「あーーーーーーーーーあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「何!?」
ユーリとの対決は時雨の勝利で決着がついたはずだった。しかしその後に起きたのは異変、ユーリが悲痛な叫びをあげて腹の傷から黒い液体が溢れだしてユーリを包み込もうとしていた。
その液体に本能的な恐怖を感じ、固有結界の剣の丘を解いて現実世界に戻る。
「時雨!?一体何が」
「・・・・・・一先ず大人しくさせようと思ったんだけど・・・あれだな、藪をつついて蛇だしたか?いや、蛇なんて可愛いものじゃないか。羅生門から鬼でも出てきたか?」
シグナムからの疑問に答えつつも警戒は最大限のまま。そんなことをしている間にもユーリは液体に侵食されていき、人の形を無くして液体その物になってしまった。そしてその液体は海の上にたまり、不気味な黒い水溜まりを作っていた。
「あれは・・・・・・」
「どこかで見たことあるぞ・・・・・・」
『画像検索・・・・・・ヒットしました。ファイル名【マジで暴れる五秒前】より闇の書の暴走体が出現する前兆と類似しています』
ナハトヴァールが時雨がアースラから強奪した闇の書事件の詳細の中にあった一枚の画像を表示する。ファイル名が可笑しかったが表示された画像は確かに今の状態に非常によく似ていた。
「・・・そっくりだな。だとすると次に出てくるのは暴走体かもしれないな」
「・・・それだとあの女の子は・・・ユーリはどうなるんですか?」
「・・・・・・」
御門の疑問に時雨は答えなかった、が御門は時雨の表情から時雨は何を選び、何を捨てたのかを察してしまった。
闇の書の暴走体、それの勝手を許せばこの星は終わりを迎えることになる。この世界がどうなろうが時雨の知ったことではないが、今時雨たちはこの世界にいて、家族が闇の書の暴走体によって危険にさらされることになる。
だから選んだ。自分の守るべき存在たちの安全を
だから捨てた。一人の少女の命を
それを察しながらも御門は時雨を罵倒することはなかった。何かを選び、何かを捨てるというのは当然の如く責任が生じるのだ。そして時雨はユーリを
「あの・・・・・・時雨さん」
「どうした?」
「僕がユーリを助けにいきます」
「ーーーーーーへぇ」
御門の言葉に時雨は内心驚いていた。どんな人間だろうと自分に危害を加えた存在を嫌悪するはすだ。それなのに御門はその危害を加えた少女を助けようとしている。
「良いのか?お前を殺そうとした相手だぞ?」
「えぇわかってます。今でもあの時のことを思い出したら足が震えますよ・・・・・・でも、それでも助けたいんです。別に世界の人間全員を救いたいだなんて高尚な願いは持っていません。でも・・・・・・泣いてる女の子を救いたいと思うのはいけないことですか?」
「いいや、それは男に生まれたなら当たり前の願いだ。十分待ってやる。だからさっさと救ってやれ」
「ありがとうございます」
「待って!!あたしも行く!!」
「ヴィータ?」
ユーリを救おうとした御門に待ったをかけたのはヴィータ。そして御門に着いていくことを発言した。
「御門一人で行かせたらさっきみたいな無茶するかもしれない。だからあたしが着いていって御門のことを見張ってやる」
「・・・・・・うん、ありがとう」
「はっ、青春してるねぃ」
「私も行きますよ」
「我もだ!!」
「もちろん僕も行くよ!!」
ヴィータに続いて同行を申し出たのはマテリアルズの面々。決して軽くはない傷を負っていたはずだがシャマルによって治癒されたので動ける程度には回復している。
「お前たちまで行く必要はないと思うが?」
「何を言うか!!臣下を救うのは王たる我の役目だ!!」
「ユーリは僕の友達だ!!だから助ける!!」
「あの金髪ガッテム幼女には嫁入り前の体を傷つけられましたからね、一発ぐらい殴らないと割に合いません」
・・・・・・まぁ、シュテルは兎も角ディアーチェとレヴィはユーリを救いたいという気持ちは強いようだ・・・・・・シュテルは兎も角←大切なことだから二度言いました。
