FAIRY TAIL~龍と妖精~   作:雲珠

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アイディアが思い浮かばずにダラダラと更新日時を引き延ばして作者こと雲珠(うず)です。
更新が遅くなってすみません!


第二十話 龍の力

その姿を見て、全身の肌が粟立つ。

いえ、正確には“姿”ではなく“現象”でしょうか?

 

「何だ、アレ…」

『……嘘…』

「ルーツ?」

 

黒い靄。正体の分からない、謎の闇。

私がココに来る事になった原因。

もし今飛び込めば、私は……

 

『(元の、世界に――)』

「おいルーツ!!」

『っ!あ、はい!』

 

ラクサスさんの怒鳴り声に肩を揺らしながら返事をする。

そして頭を振り、余計な思考を排除する。

 

何も考えるな。何も感じるな。何も想うな。

今は目の前のことだけに集中しろ。

私の今の役目は、ラクサスさんのサポート!

 

「正気に戻ったかよ」

『えぇ。ご心配をお掛けしてすみません』

 

サポートをするはずが、逆にさせてどうするのでしょうね。

肩の力を抜き、現実を認識する。

目に映るのは彩り鮮やかな紅き鳥。

紫電の光を纏い、焦土に降り立っている。

 

『クルペッコの亜種、ですね』

「色が変わっただけ……じゃなさそうだな」

『彼等は炎の代わりに雷を放電します。強度も何故か倍以上に硬くなってますね』

 

クルペッコは原種も亜種もあまり強さに差がないと思っていましたが…。

この認識は改めないといけませんね。

 

<ギャウゥウウゥ!!!>

 

血走った目で叫び声を上げる紅彩の鳥。

先程のクルペッコが進化した姿ですね…。

原因は恐らく、あの正体不明の闇。

一体どんな原理があってこうなったのでしょう?

 

「雷か…」

『ラクサスさん?』

「あ?なんでもねェよ」

 

なんでもない、という割には感慨深い顔で呟いていましたが…。

ま、深く突っ込まないことにしましょう。

 

『しかし、少々不利な戦況になってしまいましたね』

 

私が周りを見渡すと、ラクサスさんも今の状況に気付いたようだ。

木々を踏みわけ、地ならしと共に次々と姿を現すモンスター。

10、20……まだまだ来ますね。

 

「チッ。さっきの叫び声に呼ばれたか」

『そうみたいですね』

 

鬱陶しそうに数多のモンスターを睨みつけるラクサスさん。

ふぅ、と小さく息を吐き、私はラクサスさんに背を向けた。

 

「ルーツ?」

『ラクサスさんは鳥の方をお願いします』

「ハッ、テメェ1人でこの数をやるってか?」

『えぇ。そのつもりですよ』

「……あ?」

 

ラクサスさんの言葉を肯定すると、背中越しに視線を感じた。

恐らくは睨みつけられてるのでしょうね。

彼の感情は行動に出るから分かりやすいですね。

 

『数匹の見逃しは許して下さいね』

「手ェ抜いたら殺す」

『ふふ、恐いです……ね!』

 

勢いよく地面を蹴り、剣を振るう。

何匹かは派手な鮮血と共に地面に倒れ、こと切れる。

私はその内の一匹の返り血をワザと被り、少しばかりラクサスさんから離れた。

 

モンスターといえど、突き詰めれば獣。

血の臭いに当てられたモンスター達は私の方へとその視線を向ける。

 

『これならもう少し離れても問題なさそうですね』

 

クルペッコとラクサスさんの雷に怯えているのか、モンスター達は私の方へと入り乱れてくる。

好都合だと笑みを深くし、その場から一気に離れた。

時折モンスター達がついてくるのかを確認し、ラクサスさんが居る方向へ向いたモンスターには微弱な雷を浴びせて注意を引く。

見逃すかもしれないとは言いましたが、簡単に見逃すほど私は優しくありませんよ?

