黒のスピラ冒険記   作:通りすがりの熾天龍

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ティーダサイドより、ユウナ救出です。
味方戦力はチートの領域にドップリ浸かってます。

んでもって激甘注意報。


想いは時に無限の力となりて

「ユウナ!」

そう叫びながら突撃する俺。

皆が後に続く。

銃弾が降り注ぐがフラタニティで全て弾く。

そのことに動揺したのか、銃弾の雨が一時的に止んだ。

その隙に一気に距離を詰める。

と、最後の階段の中程でキノックたちが立ちふさがる。

その数はキノックを含めて前回の3倍以上、10人。

奴らはすでに銃を構えている。

「茶番は終わりだ」

キノックのその言葉とともに、後ろからも同数の兵士。

俺はフラタニティを階段の床に突き刺す。

「悪いな、エボンの秩序のためだ」

そういうキノックにアーロンが言い返す。

「教えに反する武器のようだが?」

「時と場合によるのだよ」

そう言うキノックの手は若干震えている。

 

その時、ユウナが動いた。

隠し持っていた杖を構え、シーモアに向き直る。

「偽りの花嫁を演じてまで、私を異界へ送りたいと?」

ユウナは答えない。

「強情な方だ。それでこそ、わが花嫁に相応しい」

ユウナは黙って異界送りを始めようとする。

しかし、

「やめい!」

マイカが止める。

「この者どもの命、惜しくはないのか」

ユウナの構えが緩む。

「そちの選択が仲間の命運を決める。受け入れるか、見捨てるか、どちらを選ぶのだ?」

ユウナが俯き、その手が下がりそうになる。

 

「オーバードライブ」

「何っ!?」

「《ヘイルブリザード》!」

瞬間、俺たちを囲んでいた兵士がもれなく凍りついた。

一応全員息ができるように、顔だけは凍らせてないが。

この時のためにキリトにアイデアを聞いてつくっておいたオーバードライブだ!

「馬鹿な!? 仲間を全く巻き込まずに兵士だけを凍らせただと!?」

マイカが驚愕の声を上げる。

「足の間を通して氷を張っているのさ。これなら仲間を巻き込まずに敵だけを凍らせられる」

それを聞いたワッカたちが足元を見る。

そこには足の間を通るような氷の線。

「ユウナ、思いっきりやれ!」

俺の言葉にユウナが頷き、再び構える。

しかし、マイカはまだ引かなかった。

後ろに合図を送ったマイカ。

宮殿の最上部から出てきた一人の兵士。

その腕の中には恐怖のせいか動けないユイちゃんの姿が。

「ユイちゃん!?」

ユウナが声を上げる。

「この娘の命が惜しければ、杖を捨てよ」

そうユウナに命令するマイカ。

くそっ! ここでユイちゃんを人質に使われるなんて!

再びユウナが杖を下ろそうとした。

 

