FAIRY TAIL~龍と妖精~   作:雲珠

13 / 28
いつの間にかお気に入り登録が100件を超えていたことに驚きを隠せない作者こと雲珠(うず)です。
100件って…!100件って…!
二度見どころか三度見しましたよ!
ご登録して下さった方、ありがとうございます!!


第十三話 龍と笛の悪魔

「ナツー!」

「お!遅かったじゃねぇか。もう終わったぞ」

「あい」

 

魔道四輪に乗ったルーシィ達がようやく到着した。

しかし、戦闘はすでに終わっている。

 

「流石だな」

「ケッ」

「そ、そんな!エリゴールさんが負けたのか!?」

 

満身創痍で倒れているエリゴールを見て呆然とするカゲ。

その顔は信じられないとでも言いたげだ。

 

「こんなの相手に苦戦しやがって、フェアリーテイルの格が下がるぜ」

「あぁ?苦戦?どこが?圧勝だよ。な、ハッピー」

「微妙なトコです」

 

ハッピーに肯定を求めるナツだが、相方は非常に残酷だった。

事実な所が余計に悲しい。

 

「何はともあれ見事だ、ナツ。これでマスターたちは守られた」

 

エルザの言葉で全てが終わったような雰囲気に包まれる。

しかし、その空気の中ルーシィが周りをキョロキョロと見渡した。

それは何かを探しているようだった。

 

「ん?どうした、ルーシィ」

「ねぇナツ、ルーツ知らない?突然いなくなって……」

「………ッ!!」

 

ルーシィの言葉にハッと目を見開くナツ。

そして、線路の下に続く谷底を見た。

ナツの行動にエルザ達3人もその意図に気付いた。

 

「まさか、この下に落ちたのか!?」

「そんな…!」

「おいおい、いくらアイツでもここから落ちたらタダじゃ済まねェぞ」

 

固唾を飲み、真剣な顔持ちで下を見るナツ達。

その様子を当の本人が頬をぽりぽりと書きながら見ていた。

 

『あの、そんなに真剣な顔をされたら出て行きにくいのですが……』

 

・・・・・・・・・・。

 

静かな場にそんな声が聞こえてくる。

そしてたっぷり3秒置き、全員が一斉に振り返った。

 

「「「ルーツ!!?」」」

『はい。ルーツです』

「え、なんで!?落ちたんじゃ…」

 

正直、重傷を負っていると思っていた。

だがそんな予想を裏切り、ルーツは五体満足どころか掠り傷1つ負っていなかった。

心配して損したと思えるほど、全くの無傷である。

 

『えぇ。だから登ってきました』

「登って?」

『丁度ハシゴがあったので』

「ごめん。何言ってるか分からない」

 

理解が追いつかなかったのか、頭を抱えるルーシィ。

ルーツの話を聞く限り、ここから落ちて、そこからハシゴで登って来たということになる。

もし今突っ込めるなら「じゃあなんで無傷なのよ!」と突っ込みたい。

 

まぁ、実際は本当に落ちた訳ではなく、翼を生やして飛んだのだが。

 

「まぁいいじゃねェか。無事だったんだし」

「アンタは軽すぎ!」

 

一番心配していたはずのナツがケロリと笑いながら言う。

そのお陰か、その場の雰囲気がふと和らいだ。

 

「よし、ついでだ。定例会の会場へ行き、事件の報告と笛の処分についてマスターに指示を仰ごう」

「クローバーはすぐそこだもんね」

『ッ危ない!!』

 

話がついた所で突然ルーツが叫び声を上げ、仲間を突き飛ばした。

直後、魔道四輪が大きな音を立てて動き出した。

操縦しているのは……

 

「カゲ!」

「危ねェなァ!動かすなら言えよ!」

「油断したなハエ共!笛は……呪歌(ララバイ)はここだァー!ざまぁみろ!!」

 

いつの間にかララバイを手にしていたカゲは、魔道四輪でクローバーへと去って行く。

その怪我でよくそんな体力があったなと思うほどの速さだ。

 

『してやられましたね』

「あんのヤロォォォ!!」

「何なのよ!助けてあげたのにー!」

「追うぞ!」

 

