調律者は八神家の父   作:鎌鼬

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第四幕 イレギュラーとの邂逅

 

 

「話さなかったのか裏目に出たか・・・・・・」

 

 

ヴィータ暴走の知らせを御門君から聞いて別世界に捜索に出ていたシグナムたちに召集をかけてヴィータの元に向かわせる。むろん俺とスノウも向かっているのだがシグナムたちが向かった方が早いので先に行かせているのだ。

 

 

「時雨、結界が見えたぞ」

「あぁ、わかって・・・・・・あん?」

 

 

目の前に見える三角形の結界に近づく人影を見つける。目を凝らせば男と女であることがわかり、さらにその顔には見覚えがある。

 

 

「スノウ、計画変更だ。ヴィータのことはシグナムたちに任せて俺たちはあいつらを足止めする」

「彼らを?」

「あぁ、視認されると面倒だ。面を被れ」

 

 

近くにある一番高いビルの屋上に立ち、コートから仮面を取り出す。本当なら【不忍】(しのばず)の面を被りたかったのだが他に相応しい奴がいるので代わりに【主】と書かれた面を被る。それに習ってスノウも【雪】と書かれた面を被った。それと同時に辺りに響き渡る爆音と雷鳴。どうやら反対側から侵入されたみたいだな。

 

 

「ちっ、【暗殺者・百貌の暗殺者】」

 

 

それを見てこの状況に相応しいと思われるカードを発動させる。外見には何ら変化はないが内面には確りと変化がある。

 

 

「宝具開帳【思考独立幻想】(ザバーニーヤ)

 

 

宝具の発動と共に影が沸騰し、そこから肉体を持った何かが現れた。現れたのは貴族のようなきらびやかな衣装に身を包んだ金髪の男性。整った顔だが半月状に開いた口から見える歯と閉じた目から流れる血涙のせいで台無しである。

 

 

「説明は?」

「不要だ、私の勤めを果たそう」

「そうか。なら行け、ワラキア」(・・・・)

「キーーーーーーキキキキキッ!!!」

 

 

俺の分割思考の一つであったはずのワラキアが受肉して限界を果たし、奇妙な笑い声をあげながら衣装を翻して駆けていった。百貌の暗殺者ーーーーーーアサシンの語源でもあるハサンの一人である【百の貌のハサン】と呼ばれた英霊の力を使えるカードなのだがどうしてだが不備が出来てしまっている。本来の【妄想幻像】(ザバーニーヤ)ならば多重人格であることを前提としてそれぞれの人格を産み出す物だ。使い勝手が良いように思えるかもしれないが調子に乗って分体を出せば出すほど全体のスペックが落ちてしまうデメリットがある。しかし俺の使った【思考独立幻想】(ザバーニーヤ)は違う。その人格に相応しいスペックを俺のステータスを参照して割り当て、尚且つ俺自身のスペックは落ちないのだ。ぶっちゃければスゲーチートよこれ?本来のハサンの【妄想幻像】の完全な上位互換だもの。だからここはワラキアに任せて、

 

 

投影開始(マテリアル・オン)

 

 

俺は足止めに徹するとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「衞宮くんこっちよ!!」

「わかってるっての・・・・・・!!」

 

 

夜の町を駆ける男女の姿があった。男女が夜に二人っきりと聞いて良からぬ妄想をする者がいるかもしれないが二人の間にはそんな気配は全くない。少女の名前は遠坂凜、少年の名前は衞宮士郎と言った。彼らは常人とは比べ物にならないスピードで町に張られている結界へと向かっている。そんな二人の耳に爆音と雷鳴が届く。

 

 

「遠坂!!今のってもしかして」

「えぇ・・・間違いなくあの馬鹿がやったのでしょうね!!」

 

 

二人には今の爆音と雷鳴の原因に心辺りがあった。それは二人の仲間であるルヴィアゼッタ・エーデルフェルトと呼ばれる少女、詳しく言うならルヴィアが呼び出した存在(・・・・・・・)が爆音と雷鳴の原因であるのだろう。

 

 

「こうしちゃいられないわね!!私たちも早く結界にーーーーーー」

 

 

凜の言葉は続くことはなかった。横合いからいきなり出現した飛翔物、それが凜の顔目掛けてやって来たから。

 