「・・・・・・いいね、子供は真っ直ぐで。大人になると色んな
そう言って時雨が取り出したのは大粒の宝石が三つ。それに籠められた魔力は確かにマテリアルズの魔力には及ばないがそれでもかなりの魔力が籠められていた。
「これは・・・・・・」
「温かい・・・・・・」
「あぁん・・・♪時雨の(魔力)が私の中に入ってくる♪」
「國断ノ・・・・・・!!」
「あぁぁぁぁ!!まってまってまって!!」
「不味い!!流石にそれは不味いぞ!!」
「ストップ!!お兄さんストップ!!」
「エェイ!!HA☆NA☆SE!! 」
シュテルのR指定の入りそうな発言に時雨が焔華を抜いて必殺技をかまそうとするが御門、ディアーチェ、レヴィが全力でこれを阻止する。
「あぁもうさっさと行ってこい!!ガキ共!!失敗してもいいから必ず戻ってこい!!」
「はい!!」
「行ってきます!!」
「行ってくる!!」
「行ってきまーす!!」
「行ってきますのキスを・・・・・・」
「ん?俺の拳とキスをしたいのか?」
「行ってきます!!」
別れの挨拶をして御門たちは次々に黒い水溜まりの中に入っていく。そして御門たちの侵入から一分もしないうちにその水溜まりから闇の書の暴走体が現れた。その姿は歪で異形としか言いようがない。
例えて言うなら、ツギハギ。色んな生き物をそのままの形で引っ付けただけの巨大な生物。下半身は四本足の生物のようで上半身は不定形、様々な生物が主導権を握ろうとひしめき合っている。
「おぉう、醜い醜い。あんなのが闇の書の闇だとよ。嘆かわしいねぇ」
「どうする?このままではあの汚物は町に向かってしまうぞ?」
「一先ずは足止め程度でだ。目には目を、歯には歯を、そして醜悪には醜悪を、だ。はやて、グロ系は大丈夫だったっけ?」
「ん?大丈夫やで~ソウ見ながらご飯食べたこともあるしな~」
「あー金曜ロードショーで放送した時か。あの時は引いたな~まさかのグロ系を全国放送するとか、テレビ局にキチガイがいるとしか思えなかったわ~」
それはキチガイ等ではなくただの精神異常者だと思われる。兎も角はやてはグロ系は大丈夫だそうだ。ならば良しと時雨は懐からカードを取り出した。
「【魔術師・青髭】」
カードを握り潰すと時雨の手元に一冊の本が現れた。それは時雨の所持する闇の書ではなく、この世界の夜天の書でもなく、表紙に人の顔が施されている異形の本。それは人の皮で作られた、この本の持ち主である青髭ーーーーーージル・ド・レェ、かれの盟友プレラーティーが残した一冊の魔導書。
「■■!■■!■■■■■!■■■■■■!!
■■!■■!■■■■■!■■■■■■!」
本を開いた時雨の口から冒涜の言葉が吐き出される。
「■■!■■!■■■■■!■■■■■■!!
■■!■■!■■■■■!■■■■■■!!」
本から紫色の魔力が溢れ、海へと流れる。
「あぁぁぁぁはっはっは!!!!」
時雨の笑いとともに海から無数のタコの足のような触手が現れる。しかもそれらのサイズはどれも人の背丈など軽々と越えるほどに巨大なもの。
「今ここに!!我らは救世の旗を掲げよう!!
見捨てられたる者は集うがいい!!
貶められたる者も集うがいい!!
私が率いる!!私が統べる!!
我ら虐げられたる者たちの怨嗟は必ずや神にも届く!!」
触手を皮切りに海の中からその触手たちの大元が現れる。それを言葉にするならば醜悪としか言い様のない。イカやタコのような特徴を残しながらも胴のあちらこちらには口や目のような器官がついており、世界を冒涜するだけの【汚物】にしか見えなかった。
「おぉ天上の主よ!!
我らは糾弾をもって御身を讃えよう!!
傲岸なる神を!!冷酷なる神を!!
我らは御座より引きずり下ろす!!」
これこそがキャスターであるジル・ド・レェの宝具、名を
「神の愛した子羊どもを!!
神の似姿たる人間どもを!!
今こそ存分に貶め陵辱し引き裂いてやろう!!
