地球の宇宙空間内に停泊している一隻の船があった。その現在の科学技術を嘲笑うかのような技術を用いて作られた船は当然のことながら地球で作られた船ではない。船の名は船艦アースラ、この世界とは違う魔法の力が当たり前に存在する世界で作られた船である。その船の中にある会議室では高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、八神はやて、ユーノ・スクライア、アルフ、シグナム、ザフィーラ、シャマル、ヴィータ、リインフォース、クロノ・ハラオウン、リンディ・ハラオウン、そして本来のこの世界において存在しないはずの女性と青年がいた。
「現在海鳴市においての闇の書の欠片の行動は一旦落ち着いているが・・・・・・シグナム、報告があると言っていたな?」
「あぁ・・・・・・ハラオウンの師匠にあたるリニスとリインフォースの闇の欠片と対面したのだが・・・・・・その時に奇妙な男がいて邪魔をされた」
「奇妙な男?」
「軍服、と呼ばれる衣装に身を包んでいた。始めは受け答えが出来たので話し合いができると思ったのだが・・・突然武器を取り出して来たので応戦したのだ」
「それだといつもの闇の書の欠片とかわりないんじゃないのかい?」
「いいや、男にはハッキリとした自我があった、普通の闇の書の欠片ならこうはいかないだろう」
シグナムがレヴァンティンに保管していた映像を空中に浮かんでいたモニターに流す。するとそこには白と黒の双剣でシグナムと打ち合っている軍服の男の姿があった。男の姿ーーーーーー正確には男が持っている白と黒の双剣をみて女性と青年が吹き出した。他のメンバーから不審そうな目を向けられるがそれを一言詫びて二人は念話を繋げる。
『あれってアーチャーの夫婦剣だよな!?多少違っているようには見えるけど!!』
『違いないよ!!どうして投影が出来る奴がここにいるの!?まさか他の転生者!?』
女性と青年はこの世界に生を受けた転生者だった。だからこそこの男に動揺する、どうしてこのタイミングで介入をしてきたのだと。
「それで、この男には逃げられたんだな?」
「あぁ、外部から結界を破壊されてその隙に逃げられた。シャマルに探査を頼んだが逃げた足跡さえつかめなかった。これがその人物の映像だ」
軍服の男が写っている映像が切り替わり、そこには黄金に光輝く飛行物体に乗ったライダースーツ姿の金髪の男の姿と黄金に光輝く毛布にくるまっているはやての姿があった。それを見てさらに女性と青年は吹き出す。
『ギルガメッシュキター!!!!』
『しかも乗ってるのはヴィマータ!?まさか踏み台転生者ってやつ!?』
この映像を見た二人は周りからの視線が気にならないくらいに動揺する。そんな二人を気にしながらもシグナムは言葉を続けた。
「この乱入者は結界を破壊すると早々に立ち去っていったが軍服の男には一太刀入れることができた。手応えからして負傷しているはずだ」
「・・・・・・まずはこの軍服の男の捕獲を最優先にする。闇の書の欠片と行動しているのなら何か知っているはずだ」
軍服の男がこの事件の鍵になると決めたクロノはこれからの行動をどうするのかを集まっている魔導師たちと話し合った。
「あー酷い目にあった。ってか紫電一閃肩口に叩き込むとかバカじゃねぇの?完全に殺すつもりだっただろ?」
「大丈夫ですか?」
「服に強化魔術使ったから重めの打撲っていったところだな。回復してもらったからしばらくすれば治る」
「シグナム殺すシグナム殺すシグナム殺すシグナム殺すシグナム殺すシグナム殺すシグナム殺すシグナム殺すシグナム殺すシグナム殺すシグナム殺すシグナム殺すシグナム殺すシグナム殺すシグナム殺すシグナム殺すシグナム殺すシグナム殺すシグナム殺すシグナム殺すシグナム殺すシグナム殺すシグナム殺すシグナム殺す・・・・・・」
「スノウさんダークサイドに堕ちないで、まぁやられっぱなしってのはシャクだし今度は殺り返すけど」
ダークサイドに堕ちつつあるスノウを宥めながら人の目がない路地裏を走る。あのシグナム(仮)の戦闘能力は予想していた通りにうちのシグナムと同レベル、実力を隠しているようには見えないしあれがシグナム(仮)の実力とみて間違いないだろう。まぁこの程度の負傷でここまで情報とれたならこっちの勝ちだろう。
