調律者は八神家の父   作:鎌鼬

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番外編26章 エピローグ、復讐の結末

 

 

さて、事の顛末を語ろうか。

 

 

暴走体を倒した俺たちは気がついたら家に戻っていた。ポルナレフの真似はもうしたからしないとしても何が起きたか分からなかった。ギルは大人状態から子供モードへと戻っており、ヴィヴィオとアインハルトの姿は町を探してみたが見つからなかった。しかも俺たちがあの世界に行ったと思われる時間から数分後の時間でだ。

 

 

どうして俺たちがあの世界に行ったのか?ということを考えているうちに一つの仮説を立てた。それはあの世界が俺たちを呼んだのではないかというもの。あの世界の連中が闇の欠片と呼んでいた物があの世界の連中に手の追える品物ではなかった、だから世界はそれを解決するために別の世界からそれを解決できるだけの力を持った者たち・・・・・・俺たちや、ヴィヴィオとアインハルト、そしてイリヤたちを呼んだのではないかと考えられる。ブッ飛んだ考えだと思われるかもしれないがこの世には守護者(アラヤ)やガイア、抑止力といった人智を超越した存在があるのだ。そこに世界の意思が加わったとしても可笑しくはない。そしてその問題を解決したから俺たちを元の世界に戻した。ここまでが俺の考えた仮説だ。今となっては証明しようのない仮説ではあるが他に考えられないしほぼ間違いないだろう。

 

 

そう言えばマテリアルとユーリに関する記述がしてなかったな。彼女たちはーーーーーー

 

 

「ねぇねぇ何書いてるの?」

「はぁ・・・・・・ちゃんとドアのノックしろと教えたはずだぞ、レヴィ(・・・)

「したよー!!でもお兄さん全然反応しなかったじゃん!!」

「そうなのか?それなら悪かった」

「ふっふーん♪それなら許してあげようかな~?」

 

 

何様のつもりだよ。

 

 

シュテル、レヴィ、ディアーチェ、そしてユーリの四人は何故か俺たちに着いてきてこの世界にやって来ていた。訳が分からなかった。まぁそれでもそのまま放置しておくのは後味が悪いので緊急家族会議(八神家主催、ゲストコトミネ&御門君&ギル) の結果、我が家で預かることが決まったのだ。幸いなことに部屋ならまだ空きがあるのでそこを使わせている。

 

 

このことについてシュテルは俺といれると歓喜、レヴィはいつの間にか仲良くなったヴィータといれることを喜び、ディアーチェとユーリはそこまでお世話になるわけにはいかないと渋っていたのだがシュテルとレヴィ、そしてヴィータとはやてに押しきられる形でこれに合意したのだ。俺としても家が賑やかになることには大賛成なのだがシュテルの獲物を狙う肉食獣のような目線をどうにかしてほしい。切実に。お陰で酒の量がここ最近になって増えている気がする。

 

 

あとユーリに組み込まれていたプログラム、U-D(アンブレイカブル・ダーク)だが、俺が検診してみたところそんなプログラムは見当たらなかった。恐らくユーリから闇の書の暴走体が出たと同時に暴走体の方に引っ張られてユーリから切除されたのだろう。しかしU-Dが組み込まれている原因となっていた永遠結晶と呼ばれる物はまんま残っていたので知り合いの密法僧から教えて貰っていた封印術式で封印しておくことにした。俺の持っているジュエルシードの封印にも使われている術式でかなりの強度を誇るのだがそれでも永遠と名のついていることだけあって完全には封印仕切れなかった。平常時はマテリアルたちと同出力の魔力だが感情の高ぶりによってユーリが暴走していた時と同等になる。

 

 

我が家の保有戦力が天元突破である(ブラックスマイル)

 

 

そして一番の問題点なのだが・・・・・・・・・何故かシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリの四人は人間になっていたのだ。見た目は少女だとしても正体はヴォルケンリッターと同じ魔力で構成された存在であるはずなのに普通の人間としてこの世界に来ていた。これについては俺からは言えることは何も無い。仮説も原因も分からない。ただ・・・・・・こうなった原因が分かればヴォルケンリッターたちも人間になれるのでは無いかと思い密かに原因を追求している。

