「お疲れ様、若人どもよ。シャマル、ユーリの具合は?」
「診たところ気絶してるだけみたいですね。特に問題があるようには見えません」
「そいつは上々だな」
暴走体から命辛々脱出した御門たちはギルガメッシュの操るヴィマーナに乗せられて暴走体と海魔の戦いを見下ろしていた。
「・・・・・・そう言えば十分過ぎてましたよね?どうして助けてくれたんですか?」
「あれ?そうだっけ?俺の時計じゃまだ十分経ってないけどな」
「ん・・・・・・時雨、この時計壊れてますよ?動いてないじゃないですか」
「え?マジか。気づかなかったな。帰ったら直さないと」
御門は時雨とリニスのやり取りで何十分経とうが時雨は自分達のことを待ってくれるつもりだったことを悟った。何だかんだ厳しいことを言ったりしたりするのだが基本的に八神時雨という人間は身内には優しいのだ。思わず御門は笑いを吹き出してしまう。
「もう♪時雨ってばツンデレなんですから♪私のことが心配でそんなことをしたんですよね?」
「デデデデストローイ」
~シュテル処刑中~
「ふぅ・・・・・・皆そこそこには休めたな?」
パンパンと手を払ってヴィマーナの隅でシュテルを【見せられないよ!!】状態にした時雨はこの場にいる全員に問いかけた。それに誰もが首を縦に振って肯定の意を表す。どうやらシュテルはシャマル同様に色物枠に認定されたようだ。おめでとう。
「さて、今から下で暴れまわってる暴走体をコロコロする作業に入るぞ」
「なぜ
「この世界の管理局連中は俺がボドボドにしちゃったからね~期待できない。それにさ~あんなのがスノウを苦しめている原因だと思うと沸々と怒りが沸いてくるのよね~」
そう言って暴走体を見下す時雨の目は瞳孔が完全に開いておりかなり怖い物になっていた。普通の子供が見れば、大人でも気の弱い者が見れば泣いてしまうこと間違いなしである。
「それにギルよ、イコールにはならないけどノットイコールであれがはやてを苦しめてる原因になるんだぞ?」
「・・・・・・汚物風情が我のはやてを苦しめてるだと・・・・・・?我自ら下してやろうではないか!!」
ギルガメッシュの参加を確認しました。チョロい、流石ギル様チョロい。
「そいで、暴走体フルボッコ作戦の内容だが、アースラからパクった資料によればこの世界の連中は暴走体に展開されている障壁四層を破壊、その後最大火力でぶっ飛ばして本体コアを露出、その後転移で宇宙にいるアースラの前まで飛ばして波動砲でブッパしたらしい。俺たちもこれに習ってやろう。まずは俺たちで障壁を破壊、その後ディアーチェ、レヴィ、シュテルの三人の最大火力で本体コアを露出、んでもってそのコアごと俺たちの中で火力の高い連中で吹き飛ばすと」
「この中で火力に自信のある人は?」
ヴィヴィオの疑問に手を挙げたのはギルガメッシュ、時雨、そして意外なことに御門の三人だった。
「ちなみにどのくらい?」
「世界を壊せるな」
「半径数km焦土化余裕です」
「小型のアルカンシェルぐらいだと思います」
「なんですかこの人間最終兵器たちは」
アインハルトの突っ込みは仕方ないと言える。ギルガメッシュの最大火力は対界宝具、その名の通りで世界を対称とした宝具。時雨には対人から対界宝具まで何でもござれ。御門はとある事情から使えるようになった魔法がバカ火力過ぎたのだ。
「そー言えば気にしてなかったけど御門君はどうして大人になってるのさ?」
『それは私から説明しよう』
時雨の疑問に答えたのは聞き覚えのあるジョージヴォイス。御門の方から聞こえた声の主は御門の背中から上半身だけを生やして現れた。
「はじめまして、マスターのデバイスのアーカードだ」
現れたのは黒い長髪の含みのある笑みを浮かべた少女・・・・・・どこからどう見てもロリカードですね本当にありがとうございます。
「ロリカード・・・だと・・・!?」
「あー・・・・・・壊されたデバイスの名前がアーカードだったんですよ」
「然り、私は確かにコアを破壊されて死んだはずだった。しかしマスターの持つデュランダルの三つの奇跡によってインテリジェンスデバイスからユニゾンデバイスとして復活を遂げたのだ」
デュランダルは持ち主に三つの奇跡を与えるという伝承がある。アーカードの言うとおりであるなら御門はデュランダルから持ち主として認められたということになる。
「ふーん、まいっか。御門君が生きているなら後は些末な問題だ。素直に喜んだら良いじゃないか、念願のデバイスだぞ?」
「嬉しいことには嬉しいんですけど・・・・・・ロリって」
「ぬ?この姿に何か問題が?マスターの趣味趣向に合わせたつもりなのだが?」
「それは僕がロリコンだって言いたいのか!?」
御門はまだ肉体年齢が九歳だから・・・問題にならないはずである、うん、多分大丈夫。
「よし、お前ら」
時雨が手にしていた
「これは予行練習だ。俺たちが闇の書の因果から解放されるためにはあの醜悪を乗り越えるしかない。だからここであれを砕くぞ。闇を終わらせて、夜天へと至る為に!!」
「「「「「「「「「「「「「応っ!!!!!」」」」」」」」」」」」」
時雨へと返答を聞いた暴走体が時雨たちに気がついた。底無しの暴食を満たすために暴走体は時雨たちに目掛けて黒い砲撃を発射する。それを回避するためにヴィマーナは旋回し、操縦者であるギルガメッシュと戦えないはやてを残して全員が飛び立った。
「まずは囲いますよ、ザフィーラ」
「任せろリニスよ!!
