調律者は八神家の父   作:鎌鼬

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ⅩⅣ last night ①

 

 

「ーーーーーーーーあぁもう!!数が多いっ!!」

 

 

襲い掛かってくる残骸の群れをバインドで拘束、そしてそのまま締め上げてバラバラにする。拘束用の魔法とはいえこうした使い方をすれば相手を傷付けることは容易いのだ。しかしそれで倒せた残骸は全体からすれば0.1%にも満たない数、即座に新手がユーノに向かってやって来る。

 

 

「文句を言う暇があるなら働け。黙ってワーキングワーキング」

 

 

そのやって来た新手は横から放たれた青い魔弾によって撃ち抜かれる。そしてその魔弾は消えること無く複雑な軌道を描きながらも運動量を損ねることなく別の残骸を撃ち抜いていった。管理局では非殺傷の魔法が義務付けられているがこの戦いではそんなことを言っている余裕はない。魔弾の主であるクロノの一存により魔導師全員が殺傷設定された魔法で戦っている。管理局員の内の何人かが良くない顔をしていたがクロノが予め用意しておいた辞表を叩き付けたことで黙らせることに成功していた。

 

 

「そうは言ってもこの数だよ!?彼もどっか行っちゃってるし、彼の連れてきた人たちもここにはいないし!!一体何を考えてるのさ!!」

「この数だからの判断だろうな」

 

 

残骸が魔弾を避けて飛び掛かって爪を振り下ろしてくる。それをクロノは避けて杖状のデバイスで顔面を殴った。

 

 

「一匹一匹が弱くても億を越える数だ、どうしても消耗戦は避けられない。だから時雨は敵の頭を取りに行って彼らには控えに回らせたのだろう。そうすれば僕たちが疲弊しても次があるからな」

「もしかしたら裏切るつもりなのかもしれないよ」

「それはない。時雨の様な人間は自分から言い出したことは必ず守るタイプだからな。こちらから彼の機嫌を損ねるような真似をしなければ彼は裏切らないさ。それに、ここで時雨が裏切ったとしても彼にはなんのメリットもないからな。自分から戦力を減らすような真似はしないだろう」

「‥‥‥‥よくあの人のことを信用できるね」

「執務官をしていると色んな人間を見るから嫌でも観察眼が鍛えられてな。それに彼はなんと言うか‥‥‥‥兄みたいで安心できるんだよ」

「あぁ‥‥‥‥クロノのお姉さんがあんなのだからね」

「ホントどうしてあぁなったんだか‥‥‥‥昔はまともだったのに急に人が変わって‥‥‥‥」

 

 

喋りながらも二人は手を止めることはしない。バインドで締め上げ、障壁で動きを阻害し、魔弾で残骸を撃ち抜いていく。

 

 

「ーーーーーーーーおらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

「うわっ!?」

「おっと」

 

 

勇ましい叫びと共にクロノとユーノに向かって何かが迫る。ユーノはそれを驚きながら、クロノは余裕を持って迫る何かを避ける。その正体はオレンジ色の鎖の形をした魔法だった。チェーンバインドと呼ばれる拘束用の魔法であるはずのそれは遠心力による加速で高速で振り回されて残骸を纏めて凪ぎ払っていく。

 

 

「ハッハッハ!!どうしたんだい残骸共ぉ!!そぉら掛かってこいよぉ!!」

 

 

チェーンバインドを振り回すというあり得ない使い方をしていたのはアルフだった。本来の徒手拳による戦闘スタイルは今回の戦いでは不向きと悟ったのか両腕にチェーンバインドを絡めて振り回すことで残骸の群れ相手に立ち回っていた。

 

 

「‥‥‥‥良い空気を吸っているな」

「それで済ませて良いの!?あれアルフだよね!?なんか僕の知ってるアルフじゃないんだけど!?」

「多分時雨への思いが天元突破したんじゃないのか?あの時雨の演説の後でアルフは時雨に壁ドンされてたからな」

「壁ドン!?何やってんのあの人!?」

「で、時雨に何か囁かれてからアルフはあのヒャッハー状態になってる。やる気が出る何かを言われたらしいな」

「~~~~~~ッ!!」

 

 

クロノの説明に思わずユーノは頭をガシガシと掻きむしってしまう。まぁ時雨がしたことは間違いではないのだ。士気が低いままに戦ってしまえば勝てるものも勝てなくなってしまう、闇の書勢の士気はこれ以上に無いほどに上がっていたが他のメンバーの士気はそこまで上がっていなかった。そこでせめてもと思いアルフに壁ドンを決行、甘い言葉を囁いてアルフのテンションを上げることにした。ちなみに時雨が言ったのは嘘偽りのない本心である。

