調律者は八神家の父   作:鎌鼬

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第7話

 

 

「あ、ありのままに起きたことを話すぜ!?シグナムとの試合を終えて家に帰ったら家が木の根っこに囲まれていた!!な、何を言ってんだか分からねぇと思う・・・・・・っ!!頭がどうにかなっちまいそうだ・・・・・・っ!!自然現象とか天災だとかそんなチャッチイもんじゃねぇ・・・っ!!もっと恐ろしい物の燐片を味わったぜ・・・・・・っ!!」

「ポルナレフぇ・・・・・・」

「お父さん、ネタやって落ち着いた?」

「あぁ、やっぱり慌てた時こそネタに走るべきだな」

「待ってください、その考え方はおかしい」

 

 

シグナムの突っ込みを無視しながら現状を把握。我が家の周囲には世界樹の根っこじゃねぇの?ってくらいのサイズの木の根が張り巡らされている。事前に俺とシャマルとリニスで敷いておいた魔術&魔法の混合式の物理障壁によって家に対する物理的な被害は無し。

 

 

「リニス、朝シャマルが作ってたBOW まだある?」

「あのスポーツドリンクの名称を持った兵器ですか?産業廃棄物として処分するつもりで保管はしてありますが?」

「それ持ってきて」

「私の作った料理をディスるのはやめてください!!良くできてるじゃないですか!!」

「「「「「「お前の目は節穴か!?!?」」」」」」

 

 

シャマルの一言に驚愕した全員による突っ込み、あれはもうバイオウェポンだね。戦争やってるところに持ち込めば高値で売れると思うよ。

 

 

「持ってきましたよ」

「あんがとさん」

 

 

リニスが持ってきたのは瓶詰めされたシャマル印のバイオウェポン通称『スポーツドリンク』。それをリニスから受け取り、

 

 

「ぬぅん!!」

「出た!!父ちゃんのトルネード投方だ!!」

 

 

体をねじり、オーバースローで思いっきりぶん投げる。当然の如く投げられたバイオウェポンは木の根に向かっていき、

 

 

ガシャン←瓶が割れる音

ピシャッ←中身が飛び散る音

ジュワァァァア←木の根が腐敗して溶ける音

 

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「何か言い訳は?」

「生まれてきてごめんなさい」

 

 

うん、これはしょうがない。何せ家を囲っていたはずの木の根が一瞬で消えたんだから・・・・・・なんか威力上がってね?殺傷能力がグレードアップしてね?なんで消滅するレベルにまで到ってんだよ。よく消えなかったな、あの瓶。

 

 

「シャマルの始末は後にするとして」

「あれ?然り気無く私の人生終了のお知らせ?」

「ちょっとこれの原因探してくるから皆は待っといて」

「あ、私も行きますね。サポートは任せてください」

「ならこれ、気配遮断と認識阻害をかけた仮面作っといたから」

「手際がいいですね。いつの間に作ったんですか?」

「夜の内に。また昨日みたいな奴と戦ったときに人に見られると面倒だから作っといた。」

 

 

そう言いながらリニスに『不忍』と書かれた仮面を渡す。カッコいいよね忍ばずさん、いつの日か断罪炎刀と叫びながら斬りかかってみたい。

 

 

「んじゃこっちも。【暗殺者・無貌の暗殺者】」

 

 

リニスが仮面を着けたことを確認してからカードを握り潰す。するとカードは光の粒に変わり、骸骨のような仮面にボロボロの黒いローブ、そして右腕にはぐるぐるに巻かれた帯というどこからどうみてもアサシンスタイルに変わっていた。

 

 

「留守番任せた」

「行きましょう」

 

 

そして俺たちは家から町に飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところでどこに向かっているのですか?」

 

 

飛び出してから数分後、空を飛んでいるリニスが地面を走っている俺に話しかけてきた。

 

 

「取り合えず根っこ辿って大本のところに行ってみる。それで外れならまた後で考える」

「行き当たりバッタリですね」

「否定するなら代案を出せ。それじゃただごねてるだけと代わりないぞ」

「否定してませんよ。サーチャーを飛ばして調べてみましたが原因と思われる魔力を見つけました。方向はあっているのでこのままいけば問題ないですよ」

「そうか、ならもう少し飛ばすぞ」

 

 

