調律者は八神家の父   作:鎌鼬

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この作品にEDを付けられるとするなら、

『結界戦線』の様な登場人物たちが笑いあって踊れるようなEDにしたい。




Epilogue 幸せな今の中で

 

 

海鳴の町に闇の書という呪われた魔導書が現れ、親愛に狂った禍津神がその呪縛を解き放ち、その呪いを背負わされた者たちが解放されてから四年が経過した。

 

 

寒い冬が終わり、春の訪れを告げる桜の花が咲き誇る今日、とある中学校では入学式が行われていた。用意されたパイプ椅子の上に座る入学生たちに校長が祝福の言葉を送っている。入学生たちの顔が硬いのはこれからの未来に不安と期待をしているからだろう。これが甘粕ならとんでも人間理論言って唖然とさせたんだろうな。

 

 

「ーーーーーーーーーーえぇ長くなりましたが、これで私の話は終わりといたします」

『続いては新入生代表挨拶です。それでは八神はやてさん、よろしくお願いします』

「はい」

 

 

パイプ椅子に座っていた入学生たちの中から一人立ち上がる。学校から指定された制服を着こなし、肩口までで切り揃えられた地毛の茶髪。優等生の模範と言っても間違いないだろう。四年前までは車椅子が無ければ動くことができなかったのに今ではしっかりと自分の足で立ち、歩くことが出来ている。

 

 

「どうしました?」

「いやねぇ、あの時のことを思い出して少ししんみりしてた。車椅子生活だったのに今は歩けてるなって」

「もう、それは四年も前の話ですよ」

「まだ四年ではないのか?」

「そこは人それぞれだな、四年が長いと思う者がいれば短いと思う者もいるから」

「でも闇の書のあれから四年か…………」

 

 

後ろの方にいた俺が考え込んでいると近くにいたリニス、シグナム、ザフィーラ、スノウ、アルフが式の邪魔にならないような小声で話始めた。

 

 

ふとその時、演説台の上に立つはやてと目があった。それに何もしないのはあれなので右手を振ってやる。するとはやてはそれに応えるように俺に向かって微笑してきた。

 

 

『ズギューーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!!!!!』

 

 

…………何か銃弾が鉄板にぶち当たった時のような音が聞こえた。よく見ると新入生と在校生、そして男性教員の何人かがはやてを見て顔を赤くしている。新入生と在校生は良くはないけど良しとしよう。だが男性教員、テメーラはダメだ。はやてはまだ十二歳だぞ?ロリコンか?それともペドか?前者なら執行猶予着けてやらんこともないが後者なら滅相すっぞ?

 

 

まぁ俺が滅相するより先に反応する奴がいるけど。

 

 

『ーーーーーーーーーーッ!?!?!?』

 

 

はやてを見て顔を赤くした奴ら全員が突然顔を青くして震えだした。原因なんて考えるまでもなく分かるが教えてやるとしよう。

 

 

パイプ椅子に座る入学生の中で一人、金髪の少年がいた。こうなった原因は奴だ。何故ならーーーーーーーーーー

 

 

「……………………」

 

 

そいつ、ギルだから。はやてに惚れてるあいつからしたら他の奴らにデレデレされるのは耐えがたいんだろう。ギルは俺と同じで独占欲強い方だからな。

 

 

「新入生、在校生の皆さん。それに教職員の方始めまして。この度新入生代表の挨拶を任されました八神はやてと言います」

 

 

予め用意してあった挨拶の原稿用紙をはやては淀みなく読んでいる。春休みの間に練習しまくったから失敗する事は無いだろう。

 

 

はやての挨拶を聞きながら、闇の書の後に起こった事でも思い出すか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まず先に言うことが有るとすればメルクリウスだろう。あいつが言った通りに俺たちはプログラムやサーヴァントから無事人間になった。俺の場合は流出位階にまで至っていたので少し面倒だったと言っていたが若干の弱体化で済んだようだ。それで終われば良かったで終わるんだが…………まぁ、メルクリウスはやり過ぎた。どうやら細かい力加減が出来なかった様で、現時点でプログラムや使い魔、そしてサーヴァントと言った人の形をしているが人間ではない存在をまとめて人間にしてくれたのだ。それもスキルステータスの弱体化とか一切無しで。そのお陰でアルフ、アーチャー、セイバー、ランサー、キャスター、ビーストたちが人間になった。まぁ一応メルクリウスにはシャイニングウィザード叩き込んでおいたが全員喜んでいたので結果としては良かったのだろう。