 

 

その結果、ヒャッハーアルフが誕生した。

 

 

「今のアタシは阿修羅をも凌駕するぅ!!その程度でアタシを倒そうだなんてぇ!!まるで全然!!程遠いんだよねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

腕を一振り、チェーンバインドが唸りを上げながら残骸を弾き飛ばす。腕を一振り、チェーンバインドが唸りを上げながら残骸を二つに分けた。どうしてこうなったのかはさておき、今のところ一番の戦果を上げているのはアルフで間違いない。

 

 

「なんか僕の中でのアルフのキャラがガラガラと崩れていくんだけど‥‥‥‥」

「知らなかったのか?恋は、人を、変えるんだ」

「なんでワザワザ句読点を挟みながら説明したの!?」

「まぁアルフは一度時雨と良くない別れ方をしたからその反動があるんだろう。僕もエイミィの為にと思えば‥‥ヒャッハー出来るな、うん」

「嫌々、いきなりノロケ無いで。あとヒャッハーしなくて良いから」

 

 

その時、ユーノのバインドとクロノの魔弾を避けた残骸五体が跳躍して上から襲い掛かって来た。ここで二人が取るべき行動は回避か反撃、しかし二人は襲ってくる残骸に注意を向けなかった。何故なら対処する者がいるから。二人を襲おうとした残骸五体が高速で飛翔してきた物体に貫かれて消滅する。飛翔してきた物体の正体は剣。本来接近戦で使われる剣をこのような使い方をするのは彼らの中で一人しかいない。弓兵のサーヴァントのアーチャー、彼が遠く離れた地点から残骸を狙撃したのだ。クロノがアーチャーのいるであろう方向に向かってサムズアップするとその返事か剣の狙撃が降り注ぎ、二人の周りの残骸を一掃してくれた。

 

 

「さてなのはとアリス、アルフとフェイト、セイバーと魔術師たち、僕とユーノ、アーチャーは予定通りに動けているな」

 

 

僅かに空いた間でクロノは戦況を見渡す。時雨から貰っていた情報に従って事前に分けていたグループ通りにそれぞれが戦っていて負傷も見られない。アルフの無双は想定外だが。

 

 

「予定通りに、()()()()()()

 

 

そう、個々が奮闘しているとは言えども戦況は語るまでもなくこちらが負けているのだ。才能があり、努力も怠らない一流の戦士たちを集めたとしても無限に湧き出る雑多には敵わない。今は持ちこたえられているとしてもいつか疲弊して押し潰されるのが関の山だ。

 

 

それでも彼らは戦うしかない。この無限の残骸を指揮している者を時雨たちが打ち取るまで持ちこたえなければならない。

 

 

クロノは深呼吸を一度すると、向かってくる残骸の群れに目掛けて再び魔弾を撃ち出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「邪魔!!邪魔邪魔!!邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

 

 

大地を覆い尽くす程の残骸を掻き分けている三つの影があった。一度死して復讐者(アヴェンジャー)として呼び出された八神時雨と、彼の従者であるリニス、そして闇の書の騎士であるシグナムだった。とは言っても残骸を相手しているのは実質時雨一人だけ。彼が腕を振るう動作をするだけで残骸は切り裂かれ、吹き飛ばされ、蹂躙されていく。時雨からすればこの無限に湧き出る残骸は道端に転がる小石と同じだった。

 

 

転がっている小石を退けるのに息切れする者はいないだろう。時雨にとってはこの無限の残骸(アンリミテッド・デッドレイズ)を蹂躙することはそれと同じ程度の労力だった。

 

 

「時雨!!この方向であっているのですか!?」

「あぁ!!ビンビン感じるぜぇ!!あの寄生虫野郎は間違いなくこっちにいる!!」

 

 

残骸共を蹂躙しながら、時雨は空にある漆黒の太陽の方向に向かって駆けていき、シグナムとリニスもそれに従って着いていく。三人の使命はこの残骸を指揮している元凶を倒すこと。まずはどこにいるのかを探らなくてはならないのだが時雨は迷うことなく漆黒の太陽に向かって走り出したのだ。時雨のことを信頼しているとはいえシグナムが不安に思うのは仕方がないだろう。しかし時雨は間違いなく元凶が漆黒の太陽の側にいると確信していた。

 

 

