「そいじゃ、三人は留守番しててね」
「わかりました」
「うーん未来の世界を歩いてみたい気もするけど危ないのも確かやし、しゃーないなぁ」
「皆あたしが守るから安心しろよ父ちゃん!!」
旅館の前で子供三人に別れを告げてから、探索の準備をしていたメンバーと合流する。戦闘用の服にこそ変えていないが気概は十分に満ちているように見えた。
「よーし、今回は町の探索に二組、沿岸部の探索に一組振り分けるぞ。シグナム、リニスのペアは町の北半分。シャマル、ザフィーラのペアは町の南半分。俺とギルとスノウは沿岸部だ」
「時雨殿、町の探索はわかるのだがどうして沿岸部の探索をする必要があるのだ?」
「感だよ。それに海鳴で調べるといったら町か海しか無いじゃないか。それに今この町ではお前たちの偽物がわんさか沸いているみたいだ、つまりは」
「私たちは囮半分、と言うことですね」
「That 's right、正解だよシグナム。お前たちがこの世界の管理局の目を引いている間に俺たちが捜索をすませる。実に効率的で非人道的な方法だろ? 蔑むかい?」
「まさか、我々にそのような役目を与えるということは時雨殿は我らを信じているということ」
「ならば我々はその信に報いるべく戦果を挙げるのみです」
「えー!?私はこの世界の本屋を巡りたいのグブッ!?」
「空気を読んでくださいシャマル、でないと私のなんちゃって八極拳が炸裂しますよ?」
「嫌々、炸裂しちゃってるからね?中々に見事な寸剄だったからね?」
シグナムとザフィーラが折角かっこよく決めているところにKYシャマルの空気を読まない発言、そして放たれるリニスの寸剄・・・なんてコント。ん?シャマルが吐血した血で何か書いてるな・・・・・・時雨×恭也・・・・・・俺は何も見ていない。
「それじゃ散開してやれることやってくれ」
「「「応!!」」」
シグナムとリニスは空を飛んで姿を消し、ザフィーラは動かないシャマルを引きずって走っていった。
「さてシュテル、俺の尻を触ろうとしている手を引っ込めろ」
「良いではないですか」
「良かないわ」
俺の尻に伸びていた手を叩き落としてシュテルを見る。格好は黒いバリアジャケットに変わっていて、手には杖のような物が握られていた。
「シュテルは構築されたと言っていたな」
「はい、私は闇の書のプログラムによって構築されました」
「ならお前が構築された場所に案内してくれ」
「それはどうして?」
「火の無いところには煙はたたない、無作為に構築されたのでなければそこには何か要因があったはずだ。ならそこを調べるのは当然だろ?」
「なるほどわかりました。それでは案内しましょう」
「それならば足には
「なら私はそれに隠蔽をかけましょう」
「しからば上々、さっさと調べてはやてたちを安心させようか」
方針を決めた俺たちはギルが取り出したヴィマータに乗り込み旅館から飛び立った。
「ここです。この辺りで私は構築されました」
シュテルに案内された先は海の沖合い、離れて見える岸から大体4、500mといったところに俺たちは来ていた。
「なんだ、何もないではないか」
「一見すればそうだな」
「となると・・・・・・あとは海の中しかないか」
ヴィマータから飛び降りて海面に着地する。
海面に方膝と手をつき、海中に探索を目的とした魔術を使う。
・・・10m地点、反応なし
・・・・・・50m地点、反応なし
・・・・・・・・・100m地点、反応なし
・・・・・・・・・・・・・・・・・・300m地点、反応あり
「見つけた」
海深300mの地点に探索魔術に引っ掛かる物を見つけた。それは膨大な魔力の塊、感覚としてはシグナムたち・・・いや、スノウに近い物を感じる。どうやらシュテルの言っていた闇の書のプログラム云々の話は正しかった様だ。これが俺たちをこの世界に呼んだのだとすればさっさと叩き起こして帰せと文句を言いたいところだがそうでなかった時の可能性を考えれば安易な行動はそう取れない。ここはしばらく様子見、慎重に調べるのが吉だな。
「どうだ?何か見つけたか」
「あぁ、何かあった。だからといってシグナムたちに言った手前、行動には移さないけどな」
「ふん、王とは傲慢であるべきだ。臣のことなど気にかけずに動くのが王という物だぞ?」
「ありがたい帝王学どうも。だけど俺は一国の王には興味は無くてだな、一家の王であればそれで良い。そしてその
「ふむ、国に気をかけるものまた王の在り方よな」
「呆れたかい?」
「いいや、学ばさせてもらった」
