調律者は八神家の父   作:鎌鼬

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第17話

 

 

時空管理局と手を組むことになって幾日か、俺と正式に管理局に手を貸すことにしたあいつら四人はほぼ缶詰状態でアースラに閉じ込められている。その間にこちらはジュエルシードを二つ、フェイトたちは三つ手に入れていた。これで所在が判明しているジュエルシードは俺が隠し持っているのも含めて十五個、全部で二十一個あるらしいのでジュエルシード争奪合戦も佳境に来ているな。まぁ内訳で言えば時空管理局十個にフェイトたちは三つという圧倒的に不利なのだがもし隠れている残りの六個をすべて入手することが出来たのなら十対九でこれを材料に交渉できる。俺はアースラに乗っているがリニスは管理局を信用していないとの理由から乗っていない。それを利用してアースラで得た情報をリニスに流し、リニスからフェイトたちに流してもらっている。こっちのできることはこれまで、このあとどんな方法を取るのか見させてもらおうかフェイト、アルフ、プレシア。

 

 

「・・・八神か、何をしているんだ?」

「ようクロノ少年、今回の状況を整理しているんだよ」

 

 

思案に更けていたところにクロノ少年が来訪する。シリアからは露骨なまでに嫌われているのだがクロノ少年からはそうでもない。むしろなつかれている気がする。爆発物と剣投げつけて鳩尾を殴っただけなのにどうしてこうなった。あれか?お見舞いに行ったのが悪かったのか?暇そうにしていたからチェスと将棋の相手をしてやったのが悪かったのか?

 

 

「そうか・・・・・・八神は今の状況をどうみる?」

「こちらの利点は人海戦術がギリギリ取れるほどの人の数、それに加えて質の高い魔導師数人。それに対して向こうの利点は少数精鋭による高速起動。ジュエルシードを奪ったら即逃亡。そうなるとこっちは数が多すぎてどうしても鈍足にならから追い付けない」

「やはりそうか・・・・・・こちらのメリットがそのままデメリットになっているわけだな」

「しかも逃げる際には確実にこちらの包囲の穴を突いてくるときた物だ。これは向こうに優秀な参謀役がついていると思った方がいいな」

「むぅ・・・」

 

 

そんなこんなでクロノ少年とはフェイト対抗策について論議していった。ちなみに高町な・・・な・・・なっぱ?は藤峰アリスと模擬戦、ユーノ男の娘はそれに着いてっている。それともう一人は・・・アースラに乗っている女性にちやほやされている。そしてシリアが一番お熱である。もう首にしろよこいつら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんてバカなことをしているんだ!!」

 

 

前日にアースラでの会議で海の方にジュエルシードがあるかもしれないと出ていたのでその情報をリニスに伝えたら翌日にはフェイトが魔力を海に放って無理矢理ジュエルシードを発動させていた。確かに手段としては悪くは無いのだが・・・・・・バックアップする奴がいないのが痛いな、魔力を大きく削った状態で封印作業はさぞかし辛かろう。

 

 

「シリアさん退いてください!!」

「俺となのははあそこに行くんだ!!」

「行かせませんよ。彼女は放っておけば自滅します。出動指示が出るのはそれからでも遅くは無いでしょう」

 

 

なっぱ?と藤峰がフェイトの元へ行こうとしているがシリアがそれを阻止している。あれ?もう一人は・・・・・・あ、モニターに写ってる。そしてジュエルシード発動によって発生した竜巻にぶつかって水没した・・・なにやってんの?

 

 

「それが最善の手段です。諦めてください」

「・・・なら僕が出れば問題ないでしょう?」

「っ!?クロノ!!」

 

 

そのシリアに意義を申し立てるのは同じ執務官であるクロノ少年。それにシリアは怒鳴り声をあげるがクロノ少年の表情は変わらない。

 

 

「彼らと僕があそこにいる彼女たちと手を組みジュエルシードを封印する。それがこの場での最善の手です」

「貴方っ!!犯罪者と手を組むつもり!?」

「確かに彼女たちにはジュエルシードを集めようとする目的があるのでしょう。しかしジュエルシードを封印したいというのはこちらと同じはず。なら共闘できる可能性があり、それはこちらの生還の確率を上昇させます」

「減らず口を!!」

「綺麗事だけで世を進めると思っている人間よりも良いと思いますが?」

 

 

お互いに一歩も引かない。シリアは潔癖で犯罪者の手を借りるなんてしたくない、それに対してクロノ少年は目的のためなら汚れるのを厭わないっと。うん、クロノ少年達観しすきだ。何があったらそんなに冷めて合理的に動ける人間になれる?

