調律者は八神家の父   作:鎌鼬

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第弐拾幕 狂信者、王の軍勢、無限の剣製

 

 

衛宮士郎、遠坂凛、セイバー、アーチャーは不思議の国(ワンダーランド)の中、そしてここは夢の欠片もない現実の世界。ほとんど崩壊した廃工場で英霊と狂信者の戦闘が行われていた。

 

 

「ーーーーーーシィィィィィイ!!!」

 

 

叫びと共に放たれるのは狂信者ーーーーーーアレクサンド・アンデルセン神父が主だった武装としている武器、法儀礼処理の施された銃剣。本来接近戦に使われるはずのそれは大気を切り裂き、月明かりに照されて煌めく軌跡を残しながら空を駆ける戦車(チャリオット)に股がる英霊ーーーーーーライダーの元に向かっていく。

 

 

「ーーーーーーフンッ!!」

 

 

放たれた銃剣は六、それらをライダーは腰に下げていた剣で凪ぎ払った。しかしすべてを払える訳ではなく撃ち落とせたのは五本、残された一本がライダーが戦車(チャリオット)の手綱を握っている腕の肩口に突き刺さる。

 

 

「ハハッ!!やりおるわい!!」

 

 

傷つけられたというのにライダーは楽しそうに笑いながら肩に刺さった銃剣を投げ捨てた。

 

 

サーヴァントというのは神秘を宿した奇跡の存在である。そうであるが故にサーヴァントを傷つけるには同じく神秘を宿した存在で無くてはならない。例を挙げてしまえばナイフ、銃器、ミサイルーーーーーー恐らく現段階で最高の威力を持っていると思われる原子力爆弾でさえその物に神秘を宿していないならサーヴァントに掠り傷一つ着けることは叶わない。しかしちっぽけでも、欠片でも神秘を宿しているのなら、例え鉄パイプや角材、炉端に転がっているような石ころでさえサーヴァントに傷をつけることは出来るのだ。

 

 

アンデルセン神父の銃剣には法儀礼ーーーーーーつまり彼が狂信しているキリスト教による洗礼が施されている。それは人類の敵である化物(フリークス)と呼ばれる存在を殺すために施されてる処置、つまりは神秘を後天的に宿させていることに他ならない。それ故に、アンデルセン神父の銃剣はサーヴァントに届く牙となる。

 

 

「チィ!!何時までも空に逃げおって!!」

「そう思うのであるなら手を貸そう」

【身体は重く、大地を踏み締める】

「ヌ、ウゥ!?」

 

 

アンデルセン神父の苛立った声に八神時雨が動いた。唱えられた言葉によって起動する魔術は【加重】、簡単に言えば重みを加算すると言った物。普通に重力を受けている状態を一とするならば時雨の魔術はそこに十の重みを与える。時雨自身が空を飛ぶ相手によく使う魔術であるが弱点が存在する。それは相手が地面に接しているならば効果を受けないというもの。つまり普通に地面に立っている相手に【加重】を使ったとしてもなんら意味の無い。しかしその分効果は絶大、対魔力のスキルを持っていたなら変わっていたであろうがライダーはそのスキルを持っていない。空を駆けていた戦車(チャリオット)は時雨の【加重】に負けて徐々に高度を下げていき、終には地面に降り立ってしまった。それを見たアンデルセン神父は漸く神罰を与えられる機会を得られたと言った嬉しそうな表情で地面に降り立っているライダーを睨み付ける。

 

 

「ヌゥ・・・これは・・・」

「何を弱気になっているの!!ライダー!!」

 

 

狂信者との対峙に思わず冷や汗を流すライダーを叱咤したのは意外なことに今まで口を出さなかったライダーのマスター、ルヴィアゼッタ・エーデルフェルトだった。

 

 

「相手が狂信者?相手が封印指定?そんなことは関係無いですわ!!貴方は征服王なのでしょう!?相手が何であろうと蹂躙しこれを征服する!!それが征服王たる貴方なのでは無くて!!」