 

「遠坂ーーーーーー!!」

 

 

後ろにいたからそれを確認できた士郎が助けようと手を伸ばすがもう遅い。死角から高速で現れた飛翔物をどうにかする手段を士郎は持っていなかったのだから。そう、衞宮士郎はーーーーーー(・・・・・)

 

 

ガギンと不愉快な音がして飛翔物の軌道が変わり、轟音と共にアスファルトに突き刺さる。士郎では救えなかった凜を助けたのは手に白と黒の双剣を持ち、赤い外套に身を包んだ男性だった。

 

 

「大丈夫かね?凜」

「ーーーーーーえぇ、ありがとう。助かったわ、アーチャー」(・・・・・)

 

 

凜からアーチャーと呼ばれた男性は飛翔物がやって来た方向に立ちながらアスファルトに突き刺さっている物を見る。それは剣だった。なんら装飾の施されていない、RPGで言うところの鉄の剣や鋼の剣と言った低レベルな武器。それをまるで弾丸のように射出するこの戦法に彼は見覚えがあった。

 

 

「手を貸します、アーチャー」

セイバー(・・・・)か、助かる」

 

 

虚空から突然現れてアーチャーの隣に立ったのはセイバーと呼ばれた青いドレスと鎧を着た少女。手には何かを持っているように見えるが風が逆巻いているだけでそれを視認することは叶わない。そしてそれを確認したかのように見計らって始めの不意討ちと同じように高速で剣群が飛翔してきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コトミネ情報からわかっていたがまさかあいつらが呼び出されるなんてね・・・・・・」

 

 

ビルの屋上で黒塗りの弓を手にしながら初撃を払った相手を見る。赤い外套に手に持った白と黒の夫婦剣・・・・・・どっからどう見ても正義の味方さんじゃないですかヤッダー!!

 

 

「あれを払うとは・・・・・・あの者はいったい?」

「サーヴァント、過去に偉業を成し遂げて世界にその功績を認められた英雄と呼ばれる存在を使い魔として呼び出したのがあれだ」

 

 

コトミネ情報からこの世界のロンドンにある時計塔から何人かの魔術師が闇の書目的で英霊を呼び出したことは知っていたが・・・・・・正義の味方が来るなんて予想外でした。あ、横に現れたのはエンゲル係数上昇の原因の腹ペコ騎士王様じゃないですか!!霊体化出来たんですね、おめでとうございます。

 

 

「ま、だからといってやることは変わりないんだけどさ」

 

 

新たな剣を投影し、弓に番い、矢として射ち放つ。射止める気は無いが狙い所はすべて急所、俺の役割は足止めなのだから殺さなくても良い。ラッキーで仕留められれば嬉しい程度の嬉しくないやり甲斐のあるお仕事だ。

 

 

「精々止められてくれよ、英霊と魔術師諸君?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結界内時は少し戻り、結界内では二人の魔導師による戦闘が行われていた。

 

 

「落ちろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

叫びをあげながら鉄球を己のデバイス【グラーフアイゼン】で誘導弾として放っているのは赤いバリアジャケットに身を包んだ少女ヴィータ。彼女は時雨たちが行っている蒐集の手助けをしようと地球で探知魔法を使い、大型魔力を持つ者を見つけて結界に閉じ込めた。

 

 

「いきなりなんなの!?」

 

ヴィータと対峙しているのは原作の主人公だがこの世界において影の薄い人物となっている魔法少女(笑)である高町なのは。突然張られた結界に動揺しているところをヴィータに教われた彼女は、

 

 

「話を聞いてって・・・・・・っ!!」

『ディバイン』

「言ってるでしょ!!!」

『バスター』

 

 

ヴィータの誘導弾をシールドで受け止めながら、主力魔法であるディバインバスターを放った。元より高い威力を持っていたそれはジュエルシードの事件から半年たったことでさらに磨き抜かれていた。

 

 

『回避推奨』

「砲撃っ!?」

 

 

突然の砲撃魔法による反撃に驚きながらもヴィータはディバインバスターを寸のところで回避することに成功した。その際に彼女の被っていた帽子が落ち、砲撃に飲まれて消滅した。

 

 