囲え!!
穿て!!
守護獣ザフィーラの魔法によって暴走体は白い虫籠のような物に閉じ込められ、さらにそこから足を黒い槍に貫かれる。
「もう一縛り!チェーンバインド!!」
そこからさらにだめ押しと言わんばかりにリニスの鎖によって暴走体が縛り上げられる。しかしそれらは暴走体が僅かに暴れまわっただけて容易く崩れ落ちてしまった。だが足止めという目的は果たしている。
「ヴィータ真っ直ぐに行くんだ。ヴィータを邪魔する物は全部僕が撃ち落とすから」
「任せたぞ御門!!」
動きを止めた暴走体に向かって鉄槌の騎士ヴィータが愚直な迄に真っ直ぐに向かう。ヴィータの存在に気づいた暴走体の触手が砲撃を放とうと、ヴィータを捕らえようとする。
『マスター、撃ち方はわかっているな』
「額にある第三の目で、だろ?」
御門の手に握りているのは白と黒の双銃、それらの銃口からは穿つことのみに特化した弾丸が吐き出されヴィータに危害を加えようとする触手すべてを穿っていった。そして御門のサポートによって暴走体の真上にまでたどり着いたヴィータは三角形の魔法陣を足場にする。
「行くぞ!!アイゼン!!」
『ヤヴォール!!』
「轟天!!爆砕!!」
ヴィータのデバイスであるアイゼンから薬莢が吐き出され、すべてを打ち砕く巨大な鎚にへと変貌する。
「ギカント!!シュラークッ!!!!!」
しなる柄に振り回された鎚は容赦なしに暴走体へと振り下ろされた。それは暴走体の障壁を一層砕き、二層目にぶつかって暴走体を押さえつけるがそこまでだった。二層目の障壁はいまだに健在。故に次の矢が放たれる。
「露払いは任せたぞ、リニス」
「勿論です。大船に乗ったつもりでいてください、シグナム」
シグナムが飛び立つのを見届けてからリニスは詠唱を始める。そして現れるのは無数の槍。それらはシグナムが降り立つ地点に群がっている触手にへと向けられていた。
「フォトンランサー・ジェノサイドシフト、シュート!!!」
リニスによって構築された槍すべてがリニスの号令と共に触手に向けて放たれた。近づいてくるシグナムにへと触手の意識は向けられていた為に槍は容易く触手を撃ち貫く。そしてリニスの手によって開けた場所に降り立つのは闇の書の騎士を統べる烈火の将シグナム。シグナムは愛剣であるレヴァンティンの鞘を柄に合わせる。すると剣と鞘で別々であったレヴァンティンは弓へと変化した。
「行くぞ、レヴァンティン!!」
『OK!my master!!』
「駆けよ!隼!!」
『StrumFalekn』
シグナムの手によってレヴァンティンから矢が放たれる。シグナムの魔力を炎へと変換するスキルを生かしたその矢は炎の隼となって暴走体の障壁四層を貫通して障壁内で大爆発を起こす。
「はっ!!ヴィータもシグナムも派手にやってるな!!」
そこに追撃を仕掛けるのは闇の書の騎士たちの主である時雨。彼は飛ぶことが出来ないが湖の騎士であるランスロットから受け継いだ湖の乙女からの加護のお陰で海の上を駆けることができた。
「なら、俺も殺らないとなぁ!!」
迫り来る触手をかわしながら時雨はカードを取り出した。そのカードには騎士の絵が書かれている。
「【騎士・忠義の騎士】」
カードを握り潰すと時雨の手元には蒼い西洋の剣が現れる。そして時雨は迷うことなくその剣を宙に放った。
「この剣は太陽の写し身!!