武装完全支配術(エンハンス・アーマメント)!」

その瞬間、俺たちから見てユウナたちが居る更に奥。

最上部の部屋が漆黒の奔流と花弁の嵐、紅蓮の業火によって轟音とともに吹き飛ばされた。

破壊されたそこから大量の粉塵が舞い散る。

その中から神速と言っても足りないほどのスピードで人影が飛び出してきた。

超神速の人影はユイちゃんを抱えていた兵士を空高く跳ね飛ばす。

そのままユイちゃんを抱えて俺達の前へ。

キキキっという音が出るほどの急ブレーキを掛け、体を反転。

「ユイちゃんは返してもらったわよ」

超神速でユイちゃんを取り返した女性が不敵な笑みを浮かべながら言った。

「ママ!」

その腕に抱えられたユイちゃんが嬉しそうに言った。

「な、なんだと!?」

それを聞いたマイカが二重以上の意味で驚いた。

「キリトがユイちゃんのパパであの人がママってことは・・・そんなぁ」

リュックはそれが意味することを悟り、こんな状況ながらショックを受けている。

栗色の髪の女の子・・・間違いない。キリトが探していた人物だ。

「よぉ、シーモア、マイカ。よくもうちの娘を人質にしてくれたな」

更に、未だ粉塵が収まらない最上部の部屋だった場所から、キリトが歩み出てきた。

両手に剣と、全身に怒りを携えて。

そうか、再会できたんだな。探し人と。

「ユイちゃん、少し待っててね。すぐに片づけてくるから」

「はい、ママ!」

そう言ってユイちゃんは俺たちのところへ。

「少しだけ、ユイちゃんをお願いします」

そう言って俺達に頭を下げるキリトの嫁(仮称)。

彼女は再びシーモアたちの方を向いて腰の細剣を抜いた。

 

「ユウナ! ティーダ! 先に祈り子の間へ行け! 俺達もこいつらを片づけてすぐ行く!」

キリトが俺たちにそう言った。

「は、はい! ヴァルファーレ!」

その言葉にユウナは頷いてヴァルファーレを呼び、柱の間に走りこんでそこから身を投げた。

すぐにヴァルファーレがユウナをキャッチ。

そのままユウナは寺院へ向かった。

「おい、キリト! お前道わかるのか!?」

ワッカがキリトに問いただす。

「そこは大丈夫だ。アスナが案内してくれる」

「寺院までの道は知っています。だからキリトくんのことは大丈夫!」

キリトの言葉に続け、アスナと呼ばれた女性がそう言った。

「わかった。俺たちは先に寺院へ向かう。お前たちも急げよ!」

アーロンがキリトとアスナに向かって言い、俺たちは一足先に寺院へ向かった。

 

 

「さて、ティーダ達も行ったことだしとっとと終わらせるか」

「そうだね。ねえキリトくん、この人たちには手加減しなくていいのよね?」

「当然だ。それにアスナがスピラに来て得た力もまだ見てないしな」

「く・・・こんなことになろうとは・・・」

「私も想定外です。いや、こんなこと誰が予想できますか・・・っ」

「さて、わたしたちの娘を傷つけた罪は重いわよ。覚悟はいい?」

「俺達の怒り、たった20人ごときで止められると思うなよ。半殺しは確定だ」

「「く・・・っ」」

「《レイジスパイク》!」「《フラッシング・ペネトレイター》!」

 

 

(間違いなく夫婦だな、あの二人)

背後にそんな会話を聞きながら、俺はそう思った。

 

 

 

 

試練の間へ至る地下通路に到着。

「静かすぎるわね・・・」

「罠か?」

警戒するルールーとワッカ。

「罠でも関係ない! ユウナが待っているんだ!」

そのとき、

「お?」

リュックが何かに反応した。

他にここに来る人は気づかないだろうが、リュックが『操作』した以上皆もすぐに気づいた。

「そりゃ機械か? なんで寺院にあるんだよ」

そんなワッカの質問に対するリュックの答えは非常に簡潔な、

「だって便利だし」

若干声のトーンが落ちているのはキリトの嫁の存在に対するショックを引きずってるからか。

「そうかもしんねぇが、教えはどうなるんだ、教えは!」

「あたしに言わないでよ。そんなのわかるわけないじゃん」

リュックが機械を操作する。

すると、階段がスロープになる。

皆がスロープになっていない部分に乗ると、そこが動き出し、下へ。

 

今度は通路を塞ぐバリア。

本来なら謎解きをするところだが、リュックが横の操作盤をいじるとすぐにバリアが消えた。

「また機械かよ。ホントに教えはどうなってんだよ・・・」

ワッカが嘆く。

「ふん、これがエボンの本質だ。自らの教えを陰で裏切っている」

アーロンがそう言った。

「チクショー、人をコケにしやがってぇ」

 

