FAIRY TAIL~龍と妖精~   作:雲珠

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文章が短いなと思いつつも結局いつも通りの字数に仕上がってしまう作者こと雲珠(うず)です。
字数ってどうやれば増やせるんでしょう…?


第十五話 龍と霧の男

 

 

「やっぱシャバの空気はうめえ!!最高のうめえ!!」

 

中に炎が入ったコップを持ちながら、ギルドを走り回るナツさん。

あの、溢さないで下さいね?飛び火になったら大変ですよ?

 

「自由で素晴らしい!!フリーダム!!」

「うおっ!やかましい!!」

「大人しく食ってろ!」

「もう少し入ってれば良かったのに……」

『でも騒がしい方がフェアリーテイル、という気はしますね』

 

ナツさんがこんなにはしゃいでいるのも、前回のエルザさんの一件が原因だ。

逮捕されたエルザさんを助けようと評議院に乗り込んだが、蓋を開けてみるとそこはあくまでも“形式だけ”の逮捕。

すぐに帰って来られる所を、ナツさんの乱入で一日を牢で過ごす羽目になってしまったのだ。

そして今日、二人とも無事に帰って来た。そして今に至る。

 

「心配して損しちゃった」

「そうか!カエルの使いだけにすぐ“帰る”」

『………』

「………」

「さ、流石氷の魔導師!ハンパなくさみィ!」

 

妙案が浮かんだという顔をするグレイさんだが、ごめんなさい。

そのダジャレは正直どこかツボなのか分かりません。

 

「で、エルザとの漢の勝負はどうなったんだよ」

「漢って…」

「そうだ!忘れてた!エルザー!この前の続きだー!!」

 

元気なナツさんとは対照的に、エルザさんは帰って来てからの様子が可笑しかった。

何が変なのかと聞かれると答えに詰まりますが、まるで悩んでいるようにも見えます。

他の人に言ったら「あのエルザが?」とでも言われそうですね。

 

「よせ。疲れているんだ」

「行くぞー!!」

「やれやれ」

 

襲いかかってくるナツさんに溜め息を一つ吐き、エルザさんは斧を換装。

そして机と椅子もろともを木端微塵に破壊し、ナツさんは叩き飛ばした。

凄い勢いで壁に衝突したナツさんは頭から血を流し、ぐったりと気絶した。

 

「仕方ない。始めようか」

「終ー了ー!!」

『始まる前にゲームオーバーですね』

「ぎゃははは!!だせーぞナツ!!」

「やっぱりエルザは強ェ!」

「おい、この間の賭け有効なのか?」

「あ~あ、またお店壊しちゃって……」

 

各々がそれぞれの反応を見せる。

その様子をほのぼのとした気持ちで見ていると、不意に眠気がした。

この不自然な眠気、もしかして魔法でしょうか?

 

「あ、」

「!」

「これは!」

「くっ…」

「眠っ」

 

全員が突然気絶したように眠りに落ちる。

まぁ、私は睡眠の耐性があるので多少は抵抗出来ますが。

しかし、凄い強力な眠り魔法ですね。

私ですら意識をハッキリ保たないと眠りに落ちそうです。

 

そして寝静まったギルド内に、黒いコートを着た人物が入って来た。

ご丁寧に顔や髪までも隠しており、唯一分かるのは目だけですね。

 

「ミストガン」

 

マカロフさんがそう呟いたのを聞き、私は彼に近付いた。

どうやら敵ではないようですね。

 

『ミストガン様、ですか。お会いするのは始めてですね』

「ッ!?ミラ・バルカン…?」

『……え?』

 

私を見た瞬間、ミストガン様は明らかに狼狽えた。

そして私にとって、信じられない名前を告げてきた。

 

―――ミラバルカン

 

確かにそう言った。

その名は最も忌々しく、私が憎悪と後悔を向けるべきモノ。

あまりの衝撃に何も言えずにいると、ミストガン様は小さく首を横に振った。

 

「いや、まさかな。アイツの髪は紅い…」

『(紅い髪、だとッ!?馬鹿な、アレが存在しているハズはない…!)』

 

アレは消滅したのだ。

あの日、シュレイド王国が滅亡した日に…。

 

「すまない。名を聞いても良いか」

『……ルーツだ。ミストガン』

「そうか。よろしく頼む」

 

一人納得した奴とは裏腹に、我が心は晴れない。

自分が何を喋っているのかすら曖昧とは、情けない。

これでは他の龍に顔向けなんぞ出来ぬな。

………ふう、気を取り直しましょう。

 

「行ってくる」

「これ!眠りの魔法を解かんかっ!」

 

私が精神を落ち着かせている間に、ミストガン様は依頼を受けたようですね。

あの方が何を知っているのか分かりませんが、今度会う時には話してもらいましょう。

何故、あの名を知っていたのか。その理由を。

 

「伍、四、参、弐、壱……」

 

依頼を受けたミストガン様がギルドから出ると同時に、眠っていた方たちが一斉に起きた。

良かった、彼等が寝ていて。あんな情けない姿を見られずに済みました。

 

「こ…この感じはミストガンか!?」

「あんにゃろォ!」

「相変わらずスゲェ強力な眠りの魔法だ!」

「ミストガン?」

 

最近入ったばかりのルーシィさんは知らないみたいですね。

かく言う私も、今日が初対面だった訳ですが。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強の男候補の一人だよ」

 

ルーシィさんの近くにいたロキさんがそう答える。

しかし、ルーシィさんの存在に気付いたロキさんが挙動不審な様子で彼女から離れて行った。

ある程度の見当はついてますが、どうしてそこまで星霊魔導師を避けているのでしょう?