「ーーーーーーハハッ!!ぬかっておったわい」

 

 

よもや自分の齢に届かぬような小娘から叱咤されると思っていなかったのか、ライダーの表情は笑みを張り付けた物へと代わる。

 

 

状況は何ら代わり無い。ライダーの宝具である神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)の空を駆けるという利点は潰され、自分を殺しうる武器を持った狂信者との真っ向勝負。しかしライダーの内心は代わり、成すことを決めていた。

 

 

ーーーーーーこの狂信者と、それを操る者をすべて蹂躙する。

 

 

「主らよ、一つ尋ねようーーーーーーーーーーーー王とは孤高なるや、否や」

「知らん。そのようなことになんぞ興味ない」

 

 

雰囲気を変えたライダーの言葉にアンデルセン神父は興味が無いと一蹴した。それもそうだろう、アンデルセン神父は狂信者、その関心は己を捧げた神にのみ向けられている。故に王などには関心を示さない。

 

 

「取り付く島も無いのぅ・・・・・・それではお主はどうだ?」

 

 

ライダーが目を向けた先にいるのはアンデルセン神父とライダーの戦いを一度手を貸した以外には静観を保っていた時雨。ライダーの言葉に少し考えた素振りを見せて時雨は口を開いた。

 

 

「民衆を守り、騎士を率いることで国を治めた王がいれば己の力だけで国を統治する暴君のような王もいる。そもそも王の形は千差万別なんだ、王の数だけそれぞれの王の形というものがある・・・・・・それを踏まえて聞かせてもらおう。征服王イスカンダル、お前の示す王の形とは何ぞや」

「ーーーーーーハッ!!言うたな」

 

 

東に善政で国を治めた良王がいるのなら西に悪政で国を治めた悪王がいる。だから王の数だけそれぞれの王の形があると、時雨はそう答えた。そして質問を投げ返す。イスカンダルの王の形とは何だと。

 

 

「ならば見せてやろう!!征服王イスカンダルの王としての形をーーーーーー我が王道を!!」

 

 

そう叫ぶと共にライダーを中心として世界が()()()()()()()。崩壊した廃工場など影も形も無く、目の前に広がるのは強い陽射しが容赦無く照らし続ける灼熱の砂漠。

 

 

「これは・・・」

「固有結界か、魔術師でも無いのによくやる」

「ーーーーーーもちろん違う。余一人で出来ることではないさ」

 

 

アンデルセン神父と時雨から遠く離れた場所にライダーはいると言うのにその声は二人の耳に届いた。そしてライダーは乗っていた戦車(チャリオット)からルヴィアを残して降り、砂漠に足をつける。

 

 

「これは、かつて我が軍勢が駆け抜けた大地。余と苦楽を共にした勇者たちが等しく心に焼き付けた景色だ」

 

 

ライダーの背後から砂煙が見える。

 

 

「この世界、この景観をカタチにできるのはこれが我ら全員の心象であるからさ」

 

 

ガチャガチャと鎧が擦れる音が聞こえる。

 

 

「ーーーーーー見よ!!我が無双の軍勢を!!!」

 

 

ライダーはどこからかやってきた黒馬に股がり、片腕を一杯に広げる。そうして現れたのは文字通り軍勢だった。誰一人残らずに武装した集団が足並みを揃えて行進している。そしてアンデルセン神父は気づく、その軍勢の一人一人がライダーと同じような存在であると言うことに。

 

 

「肉体は滅び、その魂は英霊として【世界】に召し上げられ!!

 

 

それでもなお!!余に忠義する伝説の勇者たち!!

 

 

時空を越えて我が召喚に応じる永遠の朋友たち!!

 

 

彼らとの絆こそ我が至宝!!我が王道!!