「この先が試練の間ね」

ルールーの言葉にユイちゃんが発言する。

「でも、今までのも一応試練の間ですよね。機械を操作できればショートカットできるだけで」

少し違うんだけどな。

「今までのは僧官専用の通路よ。召喚士が入る入口が別にあったでしょう」

ルールーが訂正する。

そして、俺たちは頷きあい先に進んだ。

 

 

 

 

「お、おい! 何やってんだよ!」

ワッカがそう叫んだのは俺が祈り子の間の扉をこじ開けようとしたから。

「ここまで来て今更掟も糞もないだろ!」

そう怒鳴り返して再び腕に力を入れる。

キマリが無言で俺に加勢し、扉は少しずつ持ち上がっていく。

十分持ち上がった時、キマリが俺に頷き、俺は祈り子の間へ入った。

 

部屋の中央に安置された祈り子像。

その手前にユウナが座り、祈っている。

バハムート、前回ぶりだな。

そして祈りが終わり、体力が元々限界近くだったユウナは倒れた。

「おっと」

完全に倒れこむ前に、俺が支える。

今回はアーロンは入ってきてないんだな。

俺はユウナを抱きかかえ、祈り子像に向き直る。

「バハムート、またガガゼトで話そう」

そう言って俺は引き返していく。

さて、問題はこのあとなんだよな。

 

「待って! まだ出てきちゃダメ!」

リュックの叫びが聞こえるが・・・そういうわけにもいかないし。

結局前回と同じように出ていく俺。

そこには、銃を構えた兵士たち、そしてキノック。

キリトとアスナはまだ来ていないのか。

いや、これで挟み撃ちにできる。だからこれでいいはずだ。

「一網打尽。お前たちには裁判を受けてもらう」

そうキノックが言った、その時、

「《トルネド》!」

キノック達を突然現れた竜巻が包み込んだ。

ちょ、何あれ!? あんな魔法見たことないぞ!?

「まさか、『幻の魔法』!?」

ルールーが驚愕の声を上げた。

「え!? それなんなの!?」

リュックが訊く。

「はるか昔のスピラで使われていたとんでもないランクの魔法よ。今は使える人が居ない筈の」

・・・キリトがチートならその嫁もチートだぁ。

考えてみれば娘もチートだしむしろ当然であるべき?

「悪ぃ、少し遅れちまった」

降りてきた二人。

キリトがそう言った。

「いや、むしろナイスタイミング。図ったんじゃないかって思うくらい」

「そんなんじゃないよ、仕掛けに少し手間取っちまったからな」

「わたしも、寺院の中はわからなかったし、しょうがないよ」

笑いあう二人。仲いいな~。

「ママ~!」

そんな中、ユイちゃんがアスナに抱き着く。

「ユイちゃん、怪我はない?」

「はい! 大丈夫です!」

満面の笑みで答えるユイちゃん。

キリトが抱き合う二人を抱きしめる。

「アスナ、ユイ。二人とも無事でよかった」

「うん、キリトくんも無事で何よりだよ」

娘を間に挟んだままキリトとアスナは・・・キスした。

ちょぉい!? 俺たち居るの忘れてるだろ絶対!

うわぁ!? ディープ突入しちゃってるよ!

「うわぁ~、うわぁ~」

リュックは顔を真っ赤にして手で覆いながらも、指の隙間からバッチリ見ている。

女の子らしいというか。

ワッカとルールーも若干だが顔を赤くしている。

「ふ、どうせ一生独り身だ、どうせ一生童貞だ・・・リア充爆散しろ」

あ、アーロン? い、今のは俺の気のせいだよな? な?