どちらかと言えば、彼は星霊魔導師を好く立場なのでは?

 

「どういう訳か誰にも姿を見られたくないらしくて、仕事をとる時はいつもこうやって全員を眠らせちまうのさ」

「なにそれ!?あやしすぎ!」

「だからマスター以外、誰もミストガンの顔を知らねえんだ」

「いんや、俺は知ってっぞ」

 

グレイさんがルーシィさんの質問に対して答えていると、頭上から声が聞こえた。

見上げると、2階の手摺りに寄りかかるようにして立っているラクサスさんがいた。

 

「ラクサス!!」

「いたのか」

「珍しいな!」

 

他の皆さんが言うように、ラクサスさんがギルドに居ることは殆どない。

仕事に出てる方が多いですからね。それは仕方ありません。

 

「ミストガンはシャイなんだ。あんまり詮索してやるな」

 

人を見下したような態度とは裏腹に、意外と優しい方なんですよね。

素直になれないというか、口下手というか…。

自分の気持ちに知らないフリをしている気さえしますね。

 

「ラクサスー!俺と勝負しろー!」

 

気絶していたナツさんが起き、次はラクサスさんに喧嘩を売る。

おや、案外復活が早かったですね。

 

「さっきエルザにやられたばっかりじゃねぇか」

「そうそう。エルザごときに勝てねぇようじゃ俺には勝てねぇよ」

「それはどういう意味だ」

『まぁまぁ、エルザさん。落ち着いて下さい』

 

若干雰囲気の悪くなった中でも構わず、ラクサスさんは言葉を続ける。

 

「俺が最強ってことさ」

「降りてこい!コノヤロウ!」

「お前が上がってこい」

「上等だ!!……ぎゃっ」

 

そう言って走り出すナツさん。

しかし2階へ上がろうとした時、腕のみを巨大化させたマカロフさんに止められた。

まぁ、規則ですからね。2階へ上がれるのはS級の魔導師だけです。

 

「2階には上がってはならん。まだな」

「ははっ!怒られてやんの」

「ふぬぅ…」

「ラクサスもよさんか」

妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強の座は誰にも渡さねぇよ。エルザにもミストガンにも、あのオヤジにもな。俺が最強だ!」

 

誰が最強でも良いですが、仕事に行くならこの一触即発の雰囲気をどうにかしてからにして下さいね?

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 

「たいへーん!」

 

ラクサスさんの最強宣言から翌日、ギルド内にミラさんの声が響いた。

どうやら何か焦っているみたいですね。

 

「マスター!2階の依頼書が一枚無くなってます!」

「!!」

『それはまた、大変ですね』

 

ミラさんの言葉に室内がざわめく。

マカロフさんも飲んでいたお酒を吹きだした。

 

「それなら昨日の夜、泥棒猫がちぎって行ったのを見たぞ。羽のはえた、な」

「ハッピー!?」

「つーことはルーシィも一緒か!?」

「何考えてんだアイツ等!」

「S級クエストに勝手に行っちまったのか!?」

「これは重大なルール違反だ。じじい!奴等は帰り次第、破門だよな」

 

ラクサスさんはさらに「あの程度の実力じゃ帰ってもこれない」と話し、笑った。

うーん、私は意外と何とかなりそうな気がしますけどね。

まぁ彼等のやっていることは違反なので、それ以前の問題ですが。

 

「ラクサス!!知ってて何で止めなかったの!?」

「俺には泥棒猫が紙キレくわえて逃げてった風にしか見えなかったんだよ。まさかあれがハッピーで、ナツがS級行っちまったなんて思いもよらなかったからなァ」

 

怒る、というより若干キレかけのミラさんに対してそう言い訳するラクサスさん。

しかし、その言い訳はまかり通りませんね。

羽の生えた猫なんてハッピーさん以外にあり得ませんし、ラクサスさんほどの実力者なら持って行かれた紙キレを認識することだって難しくはない。

 

つまるところ、ラクサスさんは知っていて見逃したのでしょう。

見逃した行為が良いか悪いかと聞かれれば悪いですが、ラクサスさん自身に非はないですね。

結局、行動を起こしたのはナツさん達なのですから。

 

「マズイのう……消えた紙は?」

「呪われた島、ガルナです」

「悪魔の島か!!」

 

え…。ナツさん達、あの島に行ったんですか?

なんともまぁ、勇気がありますね。

 

「ラクサス!連れ戻して来い!」

「冗談。俺はこれから仕事なんだ。テメェのケツをふけねぇ魔導師はこのギルドにはいねぇ。…だろ?」

「今ここにいる中でオマエ以外誰がナツを力ずくで連れ戻せる!?」

「ルーツがいるだろ。アイツならナツも言うこと聞くんじゃねぇか?懐いてるしな」

『やだなー、ラクサスさん。それこそ冗談は止めて下さいよ』

 

あの島には絶対に行きません。

いえ、行けるなら行きますけどね?

前に仕事の帰りに近くを飛んで通った際、変身が解けそうになったんですよ。

急いで離れたので龍に戻る事はありませんでしたが、それ以来は極力近付かないようにしています。

恐らくは魔法を解く“何か”がある場所なのでしょう。

 

『私もこれから仕事なんです。ナツさん達のことは他の方にお任せしますよ』

 

冷たい様ですが、無理なものは無理です。

私は皆さんに軽く会釈し、ギルドを出た。

恐らくグレイさん辺りが行ってくれることでしょう。

 

 

 

 




というわけで、悪魔の島編は放棄!
でも書かないと決めると意外と未練が…。
優柔不断な作者ですみません。

3DS欲しい。
持ってないんですよねー。

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