FAIRY TAIL~龍と妖精~   作:雲珠

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MH4をプレイしてみてジャギィノスを狩るのがこんなに面倒臭い事だとは思いもしなかった作者こと雲珠(うず)です。
未だにパットが上についている理由が意味不明です。

今回はタイトル通り、報告が主なので会話がほぼ説明です。
面倒だなーと思った方はテキトーに流し読みして構いません。



第二十二話 報告

ミオナでの仕事が終わり、やっとマグノリアへと到着した。

そういえばギルドへ帰る途中にエルザさんを見かけましたが、後ろに般若が見えましたね。

一体何を怒っていたのでしょうか?

 

『只今帰りました』

「ルーツ!良かった、無事だったのね!」

 

ギルドへ入ると、ミラさんが安堵したような顔で駆け寄ってきた。

周りもどこかホッとしたような顔をしていますね。

 

『無事とは、どういうことですか?』

「ごめんなさい!私、S級クエストになった依頼書を外し忘れてて…」

『あぁ、それならラクサスさんに同行させて頂いたので大丈夫ですよ』

「え?ラクサスに?」

『はい。行く途中に偶然会ってクエストの難易度が変わったことを教えてもらいました。最初は断ったのですが、ラクサスさんから同行の許可を貰ったので御一緒に』

「あのラクサスが…」

 

私の話を半信半疑な顔で呟くミラさん。

けれど私の事を疑うより、私が無事だったという事実に安心しているようでした。

ご心配をお掛けしてしまったみたいですね。

 

『所で、1つお聞きしたい事があるのですが』

「何かしら?」

『先程エルザさんとすれ違ったのですが、何かあったのですか?なにやら怒っているみたいでしたが…』

「えっと、ナツ達が無断でS級クエストに行った事は知ってるわよね?」

 

……そういえば、悪魔の島に行ったのでしたね。

私は絶対に近付きたくない場所ですが。

そっと横目で周りを見れば、ナツさん達の姿は無い。

どうやらまだ帰って来ていないみたいですね。

 

『もしかして、エルザさんがその話を聞いて迎えに行ったのですか?』

「そうなの。連れ戻しに行ったグレイも帰って来てなくて…」

『なるほど』

 

連れ戻す途中で依頼に巻き込まれたか、ナツさん達の口車に乗せられたか…。

考えられる理由は色々ありますが、エルザさんが行ったのなら安心でしょう。

行けるものなら私も行きたいですが……心苦しいですね。

 

「もし無事に帰って来ても、アレがあるわね…」

『…あぁ、アレですか。それは覚悟してもらう他ありませんね』

 

遠くを見ながら、帰還後のナツさん達に同情の念を送る。

流石に私もアレだけは嫌ですからね…。

 

『それはそうと、マカロフさんは居ますか?』

「えぇ、奥の部屋に居るわよ」

『今回のこと、報告して来ますね』

「内容を話してくれれば私がするわよ?元々、私の不注意で起きたことだし…」

『そんなに気にしないで下さい。不安な顔をされるより、笑顔でいてくれた方が嬉しいです』

「ルーツ…。うん、ありがとう」

『どういたしまして。では、報告してきますね』

 

元気になったミラさんにそう告げ、私はマカロフさんの部屋へと向かった。

私がさっきミラさんに言ったことに嘘はありませんが、それだけが理由ではない。

正直、ミオナでの内容は広まって欲しくありません。まだ確信も出来ていませんし…。

 

『マカロフさん、いますか?』

 

部屋の前に立ち、木の扉をノックする。

中の気配が僅かに動き、返事があった。

 

「ルーツか。入って良いぞ」

『失礼します』

「帰って来たのじゃな。依頼はどうじゃった?」

『同じ依頼を受けていたラクサスさんに同行させて頂きました』

「ラクサスと、じゃと?」

 

ミラさんと似た様な反応に少しだけ苦笑が零れた。

その心中は分かりませんが、マカロフさんとミラさんはラクサスさんに対して同じ評価なんですね。

私は意外と良い人だと思いますけどね。素直になれない不器用さはありますけど。

 

『それで依頼の内容ですが、マカロフさんには話しておこうと思いまして』

「何かあったのじゃな」

『えぇ。依頼自体はごく普通でしたが、依頼された討伐対象に問題がありました』

「問題じゃと?」

『大きさは8mあり、見た目は色鮮やかな鳥です。名をクルペッコと言います』

「……聞いたことないの」

 

アゴに手を当て、悩んだ末の言葉を聞いて「やはり…」と心の中で呟いた。

名前は違っても同じ特徴のあるモンスターがいることも考えましたが、マカロフさんを見る限りそれも無さそうですね。

私は覚悟を決め、全ての経緯を話すことにした。

 

『マカロフさん。私が龍だという事実はご存じですね』

「うむ」

 

真剣な面持ちで頷くマカロフさん。

私がフェアリーテイルに入った日、知られている事を知った時は驚きましたよ。

どうやらギルダーツさんに届けて欲しいと言われていた手紙に書かれていたそうです。

それは別に構いません。驚いたのは、私を龍だと知ってギルドに入れたマカロフさんの行動です。

ギルドを出て行けと言われる覚悟をしていたのに、事実を確認されて終わり。

あまりのあっさり感に拍子抜けして二回も聞き直しましたからね…。

ふふ、我ながら呆れる行動でしたよ。

 