神の子達の嘆きと悲鳴に我ら逆との哄笑を乗せて天界の門を叩いてやろう!!」
呼び出された海魔は目の前に存在する
「さて、時間稼ぎはこれでいいだろう」
暴走体と海魔の争いをヴィマーナの縁に座って見下ろしながら眺める。そもそも呼び出したはいいが時雨はこの程度の海魔では暴走体を仕留めれる等とは思っていない。闇の書の暴走は文字通り星ひとつを飲み込むほどだとアースラから強奪した資料には書いてあった。ならば同質である暴食の海魔であっても食い尽くされる可能性が高い。だからただ時間稼ぎの為だけにこの海魔を呼び出した。
「頑張れや、若人ども」
その頃、御門たちは暴走体の体内を走り回っていた。壁も床も天井も肉で構成された通路は一歩踏み出すだけで御門たちの精神を削っていく。そして精神だけでなく魔力すらも削っていく。ここは暴走体の体内で御門たちは暴走体にとっては餌として認識されているのだ。だからその餌にある魔力を吸出し、それが無くなればその肉を食らう。御門たちが足を止めれば待っているのは暴走体の一部になる未来だけだ。
「ヴィータ!時間は!?」
「ーーーーーー二分!!あと八分!!」
「こっちだ!!」
「あぁもう!!ブヨブヨして走りにくい!!」
「待っていなさい金髪ガッテム幼女・・・・・・今ルシフェリオンでブレイカーして差し上げますからね・・・・・・そしてこれが終わったら時雨と・・・・・・・・・・・・・・・なはっ♪」
「・・・・・・ねぇディアーチェ、シュテルここに残した方が時雨さんの為だと思うんだけど」
「・・・・・・残したら残したで暴走体乗っ取って時雨に向かっていきそうな気がするのだが・・・・・・・・・」
「・・・・・・ヤバイ、凄く簡単に想像できた」
「「・・・・・・ハァ」」
シュテルの奇行に思わず御門とディアーチェはため息をついた。なんやかんやで常識人である二人は周りの奇行種(シャマルやシュテル)に振り回されているのだ。苦労人繋がりで気が合うのも無理はない。あとで胃薬をプレゼントしてやろう。
「王さま!!いたよ!!」
レヴィが指を指す方向には壁に下半身を飲み込まれ上半身だけが出ているユーリの姿があった。直ぐ様御門がデュランダルで周りの肉を削りユーリを救い出す。ユーリは気絶している為に御門が背負い、後は来た道を戻るだけになったがここで問題が発生した。
何と肉壁が通ってきた通路を塞いでいたのだ。周囲を見渡しても他には道はなく文字通り八方塞がり。肉壁を破るしか手段は無いのだが御門たちの魔法はどれも威力が大きすぎる為に使ってしまえばその余波で動けなくなってしまいかねない。
「ここまでか・・・・・・クソッ!!」
忌々しげにディアーチェが地団駄を踏むがそれで事態が改善される訳でもない。御門たちはゆっくりと迫ってくる肉壁をただ眺めてるだけしかなかった。
「御門・・・・・・」
ヴィータが不安げに御門のコートの袖を握る。ほとんどが諦めている中で唯一諦めていないのは御門だけだった。
「(どうにか・・・・・・!!どうにか脱出できる手段は・・・・・・!!魔力を吸われているから構成がメチャクチャになって転移は不可能!!デュランダルで切り裂くか・・・・・・いや!肉が塞がるのが絶対に速い!!そんなことしてたら途中で挟まれてお終いだ!!なんとか・・・・・・なんとかならないのかーーーーーーーーー)」
必死に頭を働かせるが良い手段など思い付かない。そして肉壁が距離をつめ、御門たちを取り込もうとしたときーーーーーーーーー
ーーーーーーふん、臣下の分際で
「(ーーーーーーーーーえ?)」
御門の耳に聞こえたのは慢心が代名詞の王の声だった。そして御門は凍りつく。
「(王が動いたってことはまさかーーーーーーーーー)」
御門たちに迫り来る肉壁を切り裂くように、黄金の弾丸が降り注いだ。その弾丸の正体は古今東西に名を馳せた宝具の原典たち。まるで雨のように降り注ぐ宝具によって肉壁は破壊されーーーーーー外の光景が見えた。
「ーーーーーー走れ!!」
それを目にした瞬間に御門は叫び、駆け出した。一瞬遅れてディアーチェたちもついてくる。切り裂かれた肉壁はすぐに再生して御門たちを取り込まんとするがそこに再び宝具の雨が降り注ぎ阻害される。そして残された力を振り絞り、開かれた穴から身投げするような勢いで飛び出す。
「珍しいな、お前がこんな汚物に宝具を使うなんて。そんなに御門君たちを助けたかったのか?」
「ふん、我の財を我の好きに使って何が悪い?」
「違いないけどさ、そんなことやってるからギル様ツンデレとか言われるのよ?」
そしてそこにはヴィマーナで御門たちを拾いに来た時雨たちの姿があった。
ユーリから闇の書の暴走体誕生とユーリ救出回でした。
マテリアルズとユーリたちが闇の書から生まれたなら闇の書の暴走体を引き継いでいてもおかしくないと思いこのような展開にしました。
これでユーリから
御門君たちが通った暴走体の中はfateで凛がワカメを救うために侵入した聖杯の中と同じイメージで作者は書きました。
さて、次は闇の書の暴走体フルボッコ回です!!ようやくやりたかったことが殺れるぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!
感想、評価をお待ちしています。
PS、作者が無知な為にキャスターの宝具の漢字がわからないという事態になってしまいました。
誤字、螺漂城教本
二文字目が分からないでそれっぽいのを打っています。誰かキャスターの宝具の漢字の正確な読みがわかる方は教えてくださいお願いします。
PSのPS
キャスターの宝具の誤字を修正しました。教えて下さった方々、ありがとうございました。