FAIRY TAIL~龍と妖精~   作:雲珠

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小説の保存し忘れに定評(?)のある駄作者こと雲珠(うず)です。
もう本当、これで何回目だよって自分で自分にツッコミを入れたくなります。
好きでやってる訳じゃないのにー!


第二十三話 嵐の前の静寂

「白銀殿が来て下さって本当に助かりましたぞ!」

『いえ、そんなことは…』

 

私はとある遺跡調査のため、少しばかりマグノリアを離れていた。

なにせ今回依頼された遺跡は海の底で発見された遺跡ですから。

まぁすぐに帰れる距離ではありますが。

 

「謙遜することはありません!見て下さい!このザックザクのお宝を!」

 

船に揺られながら、依頼主のザエル様が黄金に輝く金貨を指さす。

運が良い事に、今回調査した遺跡は海の底にあったために誰も調べることが出来なかった遺跡でした。

盗賊や海賊、トレジャーハンターに荒らされることなくそのままの形を保っていたようです。

中も複雑な天然の迷路になっており、ある一定の場所まで来ると水圧と激流で身体が大変なことになるという恐ろしい遺跡ですよ。

 

『喜んで貰えたようで何よりです』

「追加の報酬は本当にいらないと?勿体無いですぞ!」

『今回の依頼はあくまでも“調査”が主です。財宝に関してはただの副産物に過ぎません』

「ふむふむ。流石は噂に名高い白銀殿ですな!」

 

別に名高くはありませんが、褒め言葉は受け取っておきましょう。

私は財宝に夢中になるザエル様に話しかけ、調査の報告をした。

 

『どうやらこの遺跡には文字が無いみたいです』

「むむ、文字が無い…とな?」

『はい。その代わり、流れる水の強弱や方向にある法則が見られます』

「何!?して、その法則とは!?」

 

財宝のせいで狭い船がさらに更に狭くなっている。

ザエル様がずいっと身を乗り出したため、私は海へ落ちるギリギリの所で身体を何とか支えた。

 

『そこまでは分かりませんが、壁の僅かな凹凸によって流れが変化しているようです』

「なんという奇抜なアイディア!」

『ただ長時間も水流に晒された結果、擦り切れている部分もあるので法則にある程度のズレが生じていると思います』

「痛恨のミス!しかし、遺跡の時代にはそれが出来る何者かが居たということだな!」

 

人知れぬ遺跡に対して情熱を燃やしているザエル様。

それは良いのですが、あまり大きな動きをしないで下さいね?

ただでさえ重い財宝が乗っていますし、下手をすれば転覆しますよ。

 

『他に知りたいことがあればもう一度潜りますよ』

「いやいや、もう十分!研究のし甲斐があると分かった以上、これから先は自分で調べることにしよう。仲間と共にな!」

『そうですか。それは良いですね』

 

仲間という単語にふと笑みを零し、遺跡の研究が無事に進むことを祈る。

このポジティブな思考を持ってさえいればどんな困難にも負けることは無さそうですね。

 

「それはそうと、ものは相談なんだが…」

『はい。なんでしょう?』

「よくよく見れば白銀殿の服も底知れぬ古風な気品を感じる。是非譲っ『りません』

「ではここにある財宝と交換『しません』

「言い値で『売りません』

「く…っ!中々の強敵…!」

 

そんなに恨みがましい目で見られても絶対に手放しませんよ。

これは私が所持している中で唯一、元の世界の物ですからね。

元の世界に未練があるかどうかの話を置いても、思い入れのある逸品です。

どんなに大金を積まれても渡しません。

そもそも私にとってお金はそんなに重要視するような物でもありませんし。

 

『諦めて研究に専念して下さい』

「研究者に諦めるという文字は無い!常に追求に追求を重ね、真実を解き明かす!」

『……取り敢えず、依頼は終了ということで宜しいですか?』

「うむ!構わんぞ!」

 

話を逸らすように依頼を終わらせ、船を陸の方へと移動させる。

そこでふと、何か大きな影が私達に重なった。

潮風の匂いと共に、嗅ぎ慣れた匂いが私の鼻を擽った。

 