『これから話すのは憶測の範囲にすぎません。が、私にとっての真実でもあります』

「話してみよ」

『……私は恐らく、遥か太古、もしくはこの世界とは異なる世界から来た龍です』

「どういうことじゃ?」

『私はある日、不思議な現象に遭い、気付いたら森に居ました。その現象が何なのかは分かりません。けれど私が異なると言った理由は、私が居た場所に“魔法”という概念が存在しないからです』

 

そう言うと、マカロフさんは目を見開いた。

けれど口を挟むことなく、私に話の続きを促してきた。

 

『けれど私は魔法が扱える。元々魔力があったのか、この世界に来て魔力というものに適応したのかは定かではありません。ですが、雷を操る力も人へ変身する力も、この世界に来てからはハッキリと魔法だと思える何かがあります。

 それ以前はただ漠然と使っていた力が魔法という存在を知って限りなく完璧に理解出来ています。……いえ、力自体に理解“させられた”というのが正しいでしょう』

「…成る程のう。元々魔力があったかもしれん、というのが遥か太古と言った理由か」

『はい。まぁ私が何処から来たのかは別にどうでも良いです。問題なのは今回討伐したモンスターが、私が居た世界のモンスターだったということです』

 

私が居た世界のモンスターが来ているのだとしたら、かなり不味い。

古参の者なら理性での話し合いも可能ですが、若い子たちは気性が荒い。

そもそも言葉自体が通じない可能性もありますし。

 

『クルペッコには厄介な能力がありますが、個体自体は弱い部類に入ります。クルペッコ程度で手こずっているようでは他のモンスターが来た時、必ず生態系が崩れます』

 

生態系というのは、人も例外ではない。

もしこれで肉を見れば見境なしのイビルジョーや三度の飯より戦闘が好きなラージャンが現れたら人類はあっさり滅亡しますね。

あの子たちは本当、私でも関係なく襲ってきますし。

まぁ2・3回ほどぶちのめして海のど真ん中に捨てれば正気に戻って素直に話を聞いてくれますが。

結局のところ力での解決しかないと思うと頭が痛い話ですよ。

他の子達は何も言わずに首を縦に振ってくれるというのに……。

 

「壮絶な話じゃのう…」

『そこで頼みがあります。もしマカロフさんでも見聞きしないモンスターの情報があれば教えて欲しいのです』

「それは別に構わんが、どうするつもりじゃ?」

『……分かりません。ですが、同郷の者として放っては置けません』

 

マカロフさんの言葉に思考してみるも、答えは見つからない。

私自身、どうして良いか分からないからだ。

けれど私は本能で感じた。このまま放って置いてはいけない、と。

理解出来ないのなら本能で動くまで。

こういう時、野生の勘は鋭いですよ?

 

『ただ1つ決まっているとしたら…』

「ん?」

『フェアリーテイルを害する者は、誰であろうと許しはしない。……という事だけですね』

 

殺気混じりに呟いた後、私は笑みを浮かべた。

このギルドは私にとって、とても大切なモノですから。

 

「うむ。分かった。何か情報があった時はお前さんの耳にも入れよう」

『ありがとうございます。では、私はこれで』

 

丁重に頭を下げ、部屋から出る。

酒場の方に出ればいつもと変わらない喧嘩の騒動が始まっている。

あぁ、私はやっぱりこのギルドが好きです。

例え今見ている光景が、永久に過ぎゆく一瞬の出来事だとしても…。

 

『(いつかこの感情も、記憶と共に忘れされるのでしょうね)』

 

でもせめて、その“いつか”が来るまで、私は……

 

「あ…!」

「す、すまんルーツ!」

『……ふふ』

 

感傷に浸っている最中、私の頭上に中身が詰まった酒樽がぶちまけられた。

お酒は嫌いではありませんが、全身ずぶ濡れになるくらいなら嫌いになっても良いです。

ふふ、最近はよくずぶ濡れになりますね。水難の相でも出ているのでしょうか?

しかし、今はそんな考えは置いておきましょう。

 

『普段は見ていることが多いですが、分かりました。そんなに喧嘩を売りたいなら買いますよ』

「いや、待て待て待て!」

「わざとじゃ……って【曉】はシャレにならん!マジで!」

『行きますよ』

「ギャー!」

「来んなー!」

 

【曉】を片手に喧嘩に混ざる。

いえ、前々からちょっと混ざってみたかったんですよね。

見ているだけでは除け者のような寂しさを感じていましたから。

 

「漢なら拳で語れー!」

「ルーツが混ざるなんて初めてじゃない?」

「ミラちゃーん!呑気に言ってないで助けてー!」

「あ、悪いね。僕これからデートだから」

「ロキ!テメェだけ逃げようたってそうはいかねェ!」

 

皆の反応に笑みを零し、少しだけ後悔した。

まぁ今更止めませんけどね。楽しくなってきましたし。

それに……

 

『ふふ、誰一人として逃がしませんよ?連帯責任です』

 

逃げる獲物を見ると、追いかけたくなるでしょう?

 

 




ルーツがちょっとはっちゃけて終わり!
そろそろファントム編を書きたいです。

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