黒のスピラ冒険記   作:通りすがりの熾天龍

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いよいよ物語も佳境!
キリトサイドにて、べベル突入です!


さあ開戦の狼煙を上げろ!

「っ~、グアドの奴ら、これ絶対やりすぎだろ」

「酷いよ、こんなの・・・」

ワッカの言葉に続け、リュックが悲しそうに言った。

アルベドホーム内部。

魔物が上から降ってくるわ横から飛び出してくるわ下から湧いてくるわ・・・。

何だよこの数。

「正直、やりたくなかったがな・・・」

「オヤジ?」

シドの言葉にリュックが疑問符を浮かべる。

「ホームを爆破する! 魔物ごと吹っ飛ばしてやる!」

はぁ!?

「ちょ、待って・・・」

「リュック、お前たちは召喚士たちを助けて地下に行け。俺は飛空艇を起動させてくる!」

そのままシドは俺達とは別の方向へ行く。

 

 

 

 

「ソニックリープ! レイジスパイク!」

少し進むだけですぐに魔物が出てくる。

片っ端から俺のソードスキル、ティーダやアーロンの剣、ワッカのボールを駆使して倒す。

と、少し広めの踊り場に出た。

「ここはもう駄目だな・・・」

「そうだな、シドが爆破を選んだのも頷ける」

ワッカの言葉にそう返す俺。

「・・・アルベド族には、故郷が無かったんだ」

リュックが話し始めた。

「昔住んでた島がシンにやられて、一族がバラバラになった。でも、オヤジが一族を呼び寄せたんだ。力を合わせて新しい故郷を作ろうって。・・・うまく行ってたんだよ。皆、頑張ったんだよ。なのに・・・どうして・・・こんなことになっちゃったのかな・・・」

「リュック・・・」

慰めるようにリュックの頭を撫でる。

リュックは、俺の胸に顔を埋めた。

「くそっ! グアドは何がしたいんだ!」

ワッカの叫びに、アーロンが冷静に返す。

「まずはユウナを助ける。今はそれに集中しろ」

 

 

 

 

「お願い! ユウナ、ここに居て!」

リュックが祈るように部屋のドアを開けた。

部屋の中に突入した俺達。

だが、見る限りユイもユウナも居ない。

「ここには居ないわ」

そう言いながら歩み寄ってきたのはドナ。

「さっきまで居たけれど、グアドに連れ去られてしまった。ユイちゃんも一緒にね」

・・・そうか。ユイも・・・。

「ねえ、イケニエって何?」

そう聞いてきたのはイサールのガードをしている子供、パッセ。

「アルベドの人がそう言ってたんだ。召喚士は旅を止めなきゃいけないんだって」

生贄? どういうことだ?

「召喚士は自分の意志で旅しているんだよ。無理矢理やめさせるのは・・・」

ティーダが言った。

その表情は、矛盾に苦しむような、あるいは、言いたいことを堪えているかのような。

「そうだな。ガードもいることだし無理矢理止めさせるのはおかしい」

俺もそう言う。しかし、

「止めなきゃダメなんだよ!」

リュックが叫んだ。

「・・・来たか」

ティーダがボソッと呟いた。

その声は俺にしか聞こえなかったようだが・・・どういうことだ?

「このまま旅を続けて・・・ザナルカンドに行って・・・シンを倒しても、その時・・・ユウナは・・・ユウナは死んじゃうんだよ!」

「な・・・」

それ以上の言葉が出ない俺。リュックは続ける。

「キリトも、ティーダも知ってるよね。召喚士は究極召喚を求めて旅してるって。でも! 究極召喚使ったら召喚士は死んじゃうんだよ! たとえシンを倒しても、ユウナも死んじゃうんだよ!」

そう言って、座り込んでしまうリュック。

「究極召喚は・・・召喚士の命と引き換えの召喚・・・皆は知ってたのか?」

驚愕がまだ冷めぬ中、それでも何とか冷静を保つ俺。

俺の言葉に、皆が頷いた。

 

ティーダを見る。すると、彼は達観したような表情をしていた。

そういえばあいつ、幻光河でもこんな感じだったな。

みんなが暗くなっていたのを、知っているような、仕方ないというような表情。

つまり・・・、

「ティーダ・・・お前も知っていたんだな」

俺のその言葉に皆が驚愕し、一斉にティーダを見る。

ティーダは、少し迷うそぶりを見せたが、やがて、ゆっくりと頷いた。

「いつから知ってたんだ?」

ワッカが問う。

「ごめん、今は言えないッス」

今までも先に起こることを知っていたかのような言動があった。

あいつ、スピラに来たときに予備知識でも手に入れていたのか?

