原作の時の庭園のくだりです。原作なんて無かったんや・・・・・・!!
ボロボロと崩れ行く時の庭園内にはトワイス・ピースマンに変身した時雨が召喚した機械兵たちが跋扈していた。彼らの使命は時の庭園に侵入する侵入者たちを攻撃すること。魔力弾を放ちながら侵入者たちを攻めるが魔力弾は一切当たることなく、逆に侵入者からの攻撃を受けて倒されていく。
時空管理局執務官クロノ・ハラオウン、シリア・ハラオウン、地球出身の魔導師高町なのは、藤峰アリス、相井神悟、プレシア・テスタロッサの娘フェイト・テスタロッサ、その使い魔のアルフ、そしてジュエルシードを発掘したユーノ・スクライア。以上の八名が機械兵を倒しながら時の庭園を走り抜けている。
「もうそろそろ最下層だ、最終確認をするぞ。僕らの任務はトワイス・ピースマンを名乗る人物を捕縛することだ」
「時の庭園の動力源には武装管理局員を向かわせているので問題ありません」
「フェイトちゃん、あの人のこと知ってる?」
「ううん、全然知らない。ジュエルシードを集めるように言われたのは母さんだけからだし私はあの人に一度もあったことない」
「(本当ならプレシアがアルハザードに行くためにジュエルシードを集めていたはずなのにそれを横からあいつが出てきた・・・完全に原作から離れている。もう闇の書の騎士たちがいることと何か関係しているのか?)」
「あんにゃろうぶん殴ってやる!!」
「アルフさん落ち着いてください!!」
「彼はジュエルシードをどうするつもりなんだ?」
会話の途中にも機械兵たちは呆気なく倒されていく。さながら特撮物に登場する悪の組織の下っぱのように。
「ここがあの画面に出てた部屋!!」
「行くぞ!!」
フェイトの案内のもと、ピースマンがいると思われる部屋にたどり着く。そしてクロノは先陣を切って部屋の扉を蹴破った。
「よく来たね」
緊張感なく放たれた優しい声色の言葉と同時に魔導師たちの視界が白い光に包まれる。
あまりの光量に目を塞ぎ、光が無くなり目を開くとそこは広い空間となっていた。空は雲などではなく白一色、地面は薄く水が張っており辺りには長方形の石材が無造作にバラまかれている。そしてその空間を占めるのは無音。風もなく生物すらいないこの空間で耳にできる音は自分と回りにいる人間の呼吸音だけだった。その光景に思わず自分達が異物ではないのかと判断してしまいそうになったとき、空間の中心に石材で積み上げられた小さな山があることに気がついた。そしてその山に腰を掛けて何もない白い空を眺めている人物も見つける。彼がトワイス・ピースマン、今回のジュエルシード騒動の中心を自称する人物。
「やぁ、はじめまして」
まるで気軽に友人に声をかけるかのようにピースマンは魔導師たちに向かって声を発する。声をかけられたことに反応して硬直するもクロノだけは警戒したままピースマンに一歩近づいた。
「貴方がトワイス・ピースマンだな」
「そうだよ。君たちは時空管理局の人間だね、まだ子供じゃないか・・・いや、魔導の道には歳など関係無いね、失言を許してくれ」
一見すれば紳士的で子供相手にも誠意を見せるような立ち振舞い方をしているがクロノからすれば不気味過ぎることこの上ない。
「そうだ、失言に対する謝罪とここまで機械兵を乗り越えてやって来た君たちにご褒美を上げよう。何でも好きなことを聞くといい」
「・・・なら一つ、お前の目的はなんだ」
相変わらず態度を変えようとしないピースマンに神悟が口を開く。勝手なことを言うなと言いたいところだったが神悟にしては珍しくここにいる全員の意中の 質問であったので誰も反論を口にしない。
「私の目的か、私はね人の進化を見てみたいのだよ」
「人の・・・進化?」
「そう、人の進化だ。生物と言うのは変化する環境に対して自身を変化させるとこでその環境に対応して生きてきた。しかし人類は違う、自身ではなく周りを自らに会わせることで生き延び、今日に至るまで生きていた。牙や爪を尖らせるのではなく武器を持つことで外敵に対応し、鱗や毛皮を纏うのではなく鎧を着ることで身を守った。その結果穴ではなくコンクリートで住まいを作り、遠く離れた敵をボタン一つで殺せるような兵器を作り上げるほどに進化をした、過去の人類からすれば今の人類は遠く離れた存在のように思えるのだろう。これもまた進化の一つだ。故に、私は更なる人類の進化を見てみたい。ここまで進化をした人類が更なる高みに行くところを見てみたいんだ」