 

 

イスカンダルたる余が誇る最強の宝具ーーーーーーーーーーーー【王の軍勢】(アイオニオン・ヘタイロイ)なり!!!」

 

 

宝具【王の軍勢】(アイオニオン・ヘタイロイ)、それは征服王イスカンダルの有り余る統率力が具現化したとも言える宝具。イスカンダル個人だけでなく、彼の臣下となった者たちの支えと共に発動される固有結界、そしてその固有結界内にてイスカンダルが部下とした者たちをサーヴァントとして召喚する、規格外とも言える宝具。

 

 

この宝具の在り方はかくも完璧な絶大なる支持、宝具の域にまで達する臣下との絆。

 

 

皮肉にもそれは理想の王こそが正しき王の形であると信じた王が生涯手にし得なかったモノであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「王とはっ!!!誰よりも鮮烈に生き諸人を魅せる姿を指す言葉!!」

 

 

 

 

「「「「「「「「「「オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」

 

 

イスカンダルの言葉に彼の臣下たちが興奮したように叫びをあげ、石突きで大地を叩き、足を踏み鳴らした。

 

 

 

 

 

 

「すべての勇者の羨望を束ね、その道標として立つ者こそが【王】っ!!!!」

 

 

 

「故にーーーーーー王は孤高にあらず!!!!その偉志はすべての臣民の(こころざし)の総算たるが故に!!!!」

 

 

 

 

 

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「

 

           然り!!!

 

 

           然り!!!

 

 

           然り!!!

 

 

           然り!!!

 

 

           然り!!!

 

 

」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

 

 

 

 

 

イスカンダルが呼び出した勇者たちの咆哮が灼熱の大地に響き渡る。そして誰もが前を見据えた。そこにいるのはアンデルセン神父と時雨。

 

 

意気揚々、士気は十二分に高まっている。しかし誰も始めの一歩を踏み出そうとしない。何故なら、この蹂躙の引き金を引く人物は決まっているのだからーーーーーー

 

 

「ーーーーーー蹂躙せよおぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

イスカンダルの号令に弾けるようにして歩兵たちが走り出した。歩兵たちの後ろには合わせるような速度で騎兵たちが連なり、それは人が作り出した津波のように見えた。

 

 

「ーーーーーーさて、相手は名高い征服王イスカンダル。そして彼が勇者と信ずる臣下たち・・・・・・・・・お前の勝機は如何程のものだ?万か?億か?それとも(けい)か?」

「ーーーーーー例えそれが、那由多の彼方だとしても俺には十分過ぎる」

 

 

時雨の言葉にそれだけを返し、アンデルセン神父は征服王の軍勢を睨んだ。そして手にした銃剣を擦り会わせながら、キリスト教のシンボルたる十字を作る。

 

 

「ーーーーーー我らは神の代理人、神罰の地上代行者

 

 

我らの使命は我が神に逆らう愚者をその肉の最後の一片までも絶滅させること

 

 

Amen (エイメン)

 

 

祈りの聖句を唱え、アンデルセン神父は征服王の軍勢に向かって駆け出した。

 

 

例え相手が万だろうが億だろうが狂信者(アンデルセン)には関係無い。

 

 

目の前に異端が徘徊しているのなら己が身命を賭してでもこれを絶滅させる。

 

 

だから彼は死地へと向かう。

 

 

Aィィィィィィィmen(エイィィィィィィィメン)!!!!!!!」

 

 

Amen (そうあれかし)と叫んで斬りかかる。それだけの話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シィィィィィィィィィィィィイ!!!」

 

 

ー前へ

 

 

イスカンダルの宝具王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)、その兵の運河の中をアンデルセン神父はたった一人で突き進んでいく。

 

 

ー前へ

 

 

立ちはだかる兵の首を飛ばし、胴を凪ぎ、腕を落としながら兵の運河の奥にいる(イスカンダル)へと愚直に突き進む。

 

 

ー前へ、前へ

 

 

敵は万にも及ぶ軍勢。その中を突き進むとなれば無論アンデルセン神父とはいえど無傷ではない。

 

 

ー前へ前へ

 

 