ヴィータの・・・・・・闇の書の騎士たちの騎士甲冑(バリアジャケット)は主であるはやてと時雨の考えによって構築された物である。姉のように、父のように慕っている人物によって作られたそれは例え戦闘用の衣装であるとはいえ大切な、思い入れのある物であるのだ。

 

 

それを、一部とはいえ壊された。

 

 

「っ!!!アイゼン!!」

『御意』

 

 

キレたヴィータの指示によってアイゼンからカートリッジシステムによる薬莢が吐き出され、アイゼンの鎚のの先端が鋭くとがった物とロケットの推進装置のような物に変わる。

 

 

「ラケーテン・・・・・・っ!!」

 

 

推進装置から爆炎があがり、ヴィータが加速した。それを見たなのははヴィータから距離を取ろうとするがそれ以上のスピードでヴィータはなのはを追い詰める。

 

 

「ハンマァァァァァァァァア!!!!」

 

 

推進装置の加速によるアイゼンの一撃、なのはは咄嗟にシールドを張った物のシールドの耐久性以上の威力を持った威力によって粉砕され、地面に叩きつけられる。

 

 

「潰れろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

ヴィータの攻撃は止まらない。なのはを落としてからもハンマーに振り回されるようにして遠心力を高めていき、地面にいるなのはに向かって突進していった。それを防ごうとなのははシールドを張り、デバイス【レイジングハート】を前に突き出すが最高まで威力を高めたヴィータの一撃を防ぐことは叶わず、シールドは砕かれ、レイジングハートはへし折られ、さらにレイジングハートのコアにダメージを与えるまでいった。

 

 

「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」

 

 

熱くなった思考を冷却するように息を荒くしてアイゼンから使ったカートリッジの薬莢を吐き出させる。そして意識を半分失った状態になっているなのはの前に立ち、手を翳して闇の書を呼び出した。

 

 

これから行うのは闇の書の蒐集、地球という魔法文明のない世界においてこれだけ優秀な魔導師のリンカーコアを蒐集出来ればページはかなり埋まることになるだろう。そう思いながら蒐集を開始しようとしたときにーーーーーー

 

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」

「っ!?」

 

突然の上からの奇襲、なんとかそれを察知できたヴィータは危なげなく回避することに成功する。

 

 

「・・・・・・なにもんだ、てめぇら」

 

 

忌々しげに蒐集を邪魔してきた二人を睨み付けながらヴィータは問うた。それに対して二人は手にした剣とハルバートの形に酷似したデバイスをヴィータに向けて、

 

 

「「友達だ」」

 

 

フェイト・テスタロッサと藤峰アリスは堂々と良い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソッ!!」

「逃がすか・・・!!」

「逃げられると思うなよ!!」

 

 

突然の乱入者に分が悪いと判断したヴィータはなのはからの蒐集を行えなかったことに歯軋りしながらもこの場から離脱しようとする。しかしフェイトが速さを生かしながら回り込み、アリスがワンテンポ遅れながら斬りかかることによって逃げることができなかった。

 

 

「なっ!?バインド!?」

 

 

その逃走劇も突如として終わりを告げる。オレンジと緑のバインドによってヴィータが拘束されたからだ。バインドの術者はアルフとユーノ。相手が一人であることを確認して予め隠れていたのだ。

 

 

捕らえたヴィータから話を聞くためにフェイトが近づこうとしている中でアリスは周囲を警戒していた。

 

 

「(原作ならヴィータが捕まったタイミングでシグナムたちがやって来るはず・・・・・・時期やシチュエーションが違うとはいえ警戒しておいて損はない)」

 

 

彼は転生者だからこそ知り得ている原作に関する知識によってこの後の展開を先読みしていた。念のためにアルフにこっちに来るように念話を使って伝えておき闇の書の騎士たちの乱入に備える。

 

 

そしてフェイトがヴィータの前にやって来たその時、

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「(来たっ!!)」

 

 

上空から叫びと共に乱入者がフェイトに斬りかかってきた。その一撃を危なげながらに受け止めたフェイトを横目で確認しつつアリスは乱入者に斬りかかろうとするが、

 

 

「殺らせんよ」

「っ!?」

 

 