「そのためにジュエルシードを使うと?無茶だ。ジュエルシードは願いを歪んだ形でしか叶えない、そんな願いを叶えようとしたところで叶えてくれるはずがない!!」
「その通りだね、確かにジュエルシードの作用では私の目的は叶えられそうにない。だからジュエルシードを使わずにこれが持っている魔力を使わせてもらうんだ」
「ジュエルシードの・・・魔力?」
「そうだよ、ジュエルシード一つで次元震を起こせるほどの魔力があるんだ、それがここに十九個もある。さて、今度はこちらからの質問だ。人類がもっとも躍進をする瞬間は何時だと思う?」
ピースマンから投げ掛けられた問い。その場にいる魔導師たちは頭の中でマルチタスクを稼働させるが一考に答えはでない。それを見たピースマンはまるでできの悪い教え子に根気強く教える教師のようにそれでいいと言いたげな表情で微笑んだ。
「答えは戦争だよ。人類は争い事の中で進化を続けてきた。遠くの敵を殺すために石を投げ、弓を放ち、銃を撃った。死にかけている人を生かすために医療技術は進歩した。遠く離れた場所にいる味方と話すために有線の会話技術から無線の会話技術にへと変化した」
「・・・まさか!?」
「君はなかなかに聡明だね。君の思っている通りだ、私はジュエルシードの魔力を使い地球にいる人間に向けて一つの暗示をかける。効果は単純だ、隣人を憎む、その暗示一つでケンカ程度の争いから殺し合いへ、そしてその内に彼らは集団を作り大きな戦争へと発展する。地球にいる人類の大半は死滅するだろうが残りの人類は戦争による進化の恩恵を得ることができる。私は、その光景を見てみたいんだ」
イカれている、クロノが平然と優しげに微笑んでいるピースマンに抱いた感情はそれだった。自分の好奇心のために地球にいる人間の大半を殺そうとしているのにピースマンはただただ優しげに微笑んでいるだけなのだ。クロノがそう思ったのは当たり前のことだろう。絶句している中で口を開いたのは高町だった。
「そんなのおかしいよ!!そんな理由で人を殺そうだなんて!!」
「そうだよ!!それに争っても必ず人が進化するっていう保証はどこにもない!!」
高町の反論に合わせて神悟が口を開く。確かにそうだ、争い事が人を育てるだなんて保証はどこにもない。しかしピースマンは神悟の言葉に否を唱えた。
「いいや、人は必ず進化するさ。その証拠は君たちだ」
「わたし・・・たち?」
ピースマンが指を指した先にいるのは高町、アリス、神悟の三人。
「あぁそうだよ。君たちは地球出身で魔導とは何の繋がりもないただの一般人だった。しかし・・・」
ピースマンは虚空に向かって手を振る。すると空中にいくつもモニターが現れた。そのモニターに写っているのはどれも高町、アリス、神悟がジュエルシードの思念体や不忍の仮面を着けた男性、そしてフェイトと戦っている場面だった。
「戦闘経験のない一般人でありながら君らは戦ってきた。普通であるなら戦闘経験のない新兵は死ぬことが多い、しかし君たちは死ぬことなく困難を乗り越えて大きく成長してきた。これもまた進化の一つ、だから私は確信した、人類は如何なる状況であろうと進化すると」
「詭弁だな、俺たちがそうだからと言って他の誰もがそうであるとは限らないだろう」
「それでもだよ。例え99%が進化せずとも1%が進化してくれるならば私の目的は果たされる」
アリスの否定を肯定しながらも受け止めるとピースマンは立ち上がった。それを見て魔導師たちは身構える。
「どうやら君たちと私の考えは平行線のようだね。ならばここで君たちを倒し、私は私の目的を果たさせてもらうことにしよう」
白一色だった空が段々と黒くなり、最終的には星が輝く夜天の空に替わる。光源が無いはずなのに光量は一切変わらず視界は明るいままである。
「プログラムを起動した。今から二十分後に暗示は地球に向けて放たれ地上は戦禍に包まれる。止めたければ私を倒すことだよ」
ピースマンは白衣の中から試験管を取り出す。それはアースラの中で一度見た水銀。複数の試験管の蓋を開けて中身を床に垂れ流す。