兵の構える矛がアンデルセン神父の胴に突き刺さる。兵の持つ盾がアンデルセン神父の顔にぶつけられる。しかしアンデルセン神父はそんなことに構うこと無くただただ突き進む。

 

 

ー前へ前へ前へ

 

 

つけられた傷が煙をあげながら再生していく。これはアンデルセン神父が異端と戦うために施した再生者(リジェネーター)と呼ばれる技術。これが有る限りアンデルセン神父は矛が胴体を貫通する程度の傷では死なない、死ねない。

 

 

ー前へ前へ前へ前へ

 

 

「グゥッ!?」

 

 

半裸の男が振るう剣によってアンデルセン神父の右腕が皮一枚残す程度に切り裂かれた。再生者(リジェネーター)はあまりにも欠損が大きすぎると作用しなくなる。今回がまさしくそれである。しかしアンデルセン神父はそれがどうしたと言わんばかりに残った左腕に握っていた銃剣で半裸の男の胸を突き刺し、力任せに上半身と下半身を引きちぎった。

 

 

ー前へ前へ前へ前へ

 

 

皮一枚で何とか繋がれている右腕にはまだ銃剣が握られていた。するとアンデルセン神父は右腕の服の袖を噛んで、また突き進み始める。

 

 

ー前へ前へ前へ前へ、前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!!!!!」

 

 

身体には幾つもの矛が刺さり、顔は再生者(リジェネーター)の再生が追い付かない程に青アザだらけ、右腕は皮一枚残った状態が何とも痛々しい。それでもアンデルセン神父は前へと進む。

 

 

ただ、信ずる神の怨敵を滅ぼさんとするために。

 

 

「爆!導!鎖!」

 

 

鎖に繋がれた銃剣を投げる。その銃剣はアンデルセン神父の前に立つ兵たちの頭部へと突き刺さり、柄に仕込まれていた火薬が爆発したーーーーーーそして、ようやく兵の運河のその先に待つイスカンダルの姿を捉えることに成功する。

 

 

「ーーーーーー逃がさんぞ」

 

 

爆発によって開かれた兵の運河をアンデルセン神父は進む。

 

 

「シィィィィィィィィィィィィイ!!!!!」

 

 

そして血で濡れた銃剣を振りかざし、イスカンダルへと飛びかかるーーーーーー!!!

 

 

「ヌゥン!!!」

 

 

イスカンダルは銃剣を腰に下げていた剣で打ち払い、空いていた腕で拳を作ってアンデルセン神父の顔面を殴り抜いた。

 

 

「見事であった」

 

 

イスカンダルが投げた言葉はそれだけ、それだけを言ってアンデルセン神父の胴体に向けて剣を振るう。手応えも無く剣は振り抜かれ、アンデルセン神父は上半身と下半身が別れて地面にへと落ちていった。いかに再生者(リジェネーター)とは言えどもこの傷は致命傷。つまり、アンデルセン神父は死ぬ。

 

 

「ーーーーーー負けたか、アンデルセン」

 

 

大地に臓物と血をバラ撒きながら死にかけているアンデルセン神父の前に時雨が立っていた。己が呼び出した者の死に行く様を見届けようと現れたのだ。それを邪魔する者はいない。

 

 

「ーーーーーークハッ、俺はいく。お前はいつまで生きるのだ?異端になった哀れなお前は一体いつまで生きねばならない?」

「俺が守りたいものが幸せだと、幸福だと笑っている日々が来るまでだ。なぁに、直ぐだ。狂信者よ、機会があるならばいずれ地獄でまた会おう」

 

 

時雨の返答に満足したのか、アンデルセン神父は口許を歪ませた。

 

 

「あぁ・・・・・・声が聞こえる・・・あれは童たちの声なのか」

 

 

アンデルセン神父の傍らに落ちていた剣を時雨は拾い上げて地面に突き刺した。偶然か必然か知らないがその剣の影はキリスト教のシンボルの十字の形になっていた。

 

 