一応こと戦闘においては、一定のプライドもありますし。

 

<ガルル…!>

<バウッ!バウッ!>

『おっと、』

 

後ろから物凄い瞬発力で私との距離を詰めてきたアイアン・ドッグ。

噛まれそうになりましたが、身体を捻ってなんとか避ける。

野生の獣はコレがあるから恐いですね。

 

<ガァアアァアァ!>

『さて、と』

 

もうある程度ラクサスさんからは離れましたし、そろそろ良いでしょう。

私はその場に留まり、後ろから来るモンスターを切り伏せた。

 

<キャン…!>

『ここなら手加減せずに済みますね』

 

血のついた剣を振るい、背負い直す。

流石にこの数相手に剣一本で挑むのは骨が折れますからね。

これだけ離れれば誰の目に入ることもないでしょう。

周りに人の気配も臭いもしませんし。

 

『限定解除《Драгон Форце(ドラゴンフォース)》』

 

古き龍の言葉と共に、次々に身体に異変が生じる。

最初に牙と爪。そして黒目の部分が縦に伸び、有鱗目となる。最後に龍の鱗が全身に現れる。

滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の方とは少々異なるドラゴンフォース。

龍本来の力を一時的に開放した私の姿だ。とはいえ、完全に龍の姿に戻る訳ではありませんけどね。

完全な解除では無く、あくまでも限定的なもの。それでも力は人間時の3倍ほど増えますが。

 

Сада, можете или да поцнемо(さぁはじめましょうか)

 

自然と口角が上がり、目の前の獲物を睨みつける。

強い者が生き、弱い者が死んでいく。ここからは弱肉強食の世界。

何匹たりとも逃したりはしない。

 

私は両手に雷を纏い、それを振り下ろした。

 

『祖龍の紅雷』

<<ギャオォオオォン!!>>

 

いくつもの雷が地面を走り、10匹近いモンスターを一瞬にして丸焦げにする。

ふふ、あと何回攻撃すれば全滅するでしょうか…?

 

<ゴアァアァ!!>

『遅いですよ。祖龍の鉤爪』

 

猪のようなモンスターが一直線に突き進んで来るのを真正面から見据え、頭部に爪での一撃を与える。

頭蓋骨が割れるような音と共に、そこから手を引き抜く。

粘りつくような血を舐めれば久々に芳醇な味が口内に広がる。

あぁ、本当に久しぶりですね。生の肉を食べたのは。

 

『ふふっ、あははははは!!』

 

龍本来の力に、美味しそうな御馳走。

久々にテンションが上がってきましたね。

たった数カ月しか経っていないのに、悠久の時を生きる私が久し振りに感じるとは。

私は随分とフェアリーテイルでの生活を楽しんでいたようですね…。

 

―――<グギャアァアアァァ!!!>

 

『おや、向こうの戦闘が終わってしまいましたか』

 

森を引き裂く黄色い稲妻が見えるのと同時に、甲高い悲鳴が聞こえてきた。

どうやら決着がついたみたいですね。

……折角テンションが上がってきた所ですが、仕方ありません。

 

『名残惜しいですが、これで終わりです』

 

昂ぶった感情を何とか静め、周りの空気を吸い込む。

ラクサスさんの稲妻が出ている内に決めてしまいましょう。

 

『祖龍の息吹』

 

雷の威力を抑え、拡散の如く広範囲にその力を振り撒く。

流石に咆哮だと森の被害が天災並になってしまいますからね。

今ならラクサスさんの雷でカモフラージュが出来ますし、そこそこが妥当です。

しかし、まぁ……

 

『流石の私も疲れましたね』

 

ドラゴンフォースを再び封印し、人間時の姿へと戻る。

負担が倍に圧し掛かるんですよねぇ、コレ。

人間とは全くもって不便なモノです。それでも関わると決めたのは私自身ですが。

 

『ラクサスさんの方はどうなったのでしょう?』

 

勝ってはいましたが、負傷が気になりますね。

私は疲労後の気だるさを感じながら、ゆったりとラクサスさんが居る方向へと歩き出した。

 




疲れた…!

ルーツの新しい技を投入してみました。
特に捻りは無いです。Simple is the best!


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