ーーーーーージリリリリリリリッ!!
「うっさい」
けたたましい音をわめき散らしている目覚まし時計を止めて体を起こす。目につくのは誇りを被って辺りに蜘蛛の巣が張り巡らされた汚ならしい天井。海鳴市街にある廃墟と化した工場、そこが今現在の俺の魔術師としての工房になっている。
「起きたか」
「起きたよ」
奥から現れたワラキアに返事を返しながらタバコに火を着ける。
「言われた通りに
「抜き取った情報からあいつらが管理局の所属とわかる前からそう決めていた。監視役に害をなしたとバレて強行策を取られても敵わんからな。指示通りに暗示はかけておいたんだろ?」
「【別の家を八神家として認識知覚する暗示】であるならしかとかけたぞ」
「それならどうにか暫くは時間を稼げる」
首を回せば凝り固まった体からバキバキと音がたてられる。一応の寝床とは言えソファーで寝ればこうなるか。
「んじゃ、蒐集に行ってくる。任せたぞ」
「
「そうだ、頼んだ」
「頼まれた」
布団代わりにかけておいたコートを羽織り工場から出る。闇の書の蒐集ページは現在298ページ、ペースとしては悪くないがそれは妨害してくる連中がいなかったからなのだ。管理局に魔術師連中、それに監視してきた奴らと少なくとも三つの勢力が闇の書に注意を向けている。これまでのペースで蒐集することは困難になりそうだ。
「
敵対する勢力があるのなら叩いて潰す、阻む者がいるなら斬って殺す。魔術師としてではなく父親としてでもなく、死神と呼ばれていた頃の俺はそうしていた。ならば今回もそうすれば良いだけの話じゃないか。
「・・・・・・こんな姿、はやてに見られたら嫌われるかもしれないな」
誰もいない工場の前で誰にも届かないと分かっていながら、自虐気味に呟くことを俺は止められなかった。
ここは海鳴市内にあるテスタロッサ家。管理局での裁判を終えたプレシアは自宅を地球に構えることを決めて一週間前に引っ越しを完了していた。何故管理局のあるミッドチルダではなくわざわざ遠く離れた地球に構えることにしたのかはフェイトの友達が地球にいるからの一言で終わってしまう。親バカとは恐ろしいものだ・・・・・・
無論、プレシアやフェイトの刑期の関係もあり上層部からはゴネられたのだがリンディ・ハラオウンとクロノ・ハラオウンの両名が監視に着くことで何とか了承を得られていたのだ。それでシリア・ハラオウンが仕事が増えたとかゴネているのだがそれは自身がクロノに回していた仕事が戻ってきただけ、自業自得である。
そんなテスタロッサ家+ハラオウン家(シリアを除く)が暮らす住まいに来客があった。遠坂凜、衛宮士郎、ルヴィアゼッタ・エーデルフェルト、そして彼らが召喚したサーヴァントであるアーチャー、セイバー、ライダーの六人だ。フェイトとある程度回復したアリシアはなのはとその友人たちに会いに出掛けていておらず、アルフはフェイトたちに付き添って出ているので不在である。
「それで、お話とはいったい何なのかしら?魔術協会の関係者さん?」
客として現れた魔術師とサーヴァントたちにお茶を差し出しながら(リンディのお茶にはミルクと砂糖が添えられている) リンディは切り出した。ちなみにクロノはこの場に同席しているがプレシアはいない。理由?フェイトとアリシアの
「ありがとうございます。それにしても私たちのことを管理局は認知していたのですね?驚きです」
にこやかに微笑みながら応じたのは凜、もちろんのことリンディはその笑みを作り物だと気がつき同じようににこやかに微笑みながら警戒をしている。TP事件の後でリンディは管理外世界であるはずの地球に何故魔法の文明があるのか疑問に思い独自に調べていた。その結果わかったことは地球には魔術と呼ばれる魔導を使う人間がいるということだけ。それ以外の情報はどれだけ調べても出てこなかった。そして今、前に協力関係にあった時雨とは別の魔術師と対話している。警戒しない理由がない。
「悪いのだけど世間話だけのつもりなら帰ってもらえないかしら?私たちはこう見えて忙しいのだけれど?」
「あら、それはすいませんでした。それでは早速本題に入りましょう」
ーーーーーーーーーーーー闇の書の破壊、私たち魔術協会も協力いたしますわ。
それは共闘の申し出だった。
「ーーーーーーふぅ、終わったか?」
「お見事ですね」
地球から遠く離れた管理外世界で、シグナムとリニスはいた。シグナムはヴィータの暴走があった日と同じ【烈火】の面を、リニスは【従者】と書かれた面を被って顔を隠している。これは時雨からの指示で、もしも管理局と遭遇した時に顔をバレないようにするために着けさせている。素顔がバレていないのであれば素顔も変装の一つになるとは時雨の言、魔力によるサーチは時雨の用意した礼装で隠蔽できるので、少なくとも顔がバレていないお陰でシグナムたちは地球では管理局の目を気にせずに堂々と歩くことができた。
「これで340ページ・・・・・・もう少しだな」