「あ、ぅぅ・・・」

と腕の中から声。

見ると、ユウナが顔を真っ赤にしながらキリト達をガン見している。

「あ、ユウナ。大丈夫ッスか?」

激甘な雰囲気から逃げたい一心でユウナに声をかける。

「え、う、うん・・・。あっ!? ご、ごめんね、重いよね!? す、すぐに降りるから!」

頷いたユウナだが自分の状況に気づいたのか更に赤くなって慌てて降りようとする。

だが、無茶しているせいですぐに倒れこみそうになる。

「うあっ!?」

小さく悲鳴を上げるユウナ。

「ちょ、ユウナ! 無茶するなって!」

慌ててユウナを支える俺。

と、今のが原因かはわからないが、そこで我に返ったキリトとアスナ。

「あっ・・・わ、悪ぃ! ずっと会えなかったものだから、つ、つい・・・」

「そ、そうそう! 久しぶりに会ったからであっていつも皆の前してるわけじゃないからね!?」

桃色空間から戻ってきた二人が慌てて弁解する。

その二人の間でユイちゃんが呆れたように首を横に振った。

 

とりあえずキリトが投影したロープでキノック達を縛っておく。

そして、いざ脱出しようとしたとき、追撃が来た。

「こいつら、もう復活したのかよ」

キリトのいうように、その中にシーモアとマイカの姿が。

それに白い髭のロンゾ、ケルクも居る。

「召喚士ユウナ、汝はなにゆえシーモア=グアド老師に危害を加え、アルベドと手を組み騒乱を起こしたのだ? その上汝のガードによる寺院の破壊。これらはエボンの秩序をおびただしく乱す許しがたい反逆行為であるぞ」

なるほど、法廷に引っ張り出せそうにないからここで問いただすって訳か。

「聞けば聞くほどふざけるなって思うよ。まず一つ目。反逆者はシーモアの方だ。奴は自分の父親をその手にかけたんだからな!」

キリトの反論に、ケルクが驚愕した。

「なんですと!?」

それに対しシーモアは平然としている。

「おや、ご存じありませんでしたか?」

「そればかりか・・・」

今度はユウナが、

「シーモア老師は既に亡くなっています!」

その言葉には誰も驚かない。

なら次は俺の番だ! いや勝手に決めただけなんだけど。

「ユウナの異界送りを無理やり止めたってことはマイカ、あんたも死人だな!」

俺の言葉に今度は全員が驚愕する。

味方はその事実そのものに、老師達はそれを見破られたことに。

「まさか気づかれるとはな・・・」

そう言うマイカの身体から幻光虫が見えた。

しかし、老師たちは皆そのことを知っているわけだが。

「万物はいずれ死にゆく。スピラを支配するのは死の力。死の力は絶対であり何物も抗えん。逆らうだけ無意味というもの」

そう言ったマイカの言葉にユウナが反論した。

「なら、シンは!? 私たち召喚士は、シンがもたらす死を止めようと旅を続けています! それが無駄だというのですか!? シンを倒すために散って行った人たちや、シンによって死んでいった人たちの戦いや犠牲も、全て無駄だと言うのですか!?」

その言葉に、マイカは前回と同じ言葉を紡ぐ。

「無駄とは言わぬ。確かに召喚士が何人犠牲になろうとシンは倒せん。シンの復活を防ぐすべはない。なれど戦う者の勇気は民に希望を与えておろう。召喚士の生も死も、決して無駄にはならん」

アーロンも前回と同じように言い返す。

「無駄にもならんが解決にもならん」

「いかにも。それがエボンの真実」

「そんな!」

ユウナが悲鳴を上げる。

「変わらぬことこそエボンの真実。継続こそがエボンの真実」

マイカが言った。

「そんなのおかしいよ・・・」

ユウナが絞り出すように言った。

「真実に・・・」

マイカが言いかけるがそれを無理やりさえぎる形で言う。

「次にお前はこう言う。『真実に異を唱える者、これすなわち反逆者』」

「何っ・・・」

自分が言おうとしていたことを完璧に当てられたマイカが怯む。

「ふざけるなよ。その真実は、てめえに都合よく捻じ曲げられた偽物だろうが!」

「貴様・・・」

俺の言葉にマイカは怒りを覚えたようだが・・・、

「証明は幾らでもできるぜ。キリト! 二つ目は?」

続きをキリトに促す。

「おぅ! 二つ目、先にアルベドに手を出したのはグアド族だ! アルベドにはユウナとユイを助けるために協力してもらっただけ! 騒乱の原因を作ったのはお前たちエボンの方! こっちがしたのは正当防衛と正当報復だ! アルベドもやられっぱなしでいいわけがないからな!」