そんな予測をするが、もちろんティーダの名誉や安全のため、黙秘。

 

「ユウナは、全部知ってて召喚士に?」

切り替えるようにそう訊く。

「そうだ。俺たちはもちろん止めた。でもあいつは全て覚悟の上で、シンと戦って死ぬ道を決めたんだ!」

ワッカが言った。

それに反応したのはリュック。

「そんなの絶対おかしいよ! いくら皆の幸せのためだからって、召喚士だけが犠牲になるなんて!」

しかし、それに反論したのは当の召喚士たちだ。

「犠牲とは心外だな」

「あなただってシンの恐怖は知ってるでしょう」

イサールとドナが続けざまに言う。

異界送りが間に合わずに魔物が生まれた。

「シンの居ない世界。それこそが、全てのエボンの民の夢だ。たとえそれが僕の命と引き換えでも迷いはしないさ!」

イサールが、イフリートを呼びながら言った。

ドナも、ヴァルファーレを呼ぶ。

召喚獣たちは魔物に攻撃し倒していく。

 

「今は、ユウナだ」

ティーダが言った。

「助けに行くぞ! 俺たちはガードなんだ! ごちゃごちゃした話はそのあとだ!」

・・・確かに、そうだな。

「よし、行くぞ!」

 

 

 

 

地下に置かれた飛空艇。

制御室に走りこむ。

既にシドたちがスタンバイしていた。

「シド! とりあえず部屋にいた召喚士は全員乗った!」

俺はシドに報告する。

「そうか! んで、お前らが捜していた二人はいたか?」

「すでにグアドに連れ去られた後だった。どこに連れて行かれたのかはわからない」

「そうか・・・」

「やっぱり心配だよな。自分の姪なんだから」

そう、俺はすでにシドからユウナが彼の姪だと聞いている。

と、ティーダたちが歩いて入ってきた。

 

その時、飛空艇が揺れ始める。

トタギ(親父)! マッキンギュンヂ(発進準備)アンニョフガ(完了だ)!」

リュックのアニキが言った。

あ、まだあいつの名前聞いてない。

モッキャワ(よっしゃあ)!! 1000メンズニオクナミソガ(1000年ぶりのフライトだ)!」

「な、何が始まるんだ!?」

ワッカが言った。

「決まってるだろ! ユウナを探しに行くんだ!」

ティーダがそう言い返した。

「ああ、確かにそうだ。だが小僧。ユウナを見つけてどうする。また旅に引っ張り出してシンと戦わせるのか? 召喚士に全部おっかぶせて一人で死なせる気か?」

ティーダの名前を知らないシドは彼を小僧と呼んでそんな言葉をぶつける。

「ユウナは絶対に死なせない! 召喚士を死なせずにシンを倒す方法はある! 必ず!」

ティーダ・・・お前はやはり・・・。

「・・・小僧、名前は?」

「ティーダ」

「そうか、お前があの子の。だが、お前、何かを知っていて・・・いや、違うな。ティーダ、絶対に死なせねえっつうその言葉、嘘はねえんだな!」

「当然だ!」

それを聞いて満足するように頷いたシド。

「なら、証明して見せろ!」

「おう!」

シドは運転席にいるリュックのアニキに向かって叫んだ。

マッキンガ(発進だ)!」

ハッチが開き、飛空艇が動き出す。

 

浮上する飛空艇。

格納庫から出た飛空艇は向きを変え前へ進みだす。

ヌデネ(すげえ)! ソンベウ(飛んでる)!」

ユジマ(次は)・・・ワエユアフボ(あれ使うぞ)

何言ってるかはわからないがそんな会話の後、リュックのアニキは天を仰いだ。

「・・・キアサハミモハ(仕方ないよな)

そして、アルベド族たちが歌いだす。

「いよいよ・・・爆破か」

そんな俺の言葉に、リュックが悲しそうに頷く。

「でも、どうやって?」

ルールーがシドに問いかけた。

「禁じられた機械ってやつを使うのさ。トッキ(おっし)! マッキャ(発射)!」

そして、飛空艇から飛んでいく無数の・・・。

「ミサイルか!」

俺のその言葉に、シドが反応した。

「ほぅ・・・あれはミサイルってのか。しかしキリト、おめえ何で知って・・・いや、何も聞くまい」

俺は別にいいんだけど?

と、ミサイルがホームに着弾した。

だが、その爆炎の規模が明らかにおかしい。

どんだけ可燃物積んでたんだよ!

