調律者は八神家の父   作:鎌鼬

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リリカルなのはのSS始めます。

感想評価ドンドンください


スタートは原作から四年前、原作キャラが五歳頃です


原作前
第1話


 

 

海鳴市に存在する某病院の一室で一人の男が眠っていた。髪の色は茶髪、顔つきは中性的で見る人間によっては女とも男とも見えてしまうがそれでも男だ。頭には怪我をしているらしく少し血で滲んだ包帯が巻かれている。

 

 

そして腕に繋がれている栄養剤がすべて彼の体の中に入りきった頃に男は目を覚ました。体を起こして現状を把握するように周りを見渡して一言、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・おはよーございます」

 

 

どうやらこの男、かなりマイペースな性格らしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これからどうするかねぇ・・・・・・」

 

 

病院から出た俺は近くにあった公園のベンチに座ってこれからどうするかをタバコを吸いながら考えていた。

 

 

退院したらな病院に帰ればいい?残念だけど俺に家はない、もっと言えばこの世界の人間でも無い。詳しく知りたい方は俺の頭の中に流れる回想をご覧くださいませ~。

 

 

 

 

 

 

 

 

~回想~

 

 

「ちーす、皐月原時雨君ね?お前死んだから」

「なんと軽い死亡宣告!!・・・まぁトラックに跳ねられた後にロードローラーでひかれれば誰だって死ぬよな~。あれ?これってもしかして神様のミスで死亡ってやつ?」

「ノンノン!!残念ながらそういうのではない。実は君に仕事を頼みたくてさ~。二次創作の小説って分かる?あのアニメの世界に転生するってやつ。実はある世界に転生者を三人送ってちゃつてさ、あこいつらは君の言ったようにミスで死亡した奴らね。でその内の二人はわりかしまともそうなんだけど残りの一人が絵に描いたような奴でさ~「俺の時代来たぁぁぁ!!」とか「嫁たちでハーレムを作る!!」とか平気で抜かすのよ。そいつのせいで予期せぬイレギュラーとかが出てきそうで心配になってきたから抑え役として君にいってほしいの。もちろんいくつか特典を渡すからやってくれるかな?」

「いいとも、任された」

「軽っ!?それじゃあ逝ってらっしゃーい」

「ちょ!ま!字が違っ!!」

 

 

 

 

 

~回想終了~

 

 

「むちゃくちゃ言ってくれるよなぁ・・・あいつは」

 

 

はぁ~とため息と一緒に煙を吐き出す。いきおいで了承してしちゃったけどあのまま死にたくなかったのは本音だ、だけどせめてどの世界に来たのかぐらいは教えてほしかったとです。

 

 

手持ちにあるのはあいつから渡されたであろうトランク一杯の万札(おおよそ五千万円だと思われる)、タバコとライター、それと七種類の絵が描かれたタロットカード・・・・・・最後のカードは物凄く見覚えがあります。

 

 

「・・・・・・ん?」

 

 

ギィッギィッと金属が軋む音が公園の入り口から聞こえて、なにかと思い顔を向ければそこには車イスに乗った少女が一人でいた。・・・・・・おかしい、車イスに乗ってるということは体が不自由ということ。そんな奴が一人でこんなところにいるのがおかしい。加えて顔が物凄く暗い。何があったらあんな顔が出来るんだ?

 

 

「どうしたんだ?そんな暗い顔をして」

「・・・なんでもあらへん」

「なんでもないじゃねぇよ。いいか?俺は辛気臭い顔が嫌いなんだ。だからその顔変えさせてもらうぜ」

 

 

ポケットからビー玉を二つ取り出す(公園のベンチの上に放置してあった。全体重かけてビー玉の上に乗ったからアッー!!と叫んでしまった)。

 

 

「ビー玉?」

「そ、ビー玉。よーく見てなよ」

 

 

手のひらにビー玉を乗せて“魔術回路”を起動させる。元来魔術師が持っているはずのそれを何故俺が持っているのか?予想しか出来ないがたぶん俺を送ったあいつが何かをしたのだろう、というよりそれしか考えられない。だけど使い方は十分に理解している。なら問題は無い。