 

 

「艦長!!」

 

 

お、たまらずリンディに助けを求めたか。しかしリンディとしてもこれは判断しづらい状況だな。確かにクロノ少年のいう方法なら比較的安全に封印作業を行うことができる。しかしそれは時空管理局の方針に背く行いであり、群を乱す個を許すのは率いる立場としては不味いことだ。出来ればこれがどうなるか見てみたいけどフェイトたち待たせるもの悪いから早く動くとするか。

 

 

「艦長殿、よろしいですかな?」

「なにか、八神さん」

「私は海鳴を裏から守る義務がある、そのために越権行為を行えることは事前に契約していたのでわかることでしょう。故に私は現場に向かわせてもらいます」

「なっ!?貴方!!何を言ってるのですか!!」

「黙れ、俺は確かに手を貸すとは言ったが管理局に所属した覚えはない。お前らがお前らの義務を行うように俺は俺の義務を行うだけだ。部外者にとやかく言われる覚えはない」

「良いでしょう」

「母さん!!」

 

 

シリアが悲鳴じみた声をあげるがお前程度ではもうどうにもならないよ。俺が事前に契約していた内容というのは『海鳴市における魔導関連の出来事について八神時雨の本来の役職を全うする義務を認める』というもの。わかりやすく言ってしまえば魔法が関わってしまえば俺は好き勝手に動けるのだ。もちろんこれは俺とリンディの間で決められた契約で他の管理局員には一切知られていない。当然のことだろう、俺は時空管理局という組織がリニスから聞いていた先入観無しにしても好きにはなれない、むしろ嫌いな部類に入る・・・・・・正義正義と叫びながら活動するこいつらを見ているとあいつら(・・・・)を思い出してしまう。

 

 

「と、言うわけで俺は行かせてもらおう」

「まて、見送りをしてやろう。なにかあると大変だからな」

「おぉそいつは助かるよ、クロノ少年。ついでにそこの三人も見送ってくれないかな?」

「ふえっ!?」

「ぼ、僕たちもですか!?」

「・・・なるほど、俺も見送りしたいから着いていこう」

 

 

なっぱ?とユーノ男の娘は動揺しているが藤峰はこちらの意図を理解したようでしたり顔でにやけている。

 

 

「待ちなさい!!何処に行くつもりですか!!」

「何処に?八神を見送るだけだが?」

「そうそう、最近なにかと物騒だからね。子供とはいえ見送ってもらえるなら心強い」

「まぁその結果偶々、ジュエルシードのある場所に出るかもしれないけどな」

 

 

上から順にクロノ少年、俺、藤峰である。ようやく俺たちの言わんとしてることに気がついたのかなっぱ?とユーノ男の娘はハッとしてこちらに着いてくる。要するに俺の見送りと称してジュエルシードを封印しちゃおうという腹なのだ。それに気がついたシリアがこちらに向かってくるが面倒なので幻術をかけると明後日の場所でなにか一人芝居を始め出した。

 

 

「そいじゃあちゃっちゃと行こうか」

「あぁ、これ以上放置しても被害が大きくなるだけだからな」

「これでよかったのかなぁ~?」

「なっぱ?よ、世の中は綺麗事だけでは渡れないんだぞ」

「なっぱじゃないよ!!な!の!は!高町なのはだってば!!」

「避けろナッパ!!」

「だから違うってば!!」

 

 

ナッパネタでなっぱ?を弄りながら俺たちは現場へと転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こりゃまた大荒れなことで」

 

 

転移された先はジュエルシード発動現場に程近い海岸。俺は飛べないということを考慮されて俺と付き添いのクロノ少年はこの海岸に転移されたのだ。ちなみになっぱ?たち三人は直接現場に転移されている。

 

 

「それでは僕は現場に向かうが八神はどうするつもりだ?」

「俺の予想が正しかったらっと」

 

 

意識しながら海の上に足を出す。すると足は海水に沈まずにしっかりと海水の上に立つことができた。予想していた通りに無毀なる湖光(アロンダイト)をランスロットから受け取ったことで彼が湖の乙女から授かっていた祝福を引き継いだようだ。しかも他にも騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)己が栄光の為でなく(フォー・サムワンズ・グロウリー)のおまけ付き。大盤振る舞いである。ってか確かこの二つはランスロットの行いから生まれた宝具なのになんで俺が使えるんだ?ランスロットが気を効かしてくれたのだろうか?