「か、海賊船…!まさか財宝を狙って!?白銀殿、全速力で逃げますぞ!」

 

船頭には凶悪な龍の頭を形とったレリーフ。

帆には何故かジャック・オ・ランタンにも似た髑髏。

そしてナイフとフォークが書かれている。……変わった海賊旗ですね。

 

『いえ、その必要はないと思いますよ』

「何?どういう意味だ?」

『それは……』

「おーい!ルーツ!」

 

訝しげな顔をしているザエル様に説明しようとした時、丁度海賊船から声が降ってきた。

見上げると、ナツさんとグレイさんが海賊船の手摺りから顔を出してきた。

……いえ、ナツさんは単純に酔っているだけですね。

 

下からではよく見えませんが、匂いで誰が居るのかはわかります。

恐らくはエルザさん辺りが強奪したのでしょうね。この海賊船を。

 

『私の仲間が、強奪済みですので』

「む……ハハハ!いやはや、頼もしい限りですな!」

 

一度呆気に取られた顔をするも、すぐに豪快に笑いだすザエル様。

私が言うのもあれですが、肝が据わってますね。

 

「ルーツ!」

『あぁ、ハッピーさん。お久しぶりですね』

「あい。エルザが引き上げるか?だって」

『確かにそちらの船に乗った方が早く着けそうですね』

 

こちらは先程荷物が増えて重くなってしまいましたし、出来るなら乗せてもらえると助かります。

ザエル様にも確認を取ると、二つ返事で了承を貰った。

 

「じゃあエルザに伝えてくるね」

『いえ、引き上げの必要はありませんよ』

「?」

『そうですね……甲板から少し離れてもらえるように伝えて下さい』

「あい!」

『あ、ちょっと待って下さい。戻るならザエル様も連れて行ってもらえますか?』

「猫殿、よろしく頼むぞ!」

 

海賊船に戻ろうとするハッピーさんを引き留め、ザエル様のことをお願いする。

二人が海賊船に戻るのを見届けると、私は海の中へ潜った。

 

『(さて…)』

 

誰の目も無くなった所で、私は背中から翼を生やした。

数回ほど羽ばたいて海の中での動作を確かめると、さっきまで乗っていた船の位置を確認する。

光の反射で輝く水面に、二つの影が浮かんでいる。

あの大きい影は海賊船のですね。その脇にある小さい影が私の乗っていた船でしょう。

 

その影に狙いを定め、翼に魔力を行き渡らせる。

そして思い切り力を溜め、影に向かって垂直に飛んだ。

 

『ん、』

 

身体が船にぶつかる瞬間、掌で船を押し上げ、そのままの勢いで船を推進させる。

水飛沫が海へと戻る前に翼を隠し、船を持ち上げたままの体勢で海賊船の甲板に着地した。

勢いと重さの所為か、着地した海賊船が僅かに揺らいだ。

 

『……ふう』

 

そっと溜息を吐き、持っていた船を静かに降ろす。

顔にへばりつく髪に少しばかり不快感を感じながら、頭を振って水を飛ばす。

 

「まさか船ごと飛んでくるとは、な」

『引き上げてもらうより早いでしょう?』

「だからって普通は飛んでこないから!!」

 

呆気に取られている海賊の人達を前に、ルーシィさんのツッコミが冴えわたる。

ルーシィさんは会うごとにツッコミのキレが増してますね。

 

まぁ今はそれより、早く船を動かしてもらう事にしましょう。

 

『船長さん』

「ひぃ!は、はははい!」

『船を動かしてもらえますか?』

「へい!アニキ!」

『え、あに…?』

 

初対面なのに怯えられたのは少しショックですが、その後の言葉に全てが吹っ飛んだ。

アニキってなんですか、アニキって。

 

 




取り敢えず、原作に入る前に小話を1つ挟みました。
いや、本当はこのまま入ろうと思ったんですが……ね。

次で本格的にファントム編に入りたいと思います。

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