海面すれすれまで降りてくれたヴィマータに乗り込みギルと言葉を交わす。ギルガメッシュの言葉にも理解できる節はある、王とは傲慢であるからこそ王であるのだ。暴君であるからこその王、けどそれは俺の道にはそぐわない。しかし俺の考えにギルは満足げに頷いていた。やっぱりこいつはギルガメッシュだよ。慢心にして傲慢、我が道を堂々と歩く絶対の王。だからこその王なのかもしれない。
「ところでこれからどうするのだ?目的は果たしてしまったぞ?」
「そうだな、管理局にちょっかい出すのも面白そうだな」
「つまりは・・・・・・この世界のシグナムを殺れと?」
「おっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「・・・・・・何故ギルガメッシュは雄叫びをあげているのですか?」
「この世界のシグナムが時雨を斬った」
「・・・・・・今宵は私のルシフェリオンが血に飢えています」
「だぁまらっしゃいマジキチ共が」
「「「あふん!?」」」
思考がバイオレンスな方向に全力でフルスロットルしてるバカ共の頭をかち割る勢いでぶん殴る。間の抜けた声を出しながら頭を押さえた。
「こっちの世界のシグナムが管理局に手を貸しているのならスノウも手を貸している可能性がある。だからスノウのデータを取る。できるな管理局に保管されているであろう闇の書に関する記録も欲しい」
「時雨・・・・・・」
「ーーーーーはっ、異界に飛ばされてなお救いの手を探し求めるか」
「悪いか?」
「芥共が
「恐悦至極で御座います、とでも言えば良いのか?」
「ふん」
鼻で笑うように切り上げられたがギルの表情は実に楽しそうな物だった。あぁそうだ、これは俺の道なのだ。俺が二十余年生きてきた中で俺が定めた俺の道なのだ。たかがそれを知らない奴に横やり入れられた程度で揺るぐような中途半端な覚悟で決めた訳じゃないさ。
「・・・・・・む?ギル、少しこの場所から離れるぞ」
「何かあったか?」
「魔力の集まりが不自然だ。何か起こるかもしれない」
俺の目に映る魔力の流れがこの場に、もっと言うなら海中にあった何かに集まってきている。不自然な魔力の集まりに警戒するに越したことはない。俺の指示にギルは反論を言うことなく従ってくれ、シュテルも付き添うように俺たちの後を追った。
「これは・・・・・・」
「ほぅ・・・・・・」
「視認できる程に魔力が集まっているな」
「恐らく私たちのようなマテリアルが構築される前兆なのでしょう」
スノウやギルが視認できる程に魔力が集まり、それは球体を作り卵のようになった。そしてそれが割れたとき、漆黒の衣装を身に纏ったはやて似の少女がいた。
「我ふっかーつ!!」
「痛い娘だ」
「痛い娘だな」
「痛い痛い」
「あ、彼女は私たちマテリアルの統括役です」
スノウはともかくギルが痛いとは言えた義理ではないと思う。だって一人称が我と書いてオレだし。そして一人称が我の痛いはやて似の少女は俺たちに気づかない様子で高笑いを上げていた。本当に痛い娘です。
「ぬ?貴様らは何者だ?我が
「ーーーーーーーー何?」
あ、はやて似の少女、ディアーチェの発言がギルの琴線に触れた。ディアーチェがギルのことを知らないとしてもその発言は不用意だろう。
「貴様、我が誰だか知っていての発言か?」
「ふん、一々存在する有象無象の塵芥のことなど気にして王が勤まるか!!」
そう言ってディアーチェは腕を振るワンアクションで自身の前に十の魔法陣を展開した。俺の目に映るそれらは大魔術並の威力があると推定できる。なるほど、それだけの魔法をワンアクションで発動できるなら王と意気がるのも理解できなくもない。
ーーーーーーーーしかし、それは人類最古の王の前では意味はない。
「その程度か」
「何!?」
「ならば見せてやろうではないか。我が集めた財の、その一端を!!!」
パチリと、指を鳴らすだけのワンアクション。それだけでギルの蔵が開かれ、その中に仕舞われている宝具の原典たちが顔を覗かせる。俺が数えた限りでは百、それ以降は数えるのが億劫になって止めた。太陽の日を掻き消して黄金の光が辺りを照らし、空一面をギルの宝物庫が埋め尽くした。
「な・・・・・・・・・なんじゃそりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」
宝具に込められている魔力を理解したのか、ディアーチェは芸人のようなリアクションを取り魔法陣を崩壊させた。おいおい、ギルの宝物庫に絶望するのはいいが魔法陣を消すのは悪手だろうが。
