「九時半・・・・・・流石に早すぎたか?」
どーも皆さん、八神家裁判を無事に乗り越えることが出来た時雨です。いやーヤバかった、真ルシフェリオンブレイカー百連打とかマジヤバかった。何がヤバかったかって死にそうなのに死ねないのがヤバかった。つーかシュテルも容赦無く百連打完遂するし。
まぁそれはさておき、アルフとの約束の時間は十時なのだがどこからかこの事を聞き付けたシャマルが「最低でも一時間は早く集合場所で待っていなさい!!」とか言っていたので言われた通りに九時からここで待っている。まぁ恋愛小説やドラマなんかでも男の方が待つみたいな奴は定番だから納得は出来るんだが。
「ま、待たせたかな?」
「あぁやっと来た・・・か・・・」
後ろから声をかけられて声をかけて来そうなのがアルフだけだと判断して振り向いた訳だがアルフの格好に少し驚いた。
服のことなんてよくわからないので適当な説明になってしまうのだが、格好は全体的に落ち着いた色合いの服装。活発的な奴だと思っていたのだが間反対の服を違和感無く着こなしている。そしてなんとズボンではなくスカートだった。アルフの性格上ヒラヒラするものは好まなそうなのだが膝の辺りまでの丈のスカートが似合うこと似合うこと。
「あー・・・・・・デートの定番のセリフと俺のセリフのどっちがいい?」
「じゃあ両方聞かせてよ」
「今来たところだよ、と俺は三十分前に来てたぞ、だな」
「アハハ・・・・・・待たせたみたいでゴメンね」
「いんにゃ、アルフのその気合いの入った服装見れば待ち疲れ程度簡単に吹き飛ぶさ」
「こ、これはあたしの趣味じゃなくてプレシアとリンディが・・・・・・」
「オーケー理解しました。ったく・・・あいつら孫娘の初舞台にはしゃぐお婆ちゃんかよ」
『『誰がお婆ちゃんかしら・・・・・・』』
「っぉっと!?ゾクッと来た!!今ゾクッと来たぞ!!」
念話じゃないようだけど・・・・・・呟いた程度の諭す言葉にも反応するのかよ・・・・・・女性には年齢の話題は禁句だと言うのは本当だな。桃子さん辺りなら笑いながらネタにするんだけどな。
「ほ、ほら!!早く行こうよ!!時間は限られてるんだからさ!!」
「あーアルフよ、急に走ると・・・・・・」
「キャッ!?」
「危ないぞと言おうとしたときにこれですかよ」
慌てて走ろうとしたアルフが慣れていない・・・・・・というよりも初めて履いたであろうヒールに足を取られて転びそうになる。こうなると何となく予想していたのでアルフに近づき、腹の辺りに手を回すようにして支える。まぁ抱きつくような形になったのだがそれは許してもらおう。
「気を付けろよ、怪我なんてしたら楽しめる物も楽しめなくなるからな」
「あ・・・・・・ありがとう」
「ん、どういたしまして」
抱きつかれたことで顔が赤くなっているアルフの返事を受け取ってアルフから離れる。いつまでも抱きついてたら変態だろ?シャマルとかシュテルとかとは違うんだからそのくらいの分別はつきますよ。
「・・・・・・」(●●)
「・・・・・・」(●●)
「・・・・・・」(●●)
「・・・・・・」(●●)
「・・・・・・」(●●)
「・・・・・・」(●●)
「壁パンしても、ええんやで?」
ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン
壁パンゴーサインを出すと周囲にいた男性(恐らく独り身)たちが一斉に壁にめがけてパンチをしだした。石造りの壁にパンチをしているはずなのにその手からは血が流れていない、むしろ壁の方が悲鳴をあげている。あ、建物の主が鉄板持ってきた。
「ケケケッ・・・・・・よし行こうか」
「時雨・・・いい笑顔してるね」
「よく言うだろう、人の不幸は蜜の味だと。そう、他人の不幸こそが俺の幸福であって俺の動力源・・・・・・っ!!」
「そんな動力源嫌だな・・・・・・ねぇ、もし身内に不幸があったらそれはどうするのさ?」
「全力で排除」
「即答だね・・・・・・だ、だったらあたしには?」
「もちろん排除するさ」
「あ・・・・・・ありがと・・・」
「まぁ、無いに越したことは無いんだけどな。それで今日はどうするか決めてるのか?」
「えっと・・・・・・プレシアがスケジュール組んだってこの紙渡してきたんだけど」
「読んだか?」
「読んでないよ?」
「ふぅん・・・・・・」
アルフからプレシア作のスケジュール表を受け取って中を確認する。
・水族館へ行く
うん、デートの定番だな。あとは遊園地とか。
・昼食【コペンハーゲン】
まぁおかしくは無いな。店の名前が少し不安を誘うけど。
・デパートで買い物
うんうん、ベターだけど悪くない。
・夕食【海鳴ハイアットホテル】最上階のレストラン(予約済み)
海鳴ハイアットホテルといえば都市部にある高級ホテルじゃないですか。それを予約済みとはプレシア頑張りすぎでしょ?
