遅れてすいませんでした。hollow ataraxiaを買ったので・・・・・・フルボイス良いですね!!
「やっちゃえ、バーサーカー」
「■■■■■■ーーー!!」
エリアスの指示と共に朱色の狂戦士が叫びをあげて突進する。手にしている獲物はハルバードのような形状の物。迫り来る暴力を前に時雨は、
「おっと」
大きく一歩、暴風のように振るわれる狂戦士の獲物の一撃を跳躍して避けた。
バーサーカーーーーーーそれは理性を引き換えにステータスを強化するスキルを持った英霊のクラス。まともに打ち合うことなど愚の極み、だからこその逃げの一手。避けたにしてもその規格外の腕力によって生じた風圧を受けて時雨は冷や汗を流す。
「(風圧だけでこれかよ・・・・・・前にやったランスロットとは別の意味でやりたくないなぁおい)」
避けた先は狂戦士からおおよそ10mも離れていない距離で時雨が狂戦士の挙動に反応できる距離でもある。近づくのは怖いが離れすぎるのも怖いとの判断から時雨はあえてこの距離を選んだ。そして着地の瞬間に、
「ーーーーーーフッ!!」
「ーーーーーーハァッ!!」
時雨の左右から弾丸の如き勢いで迫る赤と青の影があった。アーチャーは白と黒の夫婦剣を、セイバーは目に見えない剣を手に時雨にへと斬りかかる。
「チッ!!」
舌打ちを一つして詠唱なしに時雨は守りの剣である守剣干将を二本投影、それでアーチャーとセイバーの剣を受け止める。受け止めた一瞬にセイバー側の手の力を抜き、守剣を手放す。そして空いた手でセイバーの手首を掴みアーチャーへと投げ、セイバーの腹へと蹴りを見舞う。蹴られたセイバーとセイバーに接触していたアーチャーはまとめて蹴り飛ばされる形になるが飛んでいる間に地面に背中を着けずに体制を直しているところをみる限りダメージは無さそうである。
それを見計らってか時雨の上方の左右から黒い弾丸が降り注ぐ。
「ガントか」
時雨は一目しただけで降ってくる魔術が何なのかを把握、同時に衣服を強化、腕で頭を守ることで降り注ぐガントの雨を受け止めた。
「Alalalalalalalalalalalalalalalalalala!!! 」
独特の掛け声と共に迫ってくるのは戦牛の率いる
「ぬぅっ!?」
それにライダーは腰に下げていた剣を引き抜いて自身の背後に向かい剣を振るう。そして返ってきたのは金属音と軽い手応え。ライダーの後ろには体を逆さの状態にして攻刀漠耶を振り抜いた時雨の姿があった。
実はガントで足止めをされていたように見えたのはフェイク。それに誘われてきたサーヴァントを一刀するつもりだったが流石は征服王と言ったところか、見事に見抜かれ防がれてしまった。
着地の際の衝撃に備えて受け身をしようとする時雨の視界に黒い影が写り込んだ。それを何なのか理解した時雨は再び衣服を強化し、思いっきり翻した。鋼鉄並みに強化されたコートに影から投げられた短刀三つがぶつかり、軽い金属音をして弾かれる。奇襲を受けた時雨は着地と同時にビルへと飛び移り、五階相当の部分の壁面に張り付いた。
「ーーーーーー外したか」
そこいにいるのは狂戦士、セイバー、アーチャー、ライダーのサーヴァント四騎、それに加えて新しいサーヴァントが登場していた。
髑髏の面で顔を隠し、ボロボロになった黒いローブを纏い、さらに特徴的なのは左腕に何重にも付けられた拘束具。暗殺者のサーヴァント、アサシンの姿があった。
「狙ってくると思っていたがここで来るとは」
「アサシンの奇襲を読んでいたと言うのか?」
「暗殺者のすることなんぞ奇襲不意打ちだろうが?学の無い
ビルの壁面に張り付いた状態の時雨にセイバーが尋ねるがそれを挑発染みた言葉で返した。これで挑発に乗ってくれれば儲け物程度の狙いだったがセイバーは一瞬だけムッとしたような表情を浮かべただけだった。