「それにしてもギルはいいタイミングでやって来ましたね」
「俺が攻撃食らった時だっけ?狙ってたんじゃないかって思うほどのタイミングだったよな?」
「少しでも早く来てくれたなら時雨は負傷せずにすんだのだが・・・」
スノウは俺のことを心配してくれるのは嬉しい、でも壊れ物のように扱われると・・・・・・その、なんだ、むずかゆい。
「ウジウジ過去にあったことを言ってもしょうがないさ、それよりも尾行は?」
「ありません、結界の破壊に咄嗟に散開して逃げたことと時雨の施した隠蔽の魔術で無事に撒けたようです」
「よしよし結果は上々、そろそろファミレスだな。背筋張って胸を張れ、うつ伏せていると怪しく見えるぞ」
路地裏を抜けた先には目的のファミレスがあった。もらっている連絡が正しければ俺たちを除いた全員が集まっているらしい。姿勢を直してファミレスに入る。そして目的のテーブルを見つけ近づく、すると俺の姿を認識した全員(はやてを除く)が立ち上がり、一糸乱れぬ敬礼を見せてくれた。
「なんでだよ」
「いえ、軍服でしたので少佐を思い出してしまって・・・」
「清々しいほどにナチスだな」
「時雨さんが少佐・・・なら私はウォルター?」
「ならば
「ん~ならウチはシュレティンガーとか?」
「ならあたしはリップバーン!!」
「どうして皆そんなにヘルシング詳しいの?・・・・・・なら僕はバレンタイン兄弟のどっちかで」
「ハイハイ、ヘルシング雑談はそこまでだ。ひとまず報告しあうぞ」
空いていたテーブルの上座に座り全員から話を聞く。シャマルたちは寒さを凌ぐために真っ先にここに来た、シグナムたちは俺からの念話の後シャマルから連絡を受けてここに来た、はやてはギルのヴィマータに乗せられて町並みを見下ろしながらここに来た・・・・・・現時点で一番情報持ってるのは俺たちみたいだな。
「まぁざっくり簡潔に話すとここは未来の海鳴です」
「未来の?」
「そう、これが証拠ね」
そう言ってテーブルの上に服屋で買い物をしたさいにもらったレシートを出す。そこに書いてある日時は俺たちが居た場所よりも半年以上進んだものだった。
「それとこの世界ではどうやら俺は居ないみたいだ、その上シグナムたちの偽者まで出てきている」
「ちょっと待ってください・・・私たちの偽者もそうですが、時雨が居ない?」
「あぁ、この世界のシグナムに会ったときにどこからどう見ても他人行儀な話し方をされた。知り合っているならあの話し方は無いだろうしな」
「あと、そのシグナムに時雨は負傷させられた」
スノウが俺の負傷したことを告げるとリニスとはやてと御門君を除いた全員から威圧感と強い怒りを感じた。これはこれは・・・・・・
「この世界の私が・・・・・・時雨を負傷させた?」
「肩口に剣を叩き込まれてな・・・・・・骨には異常はないが打撲だそうだ」
「ーーーケ、ケケケ、ケケケケケ!!」
「鏖殺粉殺塵殺・・・・・・」
「ぜってーぶっ潰す!!」
「飼い犬の分際で我のマスターに手を出すとはな・・・・・・」
シグナムは目から光を失わさせて、シャマルは狂ったような笑いを浮かべて、ザフィーラは殺害方法をブツブツと呟いて、ヴィータは怒りで握りしめた手をワナワナと震えさえて、ギルは腕を組んで椅子にもたれ掛かった姿勢は変えていないがその赤眼を怒りで燃やして、誰もがこの世界のシグナムに対して怒りを向けていた。
「全員ぶちギレ一秒前ですね・・・」
「この世界のシグナムオワコン\(^o^)/」
「口では色々ゆうてるけど結局皆お父さんのことが好きなんやよ。ね、お父さん・・・・・・お父さん、泣いてるん?」
「え?」
はやてに言われて目元を拭うと確かに目からは液体が出ていた。
「あぁもう・・・・・・この涙脆さはどうにかならないものかね・・・・・・多分嬉し泣きだよ、自分が心配されてるってわかると嬉しくなってつい、な」
「もう、お父さんは泣き虫やなぁ」
はやてから渡されたナプキンをもらい目元を拭う。もう少し感傷に浸っていたいがそうは言ってられないだろう。
「私がレヴァンティンで斬り」
「クラールヴィントでコア抜き」
「私が拳で殴って」
「私が広域殲滅魔法を撃ち込み」
「アイゼンでぶっ潰す!!」
「そして最後にエアで葬る」
「「「「「「これで完璧だな!!」」」」」」
このマジキチ共をどうにかしなければ・・・・・・!!
そこからどうにかして怒りに燃えて忠臣蔵よろしく特攻をかけそうになっていたキチたちを「最優先は帰る方法を見つけること、ただし途中でこの世界のシグナムに会ったのなら任せる」といって何とか静めることに成功した。これで時間が経てば少しは冷静になってくれる・・・・・・よな?
「うっし、今後の方針を決めたところで宿探しに行くぞ」
「安宿はゴメンだぞ」
「なら金を出せ、今は少しでも出費を押さえておきたいんだ」
「ふん、黄金ならくれてやろう」
いつまでここにいることになるのかわからないので出費を押さえたいことを言うとギルは宝物庫から金塊を取り出した・・・・・・よし、当面の資金源ゲット。
「はい、はい・・・・・・ではよろしくお願いします。時雨、海鳴温泉に予約を入れました。これで宿は大丈夫です」
「流石リニスさん!!仕事が速い!!」
「うちらにできんことを平然とやってのける!!」
「そこに痺れる!!あっこがれるぅ!!」
リニスが宿をとったことを告げると御門君、はやて、シャマルがどこぞの奇妙な冒険のチンピラみたいに歓声をあげた、ノリノリだな、お前ら。
「なら今日は温泉に行って休養とって、明日から行動することにするか」
「す、すいません!!」
会計を済ませてファミレスを出ると誰かとぶつかった。視界に入っていないので身長差から相手が子供であることがわかる。下に目を向けると冬なのに夏物の制服を着た少女三人が目に入った・・・・・・なんでこんなところにプリズマイリヤの主要キャラがいるんですか?
時間は少し遡りイリヤ、美遊、クロの三人の視点に変わる。彼女たちの格好は冬場にそぐわない物だがそれでも彼女たちは魔術師の端くれ、それぞれが簡易の障壁を張ることで寒さを凌いで町の中を歩いていた。ただし探索の結果はよろしいものとは言えず、せいぜいこの町の名前が海鳴だということがわかった程度だった。
「う~ん何も見つからないね」
「本当よ、私たちをここに送り込んできた奴から何かしらの接触があるわけでもないし。どうして私たちを連れてきたのかしら?」
「・・・・・・」
イリヤとクロが相談する中で美遊だけは黙っている、しかしそれは話すことがないからではなく何かに警戒していてしゃべることが出来ないから。
『そろそろ休憩をとった方がいいかもしれませんね~、ほらあそこにファミレスがありますよ』
「そうだね、歩き疲れたし。美遊もそれでいい?」
「・・・・・・え?うん、それでいい」
『美遊様、しっかりしてください』
生返事で返した美遊をサファイアが叱咤するも美遊の態度は改変されない。それを見知らぬ土地に来て疲れたからだろうと判断したイリヤは足を早めてファミレスに向かう。そしてはファミレスの扉を開けようとしたとき、中から出てきた男性とぶつかってしまった。
「す、すいません!!」
イリヤは慌てて頭を下げる。そんなイリヤを見てクロは飽きれ顔になり、美遊はイリヤはどこにいても変わらないと安心したような表情になった。しかしルビーとサファイアは軍服の男性、時雨のことをーーーーーー正確には時雨が持っている物を関知して驚愕した。
『『(この人、クラスカードを!?)』』
今ここで奇っ怪な魔術礼装を持つ少女たちの物語と英霊の力を従える男の物語が交わった。
こうなったのは必然なのか、それとも神の悪戯か。
というわけで時雨、プリヤメンバーと邂逅です。英霊の力を使えるカードを持っているので当然のごとく目をつけられます。
そしてこの世界のシグナムさんが八神ファミリーに目をつけられてしまいました、シグナムさん逃げてー。
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