シリアル「シリアスの奴は置いてきた。ここから先あいつは着いてこれそうに無いからな」
シリアス「(´・д・`)」ショボーン
八月に入り、五月蝿く蝉が鳴きわめく真夏日の海鳴教会に来客があった。一人は黒髪をツインテールで束ねた少女、一人は夏だというのに厚手の貴族が着ていそうなドレスに身を包んだ少女、一人は短い赤毛の髪をした意思の強そうな少年。来訪者三人はこの教会の主であるコトミネ・キレイソンと何やら会話をしていた。その内容は決して【表】の話ではなく魔導の絡んだ【裏】の話である。
「ーーーーーーーーーでは、予定通り■■は来月ということで良いのだな?」
「えぇそれでいいわ。■■■が動くのは早くても十月に入ってからというのが協会の予想だし」
「それに縁の品を手に入れる時間も必要ですわ」
「・・・・・・」
少女二人がコトミネと会話している中で少年だけは口を閉じたままだった。それは話に入れないというわけではなく、コトミネのことを警戒していての行動だった。
「了解した。それで、これからどうするつもりだ?」
「どうするも何もこのまま教会に帰るわよ。まぁ飛行機の予定で帰るのは明後日の便になるけど」
「ふむ・・・・・・それならば丁度いいな」
「・・・・・・コトミネ、貴方また何か企んでるの?」
「企むとは人聞きの悪い。実は今日この町で祭りが行われる。良ければ参加してみないか?」
そう言ってコトミネは神父服の内ポケットから一枚のチラシを取り出して少女に渡す。そのチラシには可愛らしく書かれた団扇や浴衣のイラストと共に【海鳴夏祭りのお知らせ】と書かれていた。
真夏日の雲ひとつ無い晴天は地獄であっても夕暮れ時は天国である。夕暮れ時になって涼しくなってきた中でとある家の前で待つ一人の少年がいた。銀髪にオッドアイという現実離れした容姿を持った少年は何を隠そう鳳凰院御門である。彼は最近人数が増えた八神家の一人である少女ヴィータに誘われて海鳴で行われる祭りに行くことになったのだ。御門は転生してからこの方この祭りに参加したことがなかった。もっぱら夏休み中は家に引き込もってゲームをしていたからである。いつもなら引き込もっているはずの御門が友達と祭りに行くことを告げたときに母親は感極まって泣いていたという。
「お待たせーー!!」
元気のいい声と共に家の中から飛び出してきたのは髪の色と同じ赤色の浴衣を来たヴィータだった。いつもならおさげの髪も浴衣に合わせてかお団子のように纏められていて邪魔にならないようになっている。
「出迎えご苦労である」
「むー・・・・・・浴衣って動きにくいよー」
「こらこら帯ほどいたらあかんで?せっかくお父さんが着付けてくれたんやから」
「それにしても時雨が浴衣の着付け魔で出来るなんて驚きです」
「ユーリ、時雨は渡しませんよ」
ヴィータに続いて家から出てくるのはディアーチェ、レヴィ、はやて、ユーリ、シュテルの八神家子供組。ディアーチェは紫の、レヴィは青色の、ユーリは白色の、シュテルは黒色を主体とした浴衣を着て身仕度は整っている。はやては車イスの関係で私服のままだったがそれでも小物入れらしき巾着を手に持って祭りに行く準備は出来ていた。
「あれ?時雨さんたちは?」
「父ちゃんはシグナムたち連れて祭りの準備に行ったよ」
「お父さん、あぁ見えて祭りの実行委員会なんよ」
「・・・・・・マジで?」
「マジやで?確か他には・・・・・・コトミネおじさんもやったはずやけど」
はやてのこの言葉を聞き、御門は
「(なんか嫌な予感がする・・・・・・)」
数十分後の未来が恐くなった。
そんなことをしている間にも時間は進んでいき、御門たちは祭りの会場である海鳴商店街の前にある広場に着いていた。はやてが車イスーーーーーー意外なことにディアーチェが率先して車イスを押していたーーーーーーなので少し時間がかかってしまったがそれでも祭りの開始時刻には間に合ったらしく、人々は広場に建てられた矢倉の周りを囲んでいる。
「ねぇ御門、まだ始まらないの?」
「えぇっと・・・・・・案内見る限りだと実行委員会の挨拶してからみたいだね。そろそろ始まると思うよ?」
我慢仕切れなかったのかヴィータが御門に聞くと同時に矢倉につけられていた提灯に灯りが点る。蛍光灯とは違った輝きを放つ提灯に照らされた矢倉の上にはマイクを片手に持った時雨の姿があった。
