調律者は八神家の父   作:鎌鼬

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番外編17章 本人ですら認識がない人間から父と呼ばれれば困惑するのに周囲は余計に混乱する

 

 

「さてっと」

 

 

側にあったガードレールに腰を下ろして周りを見渡す。シャマルが二人いるのは俺たちの知るシャマルとこの世界のシャマルだからだろう。だがオッドアイの少女が二人、それに少女と少年と浮かんでいる本一冊、こいつらは知らない。アースラでパクった闇の書事件のデータにもこいつらの顔はなかったはずだ。となると可能性は二つ、一つは隠れていた魔導師か、それとも俺たちと同じ様にやって来た奴らか。

 

 

「「シグナムさん!!」」

「シグナムさんだ!!それにリニスさんと師匠もいますよ!!」

「お父さん!!」

「シグナム、あいつらの顔に見覚えは?」

「・・・・・・ありません。それと時雨、あの金髪の少女にお父さんと呼ばれていましたが・・・何か説明は?」

「あ、それは私も求めます」

「俺も見覚えないからその般若仕舞ってくれ!!恐いわ!!」

 

 

金髪の少女からお父さん発言された途端にリニスとシグナムからの圧力が凄い凄い、二人の背後に般若の顔が浮かび上がるほどだった。スノウからもプレッシャーを感じるな・・・・・・さっきまで聞こえていた爆発音に加えて肉を叩くような打撃音まで聞こえていやがる。恐くて見れない。そしてこの世界のスノウ、南無。

 

 

「で、誰だお前ら?そっちは俺たちのことを知っているかも知れないけど俺たちは知らないんでな」

「や、八神ヴィヴィオです!!」

「アインハルト・ストラトスです」

「トーマ・アヴェニールです!!」

「リリィ・シュトロゼックです!!」

 

 

ヴィヴィオ、アインハルト、トーマ、リリィね・・・・・・やっぱり知らん。職業柄顔と名前は覚えるようにしているというのに思い当たる節が一切見当たらない。それなのにヴィヴィオとアインハルトが俺のことを知っていて、対応がそこそこ親しそう様子から・・・・・・未来から来たのか?俺たちが過去から来たという前例があるからその反対の未来から来たと言うことも考えられない事はない。

 

 

「オーケイオーケイ・・・・・・リニスはその振り上げた拳を下ろしてくれ。そしてシグナムは泣きそうになりながら剣を向けるな、心当たりが無いのに罪悪感がヤバすぎる!!」

「本当にありませんか・・・・・・?だって八神って名乗ってますよ?それにお父さんと来たらもう・・・・・・ねぇ?」

「エグッエグッ!!だっで・・・だっで・・・!!」

「あーまてまてまて!!ガチ泣きに移行するんじゃない!!」

「(ねぇトーマ、アレ本当にシグナムさんなの?)」

「(さぁ・・・さっきのシャマル先生のこともあるしもしかすると偽者かもしれない)」

「(あぁ・・・・・・アレを見ると何だか安心しますね)」

「(うん・・・相変わらずシグナムママは乙女思考で泣き虫だしリニスママもお父さんに遠慮なしの態度だもんね)」

 

 

なにやらトーマとリリィが困惑した表情で、ヴィヴィオとアインハルトがほっこりした表情でこっちを見てくるがそれをどうこうする訳でもなく、シグナムを落ち着かせることを優先する。リニスは渋々といった具合で引き下がってくれたがシグナムはようやく小さく嗚咽を漏らす程度に落ち着いてくれた。

 

 

「あーヴィヴィオって言ったっけ?お前が知る俺の年は幾つだ!!」

「えっと・・・確かこの間誕生会を皆でしたばっかりだから・・・・・・四十だっけ?」

「三十九じゃなかったですか?」

「ほら見ろ!!俺今二十四なのに十五も差があるってことはあいつらは未来から来たんだ!!だから落ち着けよ!!」

「ヒグッ・・・ヒグッ・・・」

「や、やっぱりね~!!リ、リニスさんはそんなことだと思っていましたよ~」

「リニス・・・声が震えてるぞ?」

 

 

はぁ・・・・・・これでしばらくすれば泣き止んでくれるだろう・・・・・・それにしても十五年後の未来の娘か。なんか映画か小説にでもありそうな設定だな。タイムスリップしてきた未来の娘を自称する少女と出会い、恋に落ちるってか?笑えねぇよ、事実だとしたら近親相姦じゃねぇか。それに隣に立っているのは友達か?良かったな、一人孤独にこの世界にやって来なくて。

 

 

「えっと、ヴィヴィオにアインハルトだったか?俺たちは元の世界に帰るために行動しているんだけど・・・・・・ついてくるか?」

「「もちろん!!」」

「え!?俺たちは!?」

 

