調律者は八神家の父   作:鎌鼬

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第拾弐幕 狼の恋愛模様

 

 

「ディアーチェ~?そっちのキャベツ取って~」

「うむ、了解した」

 

 

前にあった魔術師&サーヴァント&魔導師たちの襲撃から数日たった今日この頃、俺は八神家で中華鍋を豪快に振るっていた。やっぱり食べるなら大皿料理だよな~ちなみに作っているのは回鍋肉だ。

 

 

「相変わらず凄い腕力よな・・・・・・」

「おいおい、そんなジロジロと俺のことを見るなよ・・・・・・後ろに怖いのが現れるぞ?」

「(◎д◎)」

「シュテルぇ・・・・・・」

 

 

壁から顔を覗かせながらこちらを凝視してくるシュテルをガンスルーしながらキャベツを投下、調味料を入れながらも鍋を振る勢いを弱めない。

 

 

「よっしゃ、ホイホイ回鍋肉完成っと」

「待て、その名称はシャマルが喜ぶぞ」

「ふっ・・・・・・わ ざ と だ よ ! !」

「ハッハッハぁ・・・・・・このキチめが・・・・・・っ!!」

 

 

♪ヤらないかヤララライカヤラヤラカイカイこの思いは止められない♪

 

 

「ディアーチェ待て、電話だ」

「その着信は何だぁ!?」

「ネ タ だ よ ! !」

「もうやだぁ・・・・・・」

 

 

何だか涙目になっているディアーチェをスルーしながら電話に出る。あ、俺は同性愛の気はないからね?普通に女の方が好きだからね?

 

 

「ハイハイ八神さんちの時雨です」

『あ、もしもし時雨かい?あたしだよ、アルフだよ』

「あり?アルフ?ケー番教えたっけ?」

『プレシアから教えてもらったんだ』

「なるほど了解」

 

 

プレシアから教えてもらったなら納得できるね。前のジュエルシード云々と時に俺の連絡先教えたんだがかかってくる内容がフェイトが可愛くて生きるのが辛いとかアリシアが愛しくてリビドーが抑えられないとかフェイト×アリシアの薄い本を書いたとか・・・・・・しあわせそうでなによりですよ(何処か遠い目)

 

 

『時雨?大丈夫かい?』

「・・・・・・あぁうん、大丈夫。プレシアの奇行思い出して少し遠くなってただけだから」

『アハハ・・・・・・ゴメンね、あんなんでも親として色々と頑張ってるから』

「まぁそれは理解できるさ。で、今日はどうしたのさ?」

『あ~それなんだけどさ・・・・・・』

「ん?」

『あ、明日って空いてるかい?』

「明日明日・・・・・・大した予定は無いはずよ?」

『だ、だったら明日ちょっと付き合ってくれないかい?急な休みもらって暇になったんだよ』

「ふむ・・・・・・」

 

 

アルフ・・・・・・というよりも管理局は今は闇の書の探索で忙しいはず・・・それなのに休みが出たってことはリンディさん辺りが働きづめな部下たちを見て出したってとこか?アルフと俺の立ち位置からすれば会わないのが最善なんだろうが俺の立場は隠している、それに予定は無いと告げてしまっているからここで断るのも不自然か・・・・・・

 

 

「いいよ、どうせ俺の仕事も一段落ついて暇だったし」

『ほ、本当かい!?だったら明日の十時!!駅で待ってるからね!!』

「ハイハイ、わかってますよ。それじゃ、おやすみ」

『うん!!おやすみ!!』

 

 

・・・・・・電話を切って空けていたビールを煽って一息ついて冷静に考えてみる。あるぅぇ~?これってさ・・・

 

 

「お父さ~ん、出来た~?」

「ん?あぁ、出来てるよ。ホイホイ回鍋肉だ」

「シャマルが喜びそうな名前やな」

「狙ってやったからな。それよりはやて、ディアーチェ、聞きたいことがあるんだが」

「なんや~?」

「ぐずん・・・・・・なんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「年頃の男女が一対一で出かける約束をしました、これって何だと思う?」

「デートやな」

「デートだな」

「デスヨネー」

 

 

どうやらアルフさんとデートすることになったようです・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・ふふっ」

 

 