『あーテステス・・・・・・これより祭りの開会式を始めまーす!!!』
時雨の言葉に反応して周りの人々が囃し立てるように拍手をする。
『えーまずは海鳴農林組合の皆さんによる盆踊りからです!!皆さん拍手で迎えたげてくださーい!!』
拍手と共に現れるのは浴衣を着た男女十数人。高齢者が多いのは農業という仕事柄仕方の無いことなのだろう。しかしそれよりも特徴的だったのはーーーーーーーーー
「「「「「「・・・・・・大根?」」」」」」
そう、大根である。現れた全員が大根を手にしているのだ。その光景に違和感を覚えたのは自分だけ、他の人々やはやてはその光景を普通に受け入れている。そしてあちこちにつけられているスピーカーから音楽が流れて農林組合の人たちは踊り始めた。矢倉を囲うように円を描きながら大根を楽器のように叩いて踊る。それが妙に上手かったことに御門は少しイラッとした。そして音楽が止まり、農林組合の代表者らしき人物が前に出る。
「えーそれでは今年の実りに感謝と来年の豊作を願いましてーーーーーーーーー
血祭りだゴラァァァァァァァァァア!!!!」
なんと代表者が近くにいた人を大根で殴った。バコンという堅い音がして大根が真っ二つにへし折れる。
「脳髄ミセロヤァァァァァァァァ!!!」
「
「腸をぶちまけろ!!!」
「駆逐してやる・・・駆逐してやる・・・・・・!!」
「ぶるぅあぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
「今死ね!!すぐ死ね!!骨まで砕けろぉ!!」
「野郎ぶっ殺してやらあぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!!」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!!!」
それを皮切りにさっきまで踊っていた全員が大根で殴りあいを始めた。大根を剣のように持って斬りかかる人がいれば槍のように持って突きに行く人もいる、中にはスタンド使いよろしくラッシュをしている人まで。幸いなことにそれは農林組合同士で行われることのようで近くにいた見物人には被害はなかった。唖然としている御門たちを尻目に見物人は笑いながらヤジを飛ばしている。時雨に至っては矢倉の上からまるで娯楽を見るような眼で殴りあいを見下していた。
最後まで立っていた二人がクロスカウンターで互いに大根をぶつけあって倒れたことで殴りあいは終了する。そしてどこからか現れた白衣をした集団が手際よく農林組合を担架に乗せて運んでいった。
『以上で祭りの開会式を終わります!!それでは楽しめ!!』
時雨の締め括りと共に空砲が数発打ち上げられてパンパンと乾いた音をたてる。それを合図にして人々何事もなかったかのようには屋台が設置されている商店街に流れ込んでいった。
「「・・・・・・なぁにこれ?」」
喧騒が聞こえる中で御門とディアーチェは同じ言葉を発した。
さて、それから少し時間が経ち、レヴィは屋台へ突撃、シュテルは時雨を探してフラフラ、ディアーチェとはやてとユーリはレヴィの面倒を見るために着いていったので必然的に御門はヴィータと行動することになる。見た目は同じだとしても精神年齢は御門の方が上、屋台に目を輝かせて突進するヴィータを御門は苦笑しながら付いて回っていた。
「ムッフフ~♪」
「買ったね・・・・・・」
ヴィータの小さな手一杯に持たれているのは屋台で購入した焼きそば、お好み焼き、たこ焼き、唐揚げ、綿あめ、チョコバナナ、かき氷、大判焼きetc・・・・・・御門も持っているとは言え子供二人でこの量は多い。どこかに座れる場所はないかと辺りを見渡すと二つの休憩所らしき場所を見つけた。どうやら休憩所を兼ねた出店をそこでやっているらしい。
一つは【出張喫茶店翠屋】、名前からわかるようにこの物語の正規の主人公である高町なのはの両親が経営している喫茶店である。御門はここに入るのは躊躇われた。何故ならなのはのことをオレノヨメッ!!と言って追いかけ回していた今となっては黒歴史といっていい過去があるからである。無論この話はなのはから高町一家に伝わっているだろう。となるとここで翠屋に入るのは死亡フラグである。
