今回は戦闘シーンありで、若干残酷描写的な表現があるのでお気をつけ下さい。
『こっち、ですね』
「本当に合ってんのか?」
『はい。間違いありません』
森に入った私達は、クルペッコの臭いを辿りながら走る。
懐疑的な目を向けてくるラクサスさんですが、心配する必要はありませんよ。
なにせ彼等の臭いは少々異質ですから。
『大分町から離れましたね』
「あぁ」
後ろを振り向けば、生い茂る木々ばかりが目に映る。
かれこれ5km以上は離れてますね。
あまり奥へは行きたくなのですが…。
『っと、ちょっと止まって下さい』
「あ?見つけたか?」
『見つけましたが、これは移動している最中ですね』
結構なスピードで移動している。
恐らく地上ではありませんね。
となると、答えは1つ。移動方向は……おや、丁度良い。
『ラクサスさん。今から十秒後、真上に攻撃できますか?』
「ハッ!誰に言ってやがる」
『ふふ、頼もしい限りですね』
私は【曉】に、ラクサスさんは掌に雷を溜める。
鋭い音が不規則に鳴り、お互いの雷は相乗効果のように激しさを増していく。
『……今です!』
「オラァ!」
ふと私達の身体に影が重なる同時に、真上に攻撃を放った。
直後、爆発音が聞こえ、足元の影がどんどん大きくなっていく。
私とラクサスさんはそれぞれ左右に動き、落ちてくるそれを避けた。
<ギャウ!ア゛ァ゛ァァアァ!>
「聞いてた通り、馬鹿デカイな」
周りの木を薙ぎ倒しながら動き回るクルペッコ。
その目は血走っており、嘴からはだらだらと涎が落ちている。
先程の攻撃で両翼を貫きましたからねー。
相当痛いことでしょう。……実際本人も痛いって言ってますし。
……え?言葉が分かるのか、ですか?
勿論分かりますよ。完璧ではなく、あくまで感覚的にですが。
今のクルペッコの言葉を人間風に言うなら、
「痛ってー!何すんじゃこのヤロー!!」
って感じです。
これくらいなら人間でも分かると思いますけどね。
<クェクェクェ!アォーウ!>
「他のヤツを呼ばれたら面倒だ。さっさとやるぞ!」
『はい!』
ラクサスさんが全身に雷を纏ったのを確認すると、私も【曉】を握り直す。
先手を取ったのはラクサスさんで、一直線に鳴き袋に向かって行く。
やはり声を封じに行きましたか…。
<ガァアアァァ!>
攻撃してくるラクサスさんを敵に認識したのか、口から胃液を吐きだすクルペッコ。
確かアレは発火性の強い胃液、でしたね。
全身雷状態のラクサスさんが直撃したら冗談にならない威力で爆発しますね。
「!」
『そのまま突っ込んで下さい!』
本能的なのか、それを避けようとラクサスさんに向かって叫ぶ。
1人で戦っているのではないと、ちゃんと自覚して下さいね?
『
私は【曉】に雷を纏わせ、斬撃と共に胃液に攻撃を飛ばした。
音の煩さに関しては文句言わないで下さいね。
流石にどうしようも出来ませんので。
心の中で言い訳をした直後、鼓膜が麻痺するほどの轟音が鳴り響いた。
「ラアァアァァ!」
<ギャウゥウゥ!!>
轟音に竦みあがるクルペッコに対して、ラクサスさんは容赦なくその鳴き袋を狙う。
動かないモノほど当てやすい的は無い。クルペッコの鳴き袋が破裂したように裂け、大粒の血が地面を濡らした。
あぁ、お腹が減ってくる臭いが鼻を擽りますね。ラクサスさんは顔をしかめていますが。
<~~♪~♪>
身体を不安定に揺らしながらも、華麗に踊りと歌を歌うクルペッコ。
意外と打たれ強いですね。素直に感心します。
「チッ、潰したのに歌えんのか」
『喉自体は健在ですからね』
あくまでも潰したのは鳴き袋だ。
歌うという行為が出来なくなった訳ではない。
まぁ歌ってる途中で空気が抜けるような音がしますし、完全に無駄だったというわけでも無さそうですが。
<クェ…!クェ!>
苦しそうに鳴きながら、両翼の爪を強く打ちつける。
これは、来ますね。
『炎、来ますよ』
「分かってる」
クルペッコの動きを観察しながら、後ろへ避けるタイミングを見計らう。
足を少しずつ下げ、重心を移動させる。
一歩、二歩………今ッ!