飛空艇は爆炎に巻き込まれそうになりながらも、無事脱出。

「ガハハハハハ! チエミラップニガゲ(きれいさっぱりだぜ)!」

シドが豪快に笑う。

船員が泣く。

ハルンギャメネ(泣くんじゃねえ)! チアミオミミソヨノマハ(機械のいいところはな)ヤサユルエザミミッセヨソガ(またつくればいいってことだ)

うん、何言ってるかわからん。

と、ここでワッカがわざと明るく言った。

「まあ、その、あれだ、そんなに落ち込まねえでよ。ドカ~ンと一発景気づけの花火ってことで」

「空気読めこの馬鹿!」

すかさずワッカを投影したハリセンでひっぱたく。

「いでぁ!?」

悶絶するワッカ。自業自得だこの馬鹿。

 

 

 

 

「今、スフィア波検索装置で調べてるところだ」

なんじゃそら。

そんな俺たちの空気を察したのか、

「1000年前の機械だ。仕組みなんてわからねえから、なんも訊くんじゃねえぞ!」

そんなシドの言葉にルールーが声を上げた。

「何もわからずに使ってるの!?」

「いや、少なくとも使い方はわかるだろう。このくらいの装置ならそれで十分だろうな」

俺はルールーの言葉を訂正する。

シドはまた豪快に笑った。

「ガハハハハ! 言うじゃねえかキリト! ついでに言うとこの飛空艇がどんな仕組みで飛ぶのかも全くわかってねえ!」

「威張るな。ちゃんと調べとかないと、もしもの時に対応できないぞ」

呆れながらシドに忠告する俺。

「調べられねえのさ。エボンの機械禁止のせいで、俺たちは何も知らず調べずの愚か者よ! ガハハハ、全く、愉快痛快じゃねえか!」

「いろいろと戻ってこい!」

シドの頭をハリセンでスパンと叩いた。

 

 

 

 

「リンも乗ってたぞ」

ティーダが言った。

「マジか」

「ああ、なんでも、商品の仕入れのためにホームに戻ってたらしい」

何だかあの人とはよく会う気がする。

「他の人とも話してきたよ。イサールは、旅を続けるそうだ。ドナは、止めるって」

「・・・そうか。人それぞれ、だな」

 

「定めだか何だか知らねぇが、黙って姪っ子を死なせられっか!」

シドとアーロンが言い争っている。

とりあえず今はそれは彼らに任せよう。無責任な気もするが。

 

と、リュックのアニキが叫んだ。

トタギ(親父)! ユウナ()ミザキョダカアッサ(居場所が分かった)!」

ゴヨガ(どこだ)!?」

ミヤ()フユヌ(映す)!」

 

そして、映し出された映像。

ウェディングドレス姿のユウナ。

その横には、シーモア。

すぐそばに、マイカとエボン兵士。

場所は・・・宮殿!?

「これは何処だ?」

俺の問いにルールーが答える。

「聖ベベル宮。エボンの総本山よ」

「おっさん! 行ってくれ!」

シドをおっさん呼ばわりしながらティーダが言う。

「わかってんのか、ティーダよ。ベベルの防衛網は半端じゃねえ!」

「なんだよ、おっさん。ビビってんのか?」

不敵な笑みを浮かべながらティーダが言い返す。

「そこにユウナがいる。助けを求めてる。だったら当然行くッスよ!」

「OK、いいだろう。キンノム(進路を)ベベル()! ゲンホルベ(全速で)ズッソザヘ(ぶっ飛ばせ)!」

ニョフアミ(了解)!」

 

「アーロン、シーモアは死人か?」

俺の問いにアーロンが頷く。

「間違いない。だが奴は魔物になっただろう。その時既に死人だったかもしれん」

「なるほどな」

奴は異界送りされていない。

死人としてとどまるには十分な条件だ。

 

 

 

 

「エフレイエ」

「あの龍の名前か?」

ベベルにもだいぶ近づいてきて、飛空艇の横に見える龍。

ルールーが呟いた言葉に、そう問いかける。

「ええ。あれは、エボンの守護龍。聖ベベル宮を防衛する、最強の聖獣よ」

「ふ、最大級の歓迎だな」

アーロンが笑い飛ばす。

と、そこに艇内放送でシドの声が。

「リュック! 聞こえるか! これからあのデカブツと一戦交えるぞ!」

OK、戦闘開始だな!

「おめえらは甲板に出てあんにゃろうを迎え撃て!」

 

甲板に出た俺達。

さて、あまり威力が高い攻撃は反動で飛空艇がバランス崩してしまうだろうから・・・。

投影開始(トレース・オン)

投影するは、大量のフォトンソード。

異色の組み合わせではあるが、ここはフォトンソードと投影の合わせ技で行く。

いざ、シングルシュート連射!