垂れ流された水銀は床で合わさり一つになり、膨張して球体に変化する。大きさはピースマンの身長を越える3m程。水銀に宿る魔力はピースマンこと時雨の魔力を遥かに越えている。何故か?答えは一つ、ジュエルシードの魔力を水銀にへと移したからだ。
「この追い詰められた状況下でこそ人間の真価は如実になる。さぁ、私に見せてくれ。人類の進化を、君たちの真価を」
水銀が僅かに縮み、その圧力を利用して杭が放たれる。数は八本、棒のような太さを持った水銀は真っ直ぐに魔導師たちに向かう。
「散開!!」
クロノの指示により弾けるようにして魔導師たちはその場から逃げる。しかしシリアは逃げ遅れた。この程度障壁で受け止めれると判断し、結果水銀の一撃は障壁を破壊、腹に一撃を受けたシリアは自動車事故にあった被害者のように吹き飛ばされた。
「シリアさん!!」
「余所見は良くないよ」
その光景に足を止めた神悟、そしてその隙に今度は斧のように変形させた水銀の一撃をもろに受ける。咄嗟にそれに気がつき障壁を張るも、障壁ごと地面に叩き落とされる。
「風魔一閃!!」
速攻で落とされた二人のことなど関せずとアリスは剣を振るい斬撃を飛ばす。風魔一閃は単純に魔力を斬撃に見立てて飛ばすというもの。技の出が早く、範囲も長いので使い勝手のよい技であるがそれはピースマンには届かない。ピースマンの10m手前に入った瞬間に水銀から膜が伸びてピースマンを包み込んだのだ。風魔一閃は水銀の膜を凹ませるが形の無い水銀にいくらダメージを与えても無駄である。
「ちっ、堅いな(あれってケイネスの月霊髄液だよな!?ってことはあいつは転生者か!?)」
「
「ディバインバスター!!!」
水銀の範囲外の地点からの高町による砲撃。確かにそれならば速度はあっても厚みのない水銀の膜を破れるかもしれない。
「流石にそれは厳しい」
実際にピースマンもそれを否定しなかった。だから別の手段に出る。
「
高町とピースマンの間に水銀が走り、厚みのある壁を作る。しかも三枚。そして砲撃が一枚目の壁に当たり砕ける、二枚目の壁に当たり砕ける、三枚目の壁に当たりヒビだらけの崩壊寸前になって止められた。
「嘘!?」
「止まると危ないよ?
砕けた城壁の破片が薄い刃になって高町へと伸びる。範囲外と思っていたが砕けた分で距離がかさましされていたのだ。このままなら高町は刃に切り裂かれることになる。このままなら、
「なのは、大丈夫?」
「ありがとうフェイトちゃん」
刃が高町に届く寸前で黒い影が割って入り、刃は無いもない空間を切り裂いた。黒い影の正体はフェイト、持ち前の高速機動で高町を助け出したのだ。
「ふむ、水銀の展開速度よりも速いとは・・・これは?」
フェイトを観察していたピースマンの手足が水色と緑色のバインドに拘束される。このバインドの術者はクロノとユーノ、そしてピースマンに迫る影が一つ。
「オォォォォォォ!!!」
ピースマンの背後に迫り拳を振るうのはアルフ。タンクファイターである彼女はクロノとユーノの協力の元、水銀の攻撃を掻い潜りながらピースマンに接近していた。受けきれなかった攻撃で体に無数の傷を作りながらも拳が届く距離までピースマンに近づいていたのだ。そして雄叫びと共にピースマンに拳を振るうーーーーー
「いや、惜しい。実に惜しかったね」
ことは出来なかった。拳が届く寸前で水銀から伸びた弁によってアルフは拘束されたのだ。
「私を拘束したところで私から水銀に伝えられる指示を止められなければ水銀は止まらない。ここまで接近したことは素直に凄いと思うけどね」
「クソッ!!」
苛立たしげに声をあらげながらもアルフは水銀によって完全に拘束されてピースマンの側に下ろされる。そしてその時、アルフはピースマンから僅かに香るタバコの匂いを嗅いだ。普通の人間ならただの匂いとしか気がつかないだろうがアルフは狼が素体となった使い魔、そのタバコの匂いが自分達の協力者だった男の愛煙していたタバコの匂いと一致してピースマンの正体に気づいた。
『あんた・・・もしかして時雨かい?』
『大正解でございまーす。後でキャットフードおごっちゃるよ』
『いらないよ。で、どうしてわざわざ管理局の敵になるようなことをしてるんだい?』
水銀の拘束から逃げ出そうと暴れる芝居を入れながら時雨と念話で会話をする。