<クェエェ!>
『「!!」』
紙一重で炎を避けた私達だが、発生した爆風によって身体が吹き飛ばされる。
気管が焼けるような痛みに耐えながら、荒々しく地面に着地する。
これはちょっと、息をするのが辛いですね。
クルペッコからしたら鳴き袋をやられた仕返しですね…。
苦笑いを浮かべながら、さてどうしたものかとラクサスさんに視線を向けた。
「……、…!!!」
わぁ、なんて凶悪は悪人面でしょう。
同じく気管を負傷したのか言葉は無いですが、思いっきり顔が「殺す」って言ってますね。
お願いですから私まで攻撃しないで下さいね?巻添えとか御免ですよ?
<ブオォォオオ!バウッ!バウッ!>
何かのモンスターの鳴きマネをするクルペッコ。
けれどラクサスさんは目もくれず、閃光のような雷を発生し続けている。
あぁ、はい。これ完全に怒りで私の存在忘れてますね。
現に帯電し切れていない雷が私の方にまで来てますし。
『……仕方ありませんね』
静かに呟き、避難するように木の枝まで跳ぶ。
私はここで他のモンスターが来ない様に見張ってますよ。
「…、……」
ラクサスさんの周りで遊んでいた雷が何本もの光と共に集まり、やがて一本の姿へと収束されていく。
高密度のエネルギーに堪え切れなくなった大木が地面ごと干乾び割れる。
……流石の私もこの攻撃は受けたくないですね。想像するだけで背筋がゾッとします。
「くたばれ!!」
<―――ッ!!!>
凄まじい轟雷の音に悲鳴は掻き消される。
木々を焼き、地面を抉り、空気を裂く。
もはや焦土と化した場所には、それが消えてもなお肌を刺すエネルギーが残留している。
『お疲れ様です。ラクサスさん』
その光景に肩を竦め、私はラクサスさんの横に降り立った。
声を掛けると、ラクサスさんはどこか怠慢な動きで私の方を見た。
「……あァ。ルーツか」
『いや今、完全に私のこと忘れてましたよね?』
「るせェ」
目逸らしは肯定とみなしますよ。
しかし、今は深く突っ込むつまりはありません。
あんな攻撃をした後ではお疲れでしょうし、討伐完了の報告を村長さんにしなければ。
この焦土と化した森の弁解を兼ねて。
『肩貸しましょうか?』
「要らねェよ」
そう言って手を払い除けられるも、あまり力は無い。
これは見た目よりも大分魔力を消費してますね…。
怒りに乗じた攻撃は厳禁という見本ですね、これは。
「…テメェ今、ムカつくこと考えてねェか?」
『あはは。一体何の事でしょう?』
疲労していても鋭いですね…。
私って顔に出やすいのでしょうか?
取り敢えず一度町に戻ろうと、踵を返す。
『「な…ッ!?」』
その時、私とラクサスさんの間に、青紫色の電光が走った。
今回は少し長く書けたでしょうか?微妙ですね。
個人的な意見ですが、ラクサスって怒りの沸点低すぎないですかね?
いつもキレてるイメージしかないので書くのが正直辛いです。
ルーツは笑ってりゃオッケーオッケーという軽さで書いてますが。
ではでは、次話でお会いしましょう!