 

 

そして難航していたスノウの解析だがあちらの世界のスノウ・・・・・・分別するためにリインフォースと呼ぶ、リインフォースのデータが手に入ったので順調に進んでいる。比較できるデータがあるだけで進行の度合いが全然違う。これならば年内中には何かしらの対抗策が練られるだろう。

 

 

こうしてみると中々に得るものが多かった平行世界旅行だったな。スノウの治療の手段は手に入り、家族は増え、御門君は成長し、アースラからパクったデバイスがガッポガッポ(人前では見せてはいけない笑み)

 

 

「そう言えば何のようだ?」

「あっそうだった、お昼御飯の時間だから呼んでほしいってさ。今日ははやてと王さまが作ったから安心だね」

「あぁ・・・・・・シャマルが作ったときの荒れ具合といったら・・・・・・ねぇ?」

 

 

前にシャマルが作った時は大変だった・・・・・・見た目は良いのに中身は劇薬クラスという殺人料理を食した奴らは例外無く全身を痙攣させて意識を失っていた・・・・・・これ以上考えるのは辞めよう、うん。

 

 

あの世界の出来事を書いていたパソコンの電源を落としてリビングに向かう。そこには御門君とヴィータを除いた家族たちがいた。二人は御門君の家で食べるからいらないそうだ。

 

 

並べられた料理は見た目も臭いも共に食欲をそそる品々だらけだった。どうやらディアーチェははやてに対抗心を持っているらしく、はやてが出来ることなら自分も出来る!!と日々家事の腕を磨いているのだ。お陰で我が家の家事は大体ディアーチェがしてくれます。

 

 

「やー待たせてゴメンね。そんじゃ、いただきます」

「「「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」」」

 

 

いろいろと得るものがあった平行世界旅行だったが一つだけ心残りがあるとするならーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー雲雀のじいさんがどうなったのか、知りたいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平行世界、時雨たちが闇の書の暴走体と戦っている時と同時刻。廃墟のようにボロボロになった結界内で一つの戦いが終わりを告げていた。

 

 

内羽雀VS内羽雲雀

 

 

最初は雲雀の優勢だったがこの世界では等の昔に途絶えたはずの千手家の血を使い雀が輪廻眼を開眼、引力と斥力を操り、更には体に埋め込まれた写輪眼を使い潰すことでダメージや死などの術者に不利なものを幻とし、術者からの攻撃など有利になる物は現実にできるという現実と幻の狭間をコントロールできる己にかける幻術イザナギを使い雲雀を苦しめた。

 

 

「嘘・・・よ・・・・・・私が・・・こんなところで・・・・・・」

「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・っ!!」

 

 

雲雀は引力と斥力を操る術にインターバルがあることとイザナギに使い潰される写輪眼は約一分で閉じることを戦いの中で悟り、その隙をついて雀の胸を諏佐ノ乎の剣で貫いた。雲雀に残っているのは右手と左足だけで左手と右足はグチャグチャに潰されていて見るも無惨になっている。雀も一族から奪い取った写輪眼、そして自身の写輪眼もイザナギに使いその目は失明してしまっている。

 

 

「終わりだ雀・・・・・・己が業を無限の幻術の中で悔いるがいい」

 

 

雀の体が諏佐ノ乎の剣に吸い込まれていく。雲雀の諏佐ノ乎が持つ剣は八叉の大蛇を退治した際に出てきたと言われている剣と同じ銘の草薙の剣。実態の無いその剣は刺し貫いた対象を一度だけ無限の幻術の中に閉じ込めるという霊剣である。

 

 

「あぁ・・・・・・そんな・・・もう一度・・・・・・会えると思ったのに・・・・・・」

 

 

光の無い眼から涙を流しながら雀は草薙の剣に封印された。

 

 

「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・」

 

 

