調律者は八神家の父   作:鎌鼬

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第15話

 

 

狂戦士ことランスロットとの戦闘を終えて死ぬほどボロボロになって(治療してくれたシャマルにどうしてこの怪我で死んでないのか?と言われた)数日、傷は程々に癒えて普通に動く分には問題ない程度には回復した。はやてにどうしてこんな怪我をしてきたのかと言われたので三菱デパートの自動ドアに挟まれたと答えたらそれならしょうがないと納得されてしまった。育てた俺がいうのも何だがそれでいいのか?

 

 

そしてランスロットから受け取った 無毀なる湖光(アロンダイト) だが鞘がなく剥き出しの状態だったので物置に仕舞っておいた 全て遠き理想郷(アヴァロン) に納めることにしておいた。どこからか「解せぬ」という声が聞こえた気もするが鞘を渡さなかったお前が悪いし、持ち歩いていなかったアーサー王が悪いんだ。俺は悪くない。

 

 

表面上の傷は閉じて後は中の怪我を治すだけとなったある日の夕方、俺の携帯に電話が入ってきた。画面を見ればプレシアの文字が、多分ジュエルシード関係の電話だな。

 

 

「はいよ」

『海沿いの公園にジュエルシードの反応があったからフェイトが怪我しない内に援護に回って貰えるかしら?』

「おk」

 

 

短い返事をして電話を切り、部屋から出ようとすると

 

 

「時雨、駄目ですよ」

「まだ完治した訳でないのですから大人しくしてください」

「お腹が空いたのでご飯を作ってください」

 

 

リニス、シグナム、ザフィーラに止められた。ザフィーラはなんか違うと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おうおう派手にやってますねぇ」

「今回は木にジュエルシードが憑いたみたいですね」

 

 

通せん棒していた三人と色々と交渉した結果、三人を連れていくことと有事の際の戦闘を三人に任せることで了承してくれたので結界内ではあるが件の公園から遠く離れたビルの屋上で戦闘風景を観賞している。

 

 

「私たちが出れば一瞬で終わると思うのですが」

「そうかもしれないけどそうなったらあいつらに闇の書のことバレちゃうでしょ?それに高町にはお前たちの顔を見られてるんだ。だったら隠れながらやった方

が都合がいいんだよ」

「ハムッ・・・それにしても・・・モフモフ・・・中々に・・・ングッ・・・堅い敵ですね」

「ザフィーラ、食べるか話すかのどっちかにしなさい。後俺も腹減ってきたから分けて」

「ん」

「だから口移しで渡そうとしてるんじゃねぇよ!!なんなのお前!!キス魔なの!?」

「パクっ・・・時雨、こっちもOKですよ」

「リニスぅぅぅう!!お前も真似してんじゃねぇよ!!」

「チラッ」

「チラッ」

「・・・なぜ二人はこっちを見るのだ?」

「シグナムまじ常識人」

 

 

リニスとザフィーラが危うい路線に走ろうとしている中、シグナムだけが俺の救いです。そんなザフィーラから買ってきたたい焼き(こし餡味)を奪い取り観戦していると、黒髪の少年が木に取り込まれて・・・木が大樹レベルにまでパワーアップした。

 

 

「うわぁ・・・・・・」

「これは・・・・・・」

「どうやら吸収した魔導師の魔力を取り込んでるみたいですね」

「スゴく・・・・・・大きいです・・・」

「オイザフィーラそれやめれ」

 

 

ネタに走ったザフィーラを諫めながらも公園から目を離さない。どうやら大樹は砲撃をバンバン撃ってくる上に障壁も堅いらしく攻撃を一度も通していない。これはそろそろ手を出さないとプレシアにいちゃもんつけられるな。手持ちのカード七枚を広げてどれを使うか考えてみる。

 

 

セイバー・・・個人的に好きじゃないから却下

アーチャー・・・使える気がしないから却下

ランサー・・・接近戦出来ないので却下

ライダー・・・ランサーと同じ理由で却下

バーサーカー・・・個人的に好きだけどこれだと三人との約束を破るから却下

アサシン・・・隠密したところで何になる?