「皆が遊ぶ声がする・・・子・・・供・・・ら・・・が・・・行か・・・なきゃ・・・みんな・・・がま・・・っ・・・て・・・マク・・・スウェ・・・ルが・・・みん・・・な・・・泣い・・・て・・・は・・・いけ・・・ま・・・せ・・・ねる・・・まえ・・・に・・・おい・・・の・・・り・・・を・・・・・・Amen」

「Amen」

 

 

そうしてアンデルセン神父は力尽きて、大地に染み込んだ血痕だけを残して世界から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーーさて」

 

 

アンデルセン神父の最後を見届けた時雨は【HELLSING】と書かれた本を閉じて懐にしまった。現状況は四方八方を王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)の兵たちに囲まれていて、まともな感覚の者が見たならば誰もが絶体絶命であると口を揃えて言うに違いない。

 

 

「次はお主の番だぞ?」

「らしいな。しかし、あれだな」

「何か?」

 

 

時雨はタバコを取り出して一服を始めた。彼方からやって来る熱風に吐き出した紫煙が消えていく。

 

 

「復讐だなんて言うつもりはないよ。確かに呼び出したのは俺だがあの戦いは間違いなくアンデルセンだけの物だ。それをいまさら外野の俺が口出ししたところで結果が変わるわけでもないしアンデルセンが報われる訳でもない。けど・・・・・・あそこまで狂おしい程の一途な信仰を見せつけられたら()()じゃ()()()()

 

 

【I am the bone of my sword.】(身体は剣で出来ている)

 

 

言霊を謳いながら上げた足を踏み鳴らす。すると時雨の足下から炎が上がって灼熱の世界に広がっていった。思わず顔を腕で庇ってしまうイスカンダルと兵たち。そしめ腕を退けた時には灼熱の世界は無くなっていた。

 

 

 

 

 

 

赤く染まった空に錆び付いた無数の歯車が回っている

 

 

荒れた大地に剣が墓標のように乱立している

 

 

そしてそれらの剣は古今東西に散らばった魔剣聖剣ーーーーーーそれらの贋作

 

 

「来やがれよイスカンダル、貴様が王道たる征服で俺の守りたいものを蹂躙しようと言うのならば、俺は俺のすべてを賭けてでも殺戮を持って貴様を討ち滅ぼす。それが絶対、俺が決めた俺のルールだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「故に、()く去ね」

 

 

時雨はそれだけを宣言して地面に突き刺さっていた白と黒の剣ーーーーーー攻刀と守剣を引き抜いて周りにいた兵たちの首をはね飛ばした。それが極当たり前であるかのように行われた為に兵たちの反応はなかった。が、首を跳ねられて消えていく仲間たちを見てから事が起きたことに気付き、時雨に向かって殺到する。

 

 

投影開始(トレース・オン)

 

 

しかしその時にはそこに時雨の姿はなく、上から聞こえた詠唱にようやく時雨が上空にいることに気づいた。コートをはためかせながら飛んでいる時雨の手には黒塗りの弓、そして歪に捻れ曲がった剣が握られている。

 

 

偽螺旋剣(カラドボルク)

 

 

弓につがえられ、矢の代わりに放たれた螺旋剣は兵の運河に突き刺さり、爆音と共に爆ぜた。

 

 

「螺旋剣で1%削れたって感じだな・・・・・・なら、もっと大雑把に行こうか」

 

 

螺旋剣によって出来たクレーターを見下ろしながら時雨は更に投影を続ける。

 

 

投影開始(トレース・オン)全行程破棄(ロール・キャンセル)

 

 

投影された剣はただ巨大。空を覆い、山ですら切り裂くことができるのではないかと思うほどに規格外のサイズの剣だった。それを時雨は兵の運河に向けてぶつける。

 

 

虚・千山斬り拓く翠の地平(イガリマ)

 

 

外見だけとはいえど作られたのは神造兵器、大地を切り裂かんが勢いで巨大な剣は兵の運河を断ち切った。

 

 

