調律者は八神家の父   作:鎌鼬

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後書きに用語説明みたいなのを着けました。作者の偏見による物なので真に受けないでください。


第三幕 始まる物語

 

 

閉じよ(みたせ)

閉じよ(みたせ)

閉じよ(みたせ)

閉じよ(みたせ)

閉じよ(みたせ)

繰り返すつどに五度、ただ満たされる刻を破却する

素に銀と鉄

礎に石と契約の大公

祖には我が大師シュバインオーグ

降り立つ風には壁を

四方の門は閉じ王冠より出で王国に至る三叉路を循環せよ』

 

 

夜の海鳴で三人の若者が呪文を唱えながら妖しげな魔法陣を地面にそれぞれ書いていた。そばにいるのはカソック衣装に身を包んだ神父と思われる男性。鉄皮面で表情を読み取ることは難しく、親しい彼の友人か友人だった今は亡き者たちがいれば彼が今どのような気持ちでこの儀式に立ち会わせているのか理解できただろうに。

 

 

『ーーーーーー告げる』

 

 

陣が完成したことによって開始の言葉が告げられる。

 

 

『汝の身は我が下に

我が命運は汝の剣に

聖杯の寄るべに従いこの意この理に従うのなら応えよ

 

それは本来ならばこの世界にありえるはずの無い詠唱。過去に偉業を成し遂げ、世界にその功績を認められた者たちを呼び出すための言霊。儀式が進むに連れて陣からは視認できる程の魔力が逆巻き、暴風となって三人に襲いかかる。

 

 

『誓いをここに

我は常世総ての善と成る者

我は常世総ての悪を敷く者

汝三大の言霊を纏う七天

ーーーーーー抑止の輪より来たれ天秤の守り手よ!!

 

 

最後の言霊が紡がれ、陣から発していた魔力が爆ぜた。そして陣の中央に人影が三つ現れる。

 

 

一つは青いドレスと銀の鎧に身を包んだ少女

 

一つは白髪を下ろした赤い外套に身を包んだ男性

 

一つはマントを羽織った堂々たる風格漂う偉丈夫

 

 

「ーーーーーー問おう」

「ーーーーーー問おう」

「ーーーーーー問おう」

 

 

三人の口が開き、自分達を呼び出した者たちに問いを投げ掛ける。

 

 

「貴方が私のマスターか?」

「君が私のマスターかね?」

「貴様が余を招きしマスターか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ・・・・・・」

 

 

見渡しても砂と岩場、そして青い空しかない乾いた世界、そこで俺は紫煙を吐き出した。

 

 

はやてが倒れて早一月。俺は着いてくることを決めたシグナムたちと共に闇の書の蒐集をしていた。現在の闇の書のページは250、平行して行っているデバイスの完成度五割とかなりいいペースで進んでいるがそれはまだ開始して間もないからだろうと俺は予想している。シグナムたちに人からの蒐集は可能な限り避けて出来るだけ生物からの蒐集をするように言っているがこうも立て続けに生物から魔力が奪われる事が続いたら管理局も気づくかあやしがって来る頃だろう。

 

 

本来ならこう言った生物よりも人からの蒐集の方が効率は良いらしいのだが俺が命令して出来るだけしないように言っている。それはもしも管理局に捕まったときに罪状を減らすためである。シグナムたちが捕まるとは考えにくいがIF(もしかしたら)がある。それにどうしようも無くなって管理局に頭を下げることになるかもしれない。そうなったときの為に出来るだけ罪状を減らしておこうという考えなのだ。もちろん管理局に捕まる気も頭を下げる気も無いのだが不測の事態というのはどうしても起こるものだ。それに備えていて何が悪い?もし当たれば良かったと安堵でき、もし外れても笑い話になる、良いこと尽くしじゃないか。

 

 

「時雨」

「おぉ、スノウか。皆はどうだ?」

「皆ノルマを達成して家に戻っている。あと軽傷はあっても重傷はないのでご安心を」

「そっかそっか、それは良かった」

 

 

俺の目の前に魔法陣が展開されそこからスノウが現れる。そしてスノウからの報告に安堵した。娘を救いたい俺の為にあいつらを振り回してるんだ。死ぬことはもちろん大ケガでもされたら申し訳無い。

 

 

「それにしても大物を捕らえたな」

「見た目通りに愚鈍な奴でな、そこまで苦労しなかった」

 

 

そう言ってスノウは俺の足場になっている龍に目を向ける。手足と尾と翼を切り落とされ達磨状態の龍はヒューヒューとギリギリで生きているものの虫の息であることは誰の目からしても明らかだろう。蒐集対象を探していた俺を獲物だと思って襲ってきたこいつを翼を剣で射ぬいて地面に落とし手足と尾を切り落とした。残念、どうやらお前の方が獲物だったようだな。

 

 

「スノウ、頼んだ」

「はい」

 

 

スノウの手にある闇の書が開かれる。そして龍から魔力の塊、リンカーコアが現れて闇の書に吸い込まれていく。それがとどめとなったのか龍の呼吸は止まって死んだ。

 

「ページは?」

「五ページだ」

「まずまずだったな」

 

 

酷ければ数行とかしかない時もあるからまともにページとして埋まってくれたのは大きい。

 

 

「戻るか?」

「こいつら片してからな」

 

 

砂誇りがあがってそこから鮫に似た生き物が集団で現れる。龍の血の臭いに誘われたのだろう、普通なら避けたいと思うのだろうが今の俺からしたらこいつらの存在は好都合だった。

 

 

「手伝おう」

「助かるーーーーーー投影開始(マテリアル・オン)

