調律者は八神家の父   作:鎌鼬

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この章にはグロい表現が含まれています。耐性の無い方は注意してください。





番外編十一章 虎の子を獲ようとして虎の穴に入れば虎と敵対するのは当たり前

 

 

時は少し戻り、時雨たちが海上で転生気らしき人物から逃げきった頃。時雨たちは海鳴市の上空でヴィマーナに乗って小休憩を取っていた。時雨はタバコを口に加え、ギルは時雨からせびったタバコを吹かし、スノウは探索魔法で周囲を警戒、ディアーチェは少し怯えながらヴィマーナの端っこに座り、シュテルはロープで縛られてヴィマーナに吊るされていた。

 

 

「私の扱い酷くないですか?」

「妥当だろ」

「妥当だな」

「妥当だ」

「酷いっ!!・・・・・・でもそれを越えた先にあるのは絶対的な快楽のはず!!」

「シュテルはどうしてこのような性格になってしまったのだ・・・・・・」

「苦労してるんだな・・・・・・ディアーチェも」

 

 

どうも他人事とは思えなかったディアーチェに時雨は優しげな視線を向けながら海鳴の町を見下ろした。そこにあるのは町を南北二分するように展開されている球体型の結界二つ。町に出ていたメンバーは時雨の予想した通りに管理局に見つかった様だった。

 

 

「スノウ、結界の中の奴らに念話通じるか?」

「・・・・・・シグナムたちには無理そうだがザフィーラたちならなんとかいけそうだな」

「繋げてくれ」

 

 

そう時雨が指示すると全員に見えるようにモニターが現れてそこにはシャマルの顔が映る。

 

 

「シャマル、そっちは大丈夫か?」

『時雨さん?こっちは問題ないわよ。魔導師二人とヴィータちゃんとよくわからない筋肉ムキムキマッチョマンに会ったけどザフィーラが瞬殺したわ』

「筋肉ムキムキマッチマンってなんぞ?コマンドーでも現れたのか?」

 

 

シャマルの言う筋肉ムキムキマッチョマンはこの世界のザフィーラ(男)のこと。何も知らない人からすればそう見えてしまうのでこうなってしまうのは仕方のないことだ。

 

 

『そっちはどうかしら?なにか見つかったの?』

「一応海に怪しい物を見つけたな。それの調査は明日に回すつもりだ。二人はシグナムとリニスと合流してくれ。さっさと帰って温泉に行こう。寒くて仕方ない」

『オッケーオーライよ。すぐにシグナムたちと合流するわ』

 

 

そうしてシャマルとの連絡は切れた。変態的な発言の無かったことに密かに時雨は安堵する。

 

 

「はぁ・・・・・・シグナムたちはシャマルたちに任せれば大丈夫そうだな。俺たちは一足先に戻るとしよう」

「そうだな。事前に私たちで結界を張ったとはいえはやてたちが心配だ」

 

 

時雨の発言に肯定するようにスノウが賛成すると、時雨とスノウの耳に甲高いアラートのような音が聞こえた。これは旅館周囲に張り巡らしていた侵入者ようのアラートで、魔力を持つものがそれに触れると術者である時雨とスノウの耳に届くようになっていた。

 

 

「ギル、旅館に敵だ、はやてたちが危ない」

「何ぃ!?」

「待て時雨、私とユニゾンするんだ。そうした方がこの距離なら早くたどり着ける」

「なら早くするぞ」

「「ユニゾンイン!!」」

 

 

スノウの姿が呆けて光の粒に変わり、時雨に集まる。強い光を放った後にその場には眼は紅く染まり、腰から黒い三対の翼を生やした時雨がいた。

 

 

『飛翔魔法の制御は私に任せてくれ』

「行くぞ」

 

 

一歩踏み出し、思いっきりヴィマーナを蹴ると時雨はヴィマーナの速度よりも速く飛び立った。音すら追い付かない光速の速度、僅か数十秒で時雨は球体型の結界が張られている旅館にたどり着いた。

 