『プレシアの罪を軽くするため。あのままならどう頑張ったところでプレシアの実刑判決は覆せそうにもない、だから娘を助けようとして真の黒幕によって動かされている被害者になってもらった。こうすれば裁判官から同情を買って情状酌量の余地ありと判断されるかもしれない。まぁ確率は低いけど分の悪い賭けは嫌いじゃないからね。あとプレシアは地球にいる俺の知人に治療してもらってるから死んではないはずだ』
『そう・・・でもよかったのかい?下手をして捕まっちまえば時雨は時空犯罪者扱いで最悪終身刑、もう地球には帰れないんだよ』
『俺は俺のために動いてるだけだ。プレシアがこのままバッドエンドを迎えてしまうのを見ているだけなのは目覚めが悪い、だから手を貸しているだけの話さ。友人のためならなんとやらってね。まぁ逃げる手段はあるから心配しなくても大丈夫だよ』
『・・・いつのまにあんたとプレシアは友人になっているんだい』
『家族の自慢話から仲良くなりました☆』
『星がUZEEEEEEEEEEEE !!!』
アルフと時雨として念話をしながらもピースマンとして水銀の攻撃を緩めることはしない。時雨には魔導師が必要としているマルチタスクは備わっていない。しかし魔術師として思考分割を持っている。だから時雨とピースマンの二つの思考で別々に行動することができた。
『あともう一つ、どうしてフェイトたちに攻撃をする?黒幕自分だってバラして適当に死んだフリでもしたら良かったんじゃないのかい?』
『これはフェイトたちを育てるため。俺の勘だけどそう遠くない内に大きな事件が起こると思う。それに備えてもらうために実力と精神のレベルアップを狙っているのさ。余所の世界の問題をこっちに持ってきてほしくないからね』
『そう・・・・・・ごめんね、あたしたちがこの世界にジュエルシードを持ち込んだばかりにこんなことをさせちまって・・・』
『まぁ迷惑だとは思ってるけど後悔はしてないよ?そこそこに楽しかったし、他の世界の魔導技術も知れたし・・・・・・っと、そろそろ終わりかね?』
アルフとの念話を切り上げて魔導師たちを見ればフェイトと高町が後衛に立ちデバイスをジュエルシードを封印させる為の形態に変えていた。それは正しい、水銀の魔力を封印されてしまえば水銀はただの水銀に戻ってしまいピースマンとしての攻撃手段は無くなってしまう。それよりも気になるのはアリスと気絶から立ち直った神悟。アリスは剣を両手で握り上段に構えた姿勢になり、神悟は背後に黄金の渦を浮かべている。アリスの構えはまだ理解できるが問題は神悟の背後に浮かぶ黄金の渦。自身の考えが外れていることを切に願うがそこから現れた剣、槍、槌などの武器の先端を見て考えが当たってしまっていることに気がついた。
「
「夜天一閃!!」
「
咄嗟に水銀を城壁状に展開させる、数は高町の砲撃を防いだ時よりも多い六枚。しかしその城壁も三枚目まではアリスから振り降ろされた剣の斬撃によって切り裂かれ、残りの城壁も王の財宝から射出される宝具によって容易く貫かれる。それをピースマンはかわし、水銀で軌道を反らしながら立ち回るがその内の数本の流れ弾がアルフに向かっていることに気がついた。アルフは今、水銀に拘束されていて動くことはできない。だからピースマンは時雨としての思考で動いた。水銀の膜を前方に展開、宝具の射出に耐えれるとは思えないが元より防ぐことを狙っている訳ではない。ピースマンとアルフの姿が隠れた瞬間にアルフの前に移動、自身の体をアルフを守るための盾にした。
「っ!?」
『時雨!!』
思わず時雨の名前を叫びそうになるのを堪えて念話で名を叫ぶ。数本とはいえども射出されたのは古今東西に残る宝具の原典。自身に強化の魔術をかけ宝石のバックアップも使い服を鋼鉄を越える強度にまで引き上げたのだがそれでも足らず、宝具はアルフの代わりにピースマンの体を貫いた。
「行くよフェイトちゃん!!」
「うん!!」
「「せーのっ!!」」
フェイトと高町から放たれた封印魔法が水銀に当たり魔力が封印され、水銀は球体から液体に戻り地面に崩れ落ちた。
「ーーーーーーーーーーそうか、これが、人類の真価か」
宝具の突き刺さった体を引きずりながらピースマンは最後の演技を始める。幸いなことに急所には当たってはいないが手足に刺さっている。それでも膝をつかない、自分が始めた
「・・・ピースマンさん、どうしてこんなことを」
「それはね、私は人類の未来を見たからだよ」
