調律者は八神家の父   作:鎌鼬

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番外編19章 祝勝会、そして動き出す

 

 

「はい、カンパーイ!!」

「「「「「「「「「「「「カンパーイ!!!!!」」」」」」」」」」」」

「か、カンパーイ!!」

 

 

闇の書の欠片無限沸きの無限ループから脱出することが出来た俺たちは雲雀のじいさんの家で今日も無事でいられたことを祝って細やかな祝勝会をしていた。俺、ギル、リニス、スノウ、シャマル、ザフィーラ、シグナムはお酒で。はやて、御門君、ヴィータ、シュテル、ディアーチェ、レヴィはジュースで乾杯と叫びながら飲み物の入ったコップをぶつけ合う。料理、酒はすべてこちらで用意した、泊まらせてもらっている身分で流石にそこまで世話になるわけにはいかない。ちなみに俺とギルはそこそこに強めな酒だがリニス、シグナム、ザフィーラ、スノウ、シャマルの酒は弱い酒だ。いつぞやの時のように酔われて暴走されたら敵わん。

 

 

「ギル、そっちはどうだった?」

「ふん、亡霊共が数匹寄ってきた程度だ。そちらは大変だった様だな、なんでも百を超える群れだったとヴィータは言っていたぞ?」

「あぁ、魔力の関係で無限沸きの無限ループだった。お陰で使う予定の無かった固有結界を使う羽目になったよ」

「凄かったぞ、なんというか・・・剣の丘とでも言うべきか」

「剣の丘・・・投影魔術・・・雑種・・・う、頭が」

 

 

おやおや、英雄王様は雑種に負けたことを覚えていらっしゃったのか。何やら思い出そうとして頭を押さえ、それを忘れようとするかのようにコップに注がれていた酒を一気に飲み干した。

 

 

「で、あれを見た感想はどうだった?シグナム」

「どうしてでしょう・・・・・・見たこともない景色なはずなのに非常に懐かしい気がしました」

 

 

実はシグナム、俺に頭を下げて魔術を習いたいと言っていたのだった。それを俺は了解したのでシグナムは俺の弟子になっている。今は初級である強化の魔術を教えているのだが・・・・・・剣の丘を見て懐かしいか、まさか錬鉄の英霊のようにそっちの素質があるのか?

 

 

「にゃらいい、使う前にも言ったけどあの光景は忘れるんじゃない。そしてついでに言うとシグナムは作る側じゃなくて戦う側の存在だからな」

「作る側じゃなくて戦う側?それは一体」

「まぁこれは記憶の片隅にでも置いてくれたら良いよ。おい!!ヴィヴィオ!アインハルト!ちょっと来い!!」

「「アッハイ!!」」

 

 

俺が呼ぶとはやてとヴィータと御門君と話していたヴィヴィオとアインハルトは返事をして俺の前にやって来た。

 

 

「自己紹介よろしく」

 

 

こいつら普通に馴染んでるけど考えてみれば初対面なんだよな・・・コミュ能力高いなぁおい、そんなことを思いながら二人に自己紹介するように促す。

 

 

「ええっと、八神ヴィヴィオ、九歳です!!趣味はストライクアーツです!!よろしくお願いします!!」

「アインハルト・ストラトスと申します。歳は十四、覇王流(カイザーアーツ)と呼ばれる、地球で言うところの古武術を嗜んでいます」

「はいごくろうさん。ちなみにこいつらは俺たちとは逆で未来の世界から来たらしい」

「えっ!?」

「ちょっ!?師匠!?それを言っても良いのですか!?」

「ん?・・・・・・あぁ、過去の人間に存在ばらして発生するタイムパラドックスを気にしてるなら問題ないぞ」

「たい・・・・・・何?」

「タイムパラドックス、日本語にすると時間的な矛盾って言ったらいいのかな?未来の人が過去の人と会うことで未来に影響が出るって奴ですよね?」

「まぁ詳しく説明するとややこしいんだが大雑把には御門君が説明したことで間違ってないな。二人が気にしなくてもお前たちには影響は出ない、出るとしたら俺たちの未来だな」

「どういうことですか?」

「時雨先生の説明タ~イム」

 

 

アインハルトの疑問に答えるために紙を取りだし、枝分かれした線を幾つも引っ張る。

 

 

「そもそもお前たちの未来はすでに確定しているんだ。だから今さら過去に戻ってどうこうしたところで影響は出ない、そのままな訳だ」

 

 

そう言いながら枝分かれした線の一番先頭にヴィヴィオ&アインハルトと印を着ける。

 

 

「過去の人間が影響受ければそれだけ選択肢、未来の道が増えることになる」

 

 