もう一振りの星の聖剣!!」
放った剣は空中で回転し、小型の太陽を作り出す。これは忠義の騎士ーーーーーーガウェインが持つアーサー王のエクスカリバーの姉妹剣。その刀身には太陽が宿されている。そして剣は暴走体の前にへと躍り出た時雨の元へ戻る。
「ーーーーーー
そして時雨の手によって聖剣が振るわれると同時に日輪の熱線が暴走体を飲み込んだ。残されていた障壁を容易く砕き本体ごと焼き払う。太陽の炎に飲み込まれた暴走体は耳を塞ぎたくなるような悲鳴をあげ、動かなくなる。
「・・・・・・やった?」
「まだだよ!!」
誰かの呟きに怒鳴るようにして答えて時雨はその場から飛び退く。そして暴風が吹き荒れて転輪する勝利の剣の炎によってあがった水蒸気が吹き飛ばされる。そこから現れたのはいまだに健在の暴走体。日輪の熱線の影響であちらこちらに焼けた後は残っているがそれすらも再生の最中である。暴走体はこの場から逃れようと翼を羽ばたかせ、障壁を再構築しながら空を飛ぶ。この逃走を見逃すほど、甘い者はこの場にはいない。
「行くよ!!アインハルトさん!!」
「はい!!ヴィヴィオさん!!」
暴走体の背後から回り込んだのはヴィヴィオとアインハルト。
「セイグリッドブレイザー!!!!」
「覇王!!断空拳!!!!」
ヴィヴィオからは拳と共に砲撃が、アインハルトからは覇王流の一撃が放たれる。が、それらは障壁によって阻まれて暴走体には届かない。ヴィヴィオたちの技はスポーツとして、対人として特化している為にこの化け物たる暴走体には効き目は薄い。しかしそんなことは二人が一番わかっているのだ。故にこれは次の一手の布石に過ぎない。
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
上空遥か彼方から守護獣ザフィーラが叫びをあげながら落下してくる。ザフィーラは暴走体の逃走を見越していて上空で待機していたのだ。そして研がれた牙を突き立てる時は今ーーーーーーーーー!!!
「天っ墜ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃい!!!!」
落下速度をそのままいかして放たれるのは膝蹴り。その威力は凄まじい物で、衝撃は障壁を貫通し、暴走体の下半身にある怪物の頭を砕くほどのものだった。
「墜ちろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
ザフィーラによって障壁が砕かれた暴走体は海にへと叩き落とされる。そしてその暴走体に二方から迫る影があった。
「頼んだぞ、ヴィータ」
「任せろシグナム!!アイゼン!!」
一方はシグナムとヴィータ。シグナムはヴィータにアイゼンを振らせ、それを足で蹴って推進力として暴走体へと向かう。
「凄いなザフィーラ、なら俺も良いとこ見せないとなぁ!!!」
反対の方向からは時雨が海面を蹴りながら暴走体へと向かっていた。手には転輪する勝利の剣ではなく焔華が鞘に納められた状態で握られている。
「「その翼、貰い受ける!!!」」
二人が出した言葉が一緒なら構えの姿も同じであった。レヴァンティンも焔華も鞘に納められた状態、それでいて柄には手が置かれいつでも抜き出せるようになっている。
「桜花!!」
「炎刀!!」
「「絢爛!!!!!」」
まるで打ち合わせたかのように同時に放たれるのは炎を纏った剣と刀による抜刀術。それらは暴走体の逃走手段である翼を焼きながら切り落とした。
「全員離れろ!!」
注意の声をあげたのは闇の書の管理人格のリインフォース・スノウ。上空に浮かぶ彼女の背後には幾つもの魔法陣が光輝いている。
「彼方より来たれ、ヤドリギの枝よ!!