体のあちこちが悲鳴をあげ、血を流しすぎたことで体温が低下しており、今すぐにでも倒れてしまいたい衝動に駆られるが雲雀はボロボロの体のままで足を進めた。

 

 

時雨に処置された術式の制限時間の終わりが近づいていることを察したことと、どうしても行かねばならない場所があるからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

満身創痍の雲雀がたどり着いた先は海鳴の外れにある森の中。そこには苔むした大きな石があった。ここは雀に殺された内羽一族の為に雲雀が作った墓。復讐を果たしたことの報告と、死ぬならばここでと決めていたから死に体の体を引きずって雲雀はここまでやって来た。

 

 

「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・」

 

 

石に背中を預けながら雲雀は腰を下ろした。もう体の痛みは感じられない、ただただ寒いだけ。落ちそうになるまぶたを必死に持ち上げながら雲雀は天を仰いだ。

 

 

「皆・・・・・・家の馬鹿孫が迷惑をかけたな・・・・・・あいつはもういない。怒るんなら少し待っててくれ・・・俺もそっちに行くから・・・・・・」

 

 

声を出せるだけの力など残っていない、ボソボソと木の葉が掠れ合うような音を口から出しただけだった。

 

 

死に間際になり、雲雀は自分の人生を振り返る。忍の内羽の一族として生まれたことに不満などなかった。寧ろ誇りに思っていた。誰かを助けられる特撮ヒーローのような正義の味方になれるのだと幼い雲雀は思っていた。しかし現実は非情、忍としての生き方は日の光に背を向ける闇の所業だった。人殺しに拷問・・・・・・一般的に悪だと言われる行為は一通りやって来た。そして闇の任務の中で出会った一人の女性と所帯を持ち、子供を授かり、その子供が子供を授かった。孫の誕生には喜んだものだ。事故で孫の両親は亡くなってしまったがそれでも愛情を持って接してきたつもりだった。それなのに返された物は一族惨殺。今でも妻となった女性が冷たくなる感覚は覚えている。そしてあの時のどうしようもない怒りも。

 

 

「・・・・・・あぁ・・・・・・なんだ・・・」

 

 

死の前にして悟った、自分は一族を皆殺しにされたことを怒っていたのではなく妻となった女性を殺されたことを怒っていたのだと。

 

 

「(これじゃ・・・あいつに馬鹿にされるな・・・・・・)」

 

 

眼が霞んできた。視界に入るものすべてがボヤけて形を認識することができない。そんな中で雲雀は一人の女性を見た。

 

 

闇に生きた自分を肯定し、支えになってくれた愛しい女性の姿を。

 

 

ーーーホラ、行きましょう雲雀。皆待ってるわよ。

 

 

女性が手を伸ばしてくる。それに答えようと雲雀は石のように重たくなってしまった残っている右手を女性に向けて伸ばす。

 

 

「あぁ・・・・・・今・・・・・・行くよ・・・・・・つ・・・ば・・・め・・・・・・」

 

 

重たい右手を意思の力で必死に持ち上げ、その手は女性ーーーーーー燕の手に届いたーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後、森の中で遊んでいた子供によって一つの遺体が見つかった。原因は老衰だと判断されたが左手と右足はグチャグチャになっており、さらにはまるで数十年一気に歳を取ったのではないかと鑑識の首を傾げさせた。

 

 

そして何よりも特徴的だったのが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その遺体は、とても穏やかな笑みを浮かべていたそうだ。

 

 

 

 

 

 

 






GOD編終了です。ここまで長かったです。


雲雀の結末は復讐を果たし、そして死に間際に見た最愛の人に看取られるというエンドを用意しました。

最初から雲雀にはこの結末を迎えてもらうつもりでした。作者を罵倒してもらっても構いません。


時雨はこの世界旅行を終えて新しい家族、そしてスノウの治療のために必要な物を手に入れることができました。これでA's編が大きく動くことになります。


もう少し番外編をしてからの突入となりますがそれまで待っていてください。


そして転生者の被害者である雲雀のご冥福を祈ります。


感想、評価をお待ちしています。


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