「シグナム、気を抜いてヘマをしないでくださいよ。さっきだって虫の群れに襲われかけてたじゃないですか」
「うっ・・・・・・!!いや!だって虫だぞ!?芋虫みたいなのとか!蜘蛛みたいなのとか!ご・・・Gみたいなのとか!!そんなのが群れで来たら硬直しないか!?」
「私は別に大丈夫ですけど・・・・・・ハッ!!シグナム×昆虫姦・・・・・・!!」
「止めてくれ!!想像したくもない!!」
リニスの言葉に想像してしまったのかシグナムは二の腕の辺りを擦りながら身を震わせた。この世界にいる魔力を持った生物は虫が主で、先程も人の背丈の何倍もある蟷螂の群れをシグナムとリニスは撃退して蒐集をしたばかりだった。蟷螂や蝶々ならまだシグナムは耐えられる。だが芋虫や蜘蛛やゴキはダメだった、生理的に受け入れられないそうだ。
「さてっと・・・・・・休憩はここまでですよ。次の群れが来ます」
「・・・・・・そうだな」
シグナムとリニスがいるのは丘の頂上、そこから見下ろすことができる麓には黒い波が押し寄せてくるのが見える。黒い波の正体は蟻、人と変わらぬ大きさの蟻が次から次へとシグナムたち目掛けてやって来たのだった。
シグナムはレヴァンティンを構え、リニスは杖を握り直す。そして蒐集のために黒い波へと飛び込んでいった。
「てぃやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
岩場が目立つ管理外世界でザフィーラは小山と見間違う大きさの亀と戦っていた。とは言っても戦いは終盤、ザフィーラのラッシュに自慢の甲羅を削られる亀は、
「はぁっ!!」
なす術無くザフィーラのとどめの踵落としを受けて甲羅を砕かれた。そしてその隙にシャマルが亀からリンカーコアを奪い取る。
「お疲れ様、これで今日の分は終わりよ」
動かなくなった亀の上で一息ついているザフィーラに話をかけるのは今日の戦利品であるリンカーコアから取った魔力を手にしたシャマル。二人もシグナムたちと同じように仮面で顔を隠している。ザフィーラは【盾】、シャマルは【湖】だ。
「ようやくか」
「えぇ、それにしても時雨さんも無茶言うわね。一週間の期限付きとはいえ蒐集のペースを今までの倍にしろだなんて」
「仕方あるまい、魔導師たちを相手にしたのだ。管理局が包囲網を張るのに然程時間はかかるまい」
実は時雨は蒐集のペースを単純にこれまでの倍にすることを命じていた。原因はヴィータの暴走。狙った訳ではないのだろうがヴィータが相手をしたのは高町なのは、管理局と繋がりのある魔導師なのだ。そしてその襲撃に反応して現れたのはフェイト・テスタロッサと藤峰アリス。彼らもまた管理局に繋がりのある魔導師、もはや闇の書の存在はバレたと考えても間違いではないだろう。だからこその強行作戦、管理局が準備を整える前に蒐集を進めておく。そして管理局の規模を考えて完全に包囲網が敷かれるであろう予測された期間は一週間、故に時雨はこの一週間の間に出来るだけ蒐集するように指示を出した。
「私たちのノルマは終わったのだけど・・・まだ蒐集をするんでしょ?」
「無論だ、集めれる時に集めておいても損はあるまい」
その時に岩場を砕くようにして新たな亀が現れた。先程蒐集した亀よりも数倍も大きな巨体に比べるとザフィーラとシャマルは象と蟻ほどの差があった。
「デカ・・・・・・」
「スゴく・・・大きいです・・・」
あまりの大きさを前にして唖然とする二人。ちなみに前者はシャマル、後者はザフィーラである。シャマルが言ったならネタで済むかもしれないがザフィーラは素でこれを言っているのだから質が悪い。
「お、大きいからって何よ!!大切なのはテクニックよ!!(ベットの上的な意味で)」
「確かにそうだな、大きさはあるに越したことはないが技術の方も重要だ(武術的な意味で)」
何やら噛み合わない会話をしながら亀を睨み付けるザフィーラとシャマル。ようやく二人のことを認識し、押し潰そうとした亀だったがーーーーーー遅かった。亀は動けない、先程の会話の間にクラールヴィントから伸びた糸が亀の体に絡み付いていたから。
「なぁスノウ・・・・・・これ作ったの誰?」
工場から我が家に戻ってきた俺はスノウと合流して蒐集に向かうつもりだった。だがその直前で腹が減り、何か無いかと思って台所を探していたときにコンロの上に鍋があることに気づいた。昨日の残りかと思い、蓋を取って中身を確認するとーーーーーーーーーーーー
「確か・・・・・・シャマルだったはずだが?」
「(^ω^)」テケリ・テ
「なんで鍋の中に神話生物がいるんだぁぁぁぁぁぁぁ!?」
鍋一杯に広がる玉虫色の液体に幾つもの目玉と口・・・・・・クトゥルフのTRPGでお馴染みのショゴスさんがinしておりました。もうわけがわからないよ。
「捨てるか?」
「(´;ω;`)」テケリ・テ・・・
「・・・・・・やっぱ残しとこ。何かに使えるかもしれないし」
「(^ω^)」テケリ・テ!!