そう思いもう一つの方に目を向ければ【逆転喫茶店八神堂】と書かれた看板が掲げられていた。
「(なにやってんの
誰が企画したのか一瞬でわかってしまった。そう言えば時雨を含んだ大人組とギルガメッシュの姿が見えなかったがこれがあったからだと理解して御門は頭を抱えたくなった。しかし時雨の料理の腕は確かだ、何度か食べたことがあるので間違いない。しかし懸念があるとすればただ一つ・・・・・・
「(シャマルさんいるよね絶対?)」
そう、八神家の
「あれ?御門とヴィータ?どうしたのこんなところで立って?」
「あんたこそ何してるの!?」
八神堂から出てきて話しかけてきたギルガメッシュに御門は思わず口調を荒げてしまった。何故ならーーーーーーギルガメッシュの格好は女性の使用人が着る服、一部のマニアに人気のある服であるメイド服を着ていたのだ。しかもミニスカタイプの。微妙に似合っているのがこれまた恐ろしい。これもAUOのカリスマのなせる技か・・・・・・
「何で!?何でメイド服なの!?」
「看板にも書いてあるでしょ?【逆転喫茶店】ってさ」
「逆転ってそう言う意味なの!?」
「ギル似合ってるじゃん」
「時雨が見繕ってきた服だってさ。意外と着心地がいいよ。こんなところで立ってるのも何だし入ったら?」
「わかった!!」
混乱している御門を差し置いてヴィータはギルガメッシュに誘われてホイホイ喫茶店に入っていく。自分だけこんなところにいるのもあれなので御門も警戒しながら喫茶店に入る。
「いらっしゃいませー!!って御門とヴィータですか」
「む、休憩に来たのか?」
「お帰りなさいませ、お嬢様、御坊っちゃま」
「ザフィーラ、それは間違ってないけど違います」
中でホールをしていたのは執事が着る燕尾服を着ていたリニス、シグナム、ザフィーラの三人だった。三人とも背が高い方なので執事の格好が似合っている・・・・・・それでもリニスとシグナムは女性の象徴たる胸部が盛り上がっているのだが・・・・・・ザフィーラはまっ平らだが恐らくさらしでも巻いて潰しているのだろう。
「こんなことしてるなんて知らなかったですよ・・・・・・あ、ジュースお願いします」
「あたしはミルク」
「はいかしこまりました、ジュースとミルクお願いします」
注文を受け取ったリニスが厨房にオーダーを通す。すると奥からジュースとミルクをトレイに乗せた割烹着姿の人物がやって来て御門とヴィータのいるテーブルに注文の品をおいた。
「いらっしゃい御門君、ヴィータちゃん、ゆっくりしていってね」
そう言ってその人物は優しく微笑み、紅の引かれた形の良い唇が緩やかな弧を描く。その人物は茶髪を邪魔にならないようにポニーテールで一まとめにして線の細い体つきではあるがおしとやかそうで大和撫子が似合いそうな女性だった。しかし御門は知っている、ここが【逆転喫茶店】であることを。しかもこの人物はこちらが名乗る前から名前を知っていた。それならば導き出される答えは一つ。
「も・・・もしかして・・・時雨さん?」
「あぁ?もうバレたのか、思いの外早かったな」
御門の指摘に女装をしていた時雨は優しげな微笑みを崩さずに口調と声の高さを本来の物に戻して御門に話しかけた。どこからどう見ても大和撫子が男声と男口調で話しかけるなど違和感しかない。それよりも時雨が女装をしているのに違和感が無いことが違和感でしかない。
「なにやってるんですか・・・・・・」
「出店だよ出店、俺が来てから毎年こうやって喫茶店してるんだよ。今までは翠屋の方でこれやってたけど今年は人手が増えたから自分の店出してみた」
「その格好毎年してるんですか!?」
「意外と人気があることが恐ろしい。尻がムズムズするんだが」
「十中八九狙われてますよ」
時雨の女装には驚いたがそればかりに気を向けていてはいけない。今はヴィータの買ってきた食べ物を消化する作業の方が優先である。美味しそうに焼きそばを啜るヴィータを見ながら御門はたこ焼きを一つ口の中に運んだ。
「ちなみに店長イチオシなのはコトミネと共同開発した極楽麻婆豆腐なんだがーーーーーーーーー食うか?」
「食べません!!」
ギャグ回です、シリアスは置いてきました。キリッ
どうしてもギャグ回がやりたかったのでこれを突っ込みました。
こいよ
感想、評価をお待ちしています。