 

 

ビー玉に魔力を流して“流れ”を作る。ゆっくりと、渦を作るようにぐるぐると、その内に二つあったビー玉は形を無くして液体のように泥々に溶ける。少女の顔が暗い物から驚いた物になる、けどまだ驚いてもらう。“流れ”を魔力で誘導、液体がゆっくりと隆起し出す。

 

 

「おら、完成だ」

「・・・・・・」

 

 

魔術回路を止める。出来上がったのはガラス製のピカチュウ、それを少女に手のひらごと差し出す。

 

 

「やるよ」

「え?でも・・・」

「いいから受け取っとけって、俺はこれ要らないから」

「うん・・・・・・ありがとうございます」

 

 

俺の作った手のりピカチュウを受け取って少女は少しだけ笑った。やっぱり辛気臭い顔よりもこういう顔の方が良いよな。

 

 

「はやて、ここにいたのか」

「あ、おじさん」

「うん?しりあ・・・・・・」

 

 

男性の声が聞こえたのでそちらを見ると予想外の出来事に言葉を失ってしまった。そこにいたのは金髪の神父服を着た男性、そして聞こえてきたのはジョージボイス、どこからどうみても外道神父の言峰綺礼神父ですね本当にありがとうございます。

 

 

やべぇ・・・俺詰んだかも。黒鍵とかマジ☆カル八極拳とか叩き込まれたりホーリーワードとか唱えられたり油断してる隙に後ろからアゾット剣でアゾられたり。出来るだけ背中を見せないようにしよう。

 

 

「む?はやて、こちらの方は?」

「みてみて!!これをうちにくれたん!!」

「これは見事なガラス細工だな。紹介が遅れた、私はコトミネ・キレイソン服装からわかると思うが神父をしている」

「ご丁寧にどうも。俺は皐月原時雨、通りすがりの暇人です」

「はやて、そろそろ戻らなければあいつらが煩いぞ」

「・・・・・・戻りたくない」

 

 

コトミネの戻るという言葉にはやては俺の服の袖をつかんで否定の意を示した。はやてが嫌がっているのはコトミネじゃない、なら戻った先にいる奴か?

 

 

「それは困ったな・・・皐月原、といったか?時間は空いているか?」

「オーケーオーケー、することがなくてどうしようか悩んでた位だ。いくらでも付き合うよ」

「ならば着いてきてくれ」

 

 

そこまで言うとコトミネははやての乗っている車イスを押して歩き出す。俺はそれに従って着いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コトミネに案内された先は葬儀所とでも言うのだろうか、白と黒の布がかけられて『故八神宗次・奏』とあるから間違いないと思うが。

 

 

「ここでは先日に事故死した八神夫妻の葬式を行っている。ちなみに言うと私と八神夫妻は旧知の仲でな、この子の後見人も私が兼ねている」

「・・・・・・」

 

 

予想していたよりも重すぎる事態に言葉が続かない。コトミネはなんで俺をここに連れてきた?困惑する俺を見て愉悦に浸るためか?

 

 

「はやてはここで待っていなさい。皐月原こちらだ」

 

 

はやてをロビーに待たせてコトミネは施設の奥へと俺を誘う。そこには襖がありたくさんの靴が置かれていることから関係者の休憩所だと推測することができる。

 

 

その中からは怒鳴り声や言い争うような声が聞こえ、その内容に俺は唖然とした。

 

 

曰く、アレは自分が引き取る

曰く、金が欲しいだけだろう

曰く、アレは要らないから金だけを寄越せ等々

 

 

「・・・きったねぇな、これが欲にまみれた大人の姿ってか?こんな大人にはなりたくないねぇ・・・・・・で、あんたは俺に何をさせるつもりだ?」

「お前のことだ、おおよそとはいえ予想はできているのだろう?」

「あいつ、はやてを俺に引き取らせるつもりだろう?良いのか、知り合いの形見を知らん奴に引き取らせるようなことをして。あと絶対こいつらがいちゃもん付けると思うんだが?」