それについては証人もいることだしな。

キリトの言い分に、シーモアも言い返せずにいる。

「しかし! 三つ目はどうなんだ! お前はエボンの寺院を破壊したではないか!」

今度はケルクが言い返すが、

「お前たちは無理やり人質を取ったじゃないか。人質救出は攻め込む理由としては十分だ!」

さすがキリト!

あっさり完封したぜ!

「さて、こうして俺達を捕えに来たってことはまだ懲りてないってことだろ?さあ、どうするマイカ。ここで戦うか、引くか」

俺の挑発に、怒りの表情になる老師と兵士たち。

後から来た方の兵士に縄を解かれ、さっきの兵士たちやキノックも怒りを見せている。

「簡単に死んでくれるなよ? 武装完全支配術(エンハンス・アーマメント)

キリトがいつの間にか投影していた弓が炎に包まれる。

ってあの炎さっきの!

「せめて退路は確保させてくれよ。喰らえ!」

矢をつがえずに矢を放つというとんでもない攻撃。

炎の矢は巨大な鳥の形となってエボンの奴らを蹴散らしていく。

そこに、アスナが追い打ち。

「トルネド!」

再びの竜巻魔法が兵士どもを蹴散らした。

よし、俺も!

「もう一発食らっとけ! ヘイルブリザード!」

アーロンの牙龍みたいに空中から勢いをつけて威力を上乗せする。

吹き散らされて脇に飛ばされた老師や兵士たちを氷付けにする。

よし、誰も死んでないな。

「今だ!」

アーロンの掛け声に皆が一斉に走り出した。

 

 

 

 

脱出完了。

今、俺たちはマカラーニャの森の野営地にいる。

前回とは違ってキノックも死んでないし問題ないだろう。

あ、でも破壊活動が問題になりそうだな。

でも今は、無事に脱出できたことを喜ぼう。

キリトも探し人に会えたことだし。

 

「改めまして、アスナです。皆、よろしくね」

アスナが自己紹介。

「ユウナ、アスナもガードに加えていいか?」

キリトがユウナに訊く。

その言葉に、ユウナは俺達の反応を伺おうとする。

「お前がそれを望むなら、そうするといい」

アーロンがユウナに言った。

ユウナが頷く。

「アスナさん、よろしくお願いします」

「わたしのことはアスナでいいよ。歳は同じくらいだろうし」

なんとなく、ほわほわした人に見えなくもない。

しかし、さっきの鬼神っぷりは凄かった。

流石キリトの嫁。

「ユウナ、ルールーさん、ワッカさん。ユイちゃんを助けてくれたこと、改めてお礼を言います。本当に、ありがとう」

ユイちゃんがビサイドに流れ着いたときのことか。

キリトから聞いたんだな。

ユウナ達と話しながらもナチュラルにいちゃついている二人。

正直、居づらい。

 

「ちょっと、散歩してくるね」

少し話した後、ユウナがそう言って歩いて行った。

やっぱり傷ついているんだろうな。

エボンの真実を最悪な形で知ってしまったから。

防げなかった。

いや、むしろ俺がそこに誘導してしまった。

あの時、マイカの正体を言ってしまったから。

迂闊だったかもしれない。

いや、でもあの時それ以外の選択肢はあったのだろうか。

あの場で知らなければ、ユウナはエボンを信じたまま、もっと酷い形で裏切られたかも知れない。

どちらにしろ、今、俺がすべきことは・・・。

「俺も散歩行ってくるッス。すぐ戻るから」

ユウナのケアの為、彼女の元へ。

 

 

 

 

