調律者は八神家の父   作:鎌鼬

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第4話

 

 

「闇の書の騎士、ヴォルケンリッターね・・・・・・」

 

 

四月四日、俺の誕生日となる深夜にリビングで俺を含めた七人の人間が話し合っていた。内三人は説明はいらないと思うが俺、はやて、リニス。残り四人は先程はやての部屋に現れた女性たち。

 

 

「はい、我々は闇の書に選ばれた主の守護のために存在します。このサラダなかなかいけるな・・・」

「闇の書は魔力を蒐集することでページを埋めることができます。シグナム、こっちのシチューも美味しいわよ」

「闇の書のページ666ページすべてを埋めると強大な力を得ることができるんです。この黄色いやつギガうまだな!!」

「ガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツ」

「口にあって良かったです。あとその黄色いのは天ぷらっていうんですよ」

「そこの銀髪の、まだまだ料理は残ってるし誰も取らないからがっつくな。あと肉料理ばかりじゃなくて野菜も食えよ」

「・・・すいません。」

「なかなか個性的な人たちやな~。お父さん、影薄うなってない?」

「ここにきて常識もった俺が疎外されるとは・・・」

 

 

苦し紛れで飯を食べようと提案したがそれが効を称したらしくはやてはもとより、リニスからの警戒心もそこそこに薄れてきている。

 

 

すこし温くなったビールを飲みながら彼女たちがいった言葉を脳内で反復する。

 

 

闇の書、魔力を蒐集することでページを埋めていき全666ページをを埋めると強大な力が手に入る・・・・・・ここの世界の物でないとしても間違いなく封印指定物の一品に違いない。あとでコトミネと相談しないといけないな。

 

 

「そう言えば自己紹介してなかったな、俺は八神時雨。八神家の父だ」

「私はリニス、この家の家政婦をしています」

「ウチは八神はやて、よろしゅうな」

「申し遅れました、私はヴォルケンリッターの烈火の将シグナムです」

「私は湖の騎士シャマルです」

「鉄槌の騎士ヴィータ」

「盾の守護獣ザフィーラです」

 

 

桃色の髪をした女性がシグナムで金色の女性がシャマル、銀髪少女がザフィーラでロリがヴィータ、うん覚えた。あと守護獣って言ったけどやっぱりその頭にある一部のマニアを刺激する獣耳は飾りじゃないのね。リニスと同類と思って間違いないだろう。

 

 

「で、俺がその闇の書ってやつなのか?」

「いえ、それが・・・・・・大変言いにくいのですが我々と主の間で繋がれているラインが二手に別れているようなのです」

「私とヴィータははやてちゃんに繋がっていますがシグナムとザフィーラのラインは時雨さんに繋がっているみたいなんです」

「つまり主が二人いるってことです。こんなの初めてだ」

「・・・・・・」ポタポタ

「・・・ザフィーラ、話の邪魔にならない程度なら食べていいからね?」

 

 

ザフィーラが皿に乗った肉料理を見てヨダレを垂らしている様を見て思わずゴーサインを出してしまう。なんかこう・・・餌を前にしてお預け喰らってる犬を見てるようで心が痛むんだよ・・・・・・っ!!

 

 

「つまり俺とはやてが二人で闇の書の主ってやつか・・・なぁ、はやてはどうしたい?」

「うーんそうやな・・・・・・まずは服買わないけんなぁ」

「あとは日用品の買い物か、ついでに食糧も買い込まないといけないか。コトミネの説得は俺に任せておけ。はやてのお願いといえば大抵は聴いてくれるからな」

「あの、お二人とも何を?」

 

 

あれやこれやと予定を考えている俺とはやてに困惑顔のシグナムが訪ねてきた。

 

 