 

 

シリア・ハラオウンは糞に取り憑かれていたのを引き剥がした事で意識を失い、正気を取り戻した。だが取り憑かれてからの記憶が一切無かった。目を覚ましてみたら五年の年月が経っていましたとか言われて混乱しない奴はいない。パニックになって暴れだしそうになったシリアの頭をデコピンして落ち着かせた。そしてその五年の間に起こった事やこうなった原因、シリアに憑いた糞がしでかした事を資料映像付きで懇切丁寧にゲス顔クロノが説明した結果…………自殺未遂が起こった。そりゃあ知らない間に自分がとんでもない事をしたって教えられたら死にたくもなるよな。その時はクロノがガラスコップの破片で自殺しようとしているシリアをアンゼルチンバックブリッカーすることで落ち着いた。クロノとそうなった原因を知ったリンディが取り憑かれていた事を配慮し、保護観察処分で話をまとめようとしたがシリアがこれを拒否、覚えていないとはいえ自分の仕出かした事の責任は取ると言って管理局を辞職した。現在ではコトミネのところの教会でシスターとして働いていて、健全なお付き合いをしている男性がいるとかなんとか。

 

 

スノウを消そうとしたギル・グレアムとか言う名前の塵はゲス顔クロノの粋な計らいのお陰で刑務所送りになった。しかもぶちこまれた場所は男色の囚人と看守が集まっているとかなんとか。今ごろぶちこまれてるんじゃないですかねぇ…………

 

 

正義の法(ジャスティス・ロウ)のカインこと相井神悟は本来なら問題行為のしまくりのせいで刑務所送りになる予定だった。が、性格は問題あっても実力(笑)はあるとか管理局の上層部がごねて無罪放免になったとかクロノが言っていた。本格的にミッドチルダに籍を移したらしいので俺が向こうに行かない限り出会うことはないだろう。なおクロノは同じ部隊になることを全力で拒否ってる模様。

 

 

こっちに協力してくれたコトミネたち。まぁ、あいつらは“何も知らなかった”という事になっている。なので先導者だったコトミネはクロノが保護観察をしているが他の奴はノータッチ扱いになっている。あいつらは手を出さない限りは大丈夫だし、クロノも藪をつついて蛇を出したくないと言ってノータッチを貫くつもりらしい。

 

 

聖堂教会を裏切った形になるコトミネだが…………変わらず海鳴教会で神父をしている。なんでも教会の幹部やその直属の部下が殺された為に教会はガタガタになったらしい。いったいどこの殺人喜の仕業なんだ…………(すっとぼけ)まだそれでもコトミネは教会から除名、異端者認定を受けたものの教会の弱体化の隙を狙ってた奴らが暴れているせいで代行者は来ない、そしてその間に色々とやった為に海鳴教会に残ってるとか。まぁはやては喜んでたから良いけど。それに代行者が来たところでビーストがいるから瞬殺される未来しか見えない。

 

 

そうそう、サーヴァントたちだが人間になった事に少し慌てた後、思い思いの生活をしているらしい。セイバーは世界巡って美味しいもの食べてくるとか、アーチャーは都市部の方で料理屋開いたし、ランサーはバゼットと一緒に執行者やってるらしいし、キャスターは信喜と籍入れて七夜メディアになったし、ビーストはシリアと一緒に教会でシスターとして働いている。

 

 