 

 

「これで問題ないだろ?」

「・・・どうなっているんだ?」

「忍術だ」

「ニンジュツか・・・僕も使えるか?」

「さぁ?」

 

 

ともあれ俺は走って、クロノ少年は飛んで現場に向かうことにした。って、水の上ってグネグネして走りにくい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャァァ!!」

「チッ」

 

 

向かっている途中でアルフが竜巻に飛ばされて俺の方に向かってきた。アルフなら放置しても大丈夫だろうが見捨てるわけにもいかないので体で受け止める。

 

 

「大丈夫か?」

「あ、あぁ・・・ありがとう」

「どういたしまして」

 

 

体で受け止めたので密着して距離が近くなっている中でアルフは背中越しに振り替えってお礼を言ってきた。アルフの顔が赤くなっているのは戦闘していたからと異性と密着しているからと考えよう。アルフは男性経験zeroだと思うし。

 

 

「む、終わってしまったか?」

 

 

丁度たどり着くと同時に視界いっぱいに広がる桃色の閃光と黄色い雷撃、そして聴覚を容赦なく刺激する爆発音。どうやら俺たちがつく前に終わってしまったらしい。封印されて空に浮いているジュエルシードの側で高町とフェイトが話をしている。普通なら早くジュエルシード回収しろよと言いたくなるがこの場面ではそれは不粋だろう、現に誰も口を出さずにそれを見守っている。

 

 

「時空管理局です!!武装を解除して投降してください!!」

「空気読めよKYがぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

叫んでしまった俺は悪くない、むしろここにいる全員の意思だと思っている。現れたシリアは魔力弾をフェイトに向けてブッパし、ジュエルシードの側に陣取る。そこまで来たのならさっさと回収すればいいのにシリアはそれをしようとはせずにフェイトとアルフを睨んでいる。回収するなら早くしろよ、何しに来たの?お前たちの優先するべきことは平和を守ることであって犯罪者を捕らえることじゃないだろうが。犯罪者捕まえることに集中して危険物放置とか笑えないぞ。

 

 

「あーーーーーぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「なっ!?」

 

 

そんなとき、海の中から金色の魔力の柱が立った。それはジュエルシードと側にいたシリアを巻き込む・・・・・・そして金色の魔力の柱が消えたときに現れたのは青い鱗をした手足の無い東洋風の一匹の竜だった・・・・・・WaT?

 

 

「クロノ少年、何があったの?」

「・・・・・・推測だが先に行って撃墜していた相井の魔力が暴走、その魔力に当てられたジュエルシードの封印が解けてシリア執務官を巻き込んで暴走といったところか?」

「あいつは疫病神か何かか!?」

 

 

すげぇよゴミクズ!!高町とフェイトが苦労して封印したのにその努力を一瞬で打ち砕く!!そこに痺れもしないし憧れもしねぇ!!

 

 

「ってことはもう一度封印作業か、あぁ面倒だ」

「一応なのはたちには下がるように指示を出そう。先程で魔力を消費しているはずだし、足を引っ張られても困る」

「言いにくいことをズバンと言っちゃうのねクロノ少年、まぁ賛成だけど」

 

 

少なからず魔力を消費して疲労している奴と疲弊していない奴、俺なら間違いなく前者を下がらせて後者を前に出させるね。クロノ少年からの指示を受け取った高町はごねていたがユーノ男の娘と藤峰に諭されて渋々といった具合でようやく下がった。

 

 

「八神が前衛、僕が後衛でいくぞ」

「OK、all right 遅れないように気を付けなよ」

「八神こそ下手に射線上に出てくれるなよ」

 

 

それを皮切りにクロノ少年は後退し、俺は前に走り出す。竜の狙いは俺らしく、この場にいる誰にも目をくれずに真っ直ぐに俺に向かってきた。目測で竜の全長は10m程、動きはそこそこに速いが目に追える速さ。

 

 

「投影開始」(マテリアル・オン)

 

 

あれほどの体躯の相手なら攻刀守剣を投影しても針と変わらない、そう判断して投影したのは魔力の籠っただけのただの槍。ただしそのサイズは3mという規格外のサイズであるが。