キャスター・・・使ったとしても高火力過ぎて公園一帯を焼き払いそうだから却下

 

 

・・・使えるカードが無い。ナハトヴァールはあるのだがこれもキャスターと同じ理由で使えない・・・手詰まり?あ、アルフが業を煮やして大樹に突進して行った。このままだと障壁に阻まれて捕まって触手プレイされる美人さんの構図ができてしまう。個人的には目の保養になるから見たいのだが青少年の健全な成長の妨げになるので阻止させてもらおう。

 

 

 「投影開始」(マテリアル・オン)

 

 

黒塗りの弓と矢代わりの螺旋剣を投影する。そしてビルの縁に立ち

 

 

 「I am the bone of my sword. 」(我が体躯は螺旋に到る) 

 

 

大樹に向かい螺旋剣を放った。背中超いてえ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぉぉぉぉぉぉお!!!!」

 

 

公園の中央に根を張る化け物に向かってアルフは駆け出す。元々でも苦戦していた相手なのに相井を吸収してさらに強化されているのだ、博打でも何か手を打たなければこちらに勝機はない。だからアルフはその一石を自ら特効することで投じようとした。フェイトからの制止を振り切り、放たれる砲撃を掠りながら突進していき、化け物の前にまでたどり着くことに成功した。

 

 

「ハァァア!!!」

 

 

渾身の右ストレート、全体重を乗せ加えて魔力で拳を強化して放った一撃は障壁に容易く防がれる。

 

 

「(くぅ・・・!!堅い!!)」

 

 

さらに左で一撃、それも阻まれる。視界の端に迫り来る根の尖端が見える。このままだとアルフは串刺しにされてしまうだろう。それでもアルフはその場から引かなかった。

 

 

「(あたしの役目はフェイトを・・・家族を守ること!!そのためには)ここで引くわけにはいかないんだよぉぉぉぉぉお!!!!」

 

 

アルフの使い魔としての役目はフェイトを守ること、そのために障害になるものはすべてこの拳で打ち破る。その拳が砕けんばかりの一撃をぶつけようとしたとき、アルフの顔スレスレを何かが通過し障壁に突き刺さった。あれだけ強打してもヒビ一つ入らなかった障壁にだ。それは一本の剣。しかし刀身は歪に捩れ曲がっており本来の用途では使用できないことがうかがえた。

 

 

それを見てアルフが思い出したのはフェイトと自身の家庭教師であったリニスの現在のマスターである飄々とした態度をとりながらタバコを加えている男の姿であった。彼は前回のジュエルシードの暴走の際に現れた“何か”と戦闘し、血塗れになる重傷をおいながらもこれを撃破した。その場面をアルフはフェイトと共に見ていたので間違いないだろう。動くのも辛いはずなのにそれでもその体を引きずって援護に来てくれた。そう思うとアルフは胸の辺りが暖かくなるような不思議な感覚を味わった。

 

 

「食らいな!!」

 

 

咄嗟の判断で障壁に突き刺さった剣を殴る。刀身の根本まで突き刺さっていた剣は殴られたことで完全に障壁を突き破り化け物の体の一部を食い破った。その影響か張られていた障壁は消え失せている。

 

 

その状況にいち早く反応したのはフェイト。体の一部を失ったことで動きを止めていた化け物に接近して自分が使える最大火力の魔法を放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・うん、命中確認」

「ヒット!!よく当てられますね」

「放つ前に当たっている光景をイメージしろ、さすれば必中、外れる通りは無いってね」

 

 

目的通り大樹の障壁に螺旋剣を突き刺さすことに成功したことを確認してから弓を消す。三人は俺の弓の腕前に感嘆している様子だった。

 

 

「時雨、前回の私との模擬戦の時に比べて威力が落ちている気がするのですが?」

「勿論威力は押さえてあるよ。本気で撃ったら大惨事だからね」

「どうなるのですか?」

「多分公園一帯が爆散する」

 

 