前回と同じように、ユウナは聖なる泉に浸かっていた。

「ユウナ、風邪引くッスよ」

「うん」

静かに、そんな言葉を交わす。

「こんなはずじゃなかったのにな・・・」

ユウナが悲しそうに言った。

「皆に応援してもらって・・・笑って行けると思ってたんだ。・・・頑張ってたのになぁ・・・」

泉に入り、ユウナの元へ。

「ユウナ、俺、一つ謝らないといけないことがある」

「え?」

本当は一つじゃないけれど・・・。

「俺、実は知ってたんだ。究極召喚を使った召喚士がどうなるか」

「そう・・・なんだ・・・知ってたんだ・・・」

「黙っててごめん」

「ううん、そんなことないよ。ありがとう」

「え?」

「シンを倒したら夜の幻光河に行こう、とか。他にもいろいろ。嬉しかった」

「そっか」

並んで星空を見上げる。

「ユウナは、どうしたい?」

「どう・・・って?」

「旅。続けるか、止めるか」

「・・・」

「これだけは言っておく。・・・どっちを選んでも俺はユウナの傍にいる。必ず」

これは本心だ。

たとえユウナが旅を止めると言っても、俺は反対しない。

考え込むユウナ。

 

暫くして彼女は静かに言った。

「旅は・・・続ける。もし止めちゃったら、どこで何をしていてもきっとつらいままだから」

「うん」

「シドさんとか、反対する人もいるだろうけど、私、きちんと最後までやり遂げたい」

「俺、そのシドと約束したよ。ユウナを死なせない。でも、シンは倒す、って」

「それが一番いいね。・・・でも、できるのかな」

「できるさ。俺たちなら、必ず」

だが、その代わり、俺は・・・。

いや、それは考えないようにしよう。

きっと何とかなる。

祈り子達もそれを願っているって言っていたのだから。

 

さて、もう一つ。

「ユウナ」

「何?」

「俺さ・・・ユウナがシーモアに求婚されたとき、凄く嫌だった。嫉妬だけどな」

「え?」

「ユウナ・・・俺は、ユウナのことが好きだ。召喚士とガードとしてじゃなくて、一人の男として、ユウナのことが好きなんだ」

「!」

目を見開くユウナ。

「結婚式のとき、俺がユウナの隣に立ちたいって思った。シーモアの野望云々以前に、あんな奴なんかにユウナを渡したくないって、そう思った」

ユウナの頬を一筋の涙が伝う。

それを見て、内心で焦る俺。

でも、期待のほうが大きかった。

「私も・・・」

ユウナの口が動く。

「私も、ティーダのことが好き。きっと、初めて会ったときに、好きになってたんだと思う」

俺は、そのずっと前から好きだったよ、ユウナ。

「だから、今、凄く嬉しい。本当に嬉しい」

嬉し泣きをしながらそう言ったユウナ。

「ユウナ・・・」

俺は彼女と向き合い、優しく抱きしめた。

「愛してる・・・」

ユウナの腕が、俺の背中に回された。

「うん・・・私も、愛してる・・・ティーダ」

俺たちは互いの顔を見つめ、そして、長いキスをした。

 

 

 

 

「お楽しみでしたか~?」

「「ブフゥ!?」」

手を繋いで戻ってきた俺たち。

ユイちゃんの爆弾発言のせいで幸せが爆散しかけた。

「こ、こら、ユイ! そういうことは人に言うなって! 心の中にとどめとけ!」

慌ててキリトがユイちゃんを叱る。

「そそそそうだよ! せめて言うなら私たちだけにまで抑えて!」

キリトと同様に慌てるアスナ。

ってなんか今アスナ凄いこと言ってなかったか?