スピードを上げて民家の屋根を伝いながら原因の元に向かう。そんな中で目につくのは無作為に伸ばされた木の根の被害に会っている人々の姿。車は薙ぎ倒されてビルには突き刺さり、民家は押し潰されて崩壊している物まである。

 

 

「ヒュ~すごい光景、まさか平和な日本でこんな光景を目にできるとは思わなかったよ」

「管理外世界なら無いですけど管理世界ではそうでもないですよ?一人の魔導師が半径10㎞を焦土にしたりとかありましたし」

「何その人類最終兵器。シャマルのバイオウェポンとどっちが凄いのかね?」

「10対0でバイオウェポンの勝ちです」

「即答ですか」

「当たり前じゃないですか」

「シャマルぇ・・・・・・」

 

 

シャマルのバイオウェポンの恐ろしさを確認しながらビルの屋上まで一気に跳躍する。そこから見えたのは高さ100mを越える御神木と言われても違和感のない立派な大樹の姿。ポッカリと空いた虚の中には少年と少女の二人が蒼い何かにコーティングされていた。

 

 

「あれが原因と見て間違い無さそうだな」

「恐らく昨日と同じジュエルシードの仕業でしょう」

「ジュエルシード・・・あぁ、あの蒼い宝石か」

 

 

思い当たるのは昨日の異形を倒したときに現れた二つの蒼い宝石。調べてみれば俺の所有している最上級の宝石なんて足下にも及ばないほどに膨大な魔力を保有していた。それが原因ならこの事態も頷ける。

 

 

「確か持ち主の願いを歪んだ形で叶えるんだっけ?どこの汚染された聖杯だよ。冬木の町にお帰りください。あとアハトのクソ爺は死ねばいいと思う」

「なにトチ狂ったことを言ってるんですか。私が封印してきますから警戒をお願いしますよ」

「最近リニスの態度がセメントになってきた件について。出会った頃の優しいリニスはどこに行った・・・・・・っ!!」

 

 

俺を無視して大樹の元に向かうリニスにひっそりと涙を流しながら周囲を警戒する。離れている奴はいるがこちらに向かっている人の気配は無し。魔力は・・・・・・っ!?なんだこのトチ狂った馬鹿げた量の魔力は!?

 

 

「リニス!!」

「あと一分です!!」

 

 

リニスも魔力に気がつき急いでいるがそれでもかかると判断した時間は一分。リニスが封印を終えるよりも向こうが魔力を溜め終えて攻撃する方がどう考えたところで圧倒的に早い。

 

 

「あぁクソっ!!使い捨てで勿体ねぇから出来るだけやりたくは無いんだけどなぁおい!!」

 

 

幸いにして俺の立ち位置は馬鹿げた魔力とリニスの丁度間、そして足下のビルは被害が少なかったのかしっかりとしている。ならばここで俺がリニスを守るための壁になればいいローブをはためかせてそこから周囲にトランプサイズのカードを撒き散らす。ただしただのカードではなく俺の魔力を込めた宝石と火を表すルーン文字を刻んだカードだが。

 

 

「ふぅ・・・・・・」

『世界を構築する五大元素の一つ』

『偉大なる始まりの炎よ』

 

 

詠唱と共にルーンのカードから炎が沸き上がる。ただしその色は普通の赤い炎ではなくすべてを溶かし尽くさんと燃えるどす黒い炎。

 

 

『その名は炎!!』

『その役は剣!!』

『我が身を喰らいてその姿を現せ!!』

 

 

『我が名が最強であることをここに証明するために!!』

 

       イノケンティウス

『顕現せよ!!魔女狩りの王!!!』

 

 

沸き上がる炎は一ヶ所に集まり炎の巨人へと姿を変える、その姿は大樹を守るために現れた守護者のように見えなくもない。そして炎の巨人が現れたと同時に桃色の砲撃がこちらに向けて放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時雨たちのいる大樹から離れた場所に三人の子供の姿があった。

 

 

一人はこの世界の主人公にしてヒロイン、【魔王】【管理局の白い悪魔】【戦闘民族高町の一人】【OHANASHI少女】【砲撃魔】【魔法少女?魔砲少女じゃないの?】などの呼び声の高い高町なのは。ちなみにまともな登場は初めてじゃないか?