「Aaaaaaalalalalalalalalalalalalalalalalalalalalalalalalalalalalalalalalalalalalalalalalalalalalala!!」

 

 

そしてそんな中でなんと虚・千山斬り拓く翠の地平(イガリマ)を伝って登ってくる影が見える。黒馬に股がり、赤いマントを翻す偉丈夫、征服王イスカンダルである。それを見た時雨も虚・千山斬り拓く翠の地平(イガリマ)に降り立ってイスカンダルへと向かう。

 

 

投影開始(トレース・オン)

 

 

三度行われる投影、次に作られたのは鞘に納められた日本刀だった。刀が鞘から引き抜かれると刀身から青い炎が上がる。

 

 

「オォォォォォォォォォォ!!!」

「ーーーーーー焔千刀(ホムラセントウ)

 

 

音もなく時雨とイスカンダルはすれ違う。そしてーーーーーー崩れ落ちたのはイスカンダルの方だった。全身が切り裂かれたように血塗れ、そして乗っていた黒馬は二十以上の肉片にへと綺麗に解体されてしまっている。

 

 

「こ・・・・・・これ程とは・・・・・・」

「死神の2つ名は伊達じゃないのさ。さて、これにて征服王の征服歌劇は演目終演、スタッフロールに・・・・・・あ?良かったなイスカンダル、まだ終わりじゃないらしいぞ」

 

 

投影した焔華(ホノカ)をイスカンダルの首に振り下ろそうとして時雨は手を止めた。この固有結界の中に入ってきた侵入者を感知したからである。侵入者の数は四人、当然のことながら時雨は侵入者たちの状態が分かっていた。

 

 

「よくぞ不思議の国よりご帰還されたな。セイバー、アーチャー、衛宮士郎、遠坂凜」

 

 

そう、侵入者の正体は固有結界虚構現実(リアルフィクション)に閉じ込めていたはずのサーヴァント二騎とそのマスター二人だった。

 

 

 






~サーヴァント
この小説では現代兵器は効果は薄いが、魔術的な要因のあるものなら効果があることにしました。ちなみにリリなのの魔導師の使う魔法は魔術とは違いますが効果はあるということで。

~王の形
王の数だけ答えのあるもの。ギルガメッシュのように独裁な王を良しとするもの、イスカンダルのように征服を良しとするもの、アーサー王のように民を重んじる善政を良しとするものと様々。他の王の政治を鼻で笑える王が正しいと作者は考えています。つまりzeroのセイバーは王として未熟なこと未熟なこと・・・・・・

王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)
ライダーとして召喚されたイスカンダルの宝具。彼と関わりのある者をサーヴァントとして召喚する固有結界を展開する。作者がこれを見たときの感想は「数の暴力って素敵ね!!」である。

~アレクサンド・アンデルセン
筋力B++ 耐久C++ 敏捷B++ 幸運B 魔力? 宝具?
クラス別スキル【狂化C】
固有スキル【狂信者EX】【再生者B】
狂信者・・・狂うほどに信仰が厚い者に与えられるスキル。その宗教において敵対するとされている存在と対峙するときに筋力、耐久、敏捷のステータスが上昇する。EXとなれば2ランク程上昇する。
再生者(リジェネーター)・・・傷をおったとしても即座に再生する技術。負傷の程度によっては即死級の傷であったとしても即座に蘇生、再生して立ち上がることができる。しかし四肢の欠損など、程度が大きければ再生しないことがある。
アンデルセン神父のステータス。考えてから改めてみるとぶっ壊れだなぁおい・・・・・・!!でもアーカードの旦那と殺るんだったらまだまだ足りないレベルなんだろうけど。

虚・千山斬り拓く翠の地平(イガリマ)
ちょーでかい剣。プリヤではツヴァイでギル様が振り回したり、ドライで美遊のアンちゃんが作ってた剣。作者では時雨が振り回していたように思える描写になってたかもしれないけど実際には重力で落ちていくのを操作して落としていたから振っているように見えただけ。文章力が無くてすいません。


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