調律者は八神家の父   作:鎌鼬

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読者の皆様、コーヒーの用意はよろしいでしょうか?


第拾肆幕 狼の恋愛模様~デート編中~

 

 

「う~ん!!楽しかったね!!」

「まぁ行く機会が少なかったから新鮮だったかと言われれば新鮮だったわな・・・・・・ちょっとばかし生臭いけど」

「アハハ・・・・・・時雨ってば絡まれてばっかりだったからね」

 

 

ペンギンとのふれあいタイムに参加すれば子供のペンギンに群がられ、イルカのショーを見に行けば連れられていた子供のイルカに服の袖を噛まれて水槽の中に引きずり込まれそうになり、あげくには何故いるか知らないが脱走してきた子供のシロクマ数匹に絡まれてそれを追いかけて来た親のシロクマたちとバトルになり・・・・・・濃い過ぎるだろうが。

 

 

そんな俺とアルフは水族館を後にして都市部にある喫茶店【コペンハーゲン】に向かっている。アルフが場所を知らなかったようなので俺の案内でだけどな。

 

 

コペンハーゲンといえば高町夫妻の経営する翠屋には及ばないが知る人ぞ知る名店としてほそぼそと売れている喫茶店である。喫茶店などと呼ばれているがそれは昼の間だけで夜はバーとして経営している。店長から聞いた話だが喫茶よりもバーの方が本業らしいので喫茶の方にはそんなに商売意欲が沸かないのだろう。

 

 

「それにしても凄かったね!!ほら、シロクマが襲ってきた時に時雨がポケットに手をいれたと思ったら行きなりパパパァンって!!」

「あぁあれは居合い拳って言ってだな・・・・・・っと、あぶねぇぞ」

 

 

歩道が無い上に車線が極端に狭いのでこの道では車がスレスレで走ってくる。俺の居合い拳の真似をしながら歩いていたアルフは正面から来る車に気がついていないようだった。なのでアルフの手を引いて道の際まで連れてやる。その時に車のドライバーと目があった。

 

 

「・・・・・・」(●●)

「(壁パンしても、ええんやで?)」

 

 

言葉は不用、目だけで会話をしたその直後、ドンドンと音を立てながら車が大きく揺れていた。愉悦、実に愉悦である・・・・・・!!

 

 

「あの・・・・・・」

「ん?あぁ悪かったな」

「いや・・・・・・ありがとう」

 

 

車に注意が向いていたのでアルフのことを忘れてしまっていた。謝りの言葉を言ってからアルフの手を離す。アルフは俺がつかんだら手を空いた手で擦りながら顔を赤くしていた。

 

 

「アルフ~?早くしないとコペンハーゲンのランチタイム終わっちゃうよ~?」

「え?あぁ!!ごめん!!」

 

 

俺が呼ぶとアルフはようやく正気に戻り、駆け足で俺に近づいてきた。そして俺たちは再びコペンハーゲンへと向かう。今度はキチンと俺が車道側に立つようにして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい着きました、こちらがコペンハーゲンでございます」

「へぇ、ここがそうなのかい?」

 

 

着いた先はビルの一階部分に開かれている喫茶店【コペンハーゲン】。昼は喫茶、夜はバーと二足のわらじを履いて経営されている店である。入り口の前には看板が立てられていて、そこには本日のランチメニューの内容が書かれていた。どうやら今日はオムライスのセットらしい。

 

 

「まぁ一先ずは入ろうか」

「そうだね」

 

 

扉を開けて中に入る。コペンハーゲンは翠屋と違い窓の数が少ないのだがそれを生かしてか全体的に薄暗い照明で落ち着いた内装に仕上げられている。人の好みによるかもしれないがコペンハーゲンの内装もありだと俺は思う。

 

 

「いらっしゃいませ~お二人様でしょうか?」

 

 

奥からウエイトレスが現れて俺たちに話しかけてきた。それに答えようとしてそのウエイトレスの顔を見たのだが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふぁ?

