その後、キセキの世代同士が対決することのない試合は王番狂わせもなくベスト4がで揃った。
王者洛山を破った、優勝候補筆頭福田総合。
今大会NO1のオフェンス力を持つ、暴君桐皇学園。
安定力を武器にここまで勝ち残った海常高校。
陽泉を破り、勢いに乗っている秀徳高校。
この中で1つのチームが日本一の称号を得る。
今日はまずは決勝を戦う2校を決める戦い。
すなわち午前、福田総合vs海常高校。そして午後、桐皇学園vs秀徳高校である。
試合前の観客席は大いに湧いていた。
ある者は言う。
「今年はどこが勝つんだ!?やっぱ、洛山を倒した福田総合か!?」
またある者は言う。
「いやいや!!他の3校も実力的には優勝してもおかしくないって!!」
観客はこの4校の対戦を今か、今かと待っていた。
そのころの選手控え室では。
「黄瀬!!準備はできてるか!!」
「もちろんす!!ファンの女の子にもらったクッキーも完食済みっす!!」
黄瀬は部員全員からブーイングを受ける。いつもの光景である。
「これに勝てば、決勝だ。いくぞ、お前ら。勝つのは俺たち海常高校だ!!」
『おう!!』
「ここまで来たな。」
福田総合の主将、石田は部員に語りかける。
「お前ら、準備はいいな?俺たちは勝つために来た。気合を入れろ。ここから先は戦場だ!!」
『はいっ!!』
そして両校が入場する。
観客の歓声はなり止むことはなく、両校の期待度を表していた。
「今日はよろしく。」
「ああ、こちらこそ。」
主将同士が握手を交わす。
「今日は、二人共全開ぽいっすね。」
黄瀬はお目当ての好物を見つけたかのように、瑠璃と灰崎に話しかける。
「お前の相手は、祥吾だよ。俺はあくまでサポート。」
「そういうことだ。ま、勝つにはおれだけどな!!」
エースもまた火花を散らしている。
「これより、ウィンターカップ準決勝を始める。互いに礼!!」
『お願いします!!』
ピ-
ジャンプボールは、まず海常が制した。
「黄瀬!!」
主将の笠松からエースの黄瀬へのパス。海常の最も得意とするパターンであり、絶対的信頼があるパターンだ。その黄瀬をマークするのは灰崎祥吾である。
黄瀬はボールを受け取り、灰崎を抜こうと試みるがもはやキセキの世代と遜色ない灰崎を簡単には抜けない。
「やっぱ、これじゃ無理っすね。じゃあ、これならどうなんすかね!!」
「これはっ!?」
黄瀬は青峰の動きの90%を体現し、灰崎を抜く。この技を灰崎は知っている。これはキセキの世代、黄瀬涼太が体得した究極奥義。完全な模倣《オールコピー》。すべての技は黄瀬の前ではただの”動き”だ。
「ちっ。いきなり完全な模倣《オールコピー》かよ。」
そう呟く灰崎に対し、海常の主将笠松は忠告するように言う。
「完全な模倣《オールコピー》?違うな。今のあいつは、キセキの世代の技だろうが、15分間なら完璧に使える。完全な模倣《オールコピー》はせいぜい5分が限界だった。言うならば、あれは完全無欠の模倣《パーフェクトコピー》だ!!」
完全無欠の模倣《パーフェクトコピー》。黄瀬が新たに習得した、いやさらに磨きをかけた究極奥義。しかし、忘れてはならない。黄瀬に究極奥義があるように灰崎にも究極奥義があるのだ。
「祥吾!!まさかこのまま黙ってるつもりはないよな?」
「ったり前っすよ!!」
「ボール、回すぜ?」
福田総合の攻撃。予告通り、瑠璃は灰崎にボールを回す。
「今度は俺が見せる番だな!!」
灰崎は先ほどの黄瀬のように、青峰の動きで黄瀬を抜きに行く。
「(青峰っちの動き!?”強奪”っすか!?)」
そうここまでならば、ただの”強奪”。しかし、今の灰崎は違う。
「今の俺の技は”無限”だ。」
すると、バックステップからフェイダウェイで3Pを決めた。
「あれは!?私の!?」
観客席では洛山の実渕が声を上げる。
「たいしたものだ。試合中には無理でも、一試合分観察すれば、灰崎はどんな技でも奪ってしまう。実渕と比べれば、僅かにフェイダウェイの距離が短い
。あれが灰崎にとってのベストな距離なんだろう。」
まるで黄瀬と対をなす灰崎の究極奥義。
”完全無欠の強奪”《パーフェクトバンデッド》。この技の利点は、技を組み合わせることによって攻撃のバリエーションを増やせる。つまりは、無限。相手は攻撃を読み取ることができなくなるのだ。
当然欠点もある。それは、技の組み合わせは試合前に考える必要があるのだ。さらに相性が悪い技同士は組み合わせることができない。矛盾するようだが、無限の技を謳いながら、試合前に考えてる以上の技はできないのだ。
「すげえっすよ!!あんたはやっぱすげえ!!でも勝負は!!こっからっすよ!!」
第1Q終了後。点差は12対16となり、福田総合が優勢であった。