「いやはや、まさかそいつを呼び出すとはな。流石はアインツベルンと言ったものか」
「ーーーーーーバーサーカーの正体が分かったのかしら?」
「あぁ、セイバーとアーチャー以外の真名には大体予想はつくさ」
時雨の言葉にサーヴァントたちが驚愕を見せる。サーヴァントは己の正体を隠すものだ。英雄として有名であればある程に対策を立てやすくなってしまうし、逸話から弱点を見つけられるかもしれない。有名どころで言えばギリシャ神話に登場するアキレス。アキレス腱の語源ともなった彼は不死身の肉体を持つとされていたがその体になる際に足の踵の部分だけその処置を施されなかった。そして戦争の最中に踵に矢を受けて死んでしまう。
英雄として有名であればある程にサーヴァントは強くなる。そしてそれだけ弱点を知られやすくなってしまう。だからサーヴァントはクラスを名乗ることで真名を隠そうとする。
「ライダーはイスカンダル、これは自分から名乗っていたから例外。正式にアサシンのクラスで呼ばれるのは【山の翁】のみと聞いた、ゆえにアサシンは何代目かは知らぬがハサン。そしてバーサーカーだが・・・・・・方天戟を持った狂戦士に値する英雄なんぞ
「人中、鬼神、飛将軍と呼ばれた天下無双の豪傑【呂奉先】。それがバーサーカーの正体だ」
この一瞬、この場に揃ったサーヴァントたちの動きが完全に止まった。セイバーとアーチャーはまだバレていない、ライダーは名乗ったから例外、アサシンとバーサーカーもそちらの方面に聡明な人物であるなら予測することはできるだろう。しかしそれでも対峙して僅かしか経っていないというのに五騎の内の半数以上の真名を明かされたのだ。それに驚くなというのが難しい。
「それにしても五騎か・・・・・・流石にこれは厳しい」
そう言いながら時雨はカードを取り出す。それは髑髏の面で顔を隠した細身の人物の描かれたーーーーーーアサシンのカード。
「先人に習わせてもらおう。目には目を、歯には歯をーーーーーーーーーーーーそして数には数を」
カードが砕かれる。
「宝具開帳、
宝具が開帳される。それは多重人格を持った
月明かりに照らされた時雨の影が数億の虫が蠢くかの如く沸き上がる。そしてその影から実体を得た分割思考が次々と這い上がってきた。
生まれてきたのは四つの分割思考。
一つは貴族が着ているようなフリル付きの衣装に身を包み、マントを羽織った吸血鬼【ワラキア】
一つは腰に二本の直刀を下げ、西洋式の礼服で身を包んだ忍
一つは手首に強引に引き千切ったような鋼鉄製の拘束具と鎖を着け、ボロボロのローブに身を包んだ獣【ネロ】
一つはカッターシャツにスカート、そしてコートを着た生まれてきた分割思考の中で唯一の
「
根本は同じでありながら袂を分かち、其々異なった方向に進んだ
サーヴァントたちの動きが止まる。それは驚愕してか、それとも現れた思考たちを警戒してか。そのとき、この場に似つかわしくない電子音が鳴り響く。それは時雨の持っていた携帯電話からだった。その画面に写った名前を確認して、時雨は会話に応じる。
「
『こちらは【銃剣】だ』
「如何用だ?この様な事態に」
『【烈火】、【盾】、並びに【従者】の救出はこちらで行う。故に貴方はそちらをお願いしたい』
「一人でか?」
『【星光】、【雷刃】、【闇総】がここにいる。何れも自らの意思でこの場に揃っている・・・・・・【主】よ、貴方はもっと人に頼るべきだ。人一人に出来ることなど限られている、故に周りを利用するように頼れ。そう教えてくれたのは貴方ではないか』
「・・・・・・ったく、ブーメランとはこの事だな。」
電話越しに【銃剣】・・・・・・鳳凰院御門から語られた言葉はかつて時雨が御門に語った言葉そのままだった。やれやれといった具合に時雨は頭を振り、自分が思っていたよりも一回り成長した御門に命令を下した。