「明日の予定考えてた。とりあえず四人分の服やら何やら買わないといけないからな。あ、金の心配ならしなくていいから。こう見えて金ならあるからな」

「闇の書がどうとかウチにはようわからん、でもウチが主やっていうなら皆の面倒みたる。あとウチは蒐集なんて望んでない。人様に迷惑かけたらあかんで」

「俺も同意見だ。俺には闇の書の力を手に入れてまで叶えたい然したる願いなんて物は無いからな。強いていうなら平穏が欲しい。植物の様にひっそりとした平穏がな」

「吉良乙です」

「良いじゃねえか。吉良吉影カッコいいじゃねぇか。殺した女の手首集めんなんて趣味悪いけど」

 

 

キラークイーンカッコいいよね。特に第3の爆弾なんてとても痺れる。時間を巻き戻して対象を殺すなんてチートだよね。

 

 

「というわけだから、闇の書うんぬんはしばらく忘れて平穏を味わってな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

闇の書の騎士、ヴォルケンリッターたちとの対話を終えた深夜、闇の書の主の片割れでもある八神時雨は家の庭で缶ビール片手にタバコを吸っていた。四月とは言えまだ夜は冷える。それでも家の中をタバコ臭くしたくないとの考えから基本家の外でタバコを刷っている。例外としてたまに自室で吸うことはあるが。

 

 

「(闇の書、闇の書ねぇ・・・・・・どっからどうみてもこれは裏側の問題・・・はやてには無縁なはずの世界の問題、なのに巻き込まれている・・・なんつー因果だよ、せっかくコトミネと一緒になってそういう関連に関わらせない様にしていたっていうのにな)」

 

 

缶ビールを握り潰して空になった片手で頭を抱える。義理とはいえども八神はやては時雨の娘、不慣れながらにも一杯の愛情をもって接していた甲斐もあってかはやてからの信頼も得られて親子の関係になっている。

 

 

だからこそはやてがこの世界に関わってしまったことに悔いしか沸かない。

 

 

「あの、主」

「ん?シグナムか」

 

 

海鳴教会にある懺悔室(時雨命名愉悦室)に行こうかどうかわりと真剣に悩んでいるとシグナムが現れた。姿は現れた時と同じノースリーブにピッチリとした服装で時雨は少し目のやり場に困ったがシグナム本人が気にしていないようなので開き直ることにした。

 

 

「でどうした?寝れないのか?一緒に寝てやろうか?」

「なっ!?」

 

 

時雨の言葉にシグナムは顔を真っ赤にさせた。露出の多い格好をしているわりには存外に初な性格らしい。その事に気がついた時雨の目がまるで獲物を見つけた肉食動物の様に妖しく輝く。時雨は自称ノーマルよりのS、こういう弄れる人間を見つければ即座にターゲットにしてしまう。

(どこがノーマルよりのSだ、ただのドSじゃねえかby恭也)

(間違いなくドSだなby コトミネ)

(ドSやなby はやて)

(ドSですねby リニス)

 

 

 

「で、どうして欲しいんだ?」

「ち、茶化さないでください!!」

「ははっ、ワリイワリイ。で、本題は」

 

 

軽く謝った後に時雨の空気が変わる。さっきまでが掴めない雲のようだとすれば今は切れ味の鋭い日本刀を思わせる雰囲気でシグナムを見据える。

 

 

「・・・主、貴方は魔導師なのですか?」

「魔導師?俺は魔術師だが・・・・・・ん?魔術使いの方が正しいのか?それがどうかしたのか?」

「いえ、この世界にも魔導師がいるのかと思いまして」

「お前の言う魔導師がどんなのかは分からないがこの世界には魔術師ならいるぞ。魔術ってのはこんな感じのな」

 

 

そう言って時雨は新しいタバコを取り出して口に加え、人差し指をタバコの先端に近づける。何をするのか疑問に思ったシグナムだったがその人差し指から火が現れたのを見て納得した。

 

 