切れた携帯電話を嬉しそうに見つめるのはアルフ。闇の書の主の探索で忙しい日々を送っていたのだがリンディが少しでも休まないと効率が落ちると判断して率先して活動していたクロノ、シリア、相井神悟、藤峰アリス、そしてアルフに対して一日の休暇を言い渡したのだった。その際にシリアと神悟がごねたのだが艦長命令としてこれを封殺した。管理局に所属していて唐突な休みに慣れているクロノや元々地球で暮らしているアリスとは違いこういったことに慣れていないアルフは急な休みをどうすごして良いのか分からなかった。それを見たプレシアは、

 

 

『やること無いのなら時雨と出掛けたらどうかしら?』

 

 

そうアルフに進言した。その時のプレシアの微笑みにうすら寒い物を感じたのだが他にやることがあるわけでもないし、アルフはこれに従った。そして無事に出掛ける約束を取り付けることに成功したのだ。

 

 

突然かもしれないがアルフは時雨に対して好意を持っている。ことの始まりはプレシアがアリシアの治療の為にジュエルシードを地球にバラまいた時まで遡る。始めての邂逅は月村邸にて猫を巨大化させたジュエルシードを回収しようとした時、その時のアルフからした時雨の感想は変わったやつだった。ジュエルシードと言えば願いを歪めて叶えることで知られているがその反面、込められている魔力は膨大なものである。魔導に関わるものからすればそれは垂涎物、それなのに時雨はそれを投げ捨てるかのような気軽さでアルフに渡したのだった。だから変わったやつ。

 

 

二度目の出会いは息抜きのつもりで行った温泉旅館でだった。プレシアとの喧嘩の果てに追い出されたリニスを連れていたことから呼び止め、そして臭いから時雨が月村邸でであった人物だと知る。時雨は背の割には体つきは細く女性よりの中性的な顔で眼鏡でもかけたら似合いそうだな、等と場違いなことを考えてしまった。そして少し会話するとリニスの関係者であることを理由に一度だけ助けになると約束してくれた。

 

 

そしてアルフが時雨のことを気にし出したのはその夜のことだった。ジュエルシードを確保すると同時に三人の魔導師と使い魔らしきフェレットーーーーーーユーノのことで使い魔ではなかったのだがーーーーーーたちと遭遇し、ユーノに強制転移でフェイトから離されたところで時雨がユーノを蹴り飛ばして助けてくれたのだった。理由を聞けばフェレットよりも犬派だとか何とか。そのことに憤慨してから今のフェイトの状況を思い出した。自分がいても二対四という不利な状況だったというのに自分がいなくなってしまって一対三、いくらフェイトとはいえど勝てるはずがない。そして目の前に立つ時雨が言っていた約束を思い出した。一度だけ、助けになってくれると。涙を流しながら頭を下げて、時雨に救いを乞うと時雨は柔らかげな微笑みでそれに答え、魔導師二人を相手にしてくれた。

 

 

三度目の時にはプレシアに言われた通りに(後で騙されたと知ったが)人気の無いところに連れて言われた通りにしたら怒られた。あのときのことはなかったなと今では思う。そしてプレシアと会わせ、時雨は本格的に協力してくれることになった。

 

 

そしてその夜に黒い騎士と戦っている時雨を見た時、公園でジュエルシードの暴走体と戦っている時に手助けしてくれた時、管理局に囲まれた時に気を引いてくれた時、管理局から情報をこちらに流してくれた時、海でジュエルシードを暴走させて吹き飛ばされたときに助けてくれた時、プレシアの悪行を引き受けてすべての黒幕としてプレシアとフェイトと自分の罪を軽くしようとしてくれた時、そしてなにより神悟の攻撃に対して身を呈して守ってくれた時、

 

 

そう言った積み重ねがアルフの心を引いていった、別れの日に時雨の頬にキスをするという大胆な行動を取らせるくらいに。

 

 

はっきり言おう、アルフは時雨のことを好いている。友人や家族に向けるLike(好意)ではなく、異性に向けるようなLove(愛情)の感情を。

 

 

時雨と別れたときの感情を理解できなかったアルフはプレシアやリンディに相談したり、慣れない本を読んだりすることで自分の気持ちにようやく気づくことが出来た。無論、アルフはそれを恥ずかしいとは感じていない、むしろ誇らしいと思っている。ただそれは自分の中だけで他人から指摘されれば恥ずかしいと思うのだが。

 

 

「フフッ・・・・・・どうやら上手くいったようね」

「あ・・・プレシア」

 

 

どこかフワフワと夢見心地になりかけていたアルフを呼び戻したのは白衣を着たプレシアだった。ただし顔に貼り付けられている笑みはニッコリではなくニヤニヤやニタニタといった類いの物であったが。