ヴィヴィオ&アインハルトの印がある場所から遡ったところに時雨たちと印を着けて、さらにそこから枝分かれに線を引っ張る。

 

 

「多分、俺たちがヴィヴィオとアインハルトがいる未来にたどり着くとこは無いだろう。いや、もしその未来の俺たちが俺たちと同じようにこの世界に来ていたとしたら可能性はあるけどな」

 

 

時雨たちの印とヴィヴィオ&アインハルトの印を細い線で繋ぎ会わせる。

 

 

「ま、だからここでどんな行動をしてもお前たちの未来には影響は無いと思うぞ。だけどそうだな・・・・・・俺たちが全員何らかの理由で死ぬ、ぐらいのことをすれば変わるかもしれないけどな、ハハッ」

「笑えませんよ・・・最後のは」

「えっと・・・・・・つまりどういうことなの?」

「ヴィヴィオたちの未来は変わらないってことだよ。未来ってものはあやふやなんだ、なにせまだ定まっていない未確定事象なんだからな。だからこそ、未来は最強なんだ」

「そーんな難しい話はおいといてー、飲みましょうよー!!」

「うわっ!?シャマル絡み酒かよ・・・・・・おいテメェ!!何俺とギル用の度数三十の酒を飲んでやがる!!」

「度数たかっ!?」

「まてよ・・・・・・お前まさか他のやつに配って無いだろうな!?」

 

 

ガバッという効果音が着きそうな勢いでシャマルを振り払い、シグナムたちの方を見る。リニスは俺の用意した弱い酒を飲んでいたが・・・・・・シグナムたちは手遅れでした。

 

 

「じぐれぇぇぇ・・・・・・!!」

「時雨殿・・・・・・」

「エヘヘヘ・・・・・・時雨ぇ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

泣きのシグナム

絡みのザフィーラ

甘えのスノウ

 

 

そのときの三人を説明するとしたらそれでしか言い表せないだろう。

 

 

俺のことをブリ返してワンワンと泣き叫ぶシグナムをあやして、

過激なスキンシップを迫ってくるザフィーラと一進一退の攻防を繰り広げ、

まるで猫のように甘えてくるスノウを引き剥がすことが出来ず、

 

 

ようやく三人を寝かし付けることが出来たのは日付が変わる頃。リニスが加わらなかっただけマシだったけどこのツケがどこかで来そうで恐い。

 

 

そして三人に酒を飲ませたシャマルの始末だが、冬の池に鼻先ギリギリ出るまで沈めて一晩放置することにした。計画ギル、捕縛リニス、実行俺である。

 

 

刑を実行したときには子供組は全員眠っていたので、俺たちも自然と寝ることになり、俺は眠る前にとある部屋に立ち寄ることにした。

 

 

「はぁい」

「・・・・・・時雨か」

「見えなくても分かるのね、目の調子はどうよ?」

 

 

入ったのは雲雀のじいさんの部屋。構造上、外に面していないこの部屋は明かりもつけられていないこともあってあるのは暗闇だけだった。まぁ俺はこの程度の暗闇なら見えるし、雲雀のじいさんも気配で察知してるから問題ない。

 

 

「あぁ・・・悪くないな。まさか答えを返してすぐに写輪眼の移植をさせられるとは思わなかったぞ。それに手際もよかった。医学の知識でもあったのか?」

「母がこういうことを稀にしてたからね、手伝いの名目で何度かやったことはある。それに今回使ったエーテルライト、これは元々疑似神経として使う用途の道具だから過去最高の出来だと自負してるよ」

「そうか・・・ならこの体も」

「そう、母から習った技術の一つだ。定着までにおおよそ一日、そして動けるのは一日にも充たない時間だがそれでもあんたからしたら天恵にも等しいだろ?」

「確かにそうだな・・・・・・」

「動くのは明日だ、明日でどんな決着だろうがお前の物語は必ず終わる。それを俺は愉しく見させてもらうとするか」

「悪趣味な」

「悪かろうが趣味なことには変わりないさ。おやすみ、内羽雲雀。精々最良の結末を夢見るように眠るといいさ」

 

 

言いたいことだけを言って部屋から出る。

 

 

最後に部屋の中を振り返れば、そこにいたのは両目を包帯で覆い隠した一人の青年(・・・・・)が奥で座っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日付が変わり、朝日が上る。そうして疲れたこの世界の魔導師たちと平行世界の魔術師たち、そして未来から来た少年少女が体を休め、目覚めた時に見た人物は時雨たちに再起不能になるまでやられていたはずの人物だった。

 

 

「雀さん!!」

「歩さん!!」

「シグナムさん!!」

「はぁい」

「休みてぇ・・・」

「心配をかけたな」

 

 