・ヤれ
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「ハイ、アウトォォォォォォオ!!!」
「時雨!?」
何だよ!!何だよ最後の一言!!ドストレート過ぎて飲み込むのに時間かかったわ!!プレシアさん!!あんたアルフに何させたいのさ!!嫌いなの!?アルフのこと本人の意思関係なしに貞操奪わそうとするくらいに嫌いなの!?
「アルフ、これは俺が預かるから」
「え?でも・・・・・・」
「い い ね ?」
「う、うん・・・・・・」
これでよし・・・・・・アルフは少し不満げだがこれをアルフに見せるわけにはいかないんだ。分かってほしい。それでも最後の一言除いて他のは良いスケジュールだったのでそれに従わせてもらおう。幸いにも念のため俺が考えておいたのと似たような物だったし。
「はぁ・・・・・・ちょっとグダグダしたが行こうか」
「うん」
「あぁそれと」
「何?」
「その服、似合ってるよ」
「・・・・・・そのタイミングでそれはズルいよ」
完全に忘れたことに告げた俺の言葉にアルフは恥ずかしそうに頬を赤くしながらそう言った。多少狙ったところもあるがほとんどは俺の本心からの言葉だ。それにアルフみたいなタイプには遠回しな比喩表現よりも直接的な言葉の方が届きやすいからな。
恥ずかしそうに顔をうつ向かせたまま歩き出したアルフに並走する形で俺も歩き出した。
~その頃の鳳凰院家、御門の部屋
「ムグゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!」
「うわぁ・・・・・・僕と王様のバインド力づくで引き千切ろうととしてるよ」
「ハイハイ黙ろうね~」ダンダン
「」チーン
「容赦無いな・・・・・・御門よ・・・」
「このお菓子美味しいです~♪」
時雨のデートを妨害しようとしていたシュテルをレヴィとディアーチェがバインドで拘束して御門が銃で鎮圧し、ユーリはお菓子を食べていた。
「お~!!魚がいっぱいだ!!」
「そりゃあ水族館だからな、魚がいなかったら何を展示するんだよって話になるよね」
ガラスで遮られて水の中を泳いでいる魚たちを見て大はしゃぎするアルフとそれを少し離れたところから眺めている俺。アルフがはしゃいでいるのが良い大人がみっともないという感情ではなく微笑ましく思えるのは俺が達観しているからなのだろうか・・・・・・うん、まだ二十代だから達観の言葉は誉め言葉として受け取っておこう。
「っとそうだ、アルフ~こっち向いて~」
「ん?それはカメラ?」
「そう、
「あれ?なんか字がおかしくなかったかい?」
「おかしくないおかしくない。はいチーズ」
アルフが悩んでいたがそれにお構いなしにシャッターを切る。取れたのは少し抜けた表情のアルフと水槽の中を悠々と泳いでいるホオジロザメの姿。カメラを向けられてすぐにシャッターを切られると思っていなかったのか気の抜けた表情なのだが言ってしまえばそれは自然体の姿、アルフらしいと少し笑ってしまった。
「えっ!?撮ったのかい!?消して!!絶対間抜けな顔だから消して!!」
「ヤダ」
「一言で断られた!!」
写真というのは素晴らしい、安価に気軽にその時の思い出を切り抜くことが出来るのだから。俺の元いた世界にも写し絵と呼ばれる写真らしきものがあったがそれは上流階級の奴らが使うような高価な物だった。だから俺は写真を知ったときには大いに驚いたものだ。
「う~!!ならカメラ貸しなよ!!時雨の間抜けな顔撮ってやるんだから!!」
「ふっ、撮れる物なら撮ってみるといいさ」
アルフにカメラを渡して水槽に近づく。水槽の上の部分が吹き抜けなのかガラスなのかわからないが日の光が差し込んでいて程よく視界が確保されて泳いでいる魚群を確認することが出来た。でもな~魚を見てると・・・・・・