 

『ミッド式の結界と測定、どうする?』

「砕く、起きろナハトヴァール」

『ナハトヴァール、起動します』

 

 

スノウとのユニゾンインに平行して時雨は右手に嵌められているブレスレット状のデバイスナハトヴァールを起動させる。起動したナハトヴァールは時雨の意思を察知して右の握られている拳に魔力を集中させる。

 

 

「我が道阻む物は要らず」

『対障壁破壊術式城壁崩しの槍(ウォールブレイカー)起動』

 

 

ナハトヴァールのサポートによって発動した障壁破壊術式が時雨の拳と共に結界にぶつかる。これは遥か昔のベルカの争乱において王族を守っていた城壁を破壊するために編み出された城壁崩しの一撃。ミッド式の結界など紙同然に容易く破壊されて中の光景が時雨の視界に見えた。

 

 

逃げ惑いながらも必死に戦う御門の姿を

 

 

背中に傷跡を受けながらも奮闘するヴィータの姿を

 

 

武装した管理局員数人にデバイスを向けられて、怯えながら逃げようとしているはやての姿を

 

 

この光景を目にした瞬間、時雨の中で何かが切れた。

 

 

即座に空を蹴り、怯えるはやての前に降り立つ。そして一番近くにいた管理局員の胸に魔力強化無しで拳をぶつけた。拳から伝わるのは相手の臓器を潰し、骨を砕く感触。だがそれだけ、そんなものは意にも介せず拳を振り抜いてはやてに害を成そうとする敵を吹き飛ばした。

 

 

「武器を持ったままでいい、そこに直れ」

 

 

 

心に抱くのは憤怒の感情のみ、放つのは絶対の殺意。自分の軽率な判断で子供たちを危険に巻き込んだことを怒りながら、

 

 

「ーーーーーーーー全員、鏖殺する」

 

 

子供たちに危険をもたらした敵に向かって殺意を抱いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おとお・・・・・・さん・・・?」

「ん、そうだよ。ごめんな、怖い思いさせちゃって」

「あ・・・ぁ・・・うわ~ん!!」

 

 

時雨の登場に安堵したのかはやては突然に泣き出してしまった。それを安心させるように膝をつき、優しく抱き締めて頭を撫でてやる。そうして数秒か数分か、頬を涙で濡らしながらはやては眠りについた。

 

 

「ごめん・・・父ちゃん・・・・・・あたし・・・守れなかった」

「そんなことは無いさ、流石は鉄槌の名を持つ騎士なだけはある。俺が来るまで皆を守れたじゃないか。誇れ、お前は守ることができたんだよ」

「と・・・父ちゃぁん!!」

 

 

守れなかった、そう自分を下卑していたヴィータを時雨は褒め称えた。実際ヴィータがいなければどうなっていたのかわからないのだ。故に時雨はヴィータを褒め、それが嬉しくてヴィータは泣いた。

 

 

「し・・・ぐれ・・・さん」

「・・・・・・」

 

 

覚束無い足取りで時雨の元を訪れた御門の顔は酷いものだった。眼、鼻、耳からは血が流れ出し顔色は蒼白、加えて冬だと言うのに汗をびっしょりとかいていた。これはデバイス無しに脳の演算機能だけで魔法を使った代償。いくら飛行魔法が出来るようになったとはいえそれは静止時の時の話、戦いながらの魔法使用となると脳にかかる負担は桁違いに大きくなる。でもそれでも御門は戦った。そしてその結果がこれ、早く適切な治療をしなければ命に関わる。

 

 

「ご・・・めん・・・なさい・・・僕・・・ダメ・・・でした」

「そんなことあるかよ」

 

 

力が入らないのか膝から崩れるように倒れそうになった御門を時雨は支えた。

 

 

「あぁ、お前は立派だよ。胸を張ってゆっくり休め。後は引き継いでやる」

「お・・・ねが・・・い・・・・・・」

 

 