突然横合いから銃を突き付けられて、発砲された。デバイスの判断によって障壁が張られたことにより直撃を受けずに済んだのだがアリスの心中は乱れていた。

 

 

「(銃だぁ!?闇の書の騎士たちで銃を使う奴なんていなかったはずなのに!?)」

 

 

 

そしてこちらにやって来ようとしていたアルフにも襲撃があった。

 

 

「ダイナミックエントリィィィィィイ!!!」

「きゃぁっ!?」

 

 

正面からのプロレス技で言うところのドロップキック、フェイトが襲撃されたことで動揺していたアルフはそれを避けきれずに受けてしまう。奇しくも同じところに飛ばされたフェイトたちは体制を建て直し、乱入者たちの姿を確認することができた。

 

 

乱入者の数は三人、

一人は剣を持ち、

一人は銃を持ち、

一人は無手である。

そして三人とも顔半分を隠すような仮面を着けておりそれぞれ、【烈火】、【銃剣】、【盾】の字が書かれている。

 

 

「フェイト、大丈夫かい?」

「うん、なんとか」

「(烈火と盾ってのは烈火の将と盾の守護獣のことだよな・・・・・・なら銃剣はいったい・・・イレギュラーか?それとも俺の知らない転生者か?)」

 

 

警戒するフェイトたちに対峙するように烈火と盾は立ちはだかり、銃剣はヴィータにかけられていたバインドを解除していた。

 

 

「あの・・・・・・」

「謝罪は後だ、烈火の、盾の、どうする?」

「目的を果たしたのなら引くべきだ」

「私たちが殿を勤めよう」

 

 

烈火と盾の申し出を受けて銃剣はヴィータの手をとって結界から脱出しようとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Alalalalalalalalala!!!!!」

 

 

その時、爆音と雷鳴を轟かせながら新たな侵入者が結界を破ってきた。それに気がつきフェイトたちと烈火たちは飛び退くと侵入者はそれぞれの間にやって来て足を止めた。

 

 

現れたのは牛が引いている古代に使われていた戦車(チャリオット)だった。それに乗っていた偉丈夫は堂々と語った。

 

 

「双方、剣を引けぃ!!王の御前である!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我が名は!!征服王イスカンダル!!(・・・・・・・・・)

此度はライダーのクラスを持って顕現した!!」

 

 

 






~仮面
顔を隠す為だけでなく存在を僅かながら認知されにくいようにする魔術をかけられた時雨お手製の礼装。時雨は【主】、スノウは【雪】、シグナムは【烈火】、ザフィーラは【盾】、御門は【銃剣】となっている。他のメンバーの文字も予想してみよう。

~思考独立幻像
本来の百の貌のハサンの宝具が変質してしまったことによって生まれたこの作品オリジナルの宝具。作中であったように独立した分割思考を受肉化させて顕現させる。その上本体のステータスが変わらないというチート仕様になっています。デメリットがあるとすればこれによって顕現した分割思考は使用することができず、さらに顕現した分割思考が倒されて消滅した場合にはそれだけ時雨の分割思考が減ることになる。例えばワラキアの顕現に使用した分割思考の数は15、ワラキアが顕現している間は時雨は15の分割思考を使うことが出来ずにさらにワラキアが消滅すれば15の分割思考を失うことになる。


~セイバー
~アーチャー
~ライダー
リリなのにサーヴァント乱入ですよ。士郎×セイバー、凜×アーチャーは鉄板。ルヴィア×ライダーは貴族と王族で相性よさそうだからそうした。本当だったらウェイバー×ライダーにしたかったけど士郎と凜が出ているのならルヴィアを出すしか無いでしょ!!(使命感)


~ヴィータVSなのは
ここはヴィータのプッツンの理由が増えたこと以外は大体原作通りのはずです。


~魔法少女(笑)
魔法少女?魔砲少女でしょ?もしくは魔王少女。


~ヴィータVSフェイト&アリス&アルフ
偶々近くにいたフェイトたちが気がついた結果一対三という驚きの展開に、シグナムなら兎も角ヴィータには重荷な状態でした。


~ダイナミックエントリィィィィィイ!!!
ただの飛び蹴り。シャマルがザフィーラに教えました。つまりはシャマルが原因。


感想、評価をお待ちしています。


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