「食糧にしか見えない」
「魚逃げて!!食べられる前に早く逃げて!!」
「刺身に煮つけ・・・フライに焼き魚・・・あぁムニエルやテンプラなんかもいいな・・・マリネにカルパッチョも良し・・・・・・」
「あぁ!!着々と献立が練られていく!!」
結局アルフに拳骨かまされることで泣く泣く諦めることになった。
「終わってから夜釣りにでも行くか・・・・・・」
「(ゴメンよ魚たち・・・・・・あたしは無力だ)」
アルフが撮った写真には真剣な表情で魚を品定めする時雨の姿があったとか・・・・・・
「ペンギンとふれあいタイムね」
「あたしペンギンに触るの初めてだよ!!」
「まぁ一般人ならペンギンに触れる機会なんて水族館に行かない限り無いからな・・・・・・あとは北極やら南極やらにいる野生のペンギンを見つけるとか」
あのあと水槽の中で泳いでいる魚を見て一喜一憂しめいるアルフをパシャパシャとカメラに納めながら水族館を歩いていたところペンギンとふれあいタイムという企画が開かれているのを発見、俺が興味深かったのもあるがアルフがチラチラとこっちを見て行きたそうにしていたので参加することにした。ペンギンのストレスのことも考えて参加人数は十人と限られていたのだが何とか参加することに成功した。参加しているのは俺とアルフに大人二人と子供六人。俺たちを含んでも大人が四割なことに意外に驚いた。こういう企画は子供が優先されると思ってたんだけどな。
「あ!ほら来たよ!!」
ペンギンの飼育コーナーの奥から飼育員の後に続くようにしてヨタヨタと体を振りながらペンギンたちが歩いてやって来た・・・・・・あれ?多くない?ざっと見成体のペンギンが二十匹くらいに子供のペンギンが四十匹くらい見えるんだけど?
「良かったら餌を与えてみませんか?」
「ありがとうございます」
アルフが飼育員から凍った魚を手渡され、しゃがんでそれを近づいてきたペンギンに差し出す。するとペンギンは戸惑うこと無く魚を嘴で加え、一気に丸飲みした。それを見て笑っているアルフをカメラでぱしゃり。恐る恐る手を差し出してペンギンに触っているアルフをカメラでぱしゃり。
「ほら、時雨も触ったら・・・・・・へ?」
「あぁ・・・うん、なんかなつかれたみたい」
俺の方を見たアルフが唖然としたのは無理もない。何故なら親ペンギンに着いてきてやって来た子供のペンギンたち四十匹が全部俺のところにやって来ているのだから。親ペンギンのようなツルッとした黒色の毛ではなくフワフワとした産毛の子供のペンギンが俺に群がっているのを見れば誰だってそんな表情になるだろう。
「す、凄いね・・・・・・」
「これも俺の溢れんばかりの父性が成せる技か」
「あ、カメラ貸しなよ」
「あいあい」
アルフにカメラを渡してふとあることを思った俺はしゃがみこんでみる。すると子供のペンギンたちはピーピーと鳴きながら俺の服をよじ登ってきた。どうやって登ってるんだろ?
「すご・・・・・・」
「俺も驚きだよ」
後でアルフの撮った写真を見てみるとそこには体中を子供のペンギンに群がられた俺が写っていた。これを見て微笑ましいと言って笑うかなんだこれと言って爆笑するかは見るやつによって変わると思う。
そして俺の撮ったアルフが戸惑った表情になりながらもペンギンに触っている写真を見て意外にもホッコリとしている俺がいて驚いた。
狼の恋愛模様~デート編~では後書き説明会はお休みさせていただきます。
時雨とアルフのデートを見てホッコリ、もしくは壁パンに勤しんでください。
ブラックコーヒーを常備しなければ読めないような甘い話を書くにはどうしたら良いんでしょうか?誰か教えてください。
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