「
『始めからそうしている』
「ったく、手際の良いことだな・・・・・・【銃剣】、【星光】、【雷刃】、【闇総】の四名に命ず。任せたぞ」
言い放ったのはそれだけ、それだけを告げると時雨は返事を聞くことなく電話の通信を切った。そして今度はサーヴァントと対峙している自分であった他人へと言葉を向ける。
「さて
「無論だ、今宵の劇を開くに相応しい舞台だ」
「ガルルルルルゥ・・・・・・」
「
「もっちろんで~す♪いつも元気なDBちゃんは何時だって準備万端なのですから♪」
「そうか」
「さぁ、踊るぞ野郎共」
「キーーーーーーキキキキキキキキキィ!!」
「グルゥァァァァァァァ!!!」
「御意」
「豚の様に悲鳴をあげなさい」
『【銃剣】、【星光】、【雷刃】、【闇総】の四名に命ず。任せたぞ』
「・・・・・・
都市部に張られた結界、その上空遥か高くにいた御門が切られていることに気づきながらもそう言って電話をしまう。そして自分の呼び掛けに応じてくれた三人に向き直った。
「さて、聞こえたよな?」
「勿論だよ!!」
「無論だ」
「時雨のデレ期キタァァァァァァァ!!!これは家に帰ってから極甘スイートライフな未来しか有り得ない!!!」
「よし、先ずはごみ掃除からだな」
「うわ・・・・・・」
「御門よ待て、思考的には廃人だがシュテルは戦力的には役に立つのだぞ」
「時雨さんの平穏とどっちが大事だと思う?」
「・・・・・・」
無言で顔を反らす、それがディアーチェに出来る最大限の抵抗だった。
~
「よし、いい加減本筋に話を戻そう」
「御門ってばすっごい良い笑顔」
「我には分かるぞ・・・・・・ストレスの元凶がいなくなった時の爽快感!!」
シュテルへの制裁を終えた御門はまるで元旦に新品のパンツを履いたような清々しい顔であった。そんな御門に若干怯えているレヴィとその気持ち分かるぞと言いたげな表情のディアーチェ、そして視界の端には【見せられないよ!!】状態のシュテルがいた。
彼らの集まった目的は結界に捉えられたシグナム、ザフィーラ、リニスの救出である。結界が張られたことに気づいた御門は即座に魔力探知を行い、その結果から捉えられたのはシグナムたちだと分かった。そして時雨がシグナムたちの救出に向かうことも容易に想像できた。故に御門はマテリアルの三人を誘い、逃走の時の手助けをするつもりで集まったのだが時雨はサーヴァント五騎と魔術師たちに阻まれて動けず、スノウとシャマルも結界の解除に手こずっているようだった。
だからこそ、御門は動いた。誰かがきっと何とかしてくれるなんていう希望的観測を交えた受動的な考えではなく、ここで自分が動かなければならないという能動的な考えで。
「それにしてもシュテルが時雨さんとの電話で騒がなかったのは意外だったな」
「私・・・だって・・・時と場合ぐらい・・・考えてます・・・・・・」
「それだったら何故先程あのような発言をしたのだ?」
「シュテルんってば頭の良い馬鹿だからね~」
「私のどこが馬鹿なのですか?時雨の為なら【自主規制】を【自主規制】して【自主規制】出来るこの私のどこが馬鹿なのか説明してください」
「「「そういう発言をするところだ!!」」」
「解せぬ」
【見せられないよ!!!】状態から再生したシュテルが三人からの言葉でガクリと肩を落とすが三人はいつものことと言った様子でこれをスルーした。
ちなみにユーリはヴィータと一緒に八神家にいる。そして八神家にはギルとはやてがいる。防衛面では安心だと言えよう。
「んじゃ、俺が結界に穴を開けるからーーーーーーーーーーーー」
御門が指示しようとしたときに御門たちのすぐ側を閃光が通り過ぎていった。幸いに顔は仮面で隠しているので見られた恐れは無いのだが、御門は閃光の中にいる人物たちの顔を確認することができた。
