FAIRY TAIL~龍と妖精~   作:雲珠

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久し振りに白ミラさんの所へ行ったら相変わらずの神々しさに一時停止してまで見続けた作者こと雲珠(うず)です。
けど時間が開きすぎたためか一度別れ話を切り出されました。
くっ、折角苦労して落としたのに…!


第十一話 脱出

「ナツ!」

 

駅の中を探し回っていると、轟音が聞こえてきた。

その発生源に向かうと、カゲを吹っ飛ばすナツさんを見つけた。

 

「それ以上はいい!彼が必要なんだ!」

「でかした!クソ炎!」

『ナツさん!そこにいると危ないですよ!』

 

一気に言われたためか、頭の上に何個も疑問符を浮かべるナツさん。

その時、エルザさんが魔法剣を取り出して彼に斬りかかった。

 

「ひっ、なんか知んねェけどスンマセン!」

 

半泣きになりながら、エルザさんの攻撃を避けるナツさん。

けれど、エルザさんの標的はナツさんの後ろにいるカゲだ。

あぁ、だから危ないと言ったのに…。

 

「四の五の言わず、魔風壁を解いてもらおう。いいな」

「わ、分かった…」

『ッ!?避けて!!』

 

カゲが承諾した瞬間、嫌な魔力を感じ取った私は咄嗟に彼を突き飛ばした。

代わりに、魔法を通して何かが私の身体を刺そうとしている。

が、その程度の魔法では龍の身体を傷つけることは出来ませんよ?

 

『知ってますか?同族殺しは自然界の中でも禁忌の1つ、なんですよ?』

 

お互いに承諾しているなら未だしも、きっとコレは違う。

私は、私を刺そうとしていた腕を掴み、目の前の壁を思いっ切り殴った。

 

『ハッ!』

「ぐわあぁぁあぁぁっ!!」

 

壁が粉々に破壊され、中に隠れていた人物ごと吹っ飛んだ。うん。少しスッキリしました。

しかし、結局建造物の一部を破壊してしまいましたし、これでは私もナツさんのことを言えませんね。

 

「な、何故だ…」

『……鉄の森(アイゼンヴァルト)の中に、解除魔導師は貴方一人しかいません。その貴方がいなくなれば、誰もこの駅から出ることは出来ない。……そう、言ってましたよ』

 

放心しているカゲに、私は迷いながらも真実を告げた。

本当は知らないままの方が良いのかもしれない。

仲間に裏切られたなんて、きっと信じたくもない事だ。

 

「仲間じゃ、ねェのかよ。同じギルドの……仲間じゃねェのかよ!!」

『ナツさん…』

 

グッと痛いほど拳を握りしめ、近くの壁を殴るナツさん。

そこから感じ取れるのは、抑えきれないほどの怒り。

例え敵であっても、それは関係ないのですね。

 

「カゲ!おいカゲ!」

『あの、え、エルザさん…?』

 

未だに放心状態のカゲに、頭をガンガンと打ちつけながら揺らすエルザさん。

その、この状態にも関わらず真実を告げた私も酷いとは思いますが、流石にそれは…。

精神と物理のダブルパンチは如何なものかと。

 

「こんな状態じゃ魔法なんて使えねぇぞ!」

「やって貰わねばならないんだ!」

 

………。

 

私はその場からそっと一歩離れ、笑顔で見守る事にした。

これはもう、時間に身を任せることにしましょう。

 

「え、えーと、お邪魔だったかしら…?」

「……あい」

『ルーシィ様にハッピーさん。来たんですね』

「これ、どういう状況ですか?それと様は要らないです」

『貴女まで!?』

 

今まで何も言わなかったら、呼んでいいものだと思っていたのに…!

最後の最後でなんたる仕打ち!

 

私は若干落ち込みながら、状況の説明をざっくりと話した。

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 

「え!?エリゴールの目的って、定例会だったの!?」

「な、じっちゃんが!」

 

場所を移し、目の前でゴウゴウと音を立てている魔風壁を見る。

カゲは……まぁ、気絶してます。

本人の名誉のために言い訳するなら、放心して気絶した訳ではなく、エルザさんの壁打ちによる軽い脳震盪で気絶しただけです。

とはいえ、暫くは起きそうにないですね。

 

「魔道四輪車で追い付けなくはない。だが、この魔風壁をどうにかしねェと外には出られねェ」

「そんな…」

「ウオォォオオオォ!!」

 

手に炎を纏い、魔風壁に攻撃するナツさん。

しかし、その攻撃はあっさりと弾かれた。

 

「外に出ようとするとコレだ」

 

身体を吹っ飛ばされたナツさんを見て、冷静に言うグレイさん。

ルーシィ様……じゃなくて、ルーシィさんはその様子をアワアワとした様子で見ている。

 

「起きろ、カゲ!力を貸してくれ!」

『エルザさん、それ逆効果です』

 

さらにカゲの頭をガンガンと床に打ちつけるエルザさん。

脳震盪起こしてますから!そっとしておいてあげて下さい!?

 

「クソォ!こんなモン、突き破ってやらァ!!」

 

再び魔風壁に攻撃するナツさん。

しかし結果は変わらず、身体を吹っ飛ばされた。

 

「ナツ!」

「力じゃどうにもなんねェんだよ…」

「急がなきゃマズイよ!アンタの魔法で凍らせたりとか出来ないの!?」

「出来たらとっくにやってるよ」

「ルーツさんは…!」

『ん?そうですね、再挑戦してみますか』

 

話を振られたので、手をパキリと鳴らしながら魔風壁に前に立つ。

さて、前にやった時に感覚は掴めましたし、今回は少し工夫して……

 

「やめろルーツ!次は本当に持っていかれるぞ!」

『大丈夫ですよ』

「前の時にズタズタにされただろ。なんでそんなに呑気なんだ…」

 

ふむ、心配性のグレイさんに免じて腕を突っ込むのは止めます。

けどリトライはします。たかが一度失敗したくらいで諦めるのは祖龍の名に傷が付きます。

人生は何事も挑戦と言いますしね。……龍ですけど。

 

『ふぅー……』

 

【曉】を()()で構え、深く息を吐く。

不規則な音と共に紅い雷が大剣に纏わりつき、光を増していく。

放電しそうな程の雷を大剣だけに凝縮し、溜めて、溜めて、溜めて……

 

 

災厄紅雷(さいやくこうらい)

 

 

―――撃つ

 

 

「なっ!?」

「きゃあ!」

「スゲェ!」

「あい!」

 

紅雷と暴風がせめぎ合い、激しい轟音が鼓膜を刺激する。

ひりひりと、まるで焼けた様な痛みが肌を刺す。

刹那、向こう側の景色が広がり、再び風によって閉ざされた。

 

『……やはり駄目でしたか』

 

熱くなった【曉】を冷ますように軽く振るい、背負い直す。

結構魔力を消費しましたね…。今ので五分の一程度は持って行かれたでしょうか?

 

「一瞬だったけど、あの風を切り裂くなんて…」

「あぁ、信じらんねェぜ」

「ルーツ、凄いな!」

『っと、ナツさん…』

 

抱きついてきたナツさんを受け止め、その頭を撫でる。

結局ダメだった訳ですが、こんなに嬉しそうにされるとは…。

別に大したことはしてないんですがね。

 

「だが今のでも駄目となると、別の方法を考えねばなるまい」

『そうですね。単純に力技では無意味と証明されましたし』

 

問題は振り出しに戻り、再び悩みだす私達。

その横で、突然ハッピーさんが叫んだ。

 

「あーーー!!!」

『っ、ハッピーさん?どうかしました?』

「ルーシィ!思い出したよー!」

「え?な、何が…?」

「コレ!」

 

そう言って、ハッピーさんは金色の鍵を取り出した。

アレは確か黄道十二門の鍵、でしたね。

 

「それ、バルゴの鍵!?駄目じゃない!勝手に持って来ちゃ!」

「違うよ!バルゴ本人が“ルーシィへ”って!」

「え!?」

 

バルゴ……乙女座のことですね。

あぁ、そういえばルーシィさんは星霊魔導師でしたね。

 

「バルゴ?……あぁ!あのメイドゴリラ!」

『冥土?あの見えるか見えないか微妙な服で敵味方構わず魅了しながら自身は相手をフルボッコして天国へ送り出し、容赦なく敵の亡骸から獲物を剥ぎ取るという噂の…?』

「それどんなメイドよ!?」

 

どんなって、こんなメイドですが。

正直、あんな服を着て来られたら戦意が喪失するんですよね。

 

「エバルーが逮捕されたから契約が解除になったんだって。そしたら次はルーシィと契約したいってオイラん家に訪ねて来たんだ」

「嬉しい申し出だけど、今はそれどころじゃないでしょ?脱出方法を考えないと」

「でも…」

「うるさい!猫は黙って“ニャアニャア”言ってなさい!」

 

ハッピーさんの頬っぺたを伸ばすルーシィさん。

なんか、後ろに黒いオーラが出てますよ…?

 

「…コイツも時々恐いな……」

「意外と強ェんだぜ!」

 

若干引き気味のグレイさんと、それと対称的に何だか楽しそうなナツさん。

ふふっ、こんな状況ですけど何だか微笑ましいですね。

ほのぼのと温かい目で見守っていると、ハッピーさんが私の方へ飛んできた。

 

「ルーツー!」

『はい。どうしました?』

 

泣くまでいってませんが、若干涙目になっているハッピーさん。

片手で抱えながら、引っぱられた頬を撫でた。

 

「バルゴは地面に潜れるし、魔風壁の下を通って出られるかなってオイラ思ったのに…」

『そうですね。魔風壁の下を通って………はい?』

「な、何!?」

「マジかよ!?」

「え、えーと…?」

「あ!そっか…!」

 

成る程、その手がありましたね。

何も結界を破らずとも、避けて通ればいい話でした。

何故こんな事に気付かなかったのでしょう…。

 

「やるじゃないハッピー!もう、なんで早く言わないのよー!」

「ルーシィが抓ったから」

「ごめん!後で何かお詫びするから!しますから!させて頂きます!兎に角鍵を貸してー!」

「あい!お詫びよろしくね!」

 

お詫びの言葉にあっさりと鍵を渡すハッピーさん。

腕の中で機嫌の良いハッピーさんに、小さく耳打ちした。

 

『狙ってました?』

「あい」

『ふふ、策士ですねー』

 

猫だからと侮るべからず、ですね。私は侮ってませんけど。二度と侮るものですか。

だって普通に剣やらハンマーやらブーメラン、更には爆弾まで投げつけてくる猫がいましたから。

果てにこやし玉まで投げつけられた日にはガチ泣きしましたね。

 

だってアレ洗っても臭いが消えないんですよ!一週間くらい軽く残るんですよ!

久々に来た友達に「あ、うん。…ごめん。今日は帰るわ」って憐憫の眼差しで気遣われながら避けられた時の気持ち分かります!?

あぁ、思い出したらトラウマが…!

 

「ルーツ、顔色悪いよ。大丈夫?」

『……えぇ、大丈夫です』

 

下から覗き込むようにして顔を見てきたハッピーさんに、私は思わず視線を逸らした。

言えない、猫一匹に祖龍が泣かされたなんて絶対に言えない。

 

「我、星霊界との道を繋ぐ者!汝、その呼掛けに応え(ゲート)を潜れ!」

 

おっと、ルーシィさんの魔法が始まりましたね。

星霊魔導師の魔法は初めて見ますから、少し興味深いです。

まぁ星霊自体は見たことありますが。

 

「開け、処女宮の扉!バルゴ!」

「お呼びでしょうか?ご主人様」

「……誰?」

 

出てきたのは、両手に手枷をしたメイド服の女性。

ナツさんより少し鮮やかなピンク色の髪をしている。

 

「よう、マルコ。激痩せやしたな」

「バルゴです。あの時はご迷惑をおかけしました」

「あ、アンタその格好…!」

「私はご主人様の忠実なる星霊。ご主人様の望む姿にて仕事をさせて頂きます」

「前の方が迫力あって強そうだったぞ」

「そうですか?では…」

 

バルゴ…さん?(何故か様を付けては逆に失礼な気がした)はそう言うと、巨大化した。

確かに、そちらの姿の方が強そうですね。

 

「余計な事は言わんでいい!元の華奢な方でいいから!」

「承知しました」

 

再び、バルゴさんは出てきた方の姿に戻った。

私としては、さっきの巨大な方が好みなのですが…。

いえ、目の保養目的なら今のままでも良いのですが、なんと言いますか……こう、本能が刺激されるというか……食欲が湧き立つというか……。

 

アレですね。最近あまり生肉を食べていない所為です。

思考が食に対してストレートになっている気がします。

 

「兎に角時間がないの!契約は後回しでもいい?」

「畏まりました、ご主人様」

「てかご主人様は止めてよ…」

「では女王様と」

「却下!」

 

バルゴさん、ルーシィさんの腰に付けてある鞭を見て判断しましたね…。

まぁ一般の人が鞭を持ち歩いてたらそういう趣味かと思いますよね。

 

「では姫と」

「そんなとこかしらね」

「そんなとこなのか…」

「つか急げよ」

「では、行きます」

 

そう言うとバルゴさんの足元に魔法陣が発生し、一瞬にして外とのトンネルが形成された。

外の状況が見えない中で、よく出来ますね。

私には恐らく無理です。

 

「おーし、この穴を通って行くぞ」

「よ、っと」

 

ナツさんの方を見ると、カゲに肩を貸して立たせていた。

どうやら一緒に連れて行くみたいですね。

 

「あ?何してんだ、ナツ」

「俺と戦った後に死なれちゃ、後味が悪ィんだよ」

 

カゲをズルズルと引き摺りながら、穴の中に入って行くナツさん。

私とエルザさんはカゲがその言葉を聞いている事を知りながら、小さく笑った。

 

「我々も行くぞ」

「おう」

『はい』

「あい!」

 

そうして私達はバルゴさんが掘った穴を進み、駅の外へと脱出した。

 

 




ようやく脱出まで漕ぎつけました!
いやぁ、長かった。何度挫折しかけたことか…。
けど無事に脱出まで書けたので結果オーライということで。

クルペッコはしばらく見たくないです。
時間だけが無駄に過ぎていく…。
疲れたので白ミラさんに癒してもらいます。

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