「理解したか雑種?貴様が如何に矮小な存在であるか」
「グヌヌヌヌ!!」
「ハイハイそこまで、いつまでも遊んでたら話が続かない」
話が拗れない内に収集に走るためにわざとらしく手を打って二人の気をそらす。するとギルは興が逸れたのか蔵を閉じ、それを見たディアーチェは安堵のため息をついていた。
「王よ、お久し振りです」
「おぉシュテルよ!!貴様我よりも先に構築されておったのか」
「はい、今はこちらの方々と行動しております」
「何?・・・・・・まぁ貴様がそれをよしとしたのであれば我はなにも言わぬ」
「それもありますがそれよりも大きな理由があります。あちらの軍服の男性、八神時雨と申しますが・・・・・・彼は私の夫です」
「はいどーん!!」
真面目な面でふざけたことを言った阿呆を宝石に込めていた魔力をぶつけて黙らせる。数少ない宝石をこんなところで消費したのは痛いが下級の物なので良しとしよう。というよりもそうでも理由をつけなければ俺がやってられない。
「妄想思考なメルヘン乙女は放っておいて自己紹介だ。俺は八神時雨、この世界から見て過去の平行世界からやって来た魔術師だ」
「私はリインフォース・スノウ、平行世界の闇の書の管理人格だ」
「我はギルガメッシュ、人類最古の王である。故に貴様なぞただの有象無象に過ぎぬ」
「む、先に名乗られたなら名乗らぬ訳にはいかぬな。我はロード・ディアーチェ、マテリアルを総統ふる闇統べる王だ」
簡単にこちらの立場を説明しながら自己紹介をするとディアーチェもやや警戒しながら返してきた・・・・・・俺たち、というよりもギルを警戒しているみたいだな。まぁあんなことをされた後なら仕方ないか。
「さてディアーチェ、提案だ。俺たちに協力しろ。そうすれば俺たちはお前たちに協力してやる」
「何?・・・・・・何が目的だ?」
「俺たちは元の世界に帰りたい、でもそのための手段がない。だから協力者が欲しい」
「ならば管理局に頭を下げれば良いだけではないのか?」
「残念ながらこの世界の管理局は俺たちから敵認定されてしまっていてな、協力するのは難しいんだ。故に、管理局に敵対しそうなお前たちと手を組む。それだけの話だよ」
「敵の敵は味方と言うことか?」
「その通りでございます。まぁ平たく言えばお前たちを利用するからお前たちも俺たちを利用しろってだけの話なんだけどね」
俺たちには協力者が居ない、その事は今回の出来事においてかなり厳しいディスアドバンテージになってしまう。元の世界ならコトミネや俺の人脈を使うこともできるがそれがなくなってしまっているのだ。それはつまり管理局という組織に対して個人で挑むことに等しい。ならどうするか?簡単な話だ、似たような立ち位置の奴等で徒党を組んでしまえば良い。そうすれば容易く負けてしまうようなことは無くなる。しかもシュテルの実力は少なく見積もっても高町相当あるはず、なら同等であろうディアーチェを抱き込まない手はない。
「・・・・・・良いだろう、頭を垂れるものを許容するのも王の器だ!!貴様らを我の臣として受け入れてやろうではないか」
「そんなことを言ってたらギルが激オコモードになるぞ」
「アッハイ」
さっきのギルの対応を思い出してかディアーチェが急に畏縮した態度になる。あれ見たらトラウマになっても可笑しくないよね、うん。
「そうか、ならーーーーーーーー」
ここから先の行動について話し合おうとしたところでヴィマータから飛び降りてこちらに向けて放たれた巨大な矢の軌道を剃らすと同時につかむ。それなりの速度で放たれた矢をつかんだ影響で離れた位置まで飛ばされるが矢をつかむことはできた。
「予定変更、アイツを潰す」
俺たちに矢を放ったということはあれは俺たちに敵対する意思があるということ、なら敵だ。
故に倒す
故に凪ぎ払う
故に滅ぼす
俺を回収するべく向かってきているヴィマータを視界の端に捉えながら目の前の敵の殲滅を誓った。
はい、ディアーチェ爆誕でした。
ディアーチェとギルガメッシュの邂逅でしたがうちのギルガメッシュは丸くなっているのでこの程度ですんでいます。本当のギルガメッシュなら某キャス子さんみたく会った瞬間に串刺しにされてしまいそうです。
そして海上で時雨たちを攻撃した荒武者・・・・・・イッタイ何スケナンダー
わからない方にはヒントです・・・・・・NARUTO
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