ナツ達は若干の怒りを胸に、カゲの後を追った。

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 

「いた!」

「じっちゃん!」

「マスター!」

 

日も暮れた頃、ようやく定例会の会場へと着いたナツ達。

全力で追いかけてきたとはいえ、向こうは魔道四輪。

もう遅かったかと思ったが、どうやら間に合ったようだ。

カゲを止めようとした時、誰かがナツ達の行く手を止めた。

 

「しっ!今イイトコなんだから見てなさい」

青い天馬(ブルーペガサス)のマスター!」

「あら、エルザちゃん。大きくなったわね」

 

ナツ達を止めたのは定例会に出席していたマスターだった。

よくよく周りを見ると、他のギルドマスター達もいた。

 

「どうした?早くせんか」

「………」

 

止められている間にも、状況は進む。

カゲはすでにララバイを口元まで持ってきている。

あとはその笛を吹くだけ。

 

「いけない!」

「黙ってなって。面白ェトコなんだからよ」

『エルザさん。ここはマカロフさんを信じましょう』

「だが…!」

 

しかし、いつまで経ってもカゲはララバイを吹こうとはしなかった。

何かに迷っている表情をしているカゲを見て、ルーツは静かにエルザを宥める。

そして、事の先を見守った。

 

「さぁ」

「………!!」

 

ララバイにグッと力を入れるカゲ。

だが、ララバイから音が聞こえることはない。

吹けばいいだけなのは本人も分かっている。

けれど、迷いの葛藤がそれを許さなかった。

 

「何も変わらんよ」

 

そんなカゲの様子を見て、マカロフが語り始めた。

まるで全てを知っているかのように、カゲを真正面から見据えて。

 

「弱い人間はいつまでたっても弱いまま。しかし、弱さの全てが悪ではない。元々人間なんて弱い生き物じゃ。一人じゃ不安だからギルドがある。仲間がいる」

 

マカロフの顔は語るにつれ、真剣さを増していく。

そこには確かにマスターとしての顔がある。

そして同時に、悪いことをした子供を叱る“(おとな)”の顔でもあった。

 

「強く生きる為に寄り添いあって歩いていく。不器用な者は人より多くの壁にぶつかるし、遠回りをするかもしれん。しかし明日を信じて踏み出せばおのずと力は湧いてくる。強く生きようと笑っていける」

 

そこでマカロフは一度言葉を止め、ニカリと笑った。

 

「そんな笛に頼らなくても、な」

「―――!」

 

カゲは持っていたララバイを力なく地面に落とし、両膝をついた。

あぁ、自分は負けたのだとカゲは悟った。

単純な力でも、ましてや権力でもない。

ただ“心”が負けたのだ。今の自分には持ち得ていない、その温かな心に。

 

「参りました」

 

涙と共に、そんな言葉が自然と出た。

決着がついたと分かったナツ達は、そろってマカロフの元へ駆け寄って行く。

 

「マスター!」

「じっちゃん!」

「じいさん!」

「ぬぉおぉぉっ!?何故三人がここに!?」

「流石です!今の言葉、目頭が熱くなりました!!」

「痛ァ!」

 

ガンガンと鎧にぶつけられるマカロフ。

エルザ自身に悪気が無いだけ、余計にタチが悪い。

黙っていた反動なのか、それを切っ掛けにガヤガヤと騒ぎだすナツ達。

その様子を一歩下がって見ていたルーツは、ふと何かの気配を感じ取った。

 

『この気配は……』

<カカカ…。どいつもこいつも、根性のねェ魔導師共だ>

 

穏やかだった場に、不気味な声が響く。

その声を辿ると、カゲの足元に落ちているララバイから紫色の煙がたちこめていた。

 

<もうガマンできん。ワシが自ら喰ってやろう>

「笛がしゃべったわよ!ハッピー!!」

「あの煙……形になってく!」

 

紫煙は形となり、その姿を現した。

見上げると、そこには木を媒体とした巨大なモノが立っていた。

 

<貴様等の、魂をな……>

「な!?」

「怪物!!?」

 

まさしく怪物と呼ぶに相応しい巨体をした、不気味な生物。

その正体は大昔に黒魔導師ゼレフによって生み出された悪魔だ。

皆が驚く中、唯一、ルーツだけがその生物を平然と見ていた。

まぁ自身もその生物並の巨体の持ち主なのだから当たり前の反応と言える。

それ故、ルーツの行動に迷いは無かった。

 

ようするに、敵は狩る。

 

『ハッ!』

<ガァアァア!!>

 

その悪魔が呪歌(ララバイ)を発動する前に、ルーツは一気に切りかかる。

悪魔だろうがなんだろうが、媒体は木だ。

鋼鉄よりも恐ろしいほどの強度を誇る【曉】の攻撃に、その身体はあっさりと切り裂かれ、よろめく。

 

「アイスメイク“槍騎兵(ランス)”!」

<ゴォアッ!>

 

ルーツの攻撃を機に、次々と攻撃を仕掛けるグレイ。

氷で出来た槍はララバイの身体に一撃で穴を開けた。

 

「な…なんて破壊力なの!?」

「今だ!!」

 

ララバイが体勢を崩した所でエルザは“黒羽の鎧”に換装し、すかさず攻撃に入る。

ナツも負けじと、ララバイの身体によじ登って行った。

 

「右手の炎と左手の炎を合わせて……火竜の煌炎!!」

<ば、バカ…な……>

「見事!」

『……あ、』

 

全員の攻撃を一斉に受け、倒れるララバイ。

その倒れ先にある物を見たルーツは、小さく呟いた。

そして頬をぽりぽりと掻き、心の中でマカロフに謝った。

 

「ゼレフの悪魔がこうもあっさり……」

「こ…こりゃたまげたわい!」

「かーかっかっか!」

「す、すごい……これが、妖精の尻尾(フェアリーテイル)!!」

 

ルーツを除き、満足気な顔でマカロフの所へ戻るナツ達。

その表情はまだ余力を残しているようだ。

 

「いきさつはよく分からんが、妖精の尻尾(フェアリーテイル)には借りができちまったなァ」

「なんのなんのー!ふひゃひゃひゃ…ひゃ……は」

 

上機嫌に笑っていたマカロフの顔がある一点を見た途端に固まった。

そして、その場からそろりと音も立てず去る。

その行動に疑問を感じた他のマスター達は、自分たちの背後を見た。

全員がその光景に驚愕し、叫んだ。

 

「ぬあぁあぁぁああ!!定例会の会場が……粉々じゃ!!!」

「ははっ!見事に壊れちまったなァ!」

「捕まえろー!!」

「おし、任せとけ!」

「お前は捕まる側だー!!」

 

やる気を見せるナツだが、そのナツ自身が犯人なのだからやり切れない。

他のマスターからのツッコミを盛大に受けながら、フェアリーテイルの一同は逃げ出した。

そんな中、ルーツがある人物に近付いた。

 

『すみません。ボブ様』

 

その人物とは、青い天馬(ブルーペガサス)のマスター、ボブだ。

周りの躍起だっているマスター達とは違うと判断したルーツは、彼に話しかけた。

 

「あら、ルーツちゃん。なにかしら?」

『後に来る評議会の方に、コレをお願いします』

 

そう言ってルーツが手渡したのは、どこかボロボロになった(ララバイ)

いくら倒したとはいえ、恐らく媒体がある限り何度でも蘇るだろう。

もし放って置かれでもしたら大変なことになると、ルーツは他の人物に任せることにした。

 

「そうね。分かったわ」

『お願いします。では、私はこれで』

 

ペコリと礼儀正しく頭を下げたルーツは、逃走するギルドのメンバーに加わった。

 

 

 




派手な戦闘シーンにするはずだったのに、何故かあっさり終ってしまった…。
それもこれも、ララバイが弱いのがいけない!
これでは不完全燃焼状態ですよ…。ぐぬぬ!

取り敢えず、鉄の森編はこれで終わりです。
悪魔の島編はどうするか迷い中です。
あれ?ぶっちゃけルーツ行かなくても良くない?とか思ってたりします。
 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。