そして御門の意識は無くなった。自らのリスクを省みずにここまでボロボロになりながら戦ってくれた御門に時雨は頭を下げたくなった。御門がこうなるまで戦ってくれ無かったらヴィータは二対一の戦いを強いられていた。そうなれば自分が来るまで持っていたかわからない。だからの感謝、だからの敬意。

 

 

「マスター」

「あぁシュテル、ディアーチェ、こいつらを連れて戦域から離脱してくれ」

「ヴィマーナを使え、ある程度ならば貴様らでも扱える」

「あ、あぁ」

「はい」

 

 

遅れてきたギルはヴィマーナから降り立ち、シュテルとディアーチェは時雨の態度に気圧されしながらも従いはやてたちをヴィマーナに乗せて旅館から飛び立った。

 

 

「ーーーーき、貴様ら何を」

「黙れ蛆虫」

「黙れ雑種」

 

 

突然の事態に唖然としていたが正気を取り戻した管理局員が何かを言おうとした瞬間、その管理局員の首は時雨によってネジ切られ、はやてにデバイスを向けていた管理局員全員にギルの宝具が射出されて串刺しにされた。

 

 

「言を語るなよ害虫共」

「口を閉じろ雑種共」

「お前ら、誰を傷つけたのかわかっているのか?」

「貴様ら、誰に武器を向けたのか理解しているのか?」

「お前らは俺の子供たちを傷つけた」

「貴様らは(オレ)の花嫁とその妹と我の臣に剣を向けた」

「それを俺は許さない」

「地面を這おうが我は赦しはしない」

 

 

人類最古の王がその生涯に集めた財を納めた蔵を開き、それを従える魔術師が加えていたタバコのフィルターを噛みきって吐き捨てる。

 

 

「「生きてこの場を去れると思うなよ?」」

 

 

二人は絶対の殺意を、この場にいた全員に向けて放っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くぅ!!全員撤退だ!!」

「逃がすものか!!(こうべ)を垂れよ!!裁定の時だ!!」

 

 

この事態がよろしくないと判断したクロノは撤退を促そうとするがそれを赦す英雄王ではない。蔵から鎖を伸ばして逃げ出そうとしていた管理局員全員を縛り上げた。

 

 

「死ねや」

 

 

そして身動きの取れない管理局員を次々と時雨が惨殺していく。

 

 

あるものは首から上を無くして

あるものは胸にあるはずのない穴を作って

あるものは腹からこぼれ出る内蔵を見せつけられて

あるものは上半身と下半身を素手で切り裂かれて

 

 

纏っているバリアジャケットなど紙屑同然に扱いながら殺戮を続けていき、気がつけば残っているのはクロノとアユムの二人だけになっていた。時雨とギルの足下には素手でスクラップにされた肉や剣槍丈などで串刺しにされて針ネズミのようになっている死体が転がっている。

 

 

「お前たち!!自分が何をしているのかわかっているのか!?」

 

 

クロノは叫んだ。まるで虫を殺すかの如く軽々しく人を殺す様が異常だと感じたからだ。そしてクロノの言葉に二人は

 

 

「害虫が人の言葉を喋るな」

「雑種が人の言葉を語るな」

 

 

聞く耳持たぬと言わんばかりに一蹴して時雨は突進、ギルは蔵から宝具を射出した。このままではクロノは時雨に殺されるか宝具に殺されるかの二択の未来しか無い。そして時雨の手がクロノへ伸び、宝具がクロノを串刺しにしようとしたとき、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ!?」

神威(カムイ)!!」

 

 

時雨とクロノの間に白い道化師が割って入り、宝具が空間の歪みに飲まれて消えた。

 

 

「こいつ本当に人間なの?イノセンスが素手で軋んでるんだけど?」

「やっと追いついたわ!!」

 

 

二人の前に、この世界の転生者が立ちはだかった。

 

 

 

 






時雨ガチギレ+ギル様ぶちギレ=殺戮


この章でクロノを除いた武装管理局員は全滅しました。


次はVS転生者になる予定です。


感想、評価をお待ちしています。



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