 

俺の提案にヴィヴィオとアインハルトは元気よく返事をしてくれトーマはよくわからん声をあげていたが知らん。否定する材料が無いのだからあちらがそういうなら俺の身内に入るのだろう、だったら守るだけだ。それに対してトーマとリリィは俺のことを知らないと言っている。なら対象外、守ってやる義理はない。

 

 

「それならさっさと発破でもかけて帰るとするか」

 

 

ガードレールから降りて戦う皆に激を飛ばそうとしたところで目の前の空間に光が人の形に集まり、鬱っぽい表情をしているプレシアになった。

 

 

「アリシア・・・・・・アリシアァ・・・・・・」

「「「「・・・・・・(俺/私)の知っているプレシア(さん)がこんな根倉なはずがない!!!!」」」」

 

 

アリシアアリシアとまるで麻薬を求める中毒者のように呟くプレシアを見た俺とリニス、ヴィヴィオとアインハルトが同時に同じ言葉を叫んだ。

 

 

「誰だよお前!!俺の知ってるプレシアと中身別もんじゃねぇか!!」

「フェイトは!!フェイトはどうしたんですか!!貴女の愛した娘はもう一人いますよ!!」

「アインハルトさん!!あんなのプレシアさんじゃないよ!!」

「同感ですよ!!アリシアさんを見かければ飛び付き、フェイトさんを感知すれば押し倒す!!それが私たちの知るプレシアさんですよ!!」

「「「「以上からお前(貴女)はプレシア(さん)じゃない(ありません)!!!!」」」」

 

 

ビシィッ!!と効果音が着きそうな程に人差し指を偽者プレシアに向ける俺たち。俺が認めたプレシアは親バカなプレシアなんだ!!あんな陰湿そうな根倉なプレシアなはずがない!!・・・・・・あと未来(仮)のプレシアが俺たちの知るプレシアよりも悪化している気がするが・・・・・・そっとしておこう、うん。

 

 

「・・・・・・貴方たち、邪魔よ。サンダーーーーーーーーー」

「おせぇよ」

 

 

いきなりサンダーレイジをブッパしてこようとした偽者プレシアに向かって無音で投影した弓に黒鍵をつがい、放つ。張られた障壁を突き破り黒鍵は偽者プレシアの右肩に突き刺さった。

 

 

「ーーーーーー爆ぜろ」

 

 

それと同時に黒鍵に内包していた魔力を暴発させ、あわれ偽者プレシアは爆散四散、慈悲なんて物はこの世にはない。煙が晴れると僅かな粒子を残して偽者プレシアの姿は消え去っていた。

 

 

「mission complete」

「ナイスですよ時雨」グッ

「流石お父さん!!私たちに出来ないことを平然とやってのける!!」

「そこに痺れます!!憧れます!!」

「」ポカーン

「」ポカーン

 

 

唖然とした表情をしているトーマとリリィ、そしてリニス、ヴィヴィオ、アインハルトの三人はこのノリである。ノリノリだなぁお前ら。

 

 

「さて、今度こそ」

「待ちなさーーーい!!!」

 

 

・・・・・・このロリヴォイス、すごく聞き覚えが有ります。面倒臭いが上を見ればコスプレと勘違いされそうな魔法少女物の衣装に身を包んだ二人と赤い外套を纏った一人が空から降りてきた・・・・・・そういえばいたね、プリヤメンバーズ。今までなにしてたの?

 

 

「何だよお前ら、行動起こそうとしたときに現れてさぁ。空気読めよ、話進めさせろよ」

「なんで開口一番に罵倒されなきゃならないの!?」

「人生何時だってそんなものさね。ところで気づいていないのか?」

「何がよ?」

「はぁ・・・・・・囲まれてるぞ」

 

 

能天気なか餓鬼三人に呆れながら告げてやると同時に偽者プレシアが現れた時と同じ様に光が集まり、人の形になっていく。出来上がっていくのはシグナム、ヴィータ、シャマル、筋肉ムキムキのマッチョマン、クロノ少年、内羽雀にイノセンス持ちの奴、ユーノ男の娘にアルフ、更にはさっきやって来たはずのトーマまでノースリーブのヘソだしルックという恥ずかしく無いのかと問いかけたくなるような格好で現れる。言葉だけ聞けば十人のように聞こえないことも無いが・・・・・・実際には十人一組がたくさん、少なくとも百人を越える人数で現れた。誰しもが目に覇気がなく、死んだような目をしている。アースラからパクった情報通りならこいつらは闇の書の欠片によって出来た過去の思念体のような存在らしい。それなら始めてあった偽者のヴィータの言動にも理解できる。

