戦争を知る世代   作:moota

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こんにちは、mootaです。

読んでくださってる方いるのかな?
少し遅くなりました、ごめんなさい。

皆様はどのようにして小説を書かれているのでしょう?
私はスマホのメモアプリに書き、それをコピペしてるのですが、どんな感じなのでしょう。気になりますね。


あ、小説のなかで少し表記を変えました。
変更前 12小隊
変更後 12個小隊

小隊の数の書き方で、“個”をつけました。
この方が少し見やすいかなと思いまして。


ではでは、よろしくお願いいたします。


第九話 緊急学徒動員策

第九話 緊急学徒動員策

 

 

 

火の国暦60年7月1日 アカデミー

 

ふしみイナリ

 

 

 

 

 

「緊急学徒動員策が発布された・・・ここ、アカデミーの生徒も戦争に参加する。」

 

 

 

 

先生の言葉に教室はどよめく。

ざわざわ、と。

 

今の言葉の意味を理解できた生徒は何人いただろう?

先生の悪い冗談だろうか。

緊張感なく授業を受ける私たちへの罰のつもりだろうか。

それとも、訓練の一環か。

 

 

 

 

いや、どれとも違う。

先生の顔はとても冗談を、嘘を、言っているような感じではない。

 

 

教室はまた、静まり返っていた。

 

 

 

 

「先生、あの、その緊急学徒動員策というのは本当なのでしょうか?」

隣にいたハナが静寂を破って聞いた。

この教室にいる生徒のほとんどが聞きたかった質問を。

 

 

 

「はい、本当です。」

先生の声はどこかいつもと違う。

緊張を帯びているのが分かる。

自分が言っている言葉がどれほど恐ろしいことか認識しているように。

 

 

「緊急学徒動員策は本日付で発布されました。これはその名前の通り、正規部隊に加えて、アカデミーの生徒もそれに参加することを決めたものです。」

 

 

・・・火影様のお考えなのかな。穏健派で知られる三代目がこれを考えるのだろうか。

 

 

ただ、近年、木の葉隠れの里は他里に比べると戦力不足が大きな問題となっている。第二次忍界大戦、岩隠れの木の葉急襲、そして現在の岩隠れとの戦争、立て続けに戦争を繰り返してきた木の葉にとっては戦力の不足が加速していった。特にあの夜・・・岩隠れによる木の葉急襲は多くの被害を出した。里を奇襲され、戦場で生き残った人も、後方にいた人も、戦場に行くはずのない人も犠牲になった。それで戦力そのものの低下、予備戦力の低下、後方支援能力の低下を引き起こし、戦場で必要とされる需要に対して、供給が追い付かなくなっているのだ。

 

まさに、“猫の手”でも借りたい状況なのだろう。

 

 

 

・・・・考えに耽っているとふと、横にいるハナに目がいった。

 

 

震えている。

腕がとかそんなんじゃない、全身が震えている。

怖いのだろうか。

 

 

 

戦争では、昨日あった人が今日いない。

元気だった人が腕を、脚を、思いを失くして帰ってくる。

帰ってきたとしても、

いつもなにかに怯えたような人になって戻ってくる。

 

ただでは済まないのだ、戦争は。

みんな・・・・何かを失って帰ってくるんだ。

 

 

 

 

怖いに決まってる・・・。

 

 

 

 

「先生、私たちはどういう任務につくのでしょうか?」

そんな不安な気持ちを振り払うかのように質問する。

 

 

「みなさんは簡単な任務です。後方支援をすることになります。大丈夫、みなさんが前線に出ることはありません。安心してください。」

 

 

教室は少しほっとしたような空気に包まれた。

横にいるハナも少し緊張が解けたような感じ。

 

少し教室がざわついてきただろうか。

きっと不安だったものが少し解け、お互いに話す余裕が出来たのだろう。

生徒同士話している声が聞こえる。

 

“俺なら前に出ても大丈夫だぜー”

 

“後方なら安全だよね”

 

“ここで活躍して一気に火影だ!”