そしてある程度太陽に近づくと残骸がいなくなった。恐らくここがあの残骸が漆黒の太陽に近づける距離なのだろう。どうして近づけないのかなど考える意味はない。何故なら、三人は目的の存在を知覚したのだから。

 

 

「見ぃぃぃぃつぅぅぅぅけぇぇぇぇたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

「ーーーーーーーーふん」

 

 

漆黒の太陽を崇めるような台座の上に立つのは白の魔術師、それを見つけた時雨は駆けていた速度をそのままに飛び上がる。時雨に気がついた魔術師は不愉快そうに鼻を鳴らして片腕をあげた。動作はそれだけだが時雨と魔術師の間に強固な障壁が現れる。膨大な魔力に任せて張られた障壁は宝具換算では対軍宝具おも防ぐことができる程の強度であった。

 

 

それでも、時雨からすればそれは酷く脆い物である。

 

 

「剛力っ!!乱神っ!!」

 

 

体を捻り、限界まで引き絞って放たれたのは魔力の込められていないただの拳。そしてその拳はただ力任せに魔術師の張った障壁を粉砕した。

 

 

「なっーーーーーーーー」

「斬る」

Go to hell!!(地獄に堕ちろ)Fuck you!!(糞野郎)

 

 

魔術師本人からすれば即席で張ったとはいえどそれなりの強度を誇る障壁、多少の時間稼ぎになるはずのそれは時雨の一撃で容易く壊されてしまった。その驚きが僅かな隙を生む。そしてその隙を見逃すほどリニスとシグナムは甘くはない。脚部を限界まで引き絞り、一気に解放して魔術師との間の距離をゼロにする。リニスの手には鎖付きの短剣が、シグナムの手にはレヴァンティンが握られて、それらは真っ直ぐに魔術師に向かう。

 

 

「「ーーーーーーーーなぁ!?」」

 

 

しかしそれは二人の驚きの声と共に届かなかった。必殺を確信した二人だったが横から現れた残骸とは違う影によって遮られたのだ。見たこともない新手の出現に即座に二人は距離を取ることを選ぶ。

 

 

現れたのはどこからどう見ても影としか言い様のない存在だった。全長は2m程、人の形はしているが黒い霧が集まっているだけの不安定な存在。そしてギチギチと不愉快な音をたてながら人間の頭部に当たる部分には三つの光球が渦のように回転していた。

 

 

「ーーーーーーーーおいおい、冗談にしちゃ過ぎるだろうが」

 

 

宙から降りてきた時雨はその影を前にして驚きを隠すことはしなかった。リニスとシグナムはその影のことをサーヴァントではないかと思っていたが時雨は正体を知っている様だった。

 

 

「時雨、あれが何か知っているのですか?」

「あぁ、あれは通称ペイルライダー。地球上で最も生き物を殺した存在‥‥‥‥病気が英霊化した存在だ」

 

 

そう、そのサーヴァントには英雄としての資質どころか人格すら存在しない。そもそも、それは人間ではないのだから。かつて黒死病の風を吹かせて三千万の命を奪い、ときにはスペイン風邪という名目で五千万の命を奪った。風に乗り、水に乗り、鳥に乗り、人に乗り‥‥‥‥様々な風を起こした【災厄】という名の騎手。【死の乗り手】(ペイルライダー)。人々から畏怖という形で信仰され、英霊となった現象がこのサーヴァントの正体だった。

 

 

「最悪だな‥‥‥‥あれは自由に病気を発病させることができる。あっちに行ったら間違いなく全滅するぞ」

 

 

時雨の懸念はたった今残骸と戦っている管理局勢と魔術師勢だった。サーヴァントである自分やリニス、カテゴリーとしては人に含まれていないシグナムならばペイルライダーの能力からは逃れることができるが人間ではそうはいかない。人である以上病魔からは逃れることはできない。この一手は魔術師の想像以上に時雨を警戒させた。

 

 

「これだけだと思うか?」

 

 

そんな時雨を見て愉快に思ったのか魔術師は笑みで顔を歪めながら次のカードを明かした。光が集まり人の形になる。これはサーヴァントが霊体から実体化するときの前兆。そして新たなサーヴァントが現れた。

 

 

黄金色の髪、黄金色の鎧。豪奢を極めた外観のサーヴァントは赤い双眼で三人のことを見下す形で顕現した。

 

 

「ーーーーーーーーギル?」

 

 