 

 

「ところでアルフ、そんな格好で会うつもりじゃ無いでしょうね?」

「え?」

 

 

そう言われてアルフは自分の格好を見直す。別段不自然な格好であるわけではなく(アニメで引っ越しの時に着ていた服)、プレシアの言っていることが理解できずに首をかしげる。

 

 

「ダメなのかい?」

「ダメよ!!」

 

 

突然叫んだプレシアに思わずアルフは跳ねてしまう。

 

 

「いい?人間というのは視覚に頼る生き物なのよ、それは即ち見た目が第一印象を植え付ける手段であるのと同意義!!確かに今の格好も悪くわないわ、でもその程度よ!!彼を落としたいのならもう少し違った格好をしなさい!!」

「う、うん・・・・・・」

 

 

プレシアの気迫に圧されながらも何とか返事を返すことが出来たアルフだったが不幸なことに彼女の服に対する頓着は薄かった・・・・・・つまりそれはアルフの持っている服の数が少ないということ。数着ある服はどれも似たり寄ったりの物ばかりでプレシアの言うような効果は望めそうに無いものばかりである。

 

 

「よし、それなら今から服を買いに行くわよ!!」

「えぇ!?今からかい!?」

 

 

現在の時刻は八時半、遅いと言えば遅い時間帯でありわざわざ服を買いに行く必要があるようには思えないアルフは否定しようとするのだが、

 

 

「面白そうな気配がしたので」

「うわぁ!?リ、リンディ!?」

「あらリンディ、丁度いいわ。今からアルフの服を買いに行くけど着いてくるかしら?」

「もっちろんよぉ♪」ガシッ

「よし、行くわよ!!」ガシッ

「えっ!?ちょっと!?プレシア!?リンディ!?」

 

 

右の腕をプレシアに、左の腕をリンディにがっしりと捕まれて逃げることができないアルフは抵抗する間も無く服を買いに行かされた。

 

 

後にこの光景を見ていたクロノはこう語る。

 

 

『あれほど楽しそうな母さんは久しぶりに見たよ。え?アルフ?・・・・・・何て言うか、出荷される家畜のように思ってしまったな・・・・・・・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時計を見れば時刻は九時、皆様いかがお過ごしでしょうか?え、俺?俺は・・・・・・

 

 

「それでは、ただいまより八神家裁判を始めます」

 

 

猿轡噛まされた上でガッチガチにバインドで拘束されて裁判にかけられています。ってか裁判官がシュテルの時点で絶望しかみえない。助けてくれそうなシグナムとスノウはリニスに連れられてどこかに行ったし、ディアーチェは疲れたと言って寝たし・・・・・・あれ?俺詰んだ?

 

 

「判決は有罪、刑は真ルシフェリオンブレイカー百連打の刑に処します」

 

 

裁判なんて無かったんや。

 

 

 






~(◎д◎)
シュテル様が見ているようです。

~ホイホイ回鍋肉
良かったのかい?ホイホイ着いてきて。俺は、ノンケだって構わず食っちまう男何だぜ?の青ツナギのいい男を思い浮かべた貴方、今夜夢のなかで出会えるでしょう。

~♪ヤらないかヤララライカヤラヤラカイカイこの思いは止められない♪
今世紀最大の被害者。

~アルフからの電話
実はアルフがミッドにいたり戻ったら闇の書の蒐集があったりで会話するのは久しぶりだったりする。

~プレシアの奇行
平常だね・・・・・・この小説なら平常なんだよ・・・・・・

~デート
普通に男女が出掛ければデートと思われる。

~アルフの気持ち
一切得がないはずなのに助けてくれたことに始まり、それからの時雨の行動やら気持ちやらに引かれた結果。時雨は鈍感ではないのでアルフが自分にそんな感情を抱いているかもしれない程度には気づいている。てか、普通にキスされたから気づいている。これで気づかないのはワンサマークラスの唐変木。

~プレシア&リンディ
自分の若かりし頃を思い出したオバサンたちがアルフの手助けをしようとしているようです・・・・・・おや?誰か来たようだ。

~クロノの感想
ドナドナ。

~八神家裁判
裁判官シュテル、時々時雨、有罪判決驚愕の100%という開かれた時点で絶望しかみえない裁判である。過去に開かれた時にはシャマルの慎ましい本流出事件、シュテルの時雨盗撮写真の発覚などがある。


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