「高町なのはにフェイト・テスタロッサか、となると今夜はもしかして」
「ねぇねぇ、今のひょっとして僕とシュテルんのオリジナルじゃない?」
「正確には平行世界のオリジナルなのですが間違いないですね」
「我のオリジナルははやてなのだが・・・・・・まぁこの場では関係ないか」
「よし、行こう。俺が結界に穴を開けるから三人は着いてこい」
反論など聞かない。御門は飛行魔法を解除して自然落下を始めた。始めは緩やかに、しかし段々と加速していき、数分もしないうちに御門の視界一杯に結界が写り出された。
『銃か?』
「それは入ってから、先にこっちからだ」
ユニゾンしたアーカードの問いに答えながら御門は一本の剣を取り出す。その剣は三つの奇跡を宿し、決して切れ味の落ちることの無いと言われた宝具の原典。
「
一閃、シグナムから習ったことで戦闘を行えるレベルにまで昇華した御門の剣術が結界を容易く切り裂く。宝具に頼りきっていたならこうは上手くいかなかっただろう、この場で不謹慎ながらも自分が強くなったことを感じられて御門は少し嬉しくなった。しかし結界も何時までも切られたままというわけではない。目で見て分かるような早さで切られた結界は塞がっていった。
『どうやら自動修復の効果があるようだな』
「構わない」
修復のタネをアーカードから明かされるがその程度のことなら予想していた。むしろ触れた瞬間にその部位が爆発するような地雷系のトラップの方を警戒していたのだが結界を足場に出来ていることからそれは無さそうだ。
「抉じ開ける」
閉じていく結界の隙間に手を入れて力任せに開いていく。ミシミシと悲鳴をあげながら結界は御門に抵抗していたがそれは少しの間だけで、耐えられなくなったのか結界の一部分だけが砕け散った。
「『open sesame 』」
直径僅か2m程の小さな穴だが侵入するのにはなんら問題ない。そしてその穴が再生しないことを確認してから御門は結界内へと堂々と入っていった。
結界内には武装局員たちとクロノ・ハラオウン、シリア・ハラオウン、高町なのは、フェイト・テスタロッサ、そして疲労している様には見えるが負傷が見られないシグナム、ザフィーラ、リニスの姿があった。
「『管理局局員諸君、任務御苦労』」
御門はデュランダルをしまい、変わりに白と黒の取り出す。そしてその銃口を武装局員たちに向け、
「『さようなら』」
容赦なく、魔弾を放った。
~
闇の書の主として行動する時の時雨の一人称。どこかのスカーさんを彷彿とさせる。
~バーサーカー
りょ・・・・・・りょりょりょ、呂布だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
~【ワラキア】
吸血鬼の分割思考。名前、体躯のモデル共にメルブラのズェピア。仮面は【祟】
~【ネロ】
獣の分割思考。名前は
~
忍の分割思考。名前、体躯のモデル共に刀語の
~【DB】
女の分割思考。名前、体躯のモデル共にCCCのBB。DBとはダークブロッサムの意。仮面は【DB】
~シュテル
平常運行である。
~レヴィ
マイペースだが時々天然毒舌が飛んでくることがあるので注意が必要である。
~ディアーチェ
時雨と同じでシュテルの奇行に頭を悩ませる者の一人。最近精神安定剤代わりに胃薬を手放せないとかなんとか。
ギルガメッシュから与えられたデュランダルの原典。一応デュランダルからは所有者として認められているが真名解放とまでは行っていない。オサレな死神の出る漫画で言うところの始解レベル、卍解までは先が長い。
~「『open sesame』」
~「『管理局局員諸君、任務御苦労・・さようなら』」
世界一怖い開けゴマ、からの解雇宣告。
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