 

 

「後半ただの罵倒じゃないの!?」

「なのは?どうしたの?」

 

 

そんななのはの肩に乗るのは一匹のフェレット、名前はユーノ・スクライア。彼がジュエルシードの発掘者で散らばったジュエルシードを回収するためになのはに協力をしてもらっている。時雨にこの事を知られれば今晩の八神家の食卓にはフェレットの活け作りが並べられるだろう。

 

 

「集中しろなのは、お前ならできるはずだから」

 

 

なのは以外にいるのは二人の少年、今話しかけてきたのは藤峰アリスという金髪碧眼の男の娘(誤字に非ず)。彼はミッドチルダ出身の母親と地球出身の父親を持つ地球でありながら魔導師でもあるややこしい立ち位置にある。そして時雨以外にも存在する転生者の一人でなのはとは幼馴染みの関係になる。

 

 

「そうだよ!!なのはなら出来るよ!!」

 

 

アリスに追従するように進言したのは黒髪で凛々しい顔付きの少年、名前は相井神悟。彼も転生者の一人で勧善懲悪を良しとする正確と顔から学校内で多数の少女から好意を寄せられながらも超がつく程の鈍感スキルを持っているために一切それらに気が付いていない。そして思い込みが激しい。

 

 

蛇足であるが二話で喧嘩していた二人の少年はアリスと神悟のこと。二人はこの世界がリリカルなのはの世界であることに気がついてるのでなのはと仲良さそうにしていたアリスを神悟が見つけ、「催眠魔法を使って操っているに違いない!!」と勝手な勘違いをしてアリスを責め立て口論になる。それを確認した時雨の通報を受けた恭也がなのはから事情を聴き、「アリスがそんな卑怯な真似をするか!!」と一蹴、わりかし本気の鉄拳制裁を神悟に与えたのだが五分もしない内に蘇生して「僕がなのはの目を覚まさせてあげる!!」とまぁ愉快な勘違いと共に勝手な決意表明をしていたとかなんとか。それ以降二人は顔を会わせる度に喧嘩をする。それでこそなのはが魔法少女(魔砲少女?)として覚醒している間にガチバトルを繰り広げるほどに。

 

 

「ディバイン・・・バスター!!」

 

 

集束された魔力がなのはのデバイスであるレイジングハートから放たれる。それはまっすぐに現在進行形で町に被害を与えているジュエルシードの元へと向かう。

 

 

「えっ!?」

「そんな!?」

「あれは・・・・・・マジかよ!?」

 

 

上からなのは、神悟、アリスの順に驚きの声が上がる。何故ならばジュエルシードを封印するために放たれた砲撃は突然現れた炎の巨人に防がれたからである。

 

 

「あれは魔女狩りの王?俺たち以外の転生者か?」

「なのは!!もっと出力を上げて!!」

「こ、これが精一杯だよ!!」

 

 

アリスが炎の巨人を見て冷静に思案している中でなのはと神悟は焦っていた。なのはは自分の砲撃が防がれていることについて、神悟はこのままでは原作通りに事が進まなくなることについてだ。

 

 

神悟は原作を知っているためそのこと通りに進まなくては行けないという脅迫概念を持っている節がある。だからなのはが魔法少女として覚醒するときも手出しするつもりはなかった。しかしアリスは違う。この世界が単なるアニメの世界ではなく自分の生きている世界と認識しているからその時もなのはを助けようとしたがそれを良しとしない神悟に見つかりバトルになった。

 

 

だから神悟は焦る、このままでは原作通りに進まないと。だからアリスは考える、邪魔をしているのは封印しようとしているからではないかと。

 

 

「おいなのはもしかすると他の誰かが」

「ブレイブハート!!」

『OK』

「おい相井!!何しようとしてやがる!!」

 

 

アリスの言葉を聞かずに神悟は自分を転生させた者から貰ったデバイス【ブレイブハート】を構える。そして円形の魔法陣が神悟の足下に現れるのを見たアリスは声を荒げた。

 

 

「ブレイブバスタァァァァァァァ!!!」

 

 

しかしアリスの声に耳を傾けることは一切せずに神悟は金色の砲撃を炎の巨人に向けて放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁもう!!泣きたいくらいにブッ飛んだ現状だなぁおい!!」

 

 