「穿て、ブラッティーダガー」

 

 

投影された剣と赤い短剣による剣群が鮫に向かって降り注ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーー御門よ、少し良いか」

「ん?何ディアーチェ」

 

 

夜、御門はディアーチェとレヴィ、そしてユーリに囲まれていた。皿洗いの手を止めてディアーチェたちに向き合う。

 

 

「率直に聞こう、貴様はどこまで知っている?」

「ーーーーーー」

 

 

ディアーチェの言葉に御門は黙った。ディアーチェは御門のことを怪しんでいた。はやてが倒れたと聞いたとき、御門の様子は落ち着きすぎていた。時雨でさえ取り乱していたというのにだ。御門は何かを知っている、そうディアーチェは思っていた。

 

 

「ヴィータと、シュテルは?」

「ヴィータは風呂に入っておる」

「シュテルは・・・・・・」

 

 

ちらりとユーリが部屋の隅に目を向ける。そこには・・・・・・

 

 

「時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨時雨・・・・・・・・・・・・」

 

 

虚ろな目をして体育座りで座っているシュテルがいた。

 

 

「(・・・・・・見なかったことにしよう)結論だけ言えば、時雨さんたちが何をしてるか、その結果どうなるかまで僕は知っている」

「(見なかったことにしたか・・・・・・)レアスキルによる予知か?まぁいい、それでどうなるのだ?」

「・・・闇の書は暴走して、スノウさんは消滅する。その結末を時雨さんは知っていて、それを回避しようと全力で動いてる」

「(見なかったことにしましたね・・・・・・)じゃあ時雨さんとシグナムさんたちが居ないのは・・・」

「倒れたはやての為、闇の書の侵食を止めるためにページの蒐集をしてる」

「(見なかったことにしたね・・・・・・)それで、これからどうするの?」

 

 

シュテルの奇行に全員が目を背けた。まぁ病みかけている行動だなんて好んで見たいと思わないだろう。

 

 

(人の不幸は蜜の味!!)キリッ

(マーボ!!)キリッ

 

 

訂正、この二人なら病みかけている行動を酒瓶片手に笑いながら見ていそうである。

 

 

「時雨さんが僕たちに何も言っていないってことは僕たちには何もしてほしく無いってことだ。だから僕たちは何もしない。はやてと時雨さんが闇の書の主だと言うことを悟らせない。もちろん時雨さんから言われたら全力で手伝うけどね。ヴィータにはバレないようにしよう、ヴィータのことだから魔力を蒐集するとか言いそうだし・・・・・・」

 

 

御門の考えを聞いてマテリアルの一同は肯定の意を示すように頷く・・・・・・シュテルは相変わらず病んでいるが。

 

 

カタン・・・・・・

 

 

「うん?」

 

 

扉の外から音が聞こえた。それに気がつき御門は扉から顔を出す。すると玄関の扉が開いているのが見えた。まさかと思い靴を確認すれば予想通りに靴が一足足りない・・・・・・ヴィータの靴が。

 

 

「最悪だよこんちくしょう」

 

 

ヴィータかま何をしようとしているのか察した御門は悪態をつき、時雨とシグナムたちに連絡をして外へ飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はやての具合が悪いことには気がついていた。

それでも、大丈夫だと時雨は言っていた。

それを自分は鵜呑みにしていたのだ。

他の騎士たちが、時雨が今も蒐集に勤しんでいるというのに。

自分だってや騎士だというのに。

 

 

「わかってるんだよ・・・・・・」

 

 

他の騎士たちと違い、ヴィータは子供なのだ。

時雨と騎士たちはそこを気にかけてヴィータを蒐集に誘わなかったのだろう。

理解は出来る、しかし納得は出来ない。

 

 

ヴィータにとってはやては姉のような存在なのだ。皆がはやてを救おうと奔走しているのに自分だけ遊んでいることなど出来ない。

 

 

「アイゼン」

『御意』

 

 

ヴィータはアイゼンに命じて海鳴の町(・・・・)で探知魔法を発動した。

 

 

もしも、時雨がヴィータに事情を話していれば

もしも、時雨がヴィータを蒐集に誘っていたら結果は変わっていたのかもしれない。

 

 

しかしそれはもしも(IF )の話、物語は加速する。正史の流れ通りに、本来ならいないはずの役者が立っていようとも、流れていく。

 

 

 






~閉じよ閉じよ閉じよ・・・
~告げる・・・
型月ファンであるなら誰もが詠唱したであろう詠唱。作者はキャス孤カモン!!と願いながら詠唱しました。


~貴方が私のマスターか?
~君が私のマスターかね?
~貴様が余を招きしマスターか?
いったいどこの腹ペコ王と正義の味方と征服王なんだ・・・・・・


~蒐集
時雨の指揮による蒐集。二人一組で午前と午後に休憩を挟んで蒐集させている。むろん時雨はそれを無視して蒐集に勤しんでいるので蒐集が異常なことになっている。


~時雨の倒した龍
実はこの辺りの主だったりするが時雨によって達磨さんが転んだ状態に。その後来た鮫共々闇の書のページになりました。


~病んでるシュテルん
闇の書の所在がバレないようにと時雨が家から離れているために時雨成分が不足した為に病み病み状態に移行しました。24時間の接触、もしくはキス一回で治療できます。


~人の不幸は蜜の味!!
~マーボ!!
サディスティックな父親と麻婆好きな外道神父によるコラボレーション。二人がピースを横にした手を顔の前に持ってきて、空いた手を腰に当てているポーズを想像してください。


~ヴィータの暴走
誰が悪いとも言えない。家族思いなのは良いことです。


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