「少なくともここにいる連中よりもお前ならはやてのことを任せられる、これでも人を見る目はある方でな。それと後者についても問題は無い。あいつらを黙らせれるだけの武器はあるのでな」

 

 

そう迷うことなく言い切るとコトミネは襖を開けて部屋に入る。中にいた奴らは入ってきた人物がコトミネだと分かると媚びるような顔でコトミネに話しかけた。

 

 

「おぉコトミネさん!!はやては見つかりましたかな?」

「えぇご安心を、彼女はロビーで待たせていますので」

「ところでそちらの方は?」

 

 

入り口のところにいた俺に気づいた何人かが値踏みをするような目で見てくる。当然だな、こいつらからすれば俺はこいつらにとっての大切な金の卵を盗もうとする泥棒にしか見えないだろう。

 

 

「彼は私の知人で皐月原時雨と言います。私は彼にはやてを引き取ってもらうつもりでず」

「なぁ!?コトミネさん!!こんな子供にはやてを任せるつもりですか!!」

 

 

子供って、多少童顔に見えるかもしれないけど俺は二十歳だからな?成人してるからな?

 

 

「そうです。彼ならはやてを任せられると思っていますので」

「し、しかし!八神家となんの繋がりも無いこんな奴に任せるなど!!」

「クドイですよ。それと今思い出しましたが私は生前に八神夫妻からこのような物を預かっていましてね」

 

 

コトミネが取り出したのは一通の便箋。ここまでの流れから察するにそれは八神夫妻が遺した遺書なのだろう。それをコトミネはこいつらの前で堂々と読み上げた。

 

 

「『コトミネへ、いつか僕たちが死んでしまった時のためにこれを遺す。

僕たちがいなくなりはやてが一人になったとき、コトミネか、君の信頼における人物にはやてを任せたい。よろしく頼む』

内容は短いですがこれは立派な遺言です。故に私は私の信頼における彼にはやてを任せたいと思っています」

「じ、冗談ではない!!そんなどこの誰ともしれん奴に任せるなど!!」

「うっせーよ、おっさん」

「なっ!?」

 

 

あぁ醜い、醜い醜い醜すぎて思わず口が出てしまった。はやてが光だとすればこいつらはその光に群がる蛾。いや、はやてのもつ金に群がるウジ虫が妥当なところか。

 

 

「正直に言えよ。あんなガキは要らない、欲しいのは金だけだってさ。」

「そ、そんなわけが「ならこれは要らないよな?」」

 

 

トランクに入っていた札束を投げる。帯の千切れた万札は空中をヒラヒラと舞い、コトミネを除いた全員の視線を集めていた。

 

 

「ほら、まだまだあるぜ?」

 

 

トランクを部屋の中心に投げ入れる。そこに詰められた金を確認したこいつらは我先にと言わんばかりにトランクに群がった。そして再び始まる罵り合い。老若男女関係なく欲望をさらけ出した人間の姿がここにあった。

 

 

「あぁなんて醜い」

「だが欲望をさらけ出した姿を見るのはなかなかに面白い物だな。ところで金をどぶに捨てて良かったのか?見たところアレが全財産に思えるのだが?」

「あんたなんで聖職者なんてしてるんだよ、絶対職場間違えてるだろう。心配しなくてもきちんと抜き取ってあるよ、五百万程だかな」

 

 

俺からすれば吐き気がする光景でもコトミネからすれば娯楽に早変わりらしい。やはり外道神父。

 

 

「ともあれ、色々としなくてはならないことは山積みだ。今夜は眠れないと思え。」

「まぁそれよりも先にはやてに挨拶と報告が先だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

葬儀所のロビーで車イスに乗った少女の前に膝をつき手をとる男の姿があった。

 

 

ーーーーはやて、今日から俺が君の親代わりになることになった。

 

 

ーーーーお父さん?

 

 

ーーーー言いやすいならそれでいいけど君の本当の親は二人だけということを忘れないでほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして別世界からやって来た男は八神はやての義父となった。






強引でしたかね?でもはやては初対面でも時雨のことをそこそこ信用しています。


そして現れる外道神父・・・っ!!これ一度きりと言うわけではなくこれからもちょくちょく出てきます。

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