魔女狩りの王がその身で桃色の砲撃を押さえ込む。現状は拮抗しているのだがそれがいつまで持つか分からない。

 

 

「リニス早くしてくれ!!カードが持たない!!」

「諦めんなよ!!漁師の人だって蜆がトゥルルって頑張ってんだからさ!!お米食べろ!!」

「なぜ修造大先生!?こん畜生が!!もっと熱くなれよぉぉぉぉお!!!」

 

 

修造大先生の言葉を真似しながら魔女狩りの王に供給する魔力を増やす。魔女狩りの王を構成する魔力はあくまで俺自身からの物がメインなのだがこの規模のサイズになると魔力の大半を消費してしまう。だからサブとしてカード自体に魔力を込めた宝石を使うことで使い捨てにはなったが俺にかかる負担を大幅に減らすことに成功した。

 

 

「あと30秒!!」

 

 

リニスから残り時間を報せる声が上がる。このままの状態ならば問題ないなと考えながら顔をあげると金色の砲撃が放たれていた。

 

 

「・・・俺の幸運値ってEだったっけな?」

 

 

金色の砲撃が魔女狩りの王に突き刺さりフィートバックとして全身に激痛がはしる。本来の魔女狩りの王ならば攻撃をされても体が炎で出来ているので炎を散らさせて攻撃を受け流し再構築すればいいのだが今回の魔女狩りの王の役目はリニスの壁になること。無理矢理に散らさないように固めているのでその代償がフィートバックとして現れているのだ。そんなことを考えながらも頭の中の大半は焦りでいっぱいだった。

 

 

どうするどうするどうするどうする?

ルーンカード使用枚数175390枚、内に100268枚が稼働中

魔女狩りの王を消すか?

馬鹿言え、それこそ論外だ

魔力を増やすか?

戦闘になったらどうするつもりだ?

リニス一人でこの砲撃を放つ連中の相手は厳しい

思考せよ思考せよ思考せよ思考せよ意識を回せ意識を回せ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ・・・・・・・・・くだらないな。

 

 

「カット」

 

 

いつの間にか頭の中に出来上がっていた分割思考すべてを切断、停止させる。どのみちこれを防がなければいけないのだ。ならば躊躇うことなど微塵も必要ない、一切合財すべてを撒き散らそうではないか。ローブから残りのルーンカードをすべて取り出して撒き散らす、枚数にして354806枚。それらすべてが魔女狩りの王に力を与えることで魔女狩りの王の姿が変わっていた。背中に当たる部分から四本の手が現れる、しかもそれぞれの手に炎の大剣を持ってだ。

 

 

「カット」

 

 

大剣を降り下ろす。弾かれた。

 

 

「カットカット」

 

 

再び降り下ろす。また弾かれた。

 

 

「カ、カカカット、カットカット、カットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットォォォォォオ!!!!」

 

 

降り下ろす降り下ろす降り下ろす降り下ろす降り下ろす・・・・・・炎の大剣は弾かれながらも斬りかかり、砲撃を削っていき、

 

 

「カットォォォォォオ!!!!」

 

 

最後に放たれた大剣四本同時の降り下ろしにより砕け散った。それと同時に消える魔女狩りの王、どうやらすべてのルーンカードの魔力を使い果たしたらしい。まぁ、俺としても限界なんだけど。脱力して前のめりに倒れそうになったところをリニスに支えられた。

 

 

「時雨、大丈夫ですか?」

「・・・疲れた・・・魔力枯れかけて気分悪い・・・今回消費したルーンカードのことを思うと胃が痛い」

「ふふっ、お疲れ様です。それと格好よかったですよ」

 

 

リニスは固いコンクリートの上に正座して座り、膝の上に俺の頭を乗せて所謂膝枕をしてくれる。頭から伝わる柔さかい感触がゴリゴリと磨り減った俺の精神を癒してくれる。そして俺はそのまま眠りについた。

 

 

 






はいなのはの覚悟をガッツリ妨害させてもらいました(笑)


そして今回ようやく時雨以外の転生者を出すことができました。二人は時雨とは違い赤ん坊から転生したので年齢はなのはたちと同い年になっています。


あとさらりととあるの魔術を使い、若干のワラキア化しちゃった時雨君。


ここからどうなっていくのでしょうか!!作者にも分かりません!!←オイ



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