そして本題になるのは俺たちだ。闇の書の主にして被害者だが加害者でもある俺たち。本当なら全員まとめて刑務所行きなのだが、俺が闇の書の主になってシグナムたちに蒐集を強要したという体でクロノに報告してもらった。その結果シグナムたちには情状酌量の余地有りと判断されて五年の管理局への無償奉公、そして保護観察官のリンディの監視下での生活ということで落ち着いた。俺の方は荒れたな~。時々ゲス顔で煽ってたからか管理局のお偉いさんたちぶちギレて虚数空間に落とせ~とか事実上の死刑やろうとしてたし。しかしクロノが相井神悟という前提とゲス顔でお偉いさんたちの二、三人とお話をしたことにより十年間管理局への無償奉公とAランク以上の時空犯罪者千人の検挙、その後に管理局に入ることで話はまとまった。時空犯罪者の検挙は一年目で終わっている。殺さずに捕らえるってのは面倒だったが方法がない訳ではないから割りとあっさりいけた。その時に腹のふっといレジアスとかいうおっさんと言い合いになってなんやかんやした結果親しくなりました。守るためならいくらでも手を汚そうというスタンスを持っているのでシンパシーを感じたんです。

 

 

「ーーーーーーーーーーでは最後に、私の好きな言葉を言わせていただきたいと思います」

 

 

っと、回想している間にはやての挨拶が終わりそうだな。

 

 

はやてだが…………ミッドチルダとベルカの魔法、それに地球の魔術の三つを同時に学んでいる。ミッドチルダのはクロノから、ベルカのはシャマルやスノウ、魔術はキャスターとビーストから。なんでも管理局に入って俺の手伝いをしたいからということらしい。はやてがやりたいと言うのなら否定するつもりはないが、最低でも地球で高等学校まで卒業してからということで今は落ち着いてる。向こうだとローティーンでの就職は普通で、その気になれば中学校卒業してから管理局には入れるらしいのだがそうなった場合には地球での最終学歴が中卒になってしまう。無いようにはしたいがはやてが何らかの事件に巻き込まれて大怪我を負って退職した場合、中卒では色々と不利だろうということでこうなったのだ。説明をしたらはやても納得してくれたから親子間は険悪にはなっていない。

 

 

「出会った事は無いのですが私の祖父が言っていた言葉だと父がいっていました…………諦めなければ、いつかきっと夢は叶うと!!」

「ブッ!?」

 

 

よりによってそれチョイスかよ。他に良いのあるだろうが。

 

 

『人間賛歌を歌わせてくれ、喉が枯れる程にッ!!』

『老害とは耳が痛い。これでもまだ青いと言われる身なのだがな』

『万ざぁぁぁぁぁぁいっ!!万ざぁぁぁぁぁぁいっ!!おぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーー万ッざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!!!!』

 

 

あ、ろくなのねぇわ。それが一番まともだったわ。

 

 

「以上を持ちまして、新入生代表挨拶とさせていただきます」

 

 

はやての挨拶が終わり、新入生在校生教職員問わず拍手が送られる。俺も“両手”でしっかりと拍手を送る。

 

 

闇の書を消し飛ばす時に一緒に消し飛んだ右腕だが、荒耶からの紹介で腕の良い人形師と出会い、義手を作ってもらった。作られた腕ではあるが本来の腕とは変わらずに動くので違和感は欠片もない。

 

 

「アリシアフェイトアリシアフェイトアリシアフェイトアリシアフェイトアリシアフェイトアリシアフェイトアリシアフェイトアリシアフェイトアリシアフェイトアリシアフェイト……………………」

「…………」(無言の裏拳)

「グアァ…………!!」

 

 

アリシアとフェイトの姿を激写している親バカ(プレシア)を裏拳で黙らせる。こっちだってはやての挨拶を撮りたいのだが迷惑になると思ってカメラ設置だけで抑えているのだ。自重してほしい。

 

 

実はこの学校に入学したのははやてとギルだけではない。アリシアフェイト、それに御門、ヴィータ、シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリも入学したのだ。あぁ、あと恭也から聞いた話だと恭也の妹とその幼馴染みも入学したらしいね。どうでも良いけど。

 

 

入学式のメニューがどんどん消化され、最後の入学生退場になる。俺たちに気がついて何かしらの反応を送ってくる子供たちに手を振って返す。

 

 

この後は色々と説明があるらしいので外で桜でも見て待ってるとしよう。

 

 

「外に行くけど着いてくる?」

「当然、“妻”として着いていかせてもらいますよ」

「私も、そ、その…………“妻”ですから」

「私も着いていきますよ、“妻”として」

「アハハ、みんなはっきり言うね」

「そう言うアルフもだろ?まぁ私もなんだがな」

 