 

「テンプテーション・ファイガ!」

「エレメントリール・トライ!」

ルールーとワッカのオーバードライブで終了。

高威力なのに反作用力が無い技っていいよな。

俺とティーダ、リュックがフォトンソードを投げ、その間にルールーとワッカがスタンバイ。

アーロンは追い打ちのためにスタンバってたけど結果的に意味なかったな。

っていうかソードスキルなしであの命中率。

ティーダもリュックも凄いって。

「見えたぞ! ベベルだ!」

シドがマイクを通して言った。

 

「シド! 俺はベベル宮の裏の方に降りる! ティーダ達を降ろした後そっちに回ってくれ!」

俺はそう言うが・・・聞こえるかな?

「なんでだ!?」

良かった、聞こえてた。

「ユイがあの場に居ない! おそらく宮内に捕らわれてるはずだ!」

「なるほど! 別行動でそれぞれの救出ってわけか! だがキリト、一人で大丈夫か!?」

「それは問題ない! 俺の実力はシドも見ただろう!」

「わかった。その代わり、到着前に奴らにド派手な一撃を頼むぜ!」

「OK! 投影開始(トレース・オン)!」

シノン、力を貸してくれ!

「ウルティマラティオ・へカートⅡ!!」

投影するのは、GGOのシノンの愛銃。

「お、おいキリト! おま、機械も投影できるのか!?」

ワッカが驚愕の声をあげるが・・・、

「さっきのフォトンソードも機械だぞ」

「マジで!?」

雲に突っ込み、突き抜ける。

見えた先には聖ベベル宮。

「シドの注文通り、ド派手に行くぞ! ファイア!」

狙うは宮殿の頂点にある飾り!

的が大きければそれだけ当たりやすい!

狙い通り、巨大な飾りは音を立てて崩れ、俺達から見て後ろへ倒れていく。

砕けた小さな破片が兵士たちに降り注ぐ。

その隙に飛空艇から2本の鉤付きロープが射出され、道に突き刺さる。

「お前ら、行ってこい! 必ずユウナを救い出せ!」

サムズアップとともにティーダ達を激励。

ティーダが叫び返す。

「当然ッス! そっちもユイちゃんを救い出せよ!」

「当たり前だ!」

そう言って、ティーダ達はロープを滑り降りていった。

ティーダ達が完全に降りるのを確認し、すぐさま金木犀の完全支配でロープを斬る。

「シド! 裏側へ急げ!」

「わかってらぁ!」

飛空艇はベベル宮の周りを一周。

飛空艇がベベル宮の裏側を通った瞬間、俺は飛び降りた。

当然、裏口にも警備は要る。

突然降ってきた俺に、兵士たちは驚愕の色を隠せずにいる。

その動揺に乗じるように俺は叫んだ。

投影開始(トレース・オン)!」




ティーダの秘密が一部バレてしまいました。
未来を知っている。これは大きなアドバンテージであると同時に枷でもあります。
さすがにティーダもはっきりと言われてしまった以上、認めざるを得なかったのです。
勘が鋭いキリトゆえに気づけたことです。

シドもティーダの異質さに気づきました。
ですが、シドは何も訊きません。
訊くべきではないと理解したゆえに。
KYなワッカとは真逆です。

ティーダもキリトも、あれだけがんばったのにユウナ強制連行は阻止できず。
ですがここから巻き返しを図ります。

シーモアは戦闘時には既に死人だったかもしれないという予想。
シーモア異体を先に出した、つまり魔物化したからこのような考えに至ったのです。
真相は皆さんの想像にお任せします。
だってこの先のストーリーに関わらないんだもん。

エフレイエの歓迎をアーロンが笑い飛ばしたのは味方戦力のチートっぷりゆえにです。
キリトはチートだしティーダも異様に強くなってるし。
実はティーダやキマリはキリトによる戦闘訓練を受けています。
主に反射神経や瞬間判断力向上のため。
アーロンが受けていないのは元々受ける必要がないほど強いからです。

ヘカート登場。これは最初から決めてました。
理由はキリトにベベル宮をぶち抜かせたかったからです。
ド派手な一発といえばやっぱりこれでしょう!

キリトはティーダたちと別れて単独行動です。
目的は、ユイの救出。
次回でも裏側で無双しているのです。
つまり親の愛(物理)


次回! いよいよ次回!
閃光アスナ、降臨だぜえええぇぇぇぇぇぇっ!!!
主にティーダたちに明かされる驚愕の真実!
そして最強のタッグによる蹂躙劇!
ティーダサイドにてお送りするぜ!!
腐ったエボンを撃滅だ!!!
It's show time!!!!!

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