 

 

「何ヤッテラッシャルンデスカ?遠坂サン?」

「」

 

 

そこにいたウエイトレスは闇の書の封印だか破壊だかを宣っている魔術師、遠坂凜だった・・・・・・・・・・・・・・・・・・しかもメイド服で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや~実は急に三人がやって来て留学してきて生活費が無くなりそうだから働かせて欲しいって頭下げてきたのよ。それで二人はホールに、もう一人は厨房に使ってるわけ」

「あーあーハイハイそうですか」

 

 

ランチタイムも終わりに近づいていて暇だったのかコペンハーゲンの店長であるネコさん(そう呼ばれている、本名は知らない)が遠坂がここで働いている事情をアッサリと話してくれた。つーか協会からの援助はどうした?わざわざサーヴァント呼び出させてまだここに送り込まれたんだから不自由しない程度には出てんじゃ無いのか?

 

 

ちなみに俺とアルフが座っているのは角の方にある禁煙席である。アルフが狼を素体とした使い魔だということはリニスから聞いているので匂いによる被害の少なそうなこの場所を選んだ。俺だって喫煙者だけどこのくらいの気配りは出来るよ。

 

 

「ところであの服装は?」

「ん?私の趣味」

 

 

聞かなければ良かった・・・・・・

 

 

「お待たせしました、本日のランチでございます」

 

 

ネコさんの意外な趣味に茫然となっているところに遠坂がランチメニューのオムライスのセットを運んできた。おい、客の顔見て顔引き攣らせてんじゃねぇよ。接客業なら笑顔が大事だろうが。笑えよ遠坂(悟空感)

 

 

「ほら、冷めない内に食べてみてよ。新しく入ってきた子、料理が上手いんだよ」

 

 

運ばれてきたランチメニューはサラダ、オムライス、スープ、ドリンクのごくあり触れた内容。まぁ見た目は良くできてると言ってやろう。見た目はな。

 

 

「ネコさん、審査は本気でやっていい?」

「もちろん。てか、本気じゃないと意味無いし」

「ふーん・・・・・・いただきます」

「いただきます!!」

 

 

アルフは待ちきれなかった様だったがキチンといただきますと言ってから食べにかかった。サラダやスープを放って真っ先にオムライスに飛び付いたアルフを見ていると微笑ましいものを感じるのだがネコさんに審査を頼まれたのだ。名残惜しいが我慢するとしよう。

 

 

サラダ、スープ、オムライスの順に一口ずつ口にいれて味わい、嚥下する・・・・・・やっぱりこんなもんか。

 

 

「ネコさん、作ったやつ呼んでくれ」

「あいよ、エミヤーン!!」

「どうしたんだネコさん・・・・・・っ!?お前は!?」

 

 

ネコさんに呼ばれて現れたのはエプロン姿の赤髪の少年衛宮士郎だった。そして衛宮は俺のことを認識すると同時に親の仇を見るかのような目で俺を睨み付けて何時でも戦えるようにと戦闘体制になった。

 

 

「落ち着けガキが、こんなところで暴れようとしてんじゃねぇよ」

「・・・・・・なんの用だ」

「いやね、この料理作った奴に感想が言いたくてね」

「何・・・・・・?」

「サラダ、スープ、オムライス、どれをとっても悪くなかった。その若さでここまでの味に出来たのは大したものだな」

「そ、そうか?」

 

 

俺の言葉を誉め言葉とでも受け止めたのか恥ずかしそうに頬を掻く衛宮。男がそれをやっても気持ち悪いだけだ。

 

 

「あぁ、良かったよ。家庭料理のレベルとしては(・・・・・・・・・・・・)

「ーーーーーー何?」

「聞こえなかったか?家庭料理のレベルとしては良かったと言ったんだ。とてもじゃないが金取って人に出すような物じゃないがな」

「てめぇ!!」

 

 

激昂して殴りかかってこようとした衛宮を眼前にスプーンを突き付けることで制する。惜しいな、あと一歩前に出てたら突き刺さって抉れたのに。

 

 

「何度でも言ってやるぞ?お前の料理は金取って人に出すような物じゃない」

「ならお前なら作れるって言うのかよ!!」

「あぁ作れるとも」

「なら証明してみせろ!!」

「良いぞ。ネコさん、厨房借りるよ」

「好きに使って良いけど私の分も作ってね~?」

「了解」

 

 

上着を脱いで袖をまくりながら厨房に向かう。さて、このガキに本当の料理というものを教育してやるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待ちどうさん」

「オムライスだと・・・?」

「うっひょー♪久しぶりの時雨の料理だわ」

「美味しそう・・・・・・」

 

 