 

“やる気てできたー”

 

 

そんな言葉が聞こえる。

 

 

 

 

「さぁさぁ、静かに!これから任務を共にするチームを発表します。スリーマンセルで組み、隊長に中忍、上忍のどちらかが付きます。チーム分けはこちらで決めました。名前を呼びますのでチームを確認し、その後隊長と打ち合わせをして今後の予定を決めてください。」

 

 

 

生徒たちはいつの間にか、遠足にでも行く気分になっているような感じだ。

ワイワイと叫び、自分が活躍するような未来を話し、期待を抱いている。

高揚し、騒ぎ、浮かれている。

 

 

 

僕はそんな光景を外から見ているような感覚だった。

まるで、劇場で喜劇を観ている観客のように。

大きな赤いカーテンが目立つ舞台、その舞台で躍り狂ったように走り回る役者。アハハと高い声で鳴き、ケラケラと笑い、うそのような自分の武勇伝を大声で話す。

 

 

 

そんな感じだ・・・

 

 

 

後方支援なら大丈夫だと、誰が決めたんだろう。

前線に出ないから大丈夫だと。

 

戦争に絶対はない。

戦況によっては前線が後方に、後方が前線になることもある。

 

戦争に出るからには“死”を覚悟しないといけない。

 

自分の“死”

 

仲間の“死”

 

敵の“死”

 

 

自分だって偉そうに言ってるけど、戦場に出たことなんてない。

でも、大切な人を無くす気持ちは知っている。

 

心にポカンと大きな穴が空いたように何も考えられなくなる。

その大きな穴には、虚しい気持ち、悲しい気持ち、嘆くような気持ち、そんな苦しくて重いものしか残らない。

 

 

そんな気持ちは二度としたくない。

 

 

 

 

不安が僕を押し潰しそうだった。

ぎゅっ、ぎゅぎゅって。

 

 

 

 

 

 

 

同日 木の葉隠れの里 役所 執務室

 

三代目火影

猿飛ヒルゼン

 

 

 

 

 

 

執務室は暗く、重い空気が漂っていた。

まるで戦場のように負の気持ちが場を占めており、鋭い緊張が張りつめている。

 

 

 

「ヒルゼン、まだ迷っているのか?もう決まったことだ。」

しゃがれた低い声が響く。

 

声の主は、黒い大きな着物を羽織っており、右手は着物の中なのか隠している。それと同じく右目は包帯で覆っており、まるで大怪我をしているようだ。しかも、杖をついている。その目はタカのように鋭く、話している相手を睨んでいる。

 

 

「しかし、ダンゾウ、未来の木の葉を支える子供たちを戦場に出すなど、馬鹿げておる。」

悔しくて、声が少し掠れ気味になる。

 

 

 

「馬鹿げているのはお前だ。未来も何も、今を生き延びねば里に将来はないのだ。」

カンっという音を立てて、杖の先を床に叩きつけた。

 

 

「お前は本当に今の里の状況がわかっているのか?他里に比べ、木の葉は戦力が大きく削がれている。」

 

低い声で立て続けに痛いところをついてくる。

昔からそうだった。こやつの言うことは正しいのだ。ただ、それが道徳的に、心情的に理解されない。

 

 

 

わかってはいるのだ・・・・もはや、こうするしかないことも。

だから、大名様を交えた会議でもダンゾウの意見を抑える事が出来なかった。

 

 

ただ、気持ちが許さぬ、大人たちが始めた戦争に無力の子供まで巻き込んでもよいのかと。

 

 

 

しかし・・・

木の葉の戦力は今や、300。小隊にして75個小隊。

岩の戦力は500。小隊にして125個小隊。

現実は火を見るよりも明らかだ。

 

敵は強かで、姑息だった。戦争が始まる前にこちらの戦力を削ぎ落とし、主力派の能力を把握させない。こちらは直接の戦闘でも、情報戦でも遅れを取っている。

 

 

 

「もういいな?お前は火影だ。覚悟を決めろ。でなければ、火影を後に譲れ。」

厳しい口調で問い詰めてくる。

 

 

一瞬、ダンゾウの目を見る。

しかし、すぐに逸らし窓の外を見る。

動揺しているのを隠す為だ。

 

 

街が見える。

栄え、人の活気が絶えないこの木の葉も、里を襲われたあの時はとても、静かだった。

倒壊した建物、子供のぬいぐるみが落ちている道、怪我をした人、亡くなっている人、悲しいものがあの時里を包んでいた。

 