「なるほど、我々が知る魔法とは違うのですね」

「魔術ね、魔術師の前でその単語は使わないことをお勧めするよ。それがなにか?」

「・・・・・・闇の書はお察しの通りに危険な存在です。故に時空管理局と呼ばれる組織から危険視されています」

「だから俺のことを警戒したと」

「その通りです。御無礼をお許しください」

「いいよ気にしなくて、俺がお前たちの立場なら間違いなく同じことをしていただろうし。言っとくけど俺は時空管理局なんて組織は知らない、知りたくもない。そいつらは間違いなく俺たちに害をなす存在だ、出来れば関わりたくないな」

 

 

タバコを口から離しシグナムにかからないように煙を吐き出す。

 

 

「私の記憶が間違いなければこの世界は管理局の対象外の世界です。何事もなければ関わることは無いはずです」

「だといいんだがな・・・・・・なんかこう、背筋が少し寒いんだよ。こうなると経験上良くないことが起こる前触れなんだ。何事もなければいいんだけどな」

 

 

時雨は首をさする。前に寒気がしたときはコトミネと代行者の仕事をしていた時に魔術協会の奴らと鉢合わせた時だ。魔術協会とコトミネが所属している教会は水と油、有無を言わさずに殺し合いに発展したのをなんとか生き延びたことは記憶に新しい。

 

 

「ご安心を」

「うん?」

「時雨とはやては、私たちヴォルケンリッターが必ず守ります」

 

 

シグナムから出た言葉の意味を時雨は理解していた。闇の書の主は命に代えても我らが守ると。だから時雨はーーーーー

 

 

「ふんっ」

「きゃっ!?」

 

 

手に持っていた空き缶をシグナムへと投げつけた。予想外の行動にシグナムは回避が出来ず、空き缶は吸い込まれるように眉間に辺りシグナムは可愛い悲鳴をあげた。

 

 

「な、何を」

「何をじゃねえよ、なに勘違いしてやがる。はやてがお前たちのことを家族と言ったんだ、なら俺にとってもお前たちは家族だ。家族を守るのは父親である俺の役目だ。だからお前たちも守られていろや」

 

 

シグナムは時雨の言葉に唖然とした。今までに多くの主に仕えてきた、主たる自分を守れという命令を受けることはあった。でも守られろなんて言われたのは今回が初めてだった。

 

 

「まぁ流石に一人で厳しくなったら助けてくれと頼むかも知れないけどな」

 

 

ケラケラと軽く笑いながら空き缶を拾い家に向かう時雨。どうやらそろそろ眠るつもりらしい。

 

 

「あ、そうそうシグナム」

「な、なんでしょうか」

「これがなんなのか分かるか?」

 

 

時雨が持ち上げた左の手首には蛇をイメージしたようなブレスレットがつけられている。それは時雨の着けたものではない。闇の書の覚醒したときに気がついたらそこにあったのだ。

 

 

「・・・・・・恐らくそれはデバイスかと、武器のようなものと捉えて貰っても構いません」

 

 

シグナムの言葉に魔術礼装のような物かと時雨は独自の解釈で納得した。

 

 

 

「ふーん、それだけだありがとうな。あ、あとせっかく綺麗で可愛い顔してるのに眉間にシワを寄せてるのは勿体無いぞ」

「な、な、な、な、なっ!?」

「ははっ、おやすみ~」

 

 

最後にシグナムを口説くような言葉を吐いて時雨は笑いながら家に入った。そこに残ったのは顔を真っ赤にしながら綺麗や可愛いとブツブツと呟いているシグナムだった。そして朝日が顔を出した頃にようやく正気に戻ったらしい

 

 






今回は説明が主な回でした。


うちのヴォルケンリッターたちは最初から柔らかい物腰で魔改造が加えられています(笑)


ザフィーラは食欲に正直
シグナムは乙女思考
シャマルは・・・・・・(黒笑)
ヴィータ?相変わらずのロリですよ?



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