リニスとシグナムを引き連れながら俺は悠々とアースラの中を歩いていく。元の世界でジュエルシード絡みの事件の時にアースラの構造は頭の中に入っているので道に迷うことはない。それよりもビービー鳴り響いているアラームが耳障りだけど。
「警報がなっているのに誰も来ませんね」
「戦えるやつがいないんじゃないのか?昨日俺が散々ぶち殺しておいたし」
「それにしても無防備にも程がある・・・」
シグナムはアースラの警備に不満そうだ。たしかに拠点には攻められたときのためにいくらか守りを置いておかなければならない。それなのにここには守り手はいない。考えられる原因は二つ、一つは戦えるやつが全員出払っているか、もう一つは
「攻められた時のことを考えていないのか。はっ、ナメられたものだね」
攻めることだけ考えて攻められた時のことを考えていない、悪手にも程がある。こっちにはシ・・・シ・・・シリアル?みたいな管理局絶対主義の馬鹿しかいないのか?管理局は正義だから攻められるはずがないとでも思っているのか?元の世界のクロノ少年連れてきてやろうか?絶対にぶちギレるか呆れ果てるかのどっちかだから。
「ったく、一方的に腰振るだけのガキかよ。ヤるのも殺るのも互いにするから楽しいんだろうが」
「っ!!し、時雨!!」
「ん?おぉ、悪かったな。初なシグナムにはまだ早かったか」
「本当にシグナムは乙女ですね~♪身持ちが堅いのは良いことですけど余りにも過ぎると逆に引かれますよ?」
「子供の頃の将来の夢はお嫁さんだったりするのかね」
「そ、それの何が悪い!!」
「「(あ、本当だったんだ)」」
やっぱりシグナムは乙女なんだな~ということを再認識しながら進んで操舵室まであと半分といったところで目の前にシャッターが降りてきて通路を塞いだ。耳をすませばシャッターの奥から何かが降りてくる音が聞こえる。ここまで来てようやく隔離処理かよ、遅すぎる。
「シグナム、これ壊せる?」
「出来なくも無いですが・・・やり過ぎてしまうかもしれません。データを入手するためには出きるだけ壊さないことが勧められます」
「私も駄目ですね。これ壊そうと思ったら最悪船に風穴空けてしまうかもしれません」
「そうだよな・・・しゃーない、俺がやるか」
攻刀を投影し、シャッターの前に立ち意識を変える。するとシャッターのあちこちに赤黒く脈打つ線がいくつも見えた。その線に攻刀を突き立てると抵抗なく突き刺さる。そうして線に沿ってシャッターを切断し、人一人通れる程度の穴を作った。
「やっぱ便利だね、これ。やり過ぎると頭痛くなるのが難点だけど」
「今のはいったい・・・?」
「直死の魔眼、俺はそう呼んでる。元々は俺の持ってた物の弱い部分が分かるっていうどうでもいいスキルから派生した魔眼だよ。物には一度壊れて完全になりたいという願望が存在する、そしてそれを見ることが出来るのが直死の魔眼の効果だ。眼で見た線に沿ってやればそれは抵抗なく切られてそして永劫直ることは無い。まぁ、弱点としては物の死なんてものを見るから脳の処理に負荷がかかることくらいだな」
「・・・限界まで使うとどうなるのですか?」
「脳の処理が追い付かなくなって死ぬ、良くても廃人だろうな」
「出来るだけ使わないようにしてください。時雨が廃人になるなどはやてが悲しみます」
「元々多用するつもりはないよ。それよりもシグナムは悲しんでくれないのな、俺はそれが悲しくて泣きそうだよ」
「・・・無論、私も悲しみます。ヴィータも、ザフィーラも、スノウも、リニスも・・・・・・多分シャマルも」
「そこは多分を着けないで欲しかったね」
そんな会話を続けながらもザクザクとシャッターを切り続けて前進していく。途中から頭痛が酷くなってきて殴って壊すに切り替えたけど。そしてたどり着いた操舵室、俺は直死の魔眼を使わずに回し蹴りで素敵ノックをかまして扉を開け、何やら絶望的な表情をしているクルー共に笑顔で告げてやった。
「やぁ時空管理局局員諸君、ご機嫌麗しゅう。抵抗すれば殺す、指示以外の行動を起こせば殺す、思わせ振りな態度をとれば殺す。分かればさっさと惨めにひれ伏していろ」
「ふふふ~ふふふ~ふふ~♪ふふふ~ふふふ~ふふ~ふ~♪」
リニスのバインドで縛り付けた管理局員たちの視線を尻目に俺は鼻唄を歌いながらキーボードを叩いて目的のデータを探していた。む、ファイアウォールがうざったいな・・・・・・まぁ突破出来なくもないが。
「そら、ヒットだ」
エンターキーをカタリと叩けば画面一杯に広がるのはこの世界で起きた闇の書事件の詳細。闇の書の騎士たちとの戦闘や管理人格と防衛プログラムとの決戦まで事細かに記されている。が、こっちの世界のスノウの詳細なデータがどうしても見つからない。こいつらが知らされていないのか、それとも隠しているのかわからないがこれではここに来た目的の半分も果たすことが出来ない。ここは頑張ってくれているスノウたちと合流した方が良さげだな。こっちの世界のスノウもあっちにいるみたいだし。