本家の螺旋剣に比べれば俺の螺旋剣は威力は落ちるがそれでも宝具であることには代わり無いのだ。威力を押さえて撃つのは当たり前のことである。前回のは多少は押さえたがほぼ本気であったことには代わり無い。ランスロットにはマジの本気で撃ったのに大して効果が無かったな・・・・・・

 

 

「時雨、フェイトがジュエルシードを封印できたみたいですよ」

「そいつは上々、なら俺たちは帰るとしよう」

「離脱の手伝いはしないのですか?」

「あいつらの実力なら逃げに徹したらあの程度の相手だったら逃げ切れるよ。ならここでの悪手は俺たちが補足されることだ。だから尻尾巻いて周りも見向きしないでさっさと逃げよう」

「っ!!ちょっと待ってください・・・・・・魔力反応確認、転移してきます!!」

「リニス、シグナム、ザフィーラ、姿隠して隠密体制、俺が気を引く」

「「「了解!!」」」

 

 

俺の指示に反応した三人は即座に散会し気配を消した。そして俺が居るビルの屋上、そこから少し上空の空間に魔法陣が現れて世紀末のモヒカンのような肩にトゲを生やしたコスプレをした男の娘が現れた・・・・・・うん

 

 

「イタタタタッ!!痛い!!痛いよこの子!!誰が病院連れてきて!!」

「時空管理局執務官のクロノ・ハラオウンだ。ここで何をしていたのか聞かせてもらおう」

「あっスルーですか」

 

 

この男の娘は随分とスルースキルが高いようで。にしても時空管理局・・・・・・シグナムが言っていた組織、加えて執務官という聞いた印象ではそこそこの地位に就いているようだ。ならここでの悪手はシグナムたちの姿を見せること、善手は俺だけで倒す若しくは戦闘不能にすることか。あヤベエ今俺仮面着けてなかった、不忍じゃなくて時雨の存在がバレてしまう・・・・・・いや、ここは逆にバレてもいいんだと考えるんだ。どうにかしてこいつらに取り入って情報を入手、それをプレシアに渡せれば最高だな。

 

 

「嫌だと言ったら?」

「すまないが強引な手段で聞くことになる」

「ひゅー♪過激だねぇ。人権って言葉を知ってるかい?」

「知っているが無視させてもらおう。今回の事態は事が大きすぎるんだ、多少無茶をしても解決しなければこの世界が危ない」

「一人を犠牲にしても世界を救いたいってか?とんだ正義の味方だな」

「偽善と呼んでくれても構わない」

「いんや、俺好みの答えだよ」

 

 

会話を切り上げると同時に宝石を五つコートから取り出して投げつける。それを警戒していたが宝石とわかると警戒を弛めて手にしていた杖をこちらに向ける、その油断が命取りだぞ。

 

 

「宝石爆撃!!五連爆!!」

 

 

宝石に込められていた魔力が暴走して爆発する。さらば、五十万相当の宝石たちよ。煙が晴れれば服に多少焦げ目は着いているがほぼ無傷の男の娘の姿があった。防がれたか、まぁあれで倒せたら行幸程度での牽制だったけどね。

 

 

「公務執行妨害、君を公式で捕縛できる名目が立ったな」

「避けられなかったと思ったら態とかよ。強かだな」

 

 

攻刀守剣を魔術発動のキーを介せずに投影する。武器を手にしたところで俺は怪我で満足に動けない、加えて空にいるあちらの方がアドバンテージがあるという状況・・・・・・クソッ!!これじゃ満足できねぇ!!

 

 

「ハァッ!!」

 

 

男の娘の掛け声と共に水色の弾幕が放たれる。数は多くはないがその分速度のある弾幕を当たるものだけを選んで攻刀守剣で防ぎ、切り裂く。振るうたびに体が悲鳴をあげるがそれを無視する。痛覚を遮断できるのだがあえてそれを選択しない、寧ろ痛覚を無くすことで体の感覚が無くなったら動かしづらいのでこっちの方が良いのだ。数は多くはないと言っても数十発、それも弾丸並の速度で放たれる弾幕を乗り越えると両手首に水色の拘束具をつけられた。

 

 

