黒子のバスケ〜努力の天才   作:マニック

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第37Q

ついに赤司がゾーンに入った。以前の青峰と同じように自分の意志でゾーンにはいった。これで自らの意志でゾーンに入れる者は3人となった。

 

青「赤司がゾーンに入ったな。俺は完全に瑠璃さんびいきだったんだが、これでどっちが勝つかわからなくなったな。」

今「まあどっちが勝っても、厄介な相手やなあ。さて、どんな戦いになるのやら。」

 

 

赤司はボールをゆっくりとつき瑠璃に近づいていく。

瑠「こい・・・!!」

赤司は瑠璃をクロスオーバーで抜こうとする。

瑠「甘い!!」

赤「言い忘れていたが。図が高いぞ。僕に逆らう奴は親でも殺す。」

瑠璃は次の瞬間には、尻餅をついていた。赤司は瑠璃を振り切ったことで3Pを打つ。

瑠「ああ。忘れてたわ。お前の天帝の眼《エンペラーアイ》」

今「今のはなんや?黒金が足すべらせたんか?」

青「ちげえよ。あれは赤司が瑠璃さんをこけさせたんだ。」

今「そんなことが可能なんか?」

相手選手を意図的にこけさせることができるというなら、これほど怖いOFはない。DFの意味がまったくなくなってしまうのだから。

青「天帝の眼《エンペラーアイ》。あいつの眼には未来が見える。そういう能力だ。相手の動き、筋肉の軋み、呼吸。そういう情報から相手の動きを読み取るんだ。」

今「青峰ならその天帝の眼《エンペラーアイ》を破れるんか?」

青「わからねえ。」

青峰は静かに呟いた。キセキの世代のエースでさえ、敗れるのか分からない。そんなものをどうやって破るのか。今吉は福田総合に、黒金瑠璃に期待していた。

瑠「祥吾。ちょっと耳かせ。」

灰「なんすか。ん?・・・そんなんで勝てるんすか?」

瑠「まあ、一回やってみようぜ!!」

赤司は不審そうに瑠璃と灰崎を見ていた。自分の天帝の眼《エンペラーアイ》をどのように破るのか。それが楽しみに感じていた。この感覚は久しぶりであった。まるで帝光時代に戻ったようだ。

赤「さて、いくよ。」

赤司は先ほどと同じように瑠璃に尻餅をつかせていた。

瑠「祥吾!!」

すぐさま灰崎がヘルプにつく。しかし、赤司にはそんなもの関係ない。灰崎ですらすぐに尻餅をつかせる。

赤「これが秘策なら落胆だよ、瑠璃さん。」

瑠「だろうなっ!」

瑠璃は灰崎が尻餅をついている間に、赤司のボールを叩いた。その間、わずか0.5秒。いつも鍛錬を怠らず、常にだれよりも練習をしてきた黒金瑠璃だからこそできる超反応。1人でもヘルプにいけば、瑠璃はどこにでも追いつける。

瑠「お前のゾーンにパスはない。お前のゾーンのトリガーは自分で勝つ意志だからな。なら話は簡単だ。周りは見なくていい。お前だけに集中すればいいんだ。」

赤「くっ・・・!!」

瑠璃は簡単に言うが、そう簡単なことではない。まず、ゾーン状態の赤司に追いつけるのは青峰と瑠璃しかいない。さらに尻餅をついた状態から赤司に追いつくには日々の基礎練習によって身につく筋力が必要になる。実質、瑠璃だけができる赤司対処法なのだ。

 

そこから赤司は崩れた。はじめて自分の全力を止められ、シュートはおろかパスすらその精密性がなくなっていた。たまらず、洛山の監督がタイムアウトを取る。

 

実「ちょっと、征ちゃん!!どうしたの!?しっかりしてよ!!」

根「まったくだ。あんなプレイしかできないんなら、代われ!!」

葉「ほんと、ほんと。まじあんなんで負けるとか勘弁だよ。」

無冠の五将は一様に文句を言う。うなだれている赤司に黛は言う。

黛「なあ、はやく本気になれよ。俺は知ってる。お前はこんなもんじゃない。どうしたよ。お前は一番強いんだろ!?早く、早く起きろよ!!赤司征十郎・・・!!」

黛の言葉は結果として鍵となった。本当の赤司征十郎が起きるための。

赤「ああ。すまない。みんなもすまない。もう少し俺を試合に出してくれ。」

無冠の五将は驚いていた。あの赤司が謝罪をしている。そんなこと初めてであった。

赤「(まさか黒金さんに起こされるとはな。負けたくない。こんな気持ちはいつぶりだろうな。)」

 

タイムアウト明け、ボールは洛山に渡る。

 

赤「お久しぶりです、黒金さん!!」

そう言い、赤司は瑠璃を振り切る。他の選手がヘルプにつくことでアウトナンバーができる。それを見逃さず、実渕にパスを出す。

実「これは・・・!!」

赤司は実渕にとっての完璧なパスをした。さきほどの瑠璃のように、いやそれ以上に選手の調子を良くするパスを。

瑠「すげえな。”征”。それが”理想のパス”か・・!!」

赤司はそれ以降も完璧なパスを出し続けた。そして・・・

瑠「これは!?」

灰「瑠璃さん、これって!?」

青「やっちまったな、この試合はもう決した。」

今「ああ。わしにも分かるで。全員がゾーンに入っとる。ありえんでほんま。」

もしもチーム全員がゾーンにはいれば、そのチームは無敵だ。そんなこと、ゾーンに入ったことがない者でも分かる。

青「厳密に言えば、完璧なゾーンじゃねえ。100%の力を引き出すんじゃなく、90%の力を出してるってとこだな。」

瑠「ったく。化物かよ。」

そこで第3Qは終了した。点差は66対54。福田総合には厳しい点差である。

石「さすがは赤司征十郎といったところか。全員がゾーンとか笑えるぞ。」

瑠「あはは。さてどうすっかな。祥吾!!」

灰「うす。」

瑠「”アレ”やるぞ?」

瑠璃は意味ありげに言う。それに灰崎はうなずく。

瑠「すいません。この試合、俺たちに任せてください。今はまだ2人でしかできない技なんで。」

石「それは、いつか俺達もできるようになるのか?」

バスケットは5人でするスポーツだ。それなのに瑠璃はまるで2人でなんとかするかのような態度を取る。しかし、それが正解なのは分かっていた。それほどの力の差がチーム内にはある。

瑠「必ず。できないと、決勝では勝てません。」

石「よし。この試合はお前らにくれてやる。だから勝つぞ!!」

福田総合は円陣をつくり、チームを鼓舞する。

 

赤「いまさら何をしようと、俺達にはかてない!!」

洛山は再び、全員がゾーンに入る。

瑠「征。今からお前に、”ゾーンの奥の扉”を見せてやる。」

赤司は顔をしかめる。ゾーンの奥の扉など自分は考えたこともない。もしも、そんなものがあるのだとしたらこの試合をひっくり返されるかもしれない。

瑠「ゾーンの奥には2つの扉がある。今からその1つを見せてやろう。」

その扉は決して1人で戦う者には開いてくれない。

チームのために戦う者のみに開くことを許させる”2つの扉”。

どちらを開けるかは選手次第だ。




次回で洛山戦は完結です。
次の試合は、紫原対青峰の予定です!!

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