「データをまとめてっと、リニス、シグナム、帰るぞ
」
「了解です」
「承知しました」
「待て!!」
帰ろうとした矢先に聞き覚えのある声で呼び止められる。そこにいたのはバインドで縛られているクロノ少年だった。クロノ少年の声に反応して動き出しそうになっているリニスとシグナムを手で制してクロノ少年の前に立つ。
「これはこれはクロノ・ハラオウン執務官殿、如何されましたかな?」
「なぜこんなことをした!!犯罪行為の加担に加えて管理局員への攻撃!!言いようもない犯罪だ!!」
クロノ少年は縛られながらも顔を真っ赤にして俺に向かって怒鳴り散らす。どうやらこっちのクロノ少年はシリアル?よりも性格らしい・・・・・・どうでもいいことだな。そんなクロノ少年の罵声を聞きながら俺はタバコに火を着けて煙を吐き出す。
「正当防衛、という言葉を知っているか?」
「何?」
「先に武器を向けたのはそちらだ、だから身の恐怖を感じた俺たちは武器を向け返した。銃を撃って良いのは撃たれる覚悟があるやつだけだ、という格言がある。殺すことができる物を向けるのなら殺される覚悟があるということなのだろう?ならば一々殺された程度で強姦魔に教われた処女のように囃し立てるんじゃねぇよ。何度でもいうぞ、先に手を出して来たのはそちらだ。だから俺たちは殺り返した、ただそれだけの話じゃないか。そちらが武器を向けなければ誰も死なかなかった、そちらが俺たちに手を出さなければ誰も死なかなかった、そちらがはやてに手を出していなければ誰も死なかなかった。あぁ、だから俺たちは悪くはない」
どこぞの過負荷筆頭の裸エプロン先輩の如く自分勝手な正論を吐き出してやったらクロノ少年は顔を青くして大人しくなった。無論、俺の言葉に感激して黙っているのではない。俺を計りかねているのだろう?身勝手な正論を振りかざす俺を。だがこれが俺の正義だ。世界に生きる六十億人の命よりも、別世界にいるであろう有象無象の命よりも、俺の家族と友人たちの命のほうが俺にとっては重い。
だから手を出せば殺す
だから脅かせば殺す
だから危害を加えようとすれば殺す
至極単純な話だ。まぁ元の世界のクロノ少年のことは気に入っていたし頭が冷えているから殺すのだけは勘弁してやろう。俺たちの目的の邪魔をすれば別だがな。
「それではさらば、正義の味方気取りの誰かさんたち。願わくば出会うことの無いように」
その言葉と同時にリニスの魔法によってアースラから転移。移動した先は動揺のために設置させた結界内だった。
「よし、ならちゃっちゃとあいつらボコって目的を達成するとするか」
「えぇ」
「はい」
リニスとシグナムは反論することなく応じてくれ、俺たちは戦っている家族たちの元に駆け出した。
「はぁ・・・・・・暇ねぇ」
時雨たちがこの場に着く少し前にシャマルは調達した椅子に座りながら戦いを観戦していた。ザフィーラはザフィーラ(男)と、ヴィータはヴィータと、スノウはリインフォースと、マテリアルたちはそれぞれ自身のオリジナルたちと戦っていた。
「くっ!!こんなもの!!」
「黙りなさい」
自分の下で呻く椅子ーーーーーこの世界のシャマルにシャマルは踵で顔を蹴って黙らせる。戦いの始まりと同時に拘束したのでシャマルは無傷である。ちなみにこの世界のシャマルは四つんばい、しかもバインドで亀甲縛りにされた状態で椅子にされている。心なしかこの世界のシャマルの頬が砂埃とは別に濡れているような気がするが・・・・・・気のせいだ。
「戦況は拮抗、まぁそれぞれ自分と戦っていると思えば当然よね。それでも時雨さんが来れば一瞬でこちらに傾くのでしょうけど」
呻く椅子に蹴りを与えながらもシャマルは淡々と戦況を計る。時雨たちからはMでド変態たど思われている彼女だがそれは身内である彼らにだけ、敵に対しては一変して闇の書の騎士である湖の騎士として冷静に動く。それでもまぁ、この世界のシャマルを亀甲縛りにするなどの変態行為はみられるのだが。
「手を出そうかしら・・・でもそうするとやる気出してた皆の邪魔をすることになるだろうし・・・あぁ、暇だわ」
そう言いながら戦いを眺めていたシャマルだったが突然結界内に四つ、いや五つの反応が現れたことに驚く。侵入してきたのではない、突然現れたのだった。そしてそれらの反応はシャマルの目の前に現れる。
現れたのは金髪のツインテールのオッドアイの少女と黄緑色のサイトテールのオッドアイの少女。そして凛々しい顔付きをした少年とその少年にいわゆるお姫様だっこをされている少女だった。
「ふぇっ!?アインハルトさんここどこ!?」
「さ、さぁ・・・・・・私にも何が何だか・・・」
「トーマ、私たちどうしてここに?」