 

…………はい、このみんなの反応を見て分からない奴はいないと思いますが言わせていただきます。

 

 

私、八神時雨は、リニス、シグナム、ザフィーラ、スノウ、アルフの五人と結婚いたしました。

 

 

突っ込みたい所はあると思うんだがあれなんだよ、五人全員が俺のことを男として愛してくれていたし俺も五人のことを好きだったんだ。どうしようか悩んでいた、そんな時コトミネから言われたんだ。

 

 

『ならば五人と結婚すれば良いのではないか?』

『『『『『それだ!!!!』』』』』

 

 

それで良いのかと突っ込みたかったが五人はノリノリ、そんな時俺に天啓が降りてきた。

 

 

『男ならば、愛する女すべてを娶る甲斐性を見せてみろ!!!!!』

 

 

甘粕お呼びじゃない、月に帰れ。

 

 

そんな感じであれよあれよと五人と結婚しました。周りからはそう来たか!!と驚かれた物のそれだけで他に何も言われず、はやても純粋に祝福してくれました。

 

 

うん、男としては最低だって分かってる。けどこれで良かったと喜んでいる自分がいることは否定しない。

 

 

蛇足だが書類上の俺の配偶者はリニスになっている。後の四人は愛人扱い。書類上の配偶者は誰になるかを決めるのに流血沙汰になると思っていたがこれはリニス以外の四人があっさりと認めたのだ。なんでも自分たちの中で一番長く付き合いがあるからとか。

 

 

その光景を見て残念そうにワイングラスを下げたコトミネに八勁叩き込んだ俺は間違ってない。

 

 

みんなを引き連れて外に出て、校庭に咲く桜の木の内の一本に近づく。

 

 

「そう言えば、この後コトミネに呼ばれてましたよね?」

「確か入学祝いをしたいと言っていたな」

「それとはやてに話があると」

「あぁ…………コトミネにも色々と思うところがあるんだよ」

 

 

コトミネがはやてに話があると言って思い当たるのははやての実の親のことだろう。コトミネが今のはやてになら話せると決心したのなら俺に邪魔する権利は無い。これははやてとコトミネの問題だからな。

 

 

「…………綺麗だね」

「何度見ても良いものだな」

「時雨さーん!!みんなー!!」

 

 

校門の辺りでシャマルが手を振っている。その後ろには移動用に借りたのかマイクロバスが停車している。まぁこの大人数ならバスの方が速いよな。

 

 

「お父さーん!!」

 

 

校舎からは説明が終わったのかはやてたちがこちらにやって来る。しっかりと自分の足で立って、元気にしているはやてを見れるだけで、俺がやったことは正しくは無いが間違ってはいないと思わせてくれる。

 

 

「何、そんな桜の木を見てしんみりしなくてもいいさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これから死ぬまで、春が来る度に見ることができるんだ。この春をみんなで楽しんで、また春が来たらみんなで咲く桜を見に行こう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今がこんなにも満ちているのなら、俺が罪を背負った価値があると言うものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『調律者は八神結界の父』 happy end

 

 

 

 




これで『調律者は八神家の父』は完結になります。
ハーレムエンドがハッピーエンド
ヒロイン五人の個別エンドがグッドエンド
スノウを救うことが出来なかったらバッドエンド
エンディングとして作るならこんな感じですね。

時雨が何故地球にいるのかという疑問は原作でもシグナムたちは地球にいたからという理由で住まいは地球、ハラオウン家にある転移装置でミッドチルダに移動しているという風にしてあります。

保護観察官はクロノとリンディ、けどクロノは海の仕事があるのでほとんどリンディ一人。そしてリンディも時雨たちは逃げないと思っており、時雨たちも逃げるつもりはないので実際には監視はついて無いですね。

期間としては一年とちょっと、話数は百を越える長い作品となりましたが無事終えることができました。

予定では時雨を主役とした別作品をいくつかあげるつもりですがアンケートを取ることになるかもしれません。その時には活動報告にアンケートをあげるので参加してください。

それでは、この物語に付き合っていただいた方々への感謝の言葉を持ってこの小説を完結させていただきたいと思います。


ありがとうございました!!


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