「さぁ、大人しくしてもらおうか」

「・・・わせよ」

「?何か言ったか?」

「馬鹿が!!かわせと言ったのだ!! 魔導師(キャスター) !!」

 

 

このときようやく男の娘は俺の手に握られている攻刀守剣が無いことに気がついたようだった。拘束具をつけられる一瞬の間、それを感知した俺は迷うことなく攻刀守剣を投げた。それしてそれらは弧を描きながら男の娘の背後に迫っている。

 

 

「ーーーーなっ!?」

「爆ぜろ、 砕かれた幻想(ブロークンファンタズム) 」

 

 

そして攻刀守剣は男の娘に障壁に防がれると同時に内蔵していた魔力を暴走させて爆ぜた。爆破は障壁を砕き男の娘をビルの屋上にまで引きずり下ろす。地面にいればこっちの土俵だ。

 

 

「シッ!!」

「ガハッ!!」

 

 

以前からコトミネに教わっていた中国拳法の一撃がバリアジャケットを貫通して叩き込まれる。鳩尾に拳を叩き込まれた男の娘は容易く気絶した。

 

 

「お疲れ様です」

「リニスか、シグナムとザフィーラはどうした」

「帰らせました。彼女たちの存在がバレると不味いですからね」

「そうか、よくやった」

 

 

リニスの対応を誉めながらもコートから視認しづらい程に極細の糸を取り出す。これはエーテルライト、巨人の穴蔵と呼ばれる場所に所属していた錬金術師の使っていた物と同一の物である。元々医療用の疑似神経として作られたこれは相手に接続することで脳内をハッキング、気づかれることなく一方的に情報を搾取することができる・・・・・・まぁ俺の使い方が悪いせいか情報を盗るとき頭痛がするんだけどさ。それを迷うことなく男の娘に接続、ここ最近の情報を搾取する。

 

 

「・・・リニス、今すぐ公園に行くぞ」

「何かわかりましたか?」

「こっちにはこいつが一人、公園にはこいつと同じ役職の奴と武装管理局員とやらがいるそうだ。だからフェイトたちを逃がすために出る」

「・・・管理局に顔を見せることになりますよ」

「最悪こっちの立場をちらつかせればいい、上手くいくかは知らんがな」

 

 

そう言いながら男の娘、クロノを肩に担ぎ上げビルの屋上から飛び降りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は代わって先程までジュエルシードの暴走で大樹が暴れていた公園。フェイト、アルフ、なのは、ユーノ、アリスは武装管理局員に囲まれていた。それを指揮するのは黄緑の髪をした女性。アリスは原作とは違う展開に混乱しながらもこの状況をどう切り抜けるか考えていた。ちなみに大樹に取り込まれていた神悟は地面に寝ている。

 

 

「私は時空管理局執務官のシリア・ハラオウンです。全員武装を解除してください」

 

 

なのはとユーノとアリスなら抵抗はしないだろうがフェイトとアルフは違った。ここで捕まればジュエルシードを集めることが出来ない、加えてそれを指示していたプレシアにも危険が及ぶことになる。故に逃げる手段を模索していたが管理局員に囲まれているために動けないでいた。

 

 

「武装を解除しない場合には抵抗の意思有りとみなしますが」

 

 

その言葉になのはたちはデバイスを解除して普段着に戻るがフェイトは解除しない。その姿にシリアが実力行使に出ようとしたその瞬間、シリアと管理局員の目の前に剣が降ってきた。

 

 

「っ!?これは!?」

「ギャーギャーギャーギャー騒ぎまくってんじゃねぇよ餓鬼共が、ご近所様にめーわくだろうが!!」

 

 

公園に響き渡る一喝。声がした入り口の方向を見れば人を肩に担いだ黒いコートの男性と彼に付き従うような形で側に立つ女性の姿があった。

 

 

 

 






というわけで時空管理局介入の下りですね。時雨はボロボロですがこの程度なら問題ないようです、まぁ動けるかどうかと全力で戦えるのかは別問題ですけど。


シリア・ハラオウンはオリキャラでハラオウンの姓から想像できるようにクロノの姉に当たります。年は19歳、クロノと同じ役職です。


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