 

 

要するにこいつらは採集されたときの思念を強く残した残留思念その物。体の構成はプログラムである闇の書の騎士たちと同じらしいが誰が認めてやるものか。マテリアルたちはこいつらと同じはずなのに自己の意思が確立しているのは特別だからなのだろう。

 

 

「総員、集結!!」

 

 

腹から声を出し、結界内に響くように叫びをあげるとそれを聞いたヴィータ、ザフィーラ、スノウ、シュテル、ディアーチェ、レヴィが俺の近くにやって来た。皆自然体でありながらも戦闘体制を崩してはいない・・・・・・こっちの世界の奴ら+プリヤメンバーズはようやくこの状況に気が付いたのかおっかなビックリしているが。

 

 

「どうします?」

「取り合えず話してみる」

 

 

リニスに問われ、そう返して一歩進み出ると同時に俺に向かって緑色のバインドが施され、水色の砲撃が放たれた。バインドのせいで回避できるはずもなく、俺はその砲撃をまともに食らうことになる。

 

 

「悪手だな」

「悪手ですね」

「あ~あ」

「死に急ぎたいようだな」

「死にたがりですか?」

「馬鹿なことを・・・・・・」

「死にましたね」

「死んだな」

「え?どういこと?」

「あっちゃ~・・・・・・」

「南無・・・」

 

 

この世界の連中とトーマとリリィが突然俺が砲撃を食らったことにオロオロしている中で俺のことをよく知っている奴らは呆れたような声を出していた。よくわかってるじゃないか。

 

 

「たがだか便所の汚れて程度に染み付いているような残留思念共がぁ!!!」

 

 

砲撃によって出来た煙をバインドを引きちぎると共に振り払いながらバインドと砲撃をやってきたであろうユーノ男の娘とクロノ少年の闇の書の欠片を睨み付ける。

 

 

「人間様の高尚な降服交渉タイムを邪魔してるんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!!!!」

 

 

怒声を撒き散らしながらルーンの文字が刻まれたカードを蒔き散らばし、詠唱をすっぽかしてどす黒い炎の巨人、魔女狩りの王(インノケンティウス)を顕現させる。現れた魔女狩りの王はユーノ男の娘とクロノ少年の闇の書の欠片がいる場所に炎の剣を振り払い、周囲の闇の書の欠片共々蒸発させる。しかし居なくなったように思えたのは一瞬のこと、瞬く間に闇の書の欠片は数を増やしていき、空いた場所を埋めてしまった。

 

 

「スノウ!!ヴィータ!!お前たちははやてのところに行け!!ギルがいるがもしものことがある!!はやてと御門君を任せたぞ!!」

「うん!!」

「承知した」

 

 

俺の指示に従ってスノウとヴィータは転移してこの場から姿を消した。他の奴が張った結界なら兎も角、これは俺たちが張った結界なのだ。故にここから入ることも出ることも俺たち次第だ。

 

 

「残った奴らはあいつらの殲滅だ」

「はぁ、数だけは多いですね」

「百は余裕で越えているようだな」

「しかしその程度だ」

「所詮は烏合の集ってやつね」

「焼き払いましょう」

「あれらは我等が出てきたことの弊害か、ならばその咎は我等にあるな!!」

「よーし、僕の強さを見せてやるぞ!!」

「いくよ、クリス!!」

「ティオ!!」

 

 

殺る気満々の我が家の家族たちとマテリアルたちに負けないようにヴィヴィオとアインハルトはヒョコヒョコと動くウサギと猫のヌイグルミに指示を飛ばす。あれもデバイスなのだろう、セットアップした二人は少女から大人の女性の姿に変わって戦闘体制に入っていた。未来の技術か?気になるがこの場で問うのは良くないな。

 

 

「なぁに、一人頭三十殺もしていればすぐにいなくなる!!」

「「「「「「「「「「応!!!!」」」」」」」」」」

 

 

 

その掛け声が引き金となり、闇の書の欠片たちは一斉に突進してきた。

 

 

 






時雨、未来の娘カッコカリと未来の弟子カッコカリとの邂逅です。何故カッコカリなのかは集団で現れた闇の書の欠片たちを刈り取ってから説明します。


最近、乙女なしくを書くことが楽しくてしょうがない・・・・・・この気持ち、まさか恋!?(気狂い)


ヴィヴィオに父と呼ばれた時のリニスの反応、とりま殴る、まぁいつも通り
シグナムの反応、シグナムたんニヤニヤ
ザフィーラの反応、特になし
スノウの反応・・・・・・サッ←視線をそらす


感想、評価をお待ちしています。



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