臨月の槍となりて我が敵を撃ち貫け!!」
それを見た全員が暴走体から離れる。
「石化の槍、ミストルティン!!!」
魔法陣から触れた者を石に変える魔槍が放たれて暴走体へと突き刺さる。槍の効力は凄まじく瞬く間に暴走体の全身を石に変えてしまった。しかしその程度で終わる暴走体ではない。石化されながらも高速で体を修復させている。今は石化している部分が多いが時間が経てば石化している部分は無くなるだろう。だが、暴走体を守っていた障壁は無くなり、暴走体の足も止まっている。
「待たせたな、マテリアル。お詫びといっては何だが、全力で殺れ」
石化の影響で動けなくなっている暴走体の真上にマテリアルの三人がいた。いやまて、シュテルはどうして動ける?時雨の手によって【見せられないよ!!】状態になっていたはずだが。
「愛の力です」キリッ
・・・・・・あーはいはい突っ込みませんよ。暴走体の真上に位置を陣取ったマテリアルの姿は奇しくもこの世界のなのは、フェイト、はやてたちが闇の書の暴走体を止めるときの物とよく似ていた。
「真・ルシフェリオン・・・・・・!!」
シュテルの眼前に魔法陣が展開、そして集うは紅蓮の炎。
「雷刃封殺!!」
レヴィが操る短刀は稲妻を放ちながら暴走体へと向かう。
「ジャガーノート!!」
ディアーチェが放った闇は上空に向かって飛び、十分な高度を取ってから暴走体へと降り注ぐ。
「ブレイカァァァァァァァァ!!!!!」
「爆滅剣!!!!」
「ドライブ!!!!」
炎が、稲妻が、闇が、暴走体を容赦なく飲み込む。肉体が崩れいくなかで離れた場所にいたシャマルは旅の鏡で本体コアが露出したのを確認した。
「見つけた・・・・・・!!本体コア、転送っ!!」
空かさずシャマルは本体コアを転送したする。暴走体はこの場からいなくなったが地球からいなくなったわけでも宇宙にいるわけでもない。シャマルが本体コアを転移した場所はこの地点の上空2000m。マテリアルの魔法によって肉体を著しく損傷した暴走体は高速で体を修復しながら落下をしていた。無論シャマルにこの転移を指示した時雨は意味もなくそうさせた訳ではない。御門のいう魔法はともかく、時雨とギルガメッシュの攻撃は威力が高すぎるのだ。だから被害を押さえるために暴走体を上空へと転移させた。
「起きろエアよ、我が財と臣たちを汚す輩が現れたぞ」
ギルガメッシュが
「【騎士・堕ちた騎士王】」
時雨がカードを砕くと手には黒く染められた聖剣が握られた。それはブリテンの王アーサーが
「アーカード、モードヘルメス」
『承知した、我が主よ』
御門の指示によって手にしていた白と黒の双銃が溶けて再構築されて、まるで大砲のような出で立ちへと姿を変える。しかしそれに宿された神秘は乖離剣にも、勝利を約束する聖剣にも引けをとらないーーーーーー!!!
「目的確認!!」
リニスが落ちてきた暴走体を視界に捉えた。一度全身を砕かれたことでか暴走体は増殖と再生を繰り返しており、その巨体は最初の頃よりも倍近く大きな物になっていた。
「
乖離剣の刀身が回転を始め、深紅の閃光が溢れだすーーーーーー!!!
「
堕ちた聖剣から漆黒が灼熱するーーーーーー!!!
「
砲門に正と負の交わることのない魔力が集束されるーーーーーー!!!
「
「
「
乖離剣からは万物を砕く空間断裂の一撃が!!
堕ちた聖剣からは万物切り裂く絶対切断の剣閃が!!
白と黒の双砲からは万物を無に返す砲撃が!!
それぞれ暴走体に向けて放たれた。
英雄王が、魔術師が、そして諦めを拒絶した権利人の放った一撃は限りなく肥大化する暴走体を飲み込む。まるで天地が割れんばかりの轟音が鳴り響き、後に残ったのは風穴を空けられた曇り空から射し込む日の光だけだった。
暴走体フルボッコ完了です☆
いやーやりたかったことだから筆が進む進む!!流れのイメージとしては原作の暴走体戦を思いながら書きました。ちょくちょく配役の変更やオリジナルを入れていますがどうしでしたか?
↓オリジナルの技、魔法の軽い説明
使用者ザフィーラ
対巨大生物用の拘束魔法。魔力で構成された檻が対象を閉じ込める。
使用者ザフィーラ
対巨大生物用の拘束魔法。魔法で構成された楔が対象を貫いて動きを制限する。鋼の軛でおkとか言わないでください。
使用者ザフィーラ
魔力を付与した膝蹴り。しかしただの蹴りと侮ることなかれ。なのはクラスの堅さでも一撃で落とせる威力があります。
使用者シグナム
レヴァンティンを使った超高速の抜刀術。炎熱変換のスキルと組み合わせることにより超高速の抜刀術が相手を焼き斬るという極悪技に変わる。こらそこ、CCOの秘剣とか言わない。
使用者御門
白の大砲には正の魔力を、黒の大砲には負の魔力を集束し、それぞれを対象にぶつけることでいわゆる対消滅を引き起こして相手を消滅させるという小型アルカンシェルともいえる魔法。全力で撃てばアルカンシェル並の威力も出せるのだがそうした場合アーカードは死にます(物理的に、デバイス粉砕的な意味で)。宝具換算すれば対軍宝具以上対界宝具未満である。
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