だけて持ち上げて爪先で地面を叩くとそのシングルアクションに反応して障壁が現れる。そして障壁と木刀がぶつかりーーーーーー障壁が砕け、木刀は真っ二つにへし折れた。
「ーーーーーーへ?」
「バァン」
マヌケ面しているマヌケの顔面に手を銃のような形にして人指し指を向ける。そして気の抜けた発砲音を口にすると人指し指から黒い塊ーーーーーーガントが放たれてマヌケのマヌケ面に命中した。それを受けたマヌケは派手に吹っ飛びながら遠坂凜とエーデルフェルトのところまで戻る。
「マヌケに阿呆、偽善に独善・・・・・・大義名分に酔ってよがっている馬鹿の相手は疲れる。そう思わないか?錬鉄の英霊さん?」
「・・・・・・そうか、お前は私の正体を知っているのだったな」
「おう知っているとも。バラされたくなかったらバラさないがな」
「・・・・・・どういうつもりだ?」
「いいやね、俺個人としてはお前のことをひじょーに尊敬しているわけよ。その夢見たものが破綻した物だと気づいていながらもその理想に殉死したその一生。文字通り一生涯、さらには自身の死後まで賭けても赤の他人を、見知らぬ誰かを助け続けた。俺とは真逆なんだよ、お前は。お前はより多くの人を救うために一を切り捨ててでも十を救おうとした。で、俺は十を切り捨ててでも大切な一を守りたいと思っている。まるで鏡合わせのようじゃないか、俺とお前は。まぁ余計なことを言ってしまったが要するにそう言うことだ。死んでもなお自分の一念を通し続けた俺とは真逆なお前のことを俺は心から尊敬している。だから多少の融通なら効かせてやろうと思っているのさ」
「ならば黙っていてくれ。これは私の戦いではない。なら私の正体などこの戦いにとっては取るに足らない些末な問題だからな」
「承知した、少なくとも俺の気が変わらぬ内はお前の正体は黙っておこう。その様子だと誰にも教えてないみたいだからな」
たばこがすべて灰になったので残っていたフィルターを投げ捨て、新しいたばこをくちに加える。遠坂凜とエーデルフェルトは衛宮士郎に気が向いているがセイバーとアーチャー、それに負傷しているライダーはやる気満々のようだ。
「私からの質問だ。八神時雨、お前は降服するか?」
「ハッ、答えは否だよブリテンの王様よ。ゴールは見えているのにリタイアなんてするかよ。手足もがれて四肢がなくなって様が芋虫のように醜く這いずり回りながらでもゴールを目指してやるよ」
「ーーーーーーそうか、ならば!!」
そう言うとセイバーが魔力をブースターのように噴出しながらこちらに突進してきた。これが魔力放出のスキルか、やっぱり適当に再現された物よりも本物を見た方が参考になる。魔力放出によって加速されたセイバーはまるで大地を駆ける青い閃光のように見える。このままなら一秒もしない間に俺の元にやって来て斬り伏せることなど容易いだろう。簡易障壁を張ったとしてもあの聖剣を防げるとは考えにくい、シングルアクションじゃなくて最低でもトリプルアクションは欲しいところだ。と、なれば取るべき手段は一つ。
「ーーーーーー
ーーーーーーー素直にトンズラさせて貰うとしよう。
取ったと、セイバーは思った。振り抜く剣は水平、だが殺すための物ではない。闇の書のシステムによる転生機能を起動させないために主を殺してはならないと教えられていた。だから殺さない、だが腕の一本は確実に取るつもりで剣を振り抜く。そして時雨に剣が当たったと確信したとき、
「ーーーーーー
その呟きと共に、時雨の姿が消えた。
「なっ!?」
『ひゅー♪危ないねぇ。俺じゃなかったら逃げられなかったかもな』
「っ!?どこに消えた!!何をした!!」
『前者には教えるかよぶぁーか!!と、後者には強者がつまらぬ小細工と言って切り捨てるような弱者の技術と、答えようか』
まるで四方八方から木霊のように時雨の声が響いて聞こえる。目的の相手を見つけたというのにみすみす逃げられたことに遠坂凜、ルヴィアゼッタ・エーデルフェルト、衛宮士郎は悔しそうに歯を食い縛る。
「逃げるのか?八神時雨。貴様の正体を知った我々を見逃して」
『あぁ逃げるさ。俺は諦めの悪い悪党と違って死に場所を選ぶたちでね。
「っ!?逃げろ!!」
「っ!?逃げて!!」
『っ!?逃げろ!!』
セイバーとアーチャーが突然焦ったような表情になって逃げるように指示をした。ライダーは傷が深かったのか霊体化しているがそれでも二人と同じように逃げるように言っている。
「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」
おおよそ人があげるとは思えないような獣じみた咆哮が上がり、閃光が現れた。その閃光は何が起こったのか理解できないでいるマスター三人ーーーーーーではなく警戒していたサーヴァント二騎に目掛けて突撃している。
「ーーーーーー」
「ーーーーーーーこれ、は」
アーチャーは閃光の現れる僅か前から反応して、セイバーは閃光の現れると同時に反応していたために閃光の射線上から逃げることができた。そして目標を通過した閃光は地面を抉りながら上空に向かい、停滞した。
『だから、敵を用意してやろう。血肉を分けた我が分体、始まりを同じにして別離した存在、我が獣性が相手をいたす』
閃光の正体、それは
「あれはーーーーーーーまさかライダーの!?」
セイバーは獣性のーーーーーーー正確に言えば彼女が操っている宝具の正体に驚いていた。セイバーには聖杯戦争の記憶が残されている。その中でセイバーは獣が使っている宝具を持った別のサーヴァントと戦っている。そのサーヴァントのクラスはライダー、そしてライダーが操った宝具はーーーーーーー
『さぁ、
「ベ・・・ベ・・・
「
冬木と呼ばれる町を舞台にして行われた第五次の聖杯戦争において、ライダーのクラスに召喚されたサーヴァントーーーーーーーメデューサの宝具がセイバーとアーチャーに襲いかかった。
~「悪趣味も良いところね、貴方の精神年齢を疑うわ」
全世界の【不思議の国のアリス】のファンの方々に土下座したい気持ちです。
~衛宮士郎
性格的には原作の衛宮士郎と同じもの。だが彼に埋め込まれているはずの
~「俺が、君らが探し求めていた闇の書の主だよ」
ついに明かされる驚愕の新事実ぅ!!・・・・・・まぁ読者さんからすればそうでもないですけど。ちなみに時雨はやけっぱちでバラしたわけではなく、彼の考えている計画に基づいてバラしています。
~時雨のアーチャーの評価
時雨はアーチャーのことを尊敬しています。時雨が身内を守ることに全力でその他を見捨てることに対して、アーチャーこと■■■■■■は身内を見捨ててでも多数を救う生き方をしています。それこそ死後に
~
ライダーの姉さんの宝具を引っ提げての登場。そしてまさかの女性キャラ。イメージとしては高身長でスレンダースタイルで時雨似の顔。
~時雨の容姿
思えば時雨の紹介をしていなかったので容姿だけの説明。作者の中では時雨の顔は型月で言うところの青崎橙子似、西尾維新で言うところの人類最強のあの人の顔に似た男性と考えています。
感想、評価をお待ちしています。