 

 

「ピッチャー第一投!!」

 

 

投げられた槍は真っ直ぐに竜の眉間に向かい吸い込まれるように突き刺さり竜の動きを止める。しかし突き刺さった槍はズルリと抜け落ちて額には傷ひとつ残っていない。再生能力持ちとは面倒な。一撃で無理ならば、数で押そう。

 

 

「投影開始」

 

 

再び投影される槍。さっきとは違うのは手元ではなく俺の背後、それも複数投影されたことか。槍の切っ先はすべて竜に向けられている。

 

 

「全投影!!一斉総射!!」

 

 

さながら慢心王の財宝のように槍は一斉に射出されて竜に向かう。さらに射出しているそばから新たに投影しているので弾切れの心配はなし。無数の槍をかわすことなく受け止めている竜は徐々に動きを鈍くしていく、何て言うか針ネズミに見えてきた。それに加えて俺の気分も上がっていき、

 

 

「あっはっは!!雑種風情が踊れ踊れ!!その散り様で俺を興じさせよ!!」

 

 

ちょっと慢心王っぽくなってしまった。射出される槍の側で腕を組ながら高笑いをあげる俺はどっからどう見ても不審者です、本当にありがとうございました。

 

 

「うわ・・・」

「なんて容赦無い・・・」

「まんま英雄王じゃないか」

「・・・凄いね」

「あぁ・・・(普段とまったく違うのにあの時雨を見ていると格好よく見えるし顔が熱くなる・・・・・・帰ったらプレシアに相談しよう)」

 

 

その時竜の口から僅かだが火花が散ったのを見て即座にその場から離れる。すると竜の口から俺がいた場所に青い炎が吐き出された。その熱量に海水は蒸発して蒸気が視界を遮る。あぶねぇな、あと一瞬遅れてたら生焼け通り越して黒焦げになってたぞ。そして蒸気を吹き飛ばしながら竜は俺に突進してきた。それをアロンダイトを鞘から抜かずに受け止めるが竜の一撃を受け止められる訳がなく、すくい上げられるようして俺は上空に飛ばされた。

 

 

「■■■■■■!!!」

「狂戦士かよ、ってか周りがまったく見えていないな。俺は前衛だぜ?後衛忘れるなよ」

 

 

雄叫びをあげてさらに追撃しようとしていた竜を水色の拘束が縛り上げる。誰か確かめるまでもない、あれは俺も食らったことがあるクロノ少年の束縛魔法だ。流石にあのサイズを縛り上げるのはキツいらしくここまでは援護が一切なかったが竜はガッチリと縛られていて身動きができない状況にいた。

 

 

「美味しいところはもらおうか、真名解放」

 

 

鞘からアロンダイトを抜き出す。神造兵器でありながら裏切りによって魔剣に堕ちた聖剣、どこぞの勝利の剣のようにブッパすることは出来ないが真名を解放することでステータスのランクアップと龍殺しを得ることができる対人宝具のなかでも最上位に属するランスロットの剣。

 

 

「無毀なる湖光!!」(アロンダイト)

 

 

無毀なる湖光は竜の鱗など無かったかのように切り裂き、容易く竜を両断する。そして竜は特撮アニメのヒーローの必殺技を受けた悪役の如く爆発した・・・なぜに爆発?爆煙の中から気絶したシリアが現れて海に落ちる寸前のところで転移された。そして残るのはジュエルシード六つとそれを狙う二つの陣営。さて、ここからどうした物かね。

 

 

そう思っていたそんなとき、

 

 

自然現象ではあり得ない紫色の雷が一帯に降り注いだ。

 

 

 

 






時雨管理局潜入成功です。ここからバンバンフェイトたちに情報を垂れ流しています。


そして気づいた方も居られると思いますがフェイトたちの所有するジュエルシードの数が原作に比べると少ないです。まぁ時雨が介入することでジュエルシード回収しているから何ですけど。一先ず全部のジュエルシードを出すことが出来たのでここから調整していきます。


そしてオリ主(笑)とシリアがガガガガ。


あとうちのクロノ君は原作よりも融通の効く性格になっています。目的のためなら汚れる覚悟もある、清濁を織り混ぜた感じですね。


無印もようやく佳境、ここまで長かったです!!


無印が終わったら数話ほど番外編を入れてそこからA'sにいきたいと考えています。


評価、感想をお待ちしています。



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