そのサーヴァントを知っていたリニスは思わずそのサーヴァントの名前を呼んでしまった。そう、新たに現れたサーヴァントは自分達の知るギルガメッシュだったのだから。リニスに名前を呼ばれたギルガメッシュは不愉快そうに眉間にしわを寄せ、

 

 

「そこの雑種、誰の許しを得て(オレ)の名を呼ぶ」

 

 

背後に黄金の渦を浮かべ、そこからきらびやかな宝剣と宝槍を迷うことなくリニスに向かって射出した。加減無く撃ち出された宝剣宝槍は音を置き去りにして大気を切り裂きながらリニスに迫る。そしてーーーーーーーー

 

 

「ーーーーーーーー何?」

 

 

間に割って入ってきたシグナムの手によって弾かれた。宝剣を地面に向け、宝槍を空に向け弾いたことで宝剣は地面にクレーターを作りながら突き刺さり、宝槍は遥か後方へと飛び去っていく。

 

 

「リニス、あれはギルとは別物だ。時雨、あれの相手は私がします」

「シグナムありがとうございます。なら私はあの気持ち悪いのの相手ですね」

 

 

リニスとシグナムが前に出る。あの魔術師の相手は時雨がしなければならないと考えていた二人は魔術師の呼び出したサーヴァントの相手をすることを決めたのだ。

 

 

「ーーーーーーーーリニス、シグナム」

 

 

そして時雨はそんな二人のことを後ろから抱き締めた。

 

 

「お前たちならあいつらに勝てる。何故ならリニスは俺の従者でシグナムは俺の騎士だからな。だからさっさと勝って俺があれを倒す前に戻ってこい。取り分が無いって怒っても無駄だからな」

「ふふっ、分かってますよ。手早く倒して戻ってきますからね」

「ええ私もです。あの憎たらしい顔を殴るためにあれを切り伏せてきます」

 

 

リニスとシグナムは時雨の突然の行動に嫌な顔せず、むしろ嬉しそうな顔で応えてーーーーーーーーリニスはペイルライダーに、シグナムはギルガメッシュに向かって突貫していった。

 

 

「貴方の相手は私ですよ」

「そらギルガメッシュ、負けるのが怖くなければ着いてこい」

「ーーーーーーーー」

「傀儡風情がーーーーーーーー我が財に傷を着けるだけではなく(オレ)を侮辱するだと!?万死に値する!!」

 

 

ペイルライダーは音をたてずに風に乗り、ギルガメッシュは怒りで顔を赤くしながら黄金の渦から黄金の船を取り出して、反対の方向に駆けていったリニスとシグナムを追いかけていった。

 

 

リニスがペイルライダーを、

 

シグナムがギルガメッシュを、

 

そして残った時雨が魔術師と対峙している構図となる。

 

 

「よう寄生虫、お前が俺と殺るつもりか?無駄なことするなよ」

 

 

時雨は開口一番で魔術師に向かいそう言い放った。確かに魔術の技量ならば時雨よりも魔術師の方が上なのは語るまでもない。しかしだからといってそれが直接戦闘での強弱であるのかと聞かれれば否であるとしか言えない。魔術師の領分はあくまで後衛職、前衛職である時雨と一対一で戦ったとしても善戦は愚か抵抗することすらままならないだろう。

 

 

その事は魔術師も理解している。理解してながら、魔術師はその顔に浮かべた笑みを崩すことはしなかった。

 

 

「私が貴様に対して何の対策もしていないと思ったか?」

「思ってねぇよ、考えれば分かることじゃねぇな。あるなら出せ、それを見事撃ち破ってお前のことを完膚なきまでに叩きのめしてやるから」

「減らず口を‥‥‥‥良かろう!!来たれ!!」

 

 

魔術師の前に魔法陣が浮かび上がる。それは時雨も目にしたことがあるサーヴァントを召喚する為の陣。この空間に漂っている只でさえ濃厚な魔力が魔法陣に集められて密度を増す。

 

 

「ペイルライダーは対人のジョーカー、ギルガメッシュは対英霊のジョーカー。ならばこやつは貴様に対するジョーカーである!!」

 

 

魔力が必要な量溜まり陣が発光、目も眩む程の強い光を放つ。魔術師が対時雨と呼んだ英霊が呼び出されたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーーーーヒュー、こいつはおったまげた。まさかあんたが呼び出されるとはな」

「その割りには顔が驚いておらぬぞ?皐月原時雨」

「いやね、まさかあんたが~って驚いてる自分とやっぱりあんたか~って納得してる自分がいるのよ。俺と対になれるような存在はお前しかいないなからなぁ。そうだろう?()()()()