他の皆はというとニヤニヤして俺達やキリトたちを見ている。

アーロンだけはサングラスで表情がわからないが・・・。

「それで、今後はどうする」

アーロンが話を切り替えるように言った。

「旅は、続けます。でも、死ぬつもりはありません。シンを倒して、生きて帰ります。必ず」

「ふ、最高の答えだな。だが当てはあるのか?」

アーロンが言った。

「ザナルカンドに行けば、答えが見つかると思います」

「よし、ゆっくり休んでおけ。夜が明けたら出発だ。それとキリト、途中で見張りの交代を頼む」

アーロンが纏めた。

「了解だ」

キリトがそう答えた。

 

俺とユウナは芝生に並んで横になる。

「今日はいろいろなことがあって大変だったけど、今はこうしているだけで幸せ」

ユウナが言った。

「俺も今凄く幸せッスよ。ユウナとこうして想いあって、通じ合って」

「ふふ、想いの力って凄いよね。嫌なことも全部吹き飛んじゃう」

「そうだな、あえて言うなら『想いの力は無限大』ってところかな」

「うん、そうだね。・・・ね、手、繋いで寝よ」

「いいッスね、それ」

俺たちは互いの手を繋ぎ合せた。

「お休み、ユウナ」

「お休み、ティーダ」




この時のためだけに用意した新オーバードライブ《ヘイルブリザード》
氷の線を引きその先の標的のみを凍らせる、乱戦時に大活躍する技です。

エボン宮殿の最上部を吹き飛ばしたのはキリト。
夜空の剣、金木犀の剣、熾焔弓の同時完全支配です。
キリトならこのくらい簡単にやってのける。

アスナ降臨。彼女はべベルに居ました。
持前のキリトレーダーでキリトの到着を察知し、エボン宮に潜入してキリトと再会。
かなり豪快な登場の仕方をさせました。
そしてリュックはショックを受けています。
まあリュックならすぐに立ち直って新しい恋を探しに行くでしょう。
アスナが装備していたランベントライトはキリトの投影品。
ソードスキルは魔術ではない別の方法で発動しています。

バハムートにガガゼトで話そうと言ってしまった以上、ティーダの卒倒は避けてはいけない。
そんなことしたら約束を破ることになっちゃうから。

アスナがトルネドを使える理由は次回やります。
《幻の魔法》、これはメテオやフラッド、バースト、フリーズも含まれます。
それぞれにラ系、ガ系、ジャ系が存在します。

キリトたちがやらかしました(笑)
万年新婚夫婦ですから当然でしょう。
この時点ですでに大きな影響をユウナに与えています。
その結果が今話のラストだよ(笑)
そしてこの小説特有と言ってもいいアーロンのキャラ崩壊。
もう俺は開き直ったよ。どんどんやってやる。

キリトが老師達を論破。
ちょっと理論に無理があるような気もしますが作者の実力不足です。
その中でティーダがマイカの正体を看破しました。
こっちは前回の知識から見破った事実です。

アスナが正式にユウナのガードに。
味方戦力が更にチートっぷりを増してきました。
戦闘時と普段の雰囲気が大きく違います。
だからこそキリトとバカップルやってると言ってもいいかも。
常に鬼神的な雰囲気だったらいちゃつけませんから。

ユウナが生きたいと願うようになりました。
たぶんキリアスの影響。羨ましかったのでしょう。
そしてずっとティーダの傍に居たいと願っているから。

そしてユウナがキリアスに大いに影響されました(笑)
アスナがキリトに甘えてるように自分もティーダに甘えたいと思ったのでしょう。
そうに違いない。
つまりバカップルが二組になるってこと。
アーロンのキャラ崩壊が加速するかもしれない(笑)
でもやろうと思ってやるとうまくいかないという罠があったりして、文章力的な意味で(汗)

ユイちゃんの爆弾発言。
あの子ならこれくらいやるかと。
両親相手に普通にやっていそうだけど。

今回の名言『想いの力は無限大』
今回のサブタイはキリアスの蹂躙劇とティユウの幸せをイメージして考えました。
自分で言っておいてなんだが真逆すぎだろ(汗)


次回は舞台裏、ユウナ救出のキリト編。
もちろんキリトサイドです。
ではまた次回!

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