「わからない・・・・・・いつも通りになのはさんたちと訓練するために移動していたはずなのに・・・」
現れたのはこの世界から見て、同時に時雨たちの世界から見て未来からやって来たヴィヴィオ、アインハルト、トーマ、リリィ、そして宙に浮かんでいる一冊の本だった。それぞれが状況を確認するために辺りを見渡すと、
「「「「シャマル(さん/先生)・・・・・・が二人!?」」」」
シャマルと椅子にされているこの世界のシャマルを見て驚きの声をあげた。まぁ彼らの知っている顔が二つあるのだ、驚くのも無理はない。
「えっ!?どういうことなの!?」
「り、リリィ!!落ち着いて!!」
「ど、どうしよう!!アインハルトさん!!」
「ヴィヴィオさん、落ち着いてください!!こう言うときの見分け方は師匠から教わっているはずです!!」
「あ!!そ、そうだったね!!」
慌てるトーマ、リリィ、ヴィヴィオと違いアインハルトはどこか落ち着いているように見える。何故なら彼女たちは自分達の世界のシャマルの性格を熟知しているから。
「「あーーー!!あんなところに猫耳の女の子と犬耳の女の子がきわどい格好で百合百合プレイをしているーーーーー!!!」」
「っ!?どこ!!どこですか!?そんなプレイはけしからん!!是非とも録画をしなければ!!」
「「よし、あっちが本物だ」」
「・・・え?」
「・・・・・・はい?」
ヴィヴィオとアインハルトが発した言葉に目の色を変えてシャマルが反応するのを見てヴィヴィオとアインハルトは反応したシャマルが本物だと確信し、トーマとリリィは唖然とする。何故この様な違う反応を見せたかというとこのヴィヴィオとアインハルトは時雨たちのいる世界の未来から来たからで、トーマとリリィは転生者がいないいわゆる正史の世界から来たからである。ヴィヴィオとアインハルトからすれば見慣れた光景であってもトーマとリリィからすればトチ狂ったとしても可笑しくない光景である。
「もう!!どこにも百合プレイをしてるおにゃのこなんていないじゃないの!?シャマルさん激オコプンプン丸よ!!」
「うぅ・・・なんで私がこんな目に~」
「ヴィヴィオさん・・・・・・これってもしかして」
「うん、お父さんが言ってたアレかもしれない」
「え?・・・・・・し、シャマル先生?」
「いやいやいや、シャマル先生があんなので反応するはずがないと思うけど・・・・・・」
心当たりがあるのか落ち着いて話し合っているヴィヴィオとアインハルトとは違い、シャマルの反応を見たトーマとリリィは混乱している。無理もないだろう、いつもニコニコして清楚なイメージのある先生と慕っていたシャマルが犬耳と猫耳の女の子の百合百合プレイという一部に高い指示をされている言葉に反応しているだなんてまるで天が落ちてきたような衝撃である。まぁ時雨たちが知るシャマルならこの程度は平常運転なのだが。
「貴方たち、私を知っているみたいだけど・・・・・・一体何者なの?」
一時はヴィヴィオたちの言葉に踊らされていたシャマルだったがすぐに嘘だと見破り問いかける。椅子にされているこの世界のシャマルがどこか辛そうな表情をしているのはシャマルが苛立ってバインドを締め付けているからだと答えよう。そしてこの世界のシャマルがそれなのにどこか恍惚とした表情を浮かべているのは・・・・・・察してくれたまえ。
「は、はい。私たちはーーーーーーー」
アインハルトが代表して自分達の身分を明かそうとした、丁度その時に乱入者が現れた。
一人は猫耳と尻尾を生やした従者
一人は炎の魔剣を携えた騎士
もう一人は二人の従者を従えまるで悪役のように嫌らしい笑みを浮かべた軍服の男性
「おうおう、皆頑張っていらっしゃるじゃないのさ」
「戦況は五分五分といったところですね」
「マテリアルの三人も頑張っているようですね」
「あら、目的は果たせたのかしら?時雨さん」
「果たせたのなら撤退を指示しているだろうさ。果たしていないからワザワザ足を運んできたことを察して欲しいね」
ヴィヴィオとアインハルトからすれば馴染みの深い、トーマとリリィからすれば異質な人物である時雨がリニスとシグナムを引き連れて現れた。
はい、アースラ制圧に始まり、ヴィヴィオとアインハルト、そしてトーマとリリィ登場回でございます。
五体を投げ伏せて歓喜しろ、ロリコン共(黒笑)
作中で説明した通り、ヴィヴィオとアインハルトは時雨たちの世界の未来から、トーマとリリィは時雨や他の転生者のいない未来からやって来たという設定にしてあります。
どうしてこんなことをしたかだって?
それはエクリプフ感染者と時雨を戦わせたかったからさ♪(堕天使の如き微笑み)
そしてヴィヴィオとアインハルトが言ったお父さんと師匠・・・・・・一体誰なのでしょうね~♪(悪魔の如き微笑み)
感想、評価をお待ちしています。