その人物とは時雨いやワラキアによって片方の写輪眼を抉られた内羽雀、時雨に全身がガタガタになるまで殴られた神城歩、そしてシグナムとリニスの手によって二度と剣が握れないような体になったはずのこの世界のシグナムだった。

 

 

雀は持っていた写輪眼のストックを移植して復活、歩はイノセンスである神の道化(クラウン・クラウン)が故障した箇所に自身の粒子を補充することで蘇生、そしてこの世界のシグナムにいたっては滅茶苦茶に繋がれていた骨をもう一度折ることで正しい形に繋ぎ変えるという無茶苦茶なやり方で自身の体を再び戦えるようにしたのだ。ちなみに骨折はアースラの医療班とこの世界のシャマルが頑張って治しました。お疲れ様です。

 

 

「三人が無事に治ってくれて喜ばしいことだが現在の僕たちの状況は良いものではない」

 

 

この世界の魔導師たちと未来から来た少年少女が仲間の復活を喜んでいる中で暗い表情をしているのはクロノである。確かに戦力として非常に優秀な三人が復活したのは喜ばしいのだがそれだけでは事態は好転しない。昨日の百を超える闇の書の欠片の襲撃を受けても諸ともしなかった時雨たちの戦闘能力がクロノが頭を抱える原因だった。

 

 

最初は闇の書の欠片だと思っていたが平行世界から来たイリヤたちの証言から彼らも平行世界から来た人間であるということが判明、時雨の闇の書の騎士たちはザフィーラの性別が反転して性格に違いがあるもののこちらの夜天の書の騎士たちよりも個々の能力が高く、加えてコンビネーションもかなりものもと来ている。

 

 

それに時雨とギルガメッシュの能力の異常さ。ギルガメッシュの空間から武器を取り出して射出するスキルに加えて時雨にいたっては素手でバリアジャケットを貫通させて殺すことも可能だと来ている。

 

 

旗色が悪すぎる。正直時空管理局の本部に打診して増援を送ってもらうべきだとクロノは考えていた。

 

 

「その事だけどクロノ、私から一つ説明しなくちゃいけないことがあるわ」

「それは?」

「あの軍服の男、五月原・・・・・・今は八神時雨だったわね。彼のことよ」

 

 

そうして雀が時雨のことについて口を開こうとした時に、アースラ艦内に警戒アラームが鳴り響いた。

 

 

「どうしたんだエイミィ!?」

『海鳴の町に結界が発生してその中からロストロギア並の魔力反応が複数!!・・・・・・待って!!この魔力反応は・・・ジュエルシード!?』

 

 

エイミィの言葉に一同騒然とした。

 

 

ロストロギアジュエルシード。それは過去にユーノが掘り出してプレシアが地球にばらまいた願いを歪んだ形で叶える一種の願望器。なのはが(綺麗な)魔法少女として目覚める原因となりフェイトと友達になる切っ掛けを与えてくれた物。しかしそれは暴走するだけで一つでも世界を崩壊させる次元震を発生させるという厄介極まりない物でもある。それが複数と来たものだ、エイミィが慌てるもの無理はない。

 

 

直ぐ様クロノはなのはたちとイリヤたち、そしてトーマとリリィを連れて海鳴の町に転移する。そして見た結界はミッド式の円形でも、ベルカ式の三角錘でもない結界。半径が2㎞はありそうな四角形に五角形を重ねた九角形の巨大で歪な結界、それが町の大半をすっぽりと覆うように展開されていたのだった。

 

 

今まで目にしたことのない異形の結界に警戒しながらも浸入する。そして魔力反応があった地点に近づくと、結界の中心点であるビルの屋上に一人の男がいるのがわかった。

 

 

黒いコートに身を包み

アロンダイトを脇に置き

ジュエルシードを片手で遊ばせながら

空いた片手でタバコを持って

侵入者たちに声が聞こえるようにこの結界の主は楽しそうに切り出した。

 

 

「えっと、なのはにフェイトにはやて、そんでシグナムたちにクロノ少年、アルフにユーノ男の娘、加えてプリヤーズにトーマ少年とリリィ少女か!!いやぁ全戦力で来るとかばっかじゃないの!!」

 

 

そこには時雨がいたのだった。

 

 

 






ヴィヴィオとアインハルトの自己紹介。
作者がどっかで見たうろ覚えを使い回しました。個人的にはドラゴンボールのセル編みたいな感じです。過去の世界でセル倒しても未来のトランクスの世界でセルは消えなかったみたいな。
誰か詳しくわかる方がいるなら教えてください。


そして雲雀のおじいちゃんの身に何が・・・・・!!(黒笑)


ようやくGOD編の終わりが見えてきました。早く終えてAs編が書きたい、ギョロ目の続きが書きたい。


感想、評価をお待ちしています。



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