 

 

魔術師によって呼び出されたのは旧日本軍の軍服を纏い、軍帽を被った男性ーーーーーーーー時雨の実父にして、月の玉座にいるはずの甘粕正彦だった。甘粕はすべてを察しているのか顔に浮かべている笑みを崩すことはしない。ここで常人ならば自分の関係者が呼び出されたことで味方が増えたと喜ぶだろう。しかし、時雨はそうは考えなかった。そして甘粕もそうしようとは考えていなかった。

 

 

「一応聞いておくか‥‥‥‥手を組むつもりは?」

「無い。貴様にいかなる事情があろうが俺がここにいるのだ。ならば俺は俺の信念に従い動くまでよ」

「ですよねー‥‥‥‥ナハトヴァール」

『了解、隔離開始します』

 

 

甘粕の返答を予想通りだと苦笑いしながら時雨は左腕に付けられていた蛇を模したブレスレットーーーーーーーーデバイスであるナハトヴァールに指示を出した。ナハトヴァールは時雨が何を求めているのかを察して時雨と甘粕と魔術師の三人を対象にしてこの世界からズレた世界にへと三人を招いた。

 

 

『世界軸をずらした世界に招き入れました。これでどれだけ被害を出そうが元の世界軸には一切影響はありません』

「そいつは上々。聞いたな、甘粕。これでお互い本気で殺れるぞ」

「それは良い。前の世界では被害を出し過ぎてしまったからな。感謝するぞ、皐月原時雨よ」

「礼を言うくらいならさっさと自殺してくれないか?」

「それは無理な相談だ。貴様も俺の信念は知っているだろう?ならはその魂の内なる輝きを見せてみろ」

 

 

甘粕が腰に下げていた軍刀を抜くと気配が変わった。

 

 

甘粕はきっとこの世界に生きている人間の誰よりも人間という種族を愛している。無論それは無差別な人間を指すのではなく、詳しくいうのなら立ちはだかる試練を乗り越えようと奮起している人間の姿を愛しているのだ。故に甘粕は試練から逃げて堕落する人間を人間とは認めず家畜と呼ぶ。そして甘粕は勇気を振り絞って試練を乗り越えようとする人間こそが真の人間であると誰よりも信じていた。

 

 

だから甘粕は人間の敵対者として立つのだ。人間を誰よりも愛しているからこそ、自分自身が人間に対する試練となってその勇気の輝きを見届ける為に。

 

 

そしてそれは八神ではなく皐月原を名乗っていた時雨に殺されて、月の玉座に辿り着き、サーヴァントとして呼び出された今でも変わることはなかった。

 

 

甘粕は、試練となって時雨の前に立ちはだかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我こそが!!裁定者(ルーラー)のサーヴァント!!甘粕正彦である!!さぁーーーーーーーーこの試練(おれ)を乗り越えてみせよ!!!」

復讐者(アヴェンジャー)のサーヴァント、八神時雨だ。俺の家族に害をなし、俺の前に立ち塞がるというのなら、神仏森羅万象だろうが鏖殺する」

 

 

そして甘粕正彦(人を愛する魔王)と、八神時雨(家族を愛する死神)は、己の信念を貫く為の殺し合いを始めた。

 

 

 

 

 






ヒャッハーアルフ爆誕。恋する乙女は強い(確信)


敵側として慢心王と病原菌ライダー登場。安定していないとはいえど【根源】への道は開いている状態なので魔術師はそこから【座】に干渉して二騎を呼び出した。慢心王はすでにギルとして顕現しているので【座】にあった記録から再現された偽者(フェイカー)であるのだが慢心王本人はその事を知らない。そして原作よりの性格。


アマッカス君臨。ピースマンを通してラスボス四天王全員の頼みごとを時雨がしようとしているのは知っているがそれはそれ、これはこれと割り切って試練を与えようとするまさに魔王の鏡である。時雨はアマッカスの本性はどうすることも出来ないと理解納得しているので交渉は一切せずにぶっ殺すことを決めている。
ルーラーとして呼び出されたのは人類の為に必要悪となって人類を導こうとしたから。属性でいうのなら正義・混沌。でも人類の為と言いながら人類をコロコロしてるのも間違いではない。


現在の戦局
時雨VS魔王甘粕正彦
リニスVSペイルライダー
シグナムVS慢心王ギルガメッシュ
管理局勢&魔術師勢VS無限の残骸
闇の書勢は悪巧みの最中


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