あらやだ可愛い。俺の言葉で一喜一憂するショゴスを見てそう思ってしまった俺は発狂しているのかもしれない・・・・・・使い魔にして魔術師たちにぶつけるか。
「ひとまずこいつはおいといてだ、行くぞスノウ」
「待って。時雨、昨日は休まれたか?」
・・・・・・こういうところを見るとスノウってホントいい勘しているなと思う。たった数分で俺のことを見抜いてくるんだから。
「睡眠時間30分、動く分には問題ない」
「それでは駄目だ」
「あぁ?」
スノウから否定の言葉が出ると俺は体制を崩されてソファーに横たわる形にさせられた・・・・・・スノウの膝に頭を乗せて。
「・・・・・・何のつもりだ?蒐集に行かねぇと、時間が無いんだぞ」
「貴方は根を詰めすぎだ。本格的な睡眠を取るような時間は無いが仮眠程度なら取れる時間はある。もしはやてが目を覚まして、憔悴しきった時雨を見たらどう思う?」
「・・・・・・心配するだろうな」
まったく、スノウは人の弱味に突け込むのが上手い。確かにはやてを救ったとしても俺たちがボロボロならはやては俺たちのことを心配するだろう。心優しいあの子のことだ、間違いなくそうなる。
「ちっ・・・・・・一時間、寝させてもらうぞ」
「あぁ、ゆっくり休め」
膝の柔らかさとそこから伝わる体温の温かさを感じながら俺は瞼を閉じた・・・・・・
「なぁ、折角だから子守唄でも歌ってくれや」
「え?あ、あぁ・・・・・・カナーシミノームコーオーヘトー」
「スク○ル○イズゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」
眠りにつくのが遅くなったとだけ記しておこう。
~廃墟と化した工場
時雨の現拠点兼魔術師としての工房。時雨は魔術師を名乗っているが『』を目指している訳ではないので拠点としてそこを使い、魔術師の工房並みに守りを固めている。神殿級とまではいかないが一流の魔術師からしても攻めきるのが困難であると言わしめるものである。不備がないかコトミネを使って試したところ、「代行者だとしても、ここを突破できるのは五人もいないだろう」とお墨付きをいただいた。そしてコトミネは髪の毛がアフロになりながらも突破していたりする。
~猫姉妹の扱い
~【祟】
~【不忍】
~【獣】
~【DB】
今回出てきた時雨の協力者たちの名前。四人目は龍玉とは呼ばないであげて。先生との約束だよ。
~管理局と魔術協会
協力関係になった模様。ただしリンディさんは警戒バリバリです。
~地球在住のテスタロッサ家
プレシア「最近フェイトが元気ないわね・・・」
アルフ「地球で出来た友達と会えなくて寂しいんじゃないの?」
プレシア「そうだ、地球に住もう」
そんなノリで引っ越してきた。
~フェイトとアリシアの
このプレシアにとってはこの程度平常運行なのです。
~芋虫みたいなのとか!蜘蛛みたいなのとか!ご・・・Gみたいなのとか!!
作者も苦手です。
~ハッ!!シグナム×昆虫姦・・・・・・!!
こいつはいい・・・・・・!!薄い本が厚くなる・・・!!
シャマル「ステーンバーイステーンバーイ」
~スゴく・・・大きいです・・・
アッー♂
~(^ω^)テケリ・テ
シャマル作、神話生物でお馴染みのショゴスさん。表記としては可愛いが見た目はとってもグロテスク。想像してしまった方はSAN値のチェックをどうぞ。
~スノウの膝枕
時雨の睡眠時間は30分、そこから逆算すると行動時間は23時間30分になる。それに気がついたスノウによる強制睡眠タイム。
~カナーシミノームコーオーヘトー
ヤンデレ恐い。
感想、評価をお待ちしています。