 

初代様、二代目様のお二方から託されたこの木の葉という大きな家族。

何としてでも守らねばならぬ。

そして、後世に繋いでいかなくてはならぬ。

あのような目にもう二度と遭わせてはならない。

 

 

 

まだ、納得は出来ぬ。

しかし、前に進もう。

それが今、わしに出来ることだ。

 

 

もう一度、ダンゾウの方に目をやり、今度は逸らすことなくしっかりとした口調で言う。

「わしは火影として責任を持つ。里を、民を守らねばならぬ。」

 

 

 

 

 

「・・・そうか、ならしっかりとしろ。」

ダンゾウは目を逸らしながら小さな声で言った。

 

 

 

 

そのままゆっくりと背を向け、コッコッコッと杖をつきながら執務室を出ていった。

 

 

それを見送り、また窓の外を見る。

ふぅ、と溜め息をつく。

ただ、何も解決したわけではない。

気を引き締めなくては。

 

 

 

コンコンコン

 

 

扉をノックする音が聞こえる。

後ろを振り向きながらノックに答える。

 

 

「どうぞ。」

 

「失礼します。」

扉を開けて入ってきたのは、奈良シカクであった。

頭が切れ、若くもリーダーたる覇気を持つ青年だ。

普通の服ではなく、破いたような服を着るのはよくわからんが・・・。

 

 

「天戸衆と接敵したものから話は聞けたかの?」

側にあった椅子に座りながら質問する。

 

 

 

「はい、聞けました。結論から言いますと・・視覚を奪う・・そのような感じだと話しておりました。」

 

 

「視覚を奪う?」

聞いたことがないな、幻術の類いだろうか?

 

 

「ただ、これ以上のことが分かりませんでした。彼はどうしてそうなったのか、よく覚えていないようでして。」

シカクは申し訳なさそうに言う。

 

 

「情報部の山中いのいちの術で記憶を探りましたが 、記憶はその部分だけが不鮮明で分かりませんでした。いのいちは恐らく、とても強いショックを受けたのだろうといっておりましたが・・・。」

 

 

「いや、これだけでも少し進めたのぉ。なかなか、情報が入らん奴等じゃが、少しずつ少しずつ包囲を狭めていけば・・・掴めるはず・・・続けて頼む。」

 

 

 

少し座っているのが疲れたか、そう思い、椅子から立ち上がる。

 

ん?そういえば・・・

「接敵した本人の小夜啼トバリの様子はどうだ?」

 

 

 

シカクもあ、そうだというような顔をして答える。

二人してひどいな・・・

「重症ではありましたが、回復の傾向を見せています。見つけたはたけ隊長の処置がよかったようで。」

 

 

 

「そうか、ならよかったの。復帰したら後方に回すか・・・」

戦争を体験したものの気持ちはよくわかる。

特にあのようなひどい撤退戦は、心を病ませる。

 

 

 

 

「そうですね。その方がいいかもしれません。・・・例えば、アカデミーたちの小隊長に、とかですか。」

ふむ、と整えているあごひげを触りながら答えた。

 

 

 

それにつられて私もあごひげを触ってしまう。

「うむ、その考えは良いかもしれんな。」

 

 

 

 

ふと、窓のほうに目をやると向かいの屋根を白い何かが走り抜けた。

 

ん?なんだ・・・?

白い・・・狐か?

 

 

・・白い、狐・・・ふしみイナリか、

そうか、彼も戦争に出ることになる。

 

 

 

 

 

彼の身にまだ何も起きていないようだが、いつか起こるのだろうか。

 

 

 

あの子が、

 

 

あの子が“憑代様”に成るのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 




最後まで読んで頂いてありがとうございました。

だんだんとイナリが戦争に出ることになってきました。
本編のような感じですね。


あ、あと、木の葉や岩隠れの戦力はオリジナル設定です。
原作では暁と戦う際に、綱手さんが20個小隊?用意してました。戦争するには少なすぎるので、私の想像と妄想で設定しました。


今後ともよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。

気温が上がるそうなので、温度差で体調をくずされませんようにお気をつけて。

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