厨房を借りて作ったのは衛宮がランチメニューとして出した物と同じオムライス。衛宮に一つ、ネコさんに一つ、そして下らない理由で付き合わさせているアルフに一つ。

 

 

「・・・・・・いただきます」

「いっただきまぁす!!」

「いただきます!!」

 

 

衛宮は恐る恐る、ネコさんとアルフは豪快にオムライスをスプーンで掬って口に運ぶ。衛宮はオムライスを口に入れた瞬間信じられないと言った表情を浮かべながらスプーンを落とし、ネコさんとアルフは言葉などいらぬと言いたげな勢いで猛然とオムライスを掻き込んでいる。

 

 

「わかったか衛宮士郎。お前は所詮二流でしか無かったのだ」

「そんな・・・・・・そんなことって・・・・・・!!」

「確かに、お前の料理は家庭で味わう目的であるのなら紛う事無く一流のレベルだ、そしてそれだけだ。店として料理を出すならばその金額以上の満足感、そして全てが完璧で均一で無くてはならない。妥協など一切認められず、やって来た客全員に己の十全の料理を奮わなければならない。お前の料理にはそれが欠けているのだ。どうだ?敗けを認めるか?」

「・・・俺の・・・・・・敗けだ・・・・・・!!」

 

 

心底悔しそうな表情をしながら敗北を衛宮は認めた・・・・・・あれ?なんで俺ってこんなところで衛宮の料理スキル否定してるんだろう?まぁいいか。

 

 

「「おかわり!!」」

「ネコさんェ・・・・・・アルフェ・・・・・・」

 

 

なんか纏められそうだったのにネコさんとアルフがおかわりを要求してきたせいで纏められそうに無くなってきた。てかアルフ、お前食べ方汚すぎだろ。口の周りがケチャップと米だらけだぞ。ネコさんを見習えネコさんを、ほら口の周りに一切汚れがついていない。惚れ惚れするような綺麗な食べ方だろうが。

 

 

「あーアルフ、こっち向け。口周りが汚れてるから」

「ムゥ!?」

 

 

テーブルに備え付けられていた紙ナプキンでアルフの口を拭ってやる。見た目が大人のくせして中身が子供レベルとかギャップが強すぎるだろ?シャマルがいたなら「ギャップ萌え来たぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」とか叫んでたかも知れない。

 

 

「まだよ!!」

「まだこちらには!!」

「「アーチャーが(いるわ/いますわ)!!」」

「お前ら何やってんのか理解できてるのかぁ!?」

 

 

何故か遠坂と何処からか現れたルヴィアゼッタ・エーデルフェルトがどうしてだか執事服を着ているアーチャーを連れてきた・・・・・・どうしよう?脳内の情報処理が間に合わない。

 

 

「・・・・・・どうして私はここにこのような格好で連れてこられたのだ?」

「衛宮君が!!」

「シェロが!!」

「「料理で敗けたから敵討ちとして!!」」

「了承したくないが了解した・・・・・・」

 

 

どうしてこうなったのか知らないし知りたくも無いが、何故か俺とアーチャーで料理対決が勃発するのであった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最初は和食!!」

「鯖の味噌煮」

「肉じゃがだ」

「鯖の身がしっとりと、それでいて濃い目の味噌が絡まって上質な仕上がりに!?」

「肉じゃがは材料が一切煮崩れする事無く芯にまで味が染み込んでいますわよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次は洋食!!」

「箸休め目的でポタージュでもどうぞ」

「こちらはコンソメスープだ」

「濃厚!!このポタージュすっごく濃厚!!それなのに全然しつこくない!!」

「コンソメスープの見た目はとても澄んでいる・・・・・・それなのにどうしてこんな複雑な味わいを出せるの!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最後に中華!!」

「中華と来れば麻婆豆腐しかないな」

「ならばあえての麻婆茄子でいかせてもらおう」

「「あぁ!!舌が焼けるように辛いのに!!蓮華が止まらない!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・何故かは知らんが料理対決の末、アーチャーとよくわからない関わりが出来てしまった・・・・・・どうしてこうなった?

 

 

 






何故か知らないけどアーチャーと料理対決に・・・・・・どうしてこうなったんだ!?答えてみろ!!ルドガー!!→錯乱中


序、そして中と来れば次に来るのは終。狼の恋愛模様はどの様な結末を迎えるのでしょうか?


感想、評価をお待ちしています。



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