高町の問いにピースマンは会ったときと変わらぬ微笑みを向けて答えた。
「私は人類の未来を読んでどう進化するかを知ろうとしたんだ。しかし、その先に現れた答えは滅びの未来なんだ・・・・・・考えた、考えた考えた考えた考えた考えた!!!あらゆる方法をシミュレートした!あらゆる手段を以て対抗策を練った!なのに手を尽くせば尽くすほどに・・・未来はより惨たらしくグロテスクにおぞましさを増し私を打ちのめした!!そして私は現人類では滅びの未来を変えられないと確信した」
「だから争いを以て人類を進化させて滅びの未来を変えようとした?」
「そうだよ・・・いや、私はただーーーーーーーーーーただ、計算しきれない未来が欲しかっただけかもしれない」
そう自虐気味に自己完結をしたピースマンは魔導師たちに背を向けて歩き出した。向かう先は水平線の果てにある闇、それを止めようとする者は誰もいない。
「嗚呼、君たちのような人間がいるなら、計算しきれない可能性を持つ人間がいるのなら、滅びの未来は変えられるかもしれないね」
ピースマンの今の人類を認めるような言葉と同時に、世界は消え、魔導師たちはプレシアが刺された部屋に戻ってきた。そして状況を把握する間もなく起こる揺れ、空中に慌てた表情のリンディの姿が映る。
『時の庭園内に仕掛けられた爆発物により庭園が崩壊を始めました!!全員直ちに艦へ退避してください!!』
「・・・わかりました、皆戻るぞ!!」
リンディの指示に従いクロノが指示を飛ばす。そうして呆気に取られながらも魔導師たちは時の庭園から脱出を始めた。
「(時雨・・・・・・死ぬんじゃないよ)」
脱出の途中、アルフは自分達のために命を賭けるような真似をした時雨の身を真剣に案じていた。
「あぁ・・・くそっ・・・いってぇ・・・あのクソガキが・・・」
場所は替わって時の庭園内にある最下層の広い空間、そこにはピースマンから元の姿に戻った時雨が刺さっていた宝具を引き抜き魔術で傷の手当てをしていた。さっきまで魔導師たちと戦っていた空間は実は時雨が今いる空間で、景色を変更させた部屋に魔導師たちを転移で連れてきていたのだ。
「まさかの
ひとまず動く分には問題ない程度にまで回復した時雨は空間の中心部に向かう。そこには事前にリニスが仕掛けていた帰還用の転移魔法陣が組み込まれていたからだ。ゆっくりとしたスピードで中心部にたどり着いた時雨を待っていたのはここにはいないはずの人物だった。
「時雨、お疲れ様です」
「何でここにいるんだよ、リニス?」
元プレシアの使い魔であり、現時雨の使い魔であるリニスが魔法陣のすぐそばで時雨のことを待っていたのだ。側頭部につけられた不忍の仮面があるので感知はされていないだろうがそれでも時雨はリニスがここにいる理由について知りたかった。
「心配になったから迎えに来ました。それに無茶をしていると思っていたので。予想通りでしたけど」
「ほっとけ、そろそろ出るぞ。思いの外崩壊が速い」
管理局の目を引くために意図的に駆動炉の魔力をジュエルシードで暴走させていたためか、爆発の規模が大きかったためか時の庭園は刻一刻と崩壊をしていた。頭上から小さくはあるが瓦礫が降ってくるほどに。
「そうですね、早く脱出をしましょう。肩貸しますよ」
「あんがと」
リニスに肩を借りて時雨はゆっくりと魔法陣へと近づく。そしてあと一歩といったところで、
「・・・え?」
「・・・俺の幸運ってEだったっけ?」
上層部よりも先に床が崩壊、そしてジュエルシードの魔力によって発生した虚数空間へと二人は落ちていった。
と、言うわけて時の庭園編は終わりです。時雨の幸運はE(確信)
ピースマンの格好しながら皆大好きケイネス先生の
この芝居はプレシアよりもピースマンの方が悪であると印象づけるための物なので勝敗には拘りはありません。しかし主人公勢を勝たせたいという作者の身勝手で時雨には負けてもらいました。
あと今さら気がついたんだけど時雨の人物紹介とかしてほしいですかね?するなら無印編が終わってから身体特徴等・軽い経歴・転生特典を乗せた紹介をしようと思っていますが・・・・・・読者様方が「カットだカットぉ!!」と言うのならば書きません。「早よ、紹介早よ」と言うなら喜んで書かせていただきます。
感想、評価をお待ちしています。