黒子のバスケ〜努力の天才   作:マニック

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第17Q

黒金瑠璃という男は実は帝光時代から自らの意思でゾーンに入ることができた。

 

しかし、そのことを知るものは少ない。青峰大輝と当時の部長ぐらいである。

 

なぜなのか。

 

それは黒金瑠璃はゾーンを公式の試合ではまずまちがいなく使用しかなったからである。ゾーンは体力と精神力を己の限界まで使う。そんなものをほいほいと使用すれば確実に選手生命は短くなる。なおかつ、試合にフル出場ができなくなる。だから使わなかった。あえて使わなかった。

 

それは高校に入学してからも同じであった。しかし、昨年のインターハイはそれでは優勝できなかった。瑠璃がこれまでしてきた練習は体力強化を行うファンダメンタルなものが多い。瑠璃はあえてファンダメンタルな練習を多くしているのだ。ゾーンの維持時間を長くするために。そう。すべてはこの日のために。

 

瑠「青峰。いつから自分が最強だと錯覚した?いつから俺の存在を忘れていた?しゃーねえから、特別に今から指導してやるよ。」

 

瑠璃の雰囲気が変わった。それはチームメイトはおろか観客すら気づくものであった。

 

青「いいねえ。俺はそういう勝負がしたいんだよ。勝つか負けるか分からないギリギリのクロスゲーム。ゾクゾクするねえ。」

 

攻撃は福田総合である。

 

キセキの世代同士の試合は必ずこのような形になる。

つまりキセキの世代の1on1。

 

福田総合のフォーメーションはアイソレーションを取った。

 

瑠璃はいつもの動きとはくらべものにならないような速さで青峰を抜きにいく。

青峰もそれに常人離れした動きで反応する。

 

青「さあ。こいよ!!」

 

青峰は少年のような顔で瑠璃に言う。

 

瑠「じゃあ、このシュートを止めてみろ!ゾーンにはいったときだけ俺が打てる技だ。」

 

瑠璃はシュートのモーションに入る。そして跳ぶ。当然青峰はブロックに跳ぶ。

ここで青峰は気づく。瑠璃は最高点でシュートを打たなかった。最高点から下がり出した時にシュートを打ったのだ。

通常のバスケットにおいてこんなことはありえない。最高点でシュートを打たなければ、ブロックされるからだ。しかし、瑠璃のシュートはそれでいい。

 

瑠「このシュートにブロックは無意味だ。止めるならシュートモーションに入る前じゃないとな。なんせこのシュートは”ブロックした手を利用する”」

 

瑠璃はいつものシュートの回転とは逆。ドライブの回転をかけてシュートを打つ。

ボールは青峰の伸ばした指に当たる。誰もがブロックしたと思った。しかし、指に弾かれたボールはそのままゴールに入る。

 

この技の名を”予測するシュート《プレディクトシュート》”と言う。

 

客「な、なんだあれ!?ブロックしたボールがゴールにはいったぞ!!偶然じゃないのかっ!?」

 

瑠「偶然なわけはいだろーが。狙ったんだっつうの。」

 

青峰は自分の手を見て笑いだす。

 

青「はははははっ。すげえよ。やっぱあんた。最高だ!!」

 

第2Qは青峰と瑠璃にしかボールは渡らなかった。

だれも間にはいれないのである。ただでさえ、才能がある2人である。その2人のゾーンの状態には誰も介入できない。

 

しかし、第2Q終盤。

 

瑠「はあっ。もう無理だわ。ゾーン限界。」

 

瑠璃はゾーンを解いた。

青「おいおおい。こっからだろ。たのしいのは!!」

青峰の本気のスピードにゾーンを解いた瑠璃はついていけない。

 

瑠「灰崎!!ヘルプっ!!」

 

灰「分かってるよ!!」

灰崎は青峰を止めようと必死になる。

 

 

青「無駄だ。今のおまえじゃ、俺の前にすら立てねえよ。」

 

青峰は灰崎をぬいてダンクを決める。

 

第2Q終了。

 

48対44で桐皇学園の有利である。

 

瑠「はぁはぁはぁ。」

 

瑠璃は肩で息をしながら、ベンチに座る。

 

監「瑠璃を充てがってこれか。恐ろしいやつだな。キセキの世代エース。青峰大輝。」

 

瑠「はい。それに俺の”予測するシュート《プレディクトシュート》”はそう乱発できるもんじゃありません。ゾーンに入った極限の集中力での予測ですから。」

 

灰「あのシュートは反則技っすよ。一体どうやって打ってるんすか!?」

 

瑠「あのシュートには必要な条件がある。1つは極限の集中での相手のブロックの最高到達点の予測。2つ目は通常かけないドライブ回転。疲れるし、手首も痛くなるしであんま使いたくねえんだわ。」

 

石「おそらく、第3Qはお互いエースを温存するだろう。勝負は第4Qだ。それまでは、灰崎!おまえにかかってるぞ?うちのエースは2人いることを見せてやれ!」

 

灰「うす!!」

 

監「と、相手も考えているでしょう。つまりこちらは若松君。君が灰崎君をいかに止めるかです。いいですね?」

 

若「わかってますよ!!まかせてください!!」

 

今「青峰もそれでええな?」

 

青「ああ。特に異論はねえよ。瑠璃さん相手じゃしゃあねえ。」

今「しっかし、黒金瑠璃はけったいなシュート使うなあ。なんやねん君らの先輩。あんなん去年はなかったで?」

そういい青峰と桃井を見る。

 

青「帝光時代もなかったすよ。あのシュートは瑠璃さんにしかできねえ。瑠璃さんの本当の才能を引き出してやがる。」

 

若「本当の才能?どういうことや?」

 

青峰はめんどくさそうに桃井を見る。

 

桃「それは私から。瑠璃さんのすごいところはトリッキーなプレイやボールに自在に回転を掛けて支配することだと思われがちですが、実はそうじゃないんです。瑠璃さんが本当にすごいのは、膨大な経験から来る”予測”なんです。」

 

今「予測?どういうこっちゃ?」

桃「つまり、ほぼ完璧に相手の動きを予測できるんです。予測できても体が反応しないことが多々あるほどに完璧な予測です。おそらく、ゾーンの状態に入った瑠璃さんは青峰君クラスの動きじゃないと、止められないしディフェンスすらさせてもらえません。」

 

今「ふう。まあ、青峰。全部お前に託すわ。この試合、お前にやるわ。」

 

青「ああ。勝つのは俺だ。」

 

ピー-

審判「これより第3Qを始めます!!」

 

瑠「灰崎。第3Qは暴れろよ?お前だって俺と遜色ないレベルまできてるんだ。あとはきっかけだ。」

 

灰「きっかけ、ですか?」

 

瑠「まあ、それはおいおいな。今はまだ無理だろうが。」

 

第